聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか 作:フェイト・
「歓楽街!?娼館の帰りぃ!?さっきまで女の人を侍らせてっ、あ、あ、ああああああんなことやっ、そ、そ、そそそそそんなことをっ───いやぁああああああああああああああ!?」
「ち、違うんです!?これには本当に訳があってぇ!?」
「何が違うんですかぁ!?よく見れば貴方が持っていその魔石灯っ、極東の行灯じゃないですかぁ!紛れもなく遊郭の帰りですぅぅぅぅぅぅぅ!」
日が昇ってもない夜の『ダイダロス通り』で、
しかし、
事の発端は、ほんの数分前のこと。
エレンの助けによって、一時的ではあったがフリュネ達の追跡を免れたベルだったが、その後にアイシャと名乗るアマゾネスに見つかってしまい、何とか追っ手を撒くためにとある建物の中へと逃げ込み、そこで
最初はベルのことを『客』と勘違いをしてしまっていたようだが、ベルが事情を説明すると勘違いをしてしまったことのお詫びも兼ねて一時的に匿ってもらい、追手がいなくなる頃合いを見計らって、【歓楽街】から逃がしてもらったのだ。
それでも、外はまだ夜が明けていない状態だったので
最初こそは、『助かった~』と安堵したベルだったが、その後に体に染みついた『匂い』を指摘されたことで状況は一変し、安堵の表情から一気に真っ青な表情へと急降下。
さらに、【ロキ・ファミリア】と一緒に同行していた他派閥の妖精、フィルヴィスに『匂い』の正体を暴かれたことで、近くにいたレフィーヤの感情が大噴火を起こし、今に至るのである。
「お~い、ベル~。生きてるか~?」
『『『『『ん?』』』』』
ベルがレフィーヤからの猛烈な罵詈雑言を食らい、瀕死の重傷で地面に倒れこんでいると、遠くの方から少年の名を呼ぶ声が聞こえ、一同が声が聞こえた方に視線を向けた。
その声がした方向からは、ベルと同じく
「(……ん?)」
エレンがベルがいる【ロキ・ファミリア】の女性陣の元へ向かおうとすると、ふとっ、足を止めた。
「(……なんだ?この……視線?)」
エレンが足を止めたのは、得体の知れない『何か』を察知したからであった。それは『怒り』や『殺意』といったものではなく、なんというか、ドロドロとしたものというか……口ではうまく説明できない『何か』だった……。
「ニャ~♪(ほっぺたスリスリ)」
「(───ッ!!?なんだ、一気に寒気が……)」
さらに、エレンの肩に乗っている子猫1匹がエレンに頬擦りをすると、さらに得体の知れない『何か』を全身の肌で察知したエレンは冷や汗を流したが、もう片方の肩に乗っている子猫がそんなエレンの冷や汗をぺろりと舐めると、猛烈なオーラのような『何か』がエレンに襲い掛かった。
何だろう、生存本能のようものが『急いで逃げろ!」と緊急警報を鳴らしていたが、ベルを置いていくことができなかったエレンは、謎の覚悟を決めて、再び歩みを再開することにした。
「こんばんわ、アナキティさん。うちのベルがお世話になったようで」
「え、えぇ。こんばんわ、エレン。まぁ、お世話になったといっても、あまり大したことはしていないんだけど……」
沢山の猫達に囲まれながら歩いてきたエレンは一番近くにいたアナキティと軽い挨拶を交わしながら、奥の方で地面に倒れているベルに視線を向けたエレンだったが、『何があったんだ……』と呟きながら倒れているベルの元へと歩み寄っていった。
「おいベル、大丈夫か?」
「エ、エレンさん……」
「何があったのか知らんが、大丈夫か?瀕死じゃないか……」
「じ、実は……」
地面に倒れこんでいるベルの前に座り込んだエレンはベルに何があったのか尋ねてみると、どうやら、体に染みついた麝香の臭いを指摘され、ここにいる周りの人達に変な勘違いをされているという。
その話を聞いたエレンは、【ロキ・ファミリア】の女性陣の方に視線を向けて見ると、落ち着かない者や赤面している者、軽蔑している者、呆れている者など様々な表情をしていた。
「……ベル。お前は娼館で
「していません!」
「ヘスティア様に誓って?」
「はい!!」
エレンは軽い質問をベルに問いかけると、ベルは真剣な眼差しでエレンの質問に答える。主神のであるヘスティアに名に誓ってまでこう言っているので、嘘ではないのは確か……ていうか、ベルは嘘がつけない性格なのはエレンは知ってはいるが、誤解を解くために、エレンはわざとこのような確認作業を行っているのだ。
だが、このやり取りを見ていた【ロキ・ファミリア】の女性陣の様子に変化が起こった。最初こそはベルが娼館で女遊びをしていたと思っていた彼女達だったが、主神に名に誓って行っていない!と断言する少年の姿に『誤解だったんじゃ……』と思い始めていると、一人の妖精が反論の声を上げた。
「ちょっと待ってください!それなら、どうしてこの万年発情兎から麝香の臭いがするんですか!?こんなに麝香の臭いが染み付くんなんて、それこそ抱き合ったりとかしないと付きませんよねぇ!?」
ベルとエレンのやり取りを聞いていたレフィーヤが、妖精特有の細長い耳を真っ赤にさせながら、ベルの言い分に食らいついてきた。確かに、いくら香りが強い麝香であっても、簡単に体に染みつくものじゃない。
そして、レフィーヤの言い分を聞いた周りの女性達も『た、確かに……』と再びベルに対する疑惑が浮上すると、エレンはベルにはぐれた後のことについて尋ねた。
「ベル。自分達とはぐれた後、何があった?」
「…………僕は、エレンさん達とはぐれちゃった後……必死になって辺りを探し回ったんですけど、エレンさん達を見つけることができなくて───そしたら」
「そしたら?」
「……その、アマゾネスの娼婦達に、
「……」
「……僕、必死に抵抗したんですけど、向こうは『
エレンの質問にベルは自身の身に起きた出来事を、何とか言葉に変換しながら説明を続けた。如何やら、エレン達とはぐれてしまった後に、
ベルの体についている麝香の臭いは誘拐したアマゾネスの娼婦達がつけていた臭いだったらしい。そんなベルの説明を聞いた女性陣の視線は
「えっ!?大丈夫だったの、アルゴノゥト君!?
ベルの説明を近くで聞いていたティオナが
「だ、大丈夫、でしたけど……」
「「けど……?」」
「……女の人怖い女の人怖い女の人怖いっ、アマゾネス怖いアマゾネス怖い蛙怖いぃぃ……!!」
エレンとティオナの問い返しに、ベルは自身の体を抱きガタガタと震え始めた。ベルの深紅の瞳には光が消えており、最終的には『蛙怖いぃ』としか連呼しまくっており、その異常な様子に女性陣は思わず一歩後退ってしまった。
女性陣は再び
「え~。見てもらったら分かる通り、ベルは娼館で女遊びはやっていませんので」
『『『『『あ、はい』』』』』
ベルに代わってエレンがベルの無実を証明すると、【ロキ・ファミリア】の女性陣全員は首を縦に振って、ベルの無実を承認した。一方のベルはというと、子猫達による
「……いつの間に」
「───もふもふ♪」
「───え、え~と、アイズさん……?」
ベルの触り心地のいい白い髪を優しく撫でているアイズ。頭を撫でられていたベルはというと、憧れの人物に頭を撫でられるのがよっぽ嬉しかったのか、絶望したかのような表情がにやけ顔へと変貌しており、その光景を目にした一人の若い妖精の少女がドス黒いオーラを発していた。
「全く、ついさっきまで怯えまくっていたのに───ん?どうした?」
「ニャー!」
胃もたれするかのような光景をエレンが目にしていると、ベルに近くにいた一匹の子猫がエレンの元へとやってきた。口には何やら赤い液体が入った容器を加えており、エレンが子猫が加えているものを回収しようと子猫を抱きかかえると、慌てた様子でベルがエレンに声をかけてきた。
「エ、エレンさん……その、それは、僕ので……」
「ん?これはベルのだったのか……?」
「ニャー♪」
子猫を抱きかかえたエレンの目の前に物凄い速さでやってきたベルは何とか子猫から赤い液体が入った容器を回収しようとするが、中々、子猫は容器を放してくれなかったが、エレンの一言で子猫から無事に容器を回収できたエレンは『あ、あははは……』と愛想笑いを浮かべながら容器を腰の腰巾着にしまい込もうとすると、レフィーヤがガシッ!とベルの腕を掴み取った。
「……それ、一体何ですか?」
「い、いやっ、これはっ……!?僕のじゃないというか預かっいるというか押し付けられたというかっ、本当にどうしようもない理由があって……!」
手の中にある瓶を必死に腰巾着にしまい込もうとするベルを必死に阻止するレフィーヤの攻防戦が一瞬で繰り広げられた。仲がいいのか悪いのかよくわからない二人のやり取りに近くにいたエレンとアイズの二人がどうしたもんかと悩んでいると、レフィーヤの近くにいたフィルヴィスがぼそっと呟いた。
「精力剤……」
フィルヴィスが投下した爆弾が炸裂し、辺りがシーンと静まり返る。
ベルの顔は真っ青になり、それとは対照的にレフィーヤの顔は真っ赤になった。一部始終を見ていたエレンやアイズ、ティオナ達が表情が固まり、爆弾を投下したフィルヴィスは絶対零度の眼差しでベルを見ていた。
「せっ、精力剤!?何でそんなものを持っているんですかぁ!?全部誤解だったんじゃなかったんですか!?」
「違います違います違います!? いえ違わないんですけど、とにかく違うんですぅ!?」
「おいベル。パニックになるあまり言葉がおかしくなっているぞ?」
「と・に・か・く! それ、ちょっと見せてください!!」
「待ってっ、待ってくださいお願いしますレフィーヤさぁん!?」
泣き叫ぶベルに容赦なく薬を取り上げようとするレフィーヤ。それをすぐ近くにいたアイズはどうしていいか分からずおろおろとし、エレンに至ってはベルが精力剤なんて代物を持っていることに驚きつつも、この状況をどう納めたらいいか分からず、頭を悩ましていた。すると───
「「あ」」
ベルとレフィーヤの間抜けな声とともに、ベルの手の中から容器がすっぽり抜け落ち、回転しながら宙へと舞って行った。
回転する容器は、綺麗な円を描きながらベル達の所からどんどん遠ざかっていき、一人の
『『『『『あ───』』』』』
ベルとレフィーヤが顔面蒼白となる。近くにいたアイズやエレンは言葉を失い、フィルヴィスを初めとしたエルフ達は凍りつき、ティオネやティオナ達の口は半開き状態になっていた。
「………………」
そして、精力剤を頭から被ってしまったハイエルフはというと、美しい翡翠色の髪が、白くて柔らかそうな肌が、女神に負けない美しさを持つ顔が、赤い溶液が伝っていき、やがて、【歓楽街】に蔓延しているものと同じ独特の異臭が蔓延し始めていた……。
「……ふ、ふふふ」
間違っても妖精が、しかも、王族妖精が放ってはいけない異臭。そのハイエルフの翡翠の瞳には光はなく、果てしないドス黒い闇と、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
原作ではレフィーヤが精力剤を被っていますが、今作ではリヴェリア様が精力剤の犠牲者になっています。普通ならリヴェリアが持っている『
エレン
猫などによく舐められているが、その理由はエレンからおいしい