聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

48 / 48
48話 判決、有罪(ギルティ)

「歓楽街!?娼館の帰りぃ!?さっきまで女の人を侍らせてっ、あ、あ、ああああああんなことやっ、そ、そ、そそそそそんなことをっ───いやぁああああああああああああああ!?」

 

「ち、違うんです!?これには本当に訳があってぇ!?」

 

「何が違うんですかぁ!?よく見れば貴方が持っていその魔石灯っ、極東の行灯じゃないですかぁ!紛れもなく遊郭の帰りですぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

 

 日が昇ってもない夜の『ダイダロス通り』で、妖精の少女(レフィーヤ)の怒りじみた大声が響き渡り、近くにいた彼女の仲間達は、とっさに耳を塞ぎ、一匹の白兎(ベル)は必死に弁明を行うとしていた。

 

 しかし、白兎(ベル)の弁明は聞き入れてもらえず、妖精の少女(レフィーヤ)の糾弾は続き、挙句の果てには『女たらし』、『好色漢』、『年中発情兎』などと言われ、その度に白兎(ベル)には謎のダメージは入り、最終的には口から吐血してその場に倒れ込んでしまった。

 

 事の発端は、ほんの数分前のこと。

 

 エレンの助けによって、一時的ではあったがフリュネ達の追跡を免れたベルだったが、その後にアイシャと名乗るアマゾネスに見つかってしまい、何とか追っ手を撒くためにとある建物の中へと逃げ込み、そこで()()()()()とばたりと出会ってしまった。

 

 最初はベルのことを『客』と勘違いをしてしまっていたようだが、ベルが事情を説明すると勘違いをしてしまったことのお詫びも兼ねて一時的に匿ってもらい、追手がいなくなる頃合いを見計らって、【歓楽街】から逃がしてもらったのだ。

 

 それでも、外はまだ夜が明けていない状態だったので狐人(ルナール)の少女から行灯をもらったベルだったが、エレンと同様に『ダイダロス通り』で迷子になってしまっていた所に、【ロキ・ファミリア】の女性陣と偶然遭遇。

 

 最初こそは、『助かった~』と安堵したベルだったが、その後に体に染みついた『匂い』を指摘されたことで状況は一変し、安堵の表情から一気に真っ青な表情へと急降下。

 

 さらに、【ロキ・ファミリア】と一緒に同行していた他派閥の妖精、フィルヴィスに『匂い』の正体を暴かれたことで、近くにいたレフィーヤの感情が大噴火を起こし、今に至るのである。

 

 

「お~い、ベル~。生きてるか~?」

 

『『『『『ん?』』』』』

 

 

 ベルがレフィーヤからの猛烈な罵詈雑言を食らい、瀕死の重傷で地面に倒れこんでいると、遠くの方から少年の名を呼ぶ声が聞こえ、一同が声が聞こえた方に視線を向けた。

 

 その声がした方向からは、ベルと同じく戦争遊戯(ウォーゲーム)で様々な結果を残した青年の姿───と、その青年の周りを囲むように歩いてくる猫達の姿。そのあまりにも異様というか、あまり見たことがない光景に、女性陣は『ぽか~ん』とした表情になってしまっていた。

 

 

「(……ん?)」

 

 

 エレンがベルがいる【ロキ・ファミリア】の女性陣の元へ向かおうとすると、ふとっ、足を止めた。

 

 

「(……なんだ?この……視線?)」

 

 

 エレンが足を止めたのは、得体の知れない『何か』を察知したからであった。それは『怒り』や『殺意』といったものではなく、なんというか、ドロドロとしたものというか……口ではうまく説明できない『何か』だった……。

 

 

「ニャ~♪(ほっぺたスリスリ)」

 

「(───ッ!!?なんだ、一気に寒気が……)」

 

 

 さらに、エレンの肩に乗っている子猫1匹がエレンに頬擦りをすると、さらに得体の知れない『何か』を全身の肌で察知したエレンは冷や汗を流したが、もう片方の肩に乗っている子猫がそんなエレンの冷や汗をぺろりと舐めると、猛烈なオーラのような『何か』がエレンに襲い掛かった。

 

 何だろう、生存本能のようものが『急いで逃げろ!」と緊急警報を鳴らしていたが、ベルを置いていくことができなかったエレンは、謎の覚悟を決めて、再び歩みを再開することにした。

 

 

「こんばんわ、アナキティさん。うちのベルがお世話になったようで」

 

「え、えぇ。こんばんわ、エレン。まぁ、お世話になったといっても、あまり大したことはしていないんだけど……」

 

 

 沢山の猫達に囲まれながら歩いてきたエレンは一番近くにいたアナキティと軽い挨拶を交わしながら、奥の方で地面に倒れているベルに視線を向けたエレンだったが、『何があったんだ……』と呟きながら倒れているベルの元へと歩み寄っていった。

 

 

「おいベル、大丈夫か?」

 

「エ、エレンさん……」

 

「何があったのか知らんが、大丈夫か?瀕死じゃないか……」

 

「じ、実は……」

 

 

 地面に倒れこんでいるベルの前に座り込んだエレンはベルに何があったのか尋ねてみると、どうやら、体に染みついた麝香の臭いを指摘され、ここにいる周りの人達に変な勘違いをされているという。

 

 その話を聞いたエレンは、【ロキ・ファミリア】の女性陣の方に視線を向けて見ると、落ち着かない者や赤面している者、軽蔑している者、呆れている者など様々な表情をしていた。

 

 

「……ベル。お前は娼館で()()()()()()をしたのか?」

 

「していません!」

 

「ヘスティア様に誓って?」

 

「はい!!」

 

 

 エレンは軽い質問をベルに問いかけると、ベルは真剣な眼差しでエレンの質問に答える。主神のであるヘスティアに名に誓ってまでこう言っているので、嘘ではないのは確か……ていうか、ベルは嘘がつけない性格なのはエレンは知ってはいるが、誤解を解くために、エレンはわざとこのような確認作業を行っているのだ。

 

 だが、このやり取りを見ていた【ロキ・ファミリア】の女性陣の様子に変化が起こった。最初こそはベルが娼館で女遊びをしていたと思っていた彼女達だったが、主神に名に誓って行っていない!と断言する少年の姿に『誤解だったんじゃ……』と思い始めていると、一人の妖精が反論の声を上げた。

 

 

「ちょっと待ってください!それなら、どうしてこの万年発情兎から麝香の臭いがするんですか!?こんなに麝香の臭いが染み付くんなんて、それこそ抱き合ったりとかしないと付きませんよねぇ!?」

 

 

 ベルとエレンのやり取りを聞いていたレフィーヤが、妖精特有の細長い耳を真っ赤にさせながら、ベルの言い分に食らいついてきた。確かに、いくら香りが強い麝香であっても、簡単に体に染みつくものじゃない。

 

 そして、レフィーヤの言い分を聞いた周りの女性達も『た、確かに……』と再びベルに対する疑惑が浮上すると、エレンはベルにはぐれた後のことについて尋ねた。

 

 

「ベル。自分達とはぐれた後、何があった?」

 

「…………僕は、エレンさん達とはぐれちゃった後……必死になって辺りを探し回ったんですけど、エレンさん達を見つけることができなくて───そしたら」

 

「そしたら?」

 

「……その、アマゾネスの娼婦達に、()()されちゃて……」

 

「……」

 

「……僕、必死に抵抗したんですけど、向こうは『恩恵(ファルナ)』を刻まれた娼婦だったようで、そのまま娼館に無理矢理連れていかれちゃって……」

 

 

 エレンの質問にベルは自身の身に起きた出来事を、何とか言葉に変換しながら説明を続けた。如何やら、エレン達とはぐれてしまった後に、戦争遊戯(ウォー・ゲーム)で一躍有名になってしまった影響で、アマゾネスの娼婦達に目をつけられてしまったようで、誘拐されていたらしい。

 

 ベルの体についている麝香の臭いは誘拐したアマゾネスの娼婦達がつけていた臭いだったらしい。そんなベルの説明を聞いた女性陣の視線は白兎(ベル)から一人のアマゾネス(ティオネ)に向けられると、『な、何よ!』とティオネの抗議の声が上がった。

 

 

「えっ!?大丈夫だったの、アルゴノゥト君!? ()()()()()()()()?」

 

 

 ベルの説明を近くで聞いていたティオナが白兎(ベル)の操が無事なのかどうか確認を始めた。そして、ティオナの発言を聞いた周りの女性陣の顔が一気に真っ赤に染まり上がっていたが、アイズはティオナの発言の内容が理解できなかったのか、首を傾げていた。

 

 

「だ、大丈夫、でしたけど……」

 

「「けど……?」」

 

「……女の人怖い女の人怖い女の人怖いっ、アマゾネス怖いアマゾネス怖い蛙怖いぃぃ……!!」

 

 

 エレンとティオナの問い返しに、ベルは自身の体を抱きガタガタと震え始めた。ベルの深紅の瞳には光が消えており、最終的には『蛙怖いぃ』としか連呼しまくっており、その異常な様子に女性陣は思わず一歩後退ってしまった。

 

 女性陣は再び一人のアマゾネス(ティオネ)に視線を向けると、彼女は『だから何よ!?』と声を上げ、エレンの両腕に抱きかかえられていた子猫三匹はベルの元へと駆け寄り、慰めるように震えているベルに体を擦り付けていた。

 

 

「え~。見てもらったら分かる通り、ベルは娼館で女遊びはやっていませんので」

 

『『『『『あ、はい』』』』』

 

 

 ベルに代わってエレンがベルの無実を証明すると、【ロキ・ファミリア】の女性陣全員は首を縦に振って、ベルの無実を承認した。一方のベルはというと、子猫達によるアニマルセラピー(治療)によってだいぶ回復はしたようだったが、なぜか頬を膨らませたアイズがベルの元へと駆け寄り、ベルの頭を撫でている光景が広がっていた。

 

 

「……いつの間に」

 

「───もふもふ♪」

 

「───え、え~と、アイズさん……?」

 

 

 ベルの触り心地のいい白い髪を優しく撫でているアイズ。頭を撫でられていたベルはというと、憧れの人物に頭を撫でられるのがよっぽ嬉しかったのか、絶望したかのような表情がにやけ顔へと変貌しており、その光景を目にした一人の若い妖精の少女がドス黒いオーラを発していた。

 

 

「全く、ついさっきまで怯えまくっていたのに───ん?どうした?」

 

「ニャー!」

 

 

 胃もたれするかのような光景をエレンが目にしていると、ベルに近くにいた一匹の子猫がエレンの元へとやってきた。口には何やら赤い液体が入った容器を加えており、エレンが子猫が加えているものを回収しようと子猫を抱きかかえると、慌てた様子でベルがエレンに声をかけてきた。

 

 

「エ、エレンさん……その、それは、僕ので……」

 

「ん?これはベルのだったのか……?」

 

「ニャー♪」

 

 

 子猫を抱きかかえたエレンの目の前に物凄い速さでやってきたベルは何とか子猫から赤い液体が入った容器を回収しようとするが、中々、子猫は容器を放してくれなかったが、エレンの一言で子猫から無事に容器を回収できたエレンは『あ、あははは……』と愛想笑いを浮かべながら容器を腰の腰巾着にしまい込もうとすると、レフィーヤがガシッ!とベルの腕を掴み取った。

 

 

「……それ、一体何ですか?」

 

「い、いやっ、これはっ……!?僕のじゃないというか預かっいるというか押し付けられたというかっ、本当にどうしようもない理由があって……!」

 

 

 手の中にある瓶を必死に腰巾着にしまい込もうとするベルを必死に阻止するレフィーヤの攻防戦が一瞬で繰り広げられた。仲がいいのか悪いのかよくわからない二人のやり取りに近くにいたエレンとアイズの二人がどうしたもんかと悩んでいると、レフィーヤの近くにいたフィルヴィスがぼそっと呟いた。

 

 

「精力剤……」

 

 

 フィルヴィスが投下した爆弾が炸裂し、辺りがシーンと静まり返る。

 

 ベルの顔は真っ青になり、それとは対照的にレフィーヤの顔は真っ赤になった。一部始終を見ていたエレンやアイズ、ティオナ達が表情が固まり、爆弾を投下したフィルヴィスは絶対零度の眼差しでベルを見ていた。

 

 

「せっ、精力剤!?何でそんなものを持っているんですかぁ!?全部誤解だったんじゃなかったんですか!?」

 

「違います違います違います!? いえ違わないんですけど、とにかく違うんですぅ!?」

 

「おいベル。パニックになるあまり言葉がおかしくなっているぞ?」

 

「と・に・か・く! それ、ちょっと見せてください!!」

 

「待ってっ、待ってくださいお願いしますレフィーヤさぁん!?」

 

 

 泣き叫ぶベルに容赦なく薬を取り上げようとするレフィーヤ。それをすぐ近くにいたアイズはどうしていいか分からずおろおろとし、エレンに至ってはベルが精力剤なんて代物を持っていることに驚きつつも、この状況をどう納めたらいいか分からず、頭を悩ましていた。すると───

 

 

「「あ」」

 

 ベルとレフィーヤの間抜けな声とともに、ベルの手の中から容器がすっぽり抜け落ち、回転しながら宙へと舞って行った。

 

 回転する容器は、綺麗な円を描きながらベル達の所からどんどん遠ざかっていき、一人の()()()()()の頭へと着弾。さらに、容器は着弾した時の衝撃で綺麗に割れてしまい、中に入っていた赤い液体は容赦なくハイエルフの頭を濡らした……。

 

 

『『『『『あ───』』』』』

 

 

 ベルとレフィーヤが顔面蒼白となる。近くにいたアイズやエレンは言葉を失い、フィルヴィスを初めとしたエルフ達は凍りつき、ティオネやティオナ達の口は半開き状態になっていた。

 

 

「………………」

 

 

 そして、精力剤を頭から被ってしまったハイエルフはというと、美しい翡翠色の髪が、白くて柔らかそうな肌が、女神に負けない美しさを持つ顔が、赤い溶液が伝っていき、やがて、【歓楽街】に蔓延しているものと同じ独特の異臭が蔓延し始めていた……。

 

 

「……ふ、ふふふ」

 

 

 間違っても妖精が、しかも、王族妖精が放ってはいけない異臭。そのハイエルフの翡翠の瞳には光はなく、果てしないドス黒い闇と、()()()()()の姿が映し出されていた。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

原作ではレフィーヤが精力剤を被っていますが、今作ではリヴェリア様が精力剤の犠牲者になっています。普通ならリヴェリアが持っている『耐異常(アビリティ)』で無効化できますが、()()()()()で諸に精力剤の影響を受けています。


 エレン
 猫などによく舐められているが、その理由はエレンからおいしい出汁(あせ)が出ているからなのだが、この時の彼は知らない。そして、リヴェリアが精力剤の影響を受けている原因はこの出汁が原因……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

完成しているのは間違っているだろうか(作者:新人作家)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

レベルとアビリティ以外が最初から完成している状態。


総合評価:4618/評価:7.05/連載:12話/更新日時:2026年06月28日(日) 10:10 小説情報

ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。(作者:一般通過社会人)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ダンジョンで5年過ごした主人公がやらかす、ドタバタコメディ!(なお周りは曇る模様。)


総合評価:2474/評価:6.92/連載:37話/更新日時:2026年07月28日(火) 18:16 小説情報

草喰みの白兎(作者:リヴィドーカリェー)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 これは、一人の少年の物語。▼ いつまでも続くと思われた静穏の時に訪れた、少年の心を深く傷つける出来事。▼ それが嫌で、悲しくて・・・許せなくて。▼ ───少年は、癒しをもたらす者となった。▼ ※この作品は白兎の『家族』が『絶対悪』を選んでいないこと、またオリキャラさんの影響もあって、かなり『暗黒期』の歴史、及びキャラの人生が変わっています。▼ 特にダイスの…


総合評価:1985/評価:8.79/連載:61話/更新日時:2026年07月29日(水) 11:15 小説情報

冒険します。冒険者なので。(作者:POTROT)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ギルド「冒険すんな! でもランクアップはして♡」▼主人公「冒険者なんで冒険します。ガンガン死地に突っ込んでランクアップします」▼色々な人達「キレそう」


総合評価:26224/評価:8.53/連載:60話/更新日時:2026年07月23日(木) 21:01 小説情報

兎の群れ√ 出会いの果ての未来(作者:サイセンサイ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

英雄となったベル・クラネル▼その後の続く人生で大人となり親となった▼修羅場はあれどハーレムの主となった▼それを得て少しだけ変わった彼と彼の妻達と子供達が今もオラリオで暮らしている


総合評価:1224/評価:8.84/連載:56話/更新日時:2026年07月28日(火) 09:36 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>