聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか 作:フェイト・
「ヒィィィィィィィィィッッ!?お助けぇぇぇぇぇぇぇッッ!!?」
「待てゴラァアアアアアアアアッッ!!!」
今日も娼婦達が【歓楽街】の大通りで男性客を捕まえようと色気を放っている中、1人のヒューマンが鎖に繋がれたトゲ付き鉄球を振り回す青髪の女性?に追い回される光景が広がっており、周りにいた人達は巻き込まれないように端の方へと非難しながら逃走劇の行く末を見守っていた。
「何だ何だ?何があった?」
「あれだろう?ヤることだけヤって金を払わなかった男の末路ってやつだろ……」
「あの男は終わったな……。あんな鉄球で叩き潰されたらひとたまりもないぞ」
「う~ん。あんな
巻き込まれないように非難しながら追い回されている各々が思っている内容を呟いていた。
鎖に繋がれた鉄球を振り回す青髪の女性は何かを叫びながら男性を追い回されている光景を遠目で見物し、娼婦達は『
***
「許してくれぇぇぇぇぇ!!俺は只の一般人なんだ!!」
「嘘つけぇぇ!!!あんた【ヘルメス・ファミリア】の団員だろう!『エルソスの遺跡』で見たことがあるわぁ!!」
「げぇっ!?」
エレンは振り回し続けている鉄球を相手に向けて投擲するが、向こう側はギリギリの所で飛んでくる鉄球を回避。エレンは飛ばした鉄球についている鎖を思いっきり引っ張ることで回収し、再び
エレンが追い回しているのは、【ヘルメス・ファミリア】の団員の一人、『キークス』。
元々は
ヘルメスから渡されたマニュアル通りの接客をしていると、背後に鉄球を降り落そうとするエレンの姿があり、キークスはその姿に悲鳴を上げながら緊急回避。鉄球はキークスの近くに置かれていた高級媚薬の棚に直撃し、瓶の中に入っていた赤い液体が周囲に飛び散り、店の中は真っ赤に染めあがった。
「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃっ!!??」
何とか直撃を回避したキークス。腰を抜かしながらその場から離れようとしたその直後───
鉄球を振り下ろした影響で店につけられていた魔石照明が壊れ、店内は暗闇に包まれていたが、この時、ヒューズは確かに見た。
真っ赤に染まった衣服と鉄球。暗闇の中で薄っすらと不気味な笑みを浮かべる顔に、キークスの背筋はゾッとし、急いで店から飛び出して行った……。
そして、エレンがキークスを追いかけているのは一種の暴走状態に近い状態だからである。あの店の中にはヘルメスが独自のルートで仕入れた実物サイズの『エレインちゃん人形』がずらりと並べられており、中には『姉ビ~ム♡』と頭のおかしいセリフ付きのものまで展示されていたのだ。
そんな記憶にないめっちゃ恥ずかし姿の人形を見てしまったエレンは物凄い羞恥心によって頭がオーバーヒートを起こしてしまい、取り合えず『この痴態を見た者を───全て、
「(早すぎだろうッ!?【ヘルメス・ファミリア】の団員って平均Lv.2って聞いていたのに───あれ、Lv.3はあるだろう!!」
「(おいおい!?あの鉄球ってめっちゃ重い鉄球だぞ!?何で、そんなにぶん回すことができるんだよ!!)」
互いに全速力で【歓楽街】を爆走していたが、少しづつではあったが、エレンは着実にキークスとの距離を詰めていた。確かにエレンとキークスとの間にはレベルの差が存在していたが、エレンにはクソチートの回復魔法がある。
エレンは走りながら回復魔法を行使し、消費した体力を回復させつつ鉄球による攻撃を続行。それに対してキークスは着実に疲労が蓄積されており、息が上がり、スピードが徐々に落ちていた。
エレンはそんなキークスの様子に気が付くと、振り回している鉄球を再びキークスに向けて投擲した。投げられた鉄球は真っ直ぐにキークスに向かって一直線に飛来した。
「えっ!?ちょっ、まぁッ!?」
背後から物凄い殺気を感じたキークスは走りながら後方を確認すると、すぐそこまで迫っている鉄球の存在を肉眼で確認───直撃まで残り
キークスは頭で考えるより先に本能で緊急回避を行い、寸での所で鉄球との接触を回避。対象を失った鉄球はキークスの頭上を通過し、そのまっすぐ飛んで行った───すると。
「何処に行った?あの兎はアタイが───ぷぎゃッ!?」
「「あっ」」
なんと、対象を失い、まっすぐ飛んで行った鉄球は、脇道から現れたフリュネの顔面へとまるで吸い込まれていくかのように直撃し、鉄球はフリュネの顔面にこれでもかとめり込んだ。
「………………」
「「………………ゴクリ」」
顔に鉄球がめり込んだフリュネは動きが止まり、まさかフリュネに直撃するとは思ってもいなかったエレンとキークスの二人の顔からは冷や汗が流れていた。
「──────アタイの顔に……」
「「──────ッ!!?」」
その時だった。フリュネが顔にめり込んだ鉄球を片手で鷲掴みにすると、めり込んだ鉄球を引っ張り出し、
「お前かぁぁぁぁぁぁぁ!!!青髪のクソガキィィィィィィッッ!!!」
「ぎゃぁあああああああッ!?やったのはこっち───って、居ねぇぇぇぇぇぇ!?」
フリュネに完全にマークされたエレンはヘイトを逸らす為に、追い回していた男性を指さすが、既にその場から逃げ出しており、その事に気が付いたエレンの表情は真っ青になり、一目散にその場から逃走を開始した。
「アタイから逃げ切れると思っているのかい、このドブカスがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「こっちに来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
必死に逃げるエレンの後ろを物凄い表情で追いかけるフリュネ。その光景を見た男性客は急いでその場から逃げ去っていき、娼婦達は近くに店の中へと避難していき、エレンが走っている大通りはものの数秒で無人と化していた。
「な、なんだ!?何があったんだ!?」
「おいっ!何処のどいつだ!!この【歓楽街】で暴れているんのは!?」
「!!」
回復魔法で体力を回復させながらフリュネから逃げているエレンだったが、騒ぎを聞きつけたのか、ベルの捜索を行っていたアマゾネス達が次々と集まっているのを目撃したエレンは、集まっているアマゾネスの集団へと全力でダッシュした。
「すみませーん!あとはお願いしまーす!」
『『『はっ?』』』
エレンは
「邪魔だよ、ブサイク共!!」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ふ、フリュネ!?」
アマゾネスの集団の中に入り込んだエレンを捕まえるため、容赦なく仲間であるアマゾネスを次々と薙ぎ倒していくフリュネの姿に集まったアマゾネス達に動揺が走る。
エレンの目的は、フリュネをアマゾネスの集団に押し付ける『
「『
急いでその場から立ち去るエレンだったが、少し後ろを振り返ると大勢のアマゾネスを薙ぎ払うフリュネに対して、大勢のアマゾネス達が徒党を組んでフリュネに反撃を仕掛けている光景が広がっており、エレンの目には『階層主』と冒険者が戦っているようにしか見えなかった……。
それでも、フリュネをアマゾネス達に押し付けることができたエレンはベルを逃がすために時間稼ぎ十分だと判断し、【歓楽街】からの脱出を決断。エレンは【歓楽街】の外に繋がる門へと向かった。
3時間後
「…………」
エレンが無事に【歓楽街】から抜け出して、
エレンは『ダイダロス通り』と呼ばれる場所で絶賛迷子になっており、何度も通った道を戻っては【歓楽街】に戻ったりを繰り返しており、一向に
「……どうしよう。本格的に迷子になった」
外は深夜のため、真っ暗な暗闇が広がっているが、エレンは
だが、そんな迷子になっているエレンをジーと観察しているものが存在し、エレンが溜め息を吐いている見ると、観察を中止し、エレンの元へと駆け出して行った。
「ニャー♪」
「にゃー?」
エレンは目の前の二つに分かれている分かれ道の目の前に立っていた時だった。後ろから『鳴き声』が聞こえ、エレンが後ろを振り返るがそこには暗闇に包まれた来た道しか見えず、『気のせいかな?』と思ったの束の間、今度は
「……猫?」
「ニャー♪」
エレンの足元に居たのは『
エレンは腰を下ろし黒猫を触ろうと手を伸ばすと、向こうの方から体を手に擦り付けてきた。その後はエレンが頭や下顎を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らし、気持ちよさそうな表情を浮かべ、挙句の果てには地面に寝転がり、お腹を触らせてくれた。
「う~ん。人懐っこい子なのかな?」
「ニャ~♪」
エレンは黒猫のお腹を軽く撫でていると、黒猫は撫でている手をザラザラとした舌でエレンの手を舐め始めた。黒猫のザラザラとした舌で舐められる感触はくすぐったいが何とも癖になる感覚であり、お腹を撫でる手を引っ込めても黒猫はエレンの手を舐めるのをやめてくれなかった。
「う~ん……ねぇ、君。ここから出ていんだけど、出口がどっちにあるかとかってわかるかな?」
「ニャ!」
エレンは自身の手を舐める黒猫の姿をしばらくジーと見つめると『この
「……まさか、ね……」
エレンは半信半疑になりつつも黒猫の後を追い始めた。黒猫はエレンの前を歩きながらも、時々、エレンの方を振り返りながら暗闇の道を進み続けていた。これにはエレンも衝撃を隠しきれず、試しにわざと立ち止まって見ると黒猫はエレンの方へとUターンし、『こっちこっち』と言わんばかりにエレンに向けて鳴き声を発した。
「……そう言えば、アルテミス様は動物に好かれて、動物の言葉が分かるって言っていたな……」
エレンが言っている内容は、【アルテミス・ファミリア】が【竈の館】に訪れた時の会話である。アルテミス達がどうやってこの館を見つけることができたのかヘスティアがアルテミスに聞いてみると、アルテミスは『この子達が教えてくれたぞ』と言って、自身の肩に乗っている
女神アルテミスは処女神や狩猟を司る女神であるが、動物達の守り神の側面も持っている。その影響で、アルテミスは動物達に『声』を聞くことができ、『会話』を行うことができる。
そして、そんなアルテミスの
そんな自身の体質のことなんて全く知らないエレンは黒猫の後を追いかけていくうちに、一匹、また一匹と猫達が集まっていき、気が付いた時にはちょっとした猫の大名行列が出来上がっていた。
「わぁ~。めっちゃ出てきたな……って、こらこら。危ないからよじ登ってくるんじゃない!」
『『『『『ニャー♪』』』』』
エレンは沢山の猫達に囲まれながら黒猫の後ろを追いかけていると、5匹の子猫達がエレンの元へと駆け寄ってきて、エレンのズボンに小さな爪をひっかけて、よじよじと上り始めてきた。やんちゃな子猫達は小さな体を上手く使い、エレンの体を登って行ったが、エレンの胸の所まで登った子猫3匹がエレンに捕まってしまったが、残り二匹がエレンの両肩まで登り詰めると、二匹の子猫は母親に甘えるかのように頬ずりを始めた。
「……しょうがないなぁ」
エレンは両肩に乗っている二匹の子猫が落ちないように気を配りながら、両手で残り三匹の子猫を優しく抱き上げた。エレンに抱き上げられた三匹の子猫は暴れる様子はなく、大人しくエレンの両手の内側に収まったと思えば、ものの数秒でスヤスヤと眠ってしまった。
「……温かい」
両手から伝わってくる子猫の温かい体温を感じながら、先導している黒猫の後をついていくエレン。ついさっきまで
「不潔ぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
「「「「「ビクッ!!?」」」」」
突然、女性の怒鳴り声がエレン達を襲い掛かり、エレンや猫達の体がビクリッ!?と跳ね上がり、エレンの両腕の中で寝ていた子猫も起きてしまい、体がビクビクと震えていた。
エレンはそんな子猫達を優しく撫でて上げながら、声が聞こえた方へと足を向けた。理由としてはさっきの声の主に心当たりがあったこと、そして、かすかではあったが、『少年』の声が聞こえたからである。
エレンは猫達と一緒に声が聞こえる方向へと足を進めると、段々と聞こえてくる声が大きくなり、曲がり角を曲がると、そこには大勢の女性に集団の中に一人の白髪の少年の姿があり、何かをやらかしたのか一人のエルフに罵詈雑言を食らっていた……。
「何やってるんだよ、ベル……」
まさか、こんな場所で会うとは思わなかったエレンは、足元にいる黒猫と視線を交わしながら『行くか~』と独り言を呟き、重たい足を何とか動かしながら、ベルのいる元へと向かっていった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
エレンはアルテミスのように『動物達の声』は聞こえませんが、『動物に好かれやすい体質』になっており、大抵の言うことは聞いてくれます。
エレンの回復魔法は浄化の効果もありますので麝香の匂いは消えています。消臭や汚れ落としの効果があるので、ダンジョン探索の時についたモンスターの血を綺麗に落とせるので重宝しています。
エレン