聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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54話 【妖精の王女(イゾルデ)】

「う~ん。冒険者依頼(クエスト)で食料庫(パントリー)にある石英(クオーツ)を採取しに来たのはいいけど───モンスター多くね?」

 

「そりゃぁ、食料庫(パントリー)だからなぁ。腹を空かせたモンスターがやってくる場所なんだ。で、そんな場所に俺達は乗り込んでいる訳なんだが───確かに多いな」

 

 

 エレン達は、とあ(・)る(・)商(・)会(・)の冒険者依頼(クエスト)のため、14階層に存在するモンスター達に恵みを与える領域───食料庫(パントリー)にやってきていた。何でもアラベラ商会という迷宮都市(オラリオ)の経済の一端を支える巨大商会から直接冒険者依頼(クエスト)を持ち掛けられたのがきっかけである。

 

 それは、『14階層の指定された場所にある石英(クオーツ)の採取』。採取系の冒険者依頼(クエスト)は珍しくもないのだが、この冒険者依頼(クエスト)の報酬はなんと1(・)0(・)0(・)万(・)ヴ(・)ァ(・)リ(・)ス(・)。この報酬金額は少なくとも『下層』クラスの希少素材(レア・アイテム)などが該当する金額なので、言ってしまえば美味しすぎる冒険者依頼(クエスト)である。

 

 正直、美味しすぎる話なので冒険者依頼(クエスト)を受けるか迷ったエレン達だったが、『身請け』の目標金額確保のため、この冒険者依頼(クエスト)を受けることにした。

 

 そして、冒険者依頼(クエスト)受託の連絡確認や、探索の為の準備のため丸一日を費やしたエレン達は迷宮(ダンジョン)へと潜り、指定された場所へと辿り着いた所だった。パーティはLv.3が一人とLv.2が三人いることもあってか『上層』を速やかに突破することができ、『中層』でも特に苦戦することなく、食料庫(パントリー)へと辿り着くことができた。

 

 

 

 だったのだが……。

 

 

 

「ガウゥゥゥゥ……!!」

 

「……あれって『ライガーファング』だよね?確か、15階層以下から出現するモンスターの」

 

「……はい。猛牛(ミノタウロス)と同じ強さを持っています。力ではミノタウロスの方が上ですが、素早さはライガーファングが上です」

 

 

 目的地の食料庫(パントリー)に到着することができたエレン達だったが、食料庫(パントリー)にはヘルハウンドやアルミラージなどが大量にいたが───その中でも特に目立っていたのは大型のトラのモンスター───『ライガーファング』の大群である。

 

 

「異常事態(イレギュラー)……なんだよね?」

 

「そう思ってもらって間違いないかと……そして、お目当ての品はあのモンスターの大群の向こう側です」

 

 

 ベルの言葉を拾ったリリはモンスターの大群の向こう側を指をさした。そこには冒険者依頼(クエスト)の目標物である石英(クオーツ)が存在している。石英(クオーツ)を確保する為には、目の前のモンスターの大群を突破する必要がある。

 

 

「【火影(ほかげ)】で大半のモンスターを焼き払うから、その間に突入するぞ!」

 

「はい!」

 

 

 【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】の内側に収納されている魔剣【火影(ほかげ)】を引き抜いたエレンは回復魔法の炎を纏わせることで威力を底上げさせた魔剣をモンスターの大群へと解き放ち、開戦の狼煙をあげた。

 

 

 

***

 

 

 

「開いたわね、『扉』」

 

「十中八九、罠だろう。それでも行くしかあるまい。敵側の狙いは『精霊の分身』の地上召喚だ。時間をかけてしまえば、あの厄介な怪物が都市(オラリオ)を火の海にするぞ」

 

「だが待て、輝夜。この先は未到達領域と何ら変わらない領域だ!ここは一度引いて、シャクティやアーディ達にも協力を───」

 

 

 場所は変わって、ダイダロス通りの地下にある旧地下水道───その隠し通路の奥にある最硬金属(オリハルコン)が用いられた『扉』の前には【ロキ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】のメンバーが勢ぞろいしていた。

 

 都市(オラリオ)で名をはせた【ロキ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】がこのような場所になってきた理由は敵の本拠地と思われる場所を発見───正確にはそこに続くと思われる『扉』を見つけたのだが、『不壊属性(デュランダル)』の武具を造る際に欠かせない最硬精製金属(マスター・インゴット)。その素材を用いられた『扉』が中への侵入を拒んでいた。

 

 

「───所で、フィン。あの盾野郎の所に行っていたんだろう?何か情報は掴めなかったのか?」

 

『『『盾野郎?』』』

 

 

ベートの言葉に正義の戦乙女達は首を傾げた。実は先日、エレン達が冒険者依頼(クエスト)の為の準備をしている時に、【ロキ・ファミリア】の団長フィン・ディムナとその主神であるロキが『竈火の館』を訪れてきていたのだ。

 

 

 

***

 

 

 

「やぁ、いきなりの訪問すまないねぇ、エレン。ちょっと君に聞きたいことがあってね」

 

「聞きたいこと……ですか?」

 

「おうドチビ!都市最強派閥の主神様が来てやったでぇ。ほれ、さっさと茶の一つでも出さんかい」

 

「サポーターくーん。都市最強派閥の主神様に“その辺の野草と塩のスープ”を出してくれ」

 

「客になんちゅうもんを出そうとしとるんや、クソチビィ!!」

 

「いきなり乗り込んできた君には言われたくないねぇ!ヘル雌(メス)におっぱいで負けた自称女神(笑)」

 

「キィィィィィィィィィィィィィィィィィッッ!!!!」

 

「「…………」」

 

 

 場所は『竈火の館』の応接室。ロキとヘスティアが取っ組み合いの喧嘩を引き起こしており、同じ室内にいるフィンとエレンは主神の恥ずかしい醜態を晒している状況に苦笑いを浮かべていると、同席していたアルテミスが話を切り出した。

 

 

「それで、ロキの眷属(こ)。エレンに聞きたいことがあるそうだが……」

 

「───そのことなんだが……神アルテミス。どうして貴方がここに?」

 

「あぁ~。少しの間、ヘスティア達の所に住まわせてもらっている所なんだ」

 

「いや、そういう意味じゃないんだけど……」

 

「?」

 

「えっと、フィンさんはどうして自分と同席しているのかを聞いているんだと思います。アルテミス様」

 

「? 私はお前の創造神(ははおや)だぞ?ならこの場に同席するのは当然だぞ?」

 

「「…………」」

 

 

 至極当然なことのように答えるアルテミスにフィンとエレンは何とも言えないような表情を浮かべる。確かに『神』と『精霊』の関係性でいえば『親子関係』という言葉が最もしっくりくるが、何の事情も知らない部外者(フィン)からしてみれば『何を言っているんだ、この神は?』という感じになっているのだ。

 

 

「あと、ヘスティアには『お母様』呼びをしていると聞いたぞ?私にはしてくれないのか?」

 

「えっ?」

 

「……してくれないのか?───まさかっ!?これが噂に聞く『反抗期』というやつなのか……?」

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!違いますっ!違いますからぁ!!だからそんなに悲しそうな顔をしないでくださいッ!!」

 

「…………」

 

 

 アルテミスは風の噂で聞いたことがあった『反抗期』というものが訪れてしまったのかと悲しそうなぁ───というか、ちょっと泣きそうな表情を浮かべていた。エレンはそんなアルテミスを必死に宥めるが中々、アルテミスの機嫌は直ってはくれず、最終的には客人(フィン)の目の前で「お母(アルテミス)様』呼びをすること事でようやく機嫌を直してくれた。

 

 

「───ごほん。僕達が君を尋ねに来た理由は旧地下水道で発見された『扉』について話を聞きたくてね」

 

「『扉』……ですか?」

 

「少し……ダイダロス通りの調査をしている時に発見されたものなんだけど……。その扉のすぐ近くで君の匂いが残っていたことがわかったね」

 

「…………ダイダロス通りの地下水道……扉……」

 

「……その様子だと、何か知っているようだね」

 

「……」

 

 

 フィンは柔らかな笑みを浮かべたままエレンに問いを投げかけると同時に、ヘスティアと頬の引っ張り合いをしているロキの方を視線を向けて合図(アイコンタクト)を送った。今回ロキが同席している理由は『噓発見器』としての役割である。

 

 “下界の住人は神には嘘をつけない”

 

 これは神本人が直接話をしなくてその場に居合わせることでも、その効力を十分に発揮させることができる。フィンから合図(アイコンタクト)を受けたロキはヘスティアとの喧嘩を続けながらエレンの方に意識を向けたが、狩猟を司る女神(アルテミス)の目はそんな視線にまっすぐに気が付いた。

 

 

「(気をつけろ、エレン。ロキが意識をお前に移している)」

 

「(えっ?)」

 

「(恐らく、ロキがこの場にやってきたのはお前が嘘をついていないか確かめるためだ)」

 

「(確かめる……?何のために……)」

 

「(そこまでは分からない。だが、不用意な発言は控えたほうがいい。答えずらいことがあれば『黙秘』しろ。それが唯一、下界の住人(こども)が取れる神への対抗策だ)」

 

「(……)」

 

 

 フィンやロキに聞こえないようにアルテミスは口元手で隠し、エレンに耳打ちをした。基本的に神が下界の住人の嘘を見破れるには、下(・)界(・)の(・)住(・)人(・)の(・)発(・)言(・)を(・)聞(・)く(・)必(・)要(・)が(・)あ(・)る(・)。なお、これにはごく稀に例外も存在するが、大抵の神は向こう側の声を聞かない限り嘘を吐いているかの判別をつけることはできない。

 

 そこで、下界の住人が取れる神への対抗策は『黙秘』。発言さえしなければ少なくとも嘘をついているのかの判別をすることができない。

 

 

 

 そして、アルテミスから助言をもらったエレンは少し考えこんだ後───

 

 

 

***

 

 

 

「───『何も知らない』って言っていたよ」

 

「んなわけねぇだろう。じゃあなんで此処に盾野郎の匂いが残っていやがった」

 

「何でも、『絶対悪(エレン)抹殺部隊』の追跡から逃れる為に旧地下水路に逃げ込んだ時に偶然見つけたようでね。追っ手を撒くために少しの間、この場所に留まっていたみたいだよ」

 

『『『…………』』』

 

 

 フィンがエレンから聞いた話の内容をこの場にいる全員に共有した。何ならフィンの口から『絶対悪(エレン)抹殺部隊』と言う単語が出た瞬間、王族妖精(リヴェリア)以外の妖精(エルフ)全員は顔を背けて冷や汗を流していた。

 

 

「あの時のアリシア達は怖かったわ~。ラウルなんてアリシア達の豹変ぶりに腰を抜かしていたわね」

 

「アキ!?それは言わない約束っすッ!!」

 

「てか、聞いた話なんだが……あの【怖いもの知らず(ドレッドノート)】。Lv.1の状態で【黒妖の魔剣(ダインスレイブ)】の一撃を躱したらしいぜ」

 

「えっ?私は【白妖の魔杖(ヒルドスレイブ)】の魔砲(まほう)の一撃を耐えたって聞いたんだけど……」

 

『『『本当に何なんだッ!?アイツはぁ!!!』』』

 

 

 出るわ出るわ『エレン・エウロギア』に対する【ロキ・ファミリア】の団員達による感想。

 

 【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる前から『あれ?あいつ何か変じゃね?何か毎回とんでもない事やらかしていないか?』と思っていた者達が大勢いたが、ここに来て一気にその数が膨れ上がってきていた。

 

 何なら、本当に治療師(ヒーラー)なのか疑い始める者もいたが、エレンがこんな規格外な性能を秘めている理由が、半精霊(ハーフ・スピリット)という精霊の側面を持っているのが原因なのだが、その理由を知っているのは、この場では【アストレア・ファミリア】の主神とその眷属達だけである。

 

 

「ほいほい。どっかのドチビの眷属(こ)が凄いっていう話はおしまいやー!こっからウチの眷属(こ)の方が凄いって話やでぇー!!」

 

「何かしら?何か良いことがあったの?ロキ」

 

「にしし!聞いて驚けぇ~!なんと!ななななんとぉ~~~~!」

 

『『『ゴクリッ』』』

 

「ウチのリヴェリアママがL(・)v(・).(・)7(・)に(・)ラ(・)ン(・)ク(・)ア(・)ッ(・)プ(・)しました~~~~~~~!!!」

 

『『『おぉ~~~~~~~~~!!!』』』

 

 

 ロキの口からまさかのリヴェリアのLv.7へのランクアップの報告に、正義の戦乙女達と道化の妖精達は驚きの声をあげた。団長であるフィンや前衛のガレスを差し置いてのLv.7への到達。

 

 なお、道化の眷属達は、本拠(ホーム)で『リヴェリアママLv.7キタァァァァァァァァ!!』とアイズの時と同様の大声が本拠(ホーム)全体へと響き渡っていたので、全ての団員達が把握していた事なのだが、アリシアやレフィーヤを含めた全ての妖精(エルフ)達は大きな喝采を挙げていた。

 

 

「さらにぃ~。リヴェリアには新しい【スキル】も発現して『穢れた精霊(デミ・スピリット)』対策も万全やー!───てか、最早特攻みたいな内容過ぎて寧ろ可哀そうなまである内容やなぁ~」

 

『『『おぉ~~~~~~~~~!!!』』』

 

 

 さらに、リヴェリアに新しい【スキル】が発現したとの情報に再び喝采の声が上がった。だが、流石に喋り過ぎだということで、Lv.7になったばかりのリヴェリアの拳がロキの頭に叩き込まれたことでロキは撃沈。リヴェリアのLv.7初めての犠牲者となった。

 

 

「(確かに……この状況で【ランクアップ】したのは驚いたが……あの【スキル】の内容は……)」

 

 

 ロキに拳を叩き込んだリヴェリアは、ロキに貰った【ステイタス】の内容が写された羊用紙を取り出し、再びその効果内容に目を通し始めた。

 

 

 

【妖精の王女(イゾルデ)】

 

・精霊特攻状態を付与

 

・発展アビリティ『精癒』による回復力の向上。精神力(マインド)の回復時、一定時間全能力値(ステイタス)を上昇。

 

・一定範囲内に『トリスタン』が存在する場合、経験値(エクセリア)の獲得量が上昇。

 

 

 

「(……精霊特攻状態?初めて聞く単語だ。59階層の時の戦闘がここにきて発現したのか?)」

 

 

 【スキル】に記載された聞き慣れない単語。それに、このタイミングでの【ランクアップ】に疑問を抱くリヴェリアだったが無理もない───だって、今回の【ランクアップ】にはエ(・)レ(・)ン(・)が(・)大(・)き(・)く(・)関(・)わ(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)ということを、彼女が気づいていないからである。

 

 これは、エレンが大精霊の半分の側面を持っていることが原因で、大精霊の強さは階層主級以上に相当されており、例えたら『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が該当する。

 

 そして、半分とはいえ、大精霊の側面を持っているエレンを単(・)独(・)で(・)メ(・)チ(・)ャ(・)ク(・)チ(・)ャ(・)に(・)し(・)た(・)ことが『偉業』として評価され、今回の【ランクアップ】に至ったという展開になるのだが……当然、そんな事を当のリヴェリア本人や神であるロキは知るすべは全くなかった。

 

 なお、Lv.7へと器を昇華させたリヴェリアだったが、何の調整も済ませれていない状態ということも踏まえて、万が一に備えて隠し通路で待機。準備を整えた【ロキ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】───そして、【ディオニュソス・ファミリア】団長であるフィルヴィスを加えた部隊が『扉』の奥へと進んでいった。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

 近作品ではリヴェリアが先にLv.7へと【ランクアップ】しています。新しいスキル【妖精の王女(イゾルデ)】は『トリスタンとイゾルデ』に出てくる“金髪のイゾルデ”を元ネタにしています。(なお、“白い手のイゾルデ”も登場させる予定なのでお楽しみに)

 このリヴェリアの新しいスキルは『穢れた精霊』のみだけでなく、系譜の触手のモンスター達や怪人(クリーチャー)にも効果を発揮させます。その為、原作よりだいぶ有利に戦うことができるようになっています。
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