聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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お待たせいたしました。46話の更新になります。

しばらくは、5000文字前後の話が続く感じになります。時間が出来れば、前のように10000文字ぐらいの話を書きたいと思っています。


46話 メイドエリア

「はぁ、はぁ、はぁ……。ベル……何処に行った……?」

 

 

 多くの娼婦達が、男性を誘惑しそれぞれに店に連れ込んでいく光景が広がる【歓楽街】で、エレンは逸れたベルを見つけるべく大通りを進み続けていた。

 

 

「こうなったら周りにいる娼婦に尋ねるか……いや、やめておこう。タダで教えてくれる訳ないし、かと言って情報量を払えるようなお金は持ってきていないし……」

 

 

 元々は、命の尾行が目的だったのであまり金銭を持ち歩いていなかったエレンは恩恵(ステイタス)によって強化された視覚や聴覚を駆使してベルの捜索を行っていたが、視界に映るのは色気を放つ娼婦の素肌。聴覚には(なまめ)かしい声が聞こえてくるだけだった。

 

 

「…………はっ! だ、ダメだ、見るなぁ!ベルを探しに来たんだろうがぁ!!」

 

 

 視界と聴覚から流れ込んでくる情報が、男としての本性を刺激し、エレンの感情を()()()()()()にさせようとエレンの精神に襲い掛かるが、エレンは両手で顔を叩き、本来の目的である『ベルの捜索』を続行した。

 

 いくら、処女神の『精霊』の半分を持っているエレンでも『男』……しかも、『ヒューマン』の側面を持っている関係で、エレンには『生殖能力』が存在する。つまり、『精霊』であるエレンにも『性欲』は存在し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ベルを見つけ出すために辺りを見渡しながら進み続けるエレンだったが、瑞々しい肌をさらけ出し、誘惑してくる娼婦達の立ち姿につい視線が釘付けにされそうになりながらも、エレンは()()()()()()()へと足を踏み込んでいった。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 戦闘を行っていないにも関わらず、息が上がっているエレン。

 

 いくら、『魅了』に耐性を持っているエレンでも、()()()()()()()には全くと言っていいほど耐性は持っていない───というか、『弱点』である。

 

 普通に話す分は問題ないが、露出が過ぎる格好は目に悪すぎる。それにエレンも色々とお年頃の年齢なので、なおさらである。そんなお年頃なエレンは、乱れていた息を整えて周囲に視線を向け、ベルがいないか捜索を開始しようとすると……。

 

 

『『『お帰りなさいませ、ご主人様♪』』』

 

『『『たっだいま~♪』』』

 

「…………ナニコレ?」

 

 

 また、新しい区画に入ったエレンだったが、これまた珍妙な光景が広がっていた。

 

 ここ、【歓楽街】は世界中の様々な文化が取り入れられており、娼婦の恰好や建物の構造などが区画ごとに大きく変動している特徴がある。

 

 そして、エレンが入り込んだ区画では()()()()を来た女性達が男性客のことを『ご主人様』と呼び、男性客は可愛いメイド姿の娼婦に鼻の下を伸ばし、次々と店の中へと姿を消していった……。

 

 

「……この区画はメイドエリアなのか……?」

 

 

 周囲の見渡し、殆どの娼婦達がメイド服を着ていることに気が付いたエレンはこの区画のコンセプトに触れた。この世界でもメイドは存在し、家事全般や身の回りのお世話を行う女性の使用人を指す。

 

 主に、探索系【ファミリア】に需要が高いが、大抵が主神の趣味で取り入れられる場合が殆どのようで、非戦闘員として派閥(ファミリア)に迎え入れるケースも存在する。

 

 エレン達も、【竈の館】の維持、管理の為にメイドを雇い入れようと考えていたことがあったが、団長(ベル)がメイドに目移りする危険性を考慮した主神(ヘスティア)会計係(リリ)の判断で白紙となった。

 

 そして、ここまでメイドに関する話をしていたが、エレンの視界に映るメイド服を着た娼婦達は、エレン達の知っているメイドとは、()()()()()()()()()()だった。

 

 まずは、服装だ。『標準装備(デフォルト)ですが?』と言わんばかりに露出された胸部、異常と言っていいほどミニスカートを履いており、獣人の女性に関しては尻尾が生えている関係でミニスカートが時々捲れあがり、中の下着が見えてしまっていたりする。

 

 それに、布面積も本来のメイド服に比べると大幅に削減されており、アマゾネスの衣装に関しては、もはや『際どい水着』レベルの布面積しか残っていなかった。

 

 

「……でも、あのメイド服……どこかで」

 

 

 あの際どいメイド服について色々とツッコミがあるエレンだったが、娼婦達が身に着けているメイド服を何処か既視感を感じ、メイド服を着た娼婦達をジッと見つめていると、その視線に気が付いた数名の娼婦達がエレンに近づいて行った。

 

 

「「「お帰りなさいませ、()()()♪」」」

 

「!?」

 

 

 エレンに声を掛けてきたのは、三人のエルフの娼婦。どうやら、少し前に絡まれた男神達と同じように、エレンのことを女性と勘違いをしているようだった。

 

 ほかの娼婦達と同じように肌面積が多いメイド服を着用しており、白くて柔らかそうな肌を見せびらかすような仕草でエレンの周りを取り囲み、逃げられないようにしていた。

 

 そして、エレンを取り囲んでいる三人のエルフの娼婦は、『歓楽街の夢魔』と呼ばれている娼婦で、特に『女性』を好む特徴があり、日によっては同業の娼婦に手を出してしまうほどの色欲魔で有名である。

 

 

「も~。今まで何処に行っていたんですか~?私~寂しかったです~」

 

「えっ?いや……」

 

「ささぁ、お嬢様!()()の屋敷に帰りましょう♪」

 

「ちょっ!?」

 

「今夜はた~くさん可愛がってあげますからね♪ お・じょ・う・さ・ま♡」

 

「!?」

 

 

 三人のエルフの娼婦達がエレンの右腕、左腕、胴体にそれぞれ抱き着き、エレンが逃げられないように拘束しながら、エレンをすぐ近くの娼館へと連れ去ろうと移動を開始し始めた。

 

 これにはエレンも抵抗を試みたが、腕や体を動かそうとする度に、()()()()()()()()()()によって動きが阻害されてしまい、抵抗しようにも満足に体を動かすことが出来なかった……。

 

 何とか『お持ち帰り』されないように微々たる抵抗を試みるエレンだったが、エレンの胴体に抱き着いている娼婦の1人がエレンの顔をジーと観察しているとはっ、と何かに気が付いたようで、驚きの表情を露わにした。

 

 

「ねぇ。貴方、()()()()()()()じゃない?」

 

「ギクッ!?」

 

「「えっ?」」

 

 

 その発言に、エレンのそれぞれの両腕に抱き着いていた娼婦達も驚きの表情を露わにしながら、エレンの顔を凝視する。三人の娼婦達は、エレンの目と髪をじっくりと観察すると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であることが判明。

 

 それが分かった途端に、彼女達の表情が一変。

 

 彼女達は、ぺろりと舌なめずりをすると、ただでさえ密着していた体を『絶対逃がさない♪』と言わんばかりにさらに密着させたことで、エレンの顔は真っ赤に染め上げた。

 

 三方向から感じる体温は物凄く熱く、異常と言っていいほど密着している影響で、相手の心臓の鼓動音が肌を伝って感じ取ってしまっていた。鼓動音はどんどん早くなっており、それに共鳴するかのように彼女達の呼吸が乱れ始めていた。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「もう……いいですよね……?」

 

メイドエリア(ここ)が造られた発端……私達のメイド娼婦の()()()()()……ジュルリ」

 

「……えっ?今なんて───ちょっ!?」

 

 

 何か聞き捨てならない単語(ワード)が聞こえた気がしたエレンがその事について尋ねようと思った瞬間───彼女達の顔がエレンの唇に触れてしまいそうなぐらいに顔を近づけていた。

 

 彼女達の頬は熱を引いているかのように赤くなっており、彼女達の乱れた吐息がエレンの顔に容赦なく襲い掛かり、エレンの顔をさらに真っ赤に染め上げた。

 

 

「───もう……()()()()()()

 

「───ッ!?」

 

 

 エレンの胴体に抱き着いていた娼婦がエレンの顔に目掛けてグッと距離を詰める。

 

 エレンは咄嗟に顔を逸らそうとするが、残り二人の娼婦達も両サイドからさらに距離を詰めている事に気が付き、身動きが取れない状況に陥っていた……。

 

 徐々に距離が詰められていく絶対絶命のピンチのエレンだったが、状況に思考が全くと言っていいほど追いついておらず、頭の中が真っ白になってしまい、最早、抵抗する思考すらも考えられなくなっていた。

 

 そんなエレインちゃん(エレン)にお構いなしに唇を重ねようとするエルフの娼婦。しかも、()()()()()()()()にいた事も相まって、周りにいた多くの男性客や娼婦の視線を集めてしまっており、シーンと静まり返った空間に『ゴクリ』と唾を飲み込む音が重なり、あと少しで唇が重なりそうになった──────その時だった。

 

 

『『『『!!??』』』』

 

 

 エレン達のいる場所の近くに大きな轟音と土煙が舞い上がり、あまりにも突然とした状況に全員の視線が一か所に向けられると、そこには()()()()()()()()()()()()()が倒れていた。

 

 エレンを含めた全員の頭に?マークが浮かび上がると、次々とアマゾネスが砲弾のように飛んできては大通りや建物を次々と破壊していき、全員の視線が飛んできた方向に目を向けると、そこには悪夢のような光景が広がっていた。

 

 それは、白髪のヒューマンに目掛けて、二メートルを超える巨体の人物が片手で掴み上げたアマゾネスを投擲武器のぶん投げる光景に全員が、自身の目がおかしくなったんじゃないか?と両目を擦り始めていた。

 

 

「べ、ベルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!??」

 

 

 多くの男性客や娼婦達が目を擦っている中で、エレンは大声で大勢のアマゾネスに襲われている派閥の団長の名を叫んでいた。

 

 注意が逸れたことで、エレンに抱き着いていた腕の力が緩んでいたことで動くことができたエレンは急いでその場から脱出。『歓楽街の夢魔』から解放されたエレンは襲われているベルの元へとダッシュで向かっていった。

 

 

 

***

 

 

 

「待ちなぁ!ウサギィ!!」

 

「ヒィィィィィィィィィィィィィッッ!!??」

 

 

 ベルは全力で逃げていた。エレン達と逸れた時に偶々出会った男神(ヘルメス)から貰った精力剤を返そうとしたが、その道中で出会ったアマゾネスの集団に誘拐され、彼女たちの本拠(ホーム)に無理やり連れ込まれた時に二メートルを超える巨体を持つアマゾネスの団長と遭遇。

 

 互いに獲物(ベル)を渡すまいとけん制をしている隙をついて、ベルはその場からは逃げ出すことはできたが、その後は今のような走戦(デス・レース)の開催と至っていた。

 

 

「逃げしゃあしないよぉ!」

 

「ガハァッ!?」

 

 

 何とか、持ち前の『敏捷』を生かして逃走を続けていたベルだったが、砲弾のようにぶん投げられたアマゾネスをベルは何とか回避したつもりだったが、少し掠ってしまったようで、屋根の上にいたベルはバランスを崩してしまい、そのまま下へと落してしまった。

 

 

「ゲゲゲゲゲゲッ!! さぁ、アタイの胸に飛び込んでおいで♪」

 

「ヒィッ!!!???」

 

 

 ベルが落下する場所にはオークのような巨体を持つ【イシュタル・ファミリア】の団長。フリュネ・ジャミール。Lv.5の実力を持ち【男殺し(アンドロクトノス)】の二つ名を神々から授かった第一級冒険者である。

 

 そんなフリュネに向かって真っすぐ落下するベルは大粒の涙を流すが、空中では身動きが取れず、両腕を大きく開き、ベルを丸呑みするかのように大きな口を開いたフリュネがキャッチしようと待ち構えていた。

 

 

「な、何だい!?」

 

 

 フリュネが落ちてくるベルをキャッチしようとした瞬間───フリュネの視界が突然真っ暗になり、その影響でベルを補足することができず、キャッチに失敗。()()()()()()()()()を振り落とそうと腕を大きく振り回していた……。

 

「ベル!今の内に逃げろ!!」

 

「エ、エレンさん!? で、でも───」

 

「急げ!!あまり時間は稼げないぞ!」

 

「───ッ!!ご、ごめんなさい!!」

 

 

 何と、フリュネの視界を塞いでいたのはエレンだった。何処かの店で飾られていた物なのか、旗のような物でフリュネの顔を背後から覆い被せ、外れないように力いっぱいに締め上げていた。

 

 ベルはエレンを置いていく事に抵抗を示したが、それは今もフリュネを抑えている事が無駄になってしまうことだと分かると、苦虫を嚙み締めたかのような表情でその場から走り去っていった。

 

 

「よし。あとは出来るだけ時間を──────ッ!!?」

 

「いつまでアタイの背中に───」

 

 

 少しでもベルが遠くへと逃げれるように時間を稼ごうと思った瞬間───背中にいたエレンも元にフリュネの大きな手が迫ってくるのに気が付いたエレンは回避を試みたが、一手遅かった……。

 

 

「乗っかっているつもりだい!!」

 

 

 回避したつもりだったエレンだが、左足がフリュネの右手に捕まってしまい、フリュネの圧倒的な『力』の能力値(ステイタス)によって引きずり降ろされてしまい、フリュネは捕まえたエレンを力任せに建物に向けてぶん投げた。

 

 

「───ガハァッ!?」

 

 

 フリュネに投げ飛ばされたエレンは、次々と建物の壁に衝突しては大きな穴が開いていった。

 

 何度も壁などにぶつかった影響でスピードが落ちていき、やがて1つの店の壁をぶち抜いたのを最後にようやく止めることがエレンは『イテテッ……』と痛む体を摩りながら自身に回復魔法を施した……。

 

 

「……ここは?」

 

 

 回復魔法で体を摩りながら、周囲を見渡すと赤い液体が入った盤棋(チェス)の駒に似た容器や、透明な液体が詰められた試験管がズラリと並べられており、此処が何かしらの店なのだと判断した。

 

 

「……ん?この服は……」

 

 

 辺りを見渡していると、大量の服が置かれており、エレンはその内の1つに手を伸ばし、その服を広げて見ると驚くべく事が判明した。

 

 それは、ついさっきまで多くの娼婦が身に着けていた『メイド服』であり、小人族(パルゥム)専用なのかサイズは一際小さい『メイド服』やカチューシャなどの小物までずらりと揃えられていた。

 

 

「よってらっしゃい、見てらっしゃい!今日もいい物を仕入れているよ~!」

 

「……店員の声か?」

 

 

 エレンは異常と言っていいほどの品ぞろえにあっけに取られていると。店の奥の方から店員らしき声が聞こえてきた。

 

 エレンは声をする方向に向けて歩みを進めると次第に店員の声が大きくなり、より鮮明に聞こえるようになってきた。如何やら商品の宣伝をしているようだ。

 

 

「あの『美女コンテスト』の優勝者!『エレインちゃんメイド服』はいがかかな~?メイド服(これ)を着れば君もエレインちゃん!早いもの勝ちだよ~!」

 

「ぶふぅっ!!??」

 

 

 耳を疑う内容が飛び込んできた。何と、これまで何度も目にしてきたメイド服は、グランド・デイの前夜祭(イヴ)の時に行われた『美女コンテスト』の時に、エレンが『エレインちゃん』デビューをした時のメイド服であることが、たった今判明した。

 

 最も、エレンが着ていた物に比べると大分デザインが変わっているが、その面影はしっかりと残されており、今まで忘れていた記憶が蘇ったことでエレンの顔は真っ赤になり、体はプルプルと震えていた……。

 

 

「……取り合えず、店員をぶっ飛ばすか」

 

 

 エレンは小さく呟くと、近くに置いてあった『鎖に繋がれたトゲ付き鉄球』を手にし、店員の声をする方へと足を進め、木製の扉をゆっくりと開け、扉の中へと侵入。

 

 その後は、扉の向こう側から男性の悲鳴と何か重いものが落下したかのような音が響き渡り、木製の扉の下からは()()()()が流れ出していたという……。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

このメイドエリアは『エレインちゃん』の登場でメイドの需要が高まることをいち早く察知したヘルメスが始めた『メイド服ビジネス』になります。メイド服を始め、精力剤や18階層から回収した健康や美容に良いと噂の水───『奇跡の水』の販売でウハウハの状態です。


エレン
 『歓楽街の夢魔』に喰われそうになった影響で、しばらく、エルフの女性を見ると顔が真っ赤になってしまうようになってしまった。メイドエリア(この場所)が自身の影響で誕生したことが判明してエレンの頭の中は羞恥心でいっぱいに……。なお、後日、きちんと黒幕(ヘルメス)はアルテミスと一緒にぶっ飛ばした。
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