聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか 作:フェイト・
「クソッ!?いくら何でも数が多すぎるッ!!」
「口ではなく手を動かしてください!ベル様に続いて命様まで離脱してしまったんです。外套を被った集団はエレン様が相手をしてくださっていますが、リリ達も急いで援護に向かわないと───って、キャァァァァァッッ!!?」
「リリスケェ!!!」
大量のモンスターに囲まれながらも、何とか戦い続けていたヴェルフとリリの二人だったが、ヴェルフが突っ込んできたヘルハウンドを意識を取られ、その一瞬のスキを突いた他の複数のヘルハウンドがリリに向けた一斉に炎を放ち、
場所は14階層の
さらに、外套を纏った一人がベルを攻撃しパーティーから切り離され、残されたエレン達は外套を纏った集団に行く手を阻まれ、大量のモンスターを押し付けられていた。
どうにかエレンが『魔剣』を使って出来て隙に、『探知』系のスキルが使える命が分断されたベルの救出に向かったのだが、一向に戻ってくる気配がなく、探しに行こうにも外套の集団と大量のモンスターの集団が行く手を阻んでいた。
「大丈夫か、リリ助!?丸焼きになんかなってないよねなぁ!!」
「ぶはぁっ!?誰が丸焼きですかぁ!!リリはちゃんと生きてますよぉ!!!」
リリに炎を放った複数のヘルハウンドを切り伏せたヴェルフが急いでリリの元へと駆け寄ると、黒焦げとなった場所からリリがひょっこりと顔を出し、大声で生存報告を行った。
「しかし……エレン様から頂いたこの青い外套がなければ、本当に丸焼きになる所でした」
「大精霊様々だなぁ。鍛冶師としてはとても複雑だが、前回使った『サラマンダー・ウール』以上の性能をしてやがる」
ヴェルフがそう言うと、リリが纏っている青い外套に目を向けた。現在リリが纏っているこの青い外套は、エレンが作った『精霊武装』───その名も『火鼠の羽衣』。と言ってもこれは『精霊の護布』なのだが、大精霊の半分の側面を持っているエレンが作ったこの代物は
ガコンッ!
「あ~~~!それ私の『動き』ー!!さっきから私達の『動き』を盗みすぎー!!」
「そっちはLv.2相手に大人げなさすぎぃ!!アマゾネスがそんなことやって恥ずかしくないのかー!!」
【
「(何とか均衡は保ってはいるけど、あまり長く持ちそうにない。『魔剣』はモンスターと戦っているヴェルフとリリに被弾させてしまう危険もある。ここは───)」
外套を纏った集団の総勢30名。Lv.2が10人にLv.3が20名。エレンがこの数の上級冒険者を相手に均衡を保っていられる訳は、今もなお、エレンの体全体を覆っている回復魔法の青い炎と【
しかし、いくら回復魔法で耐久戦ができるエレンでも、Lv.3を多く含んでいる上級冒険者の相手をするのは簡単ではなく、均衡は今にも崩れそうな状況になりつつあり、エレンはこの危機的状況を覆すべく、懐からテニスボールサイズの
***
「ヘスティア様。言われた通り『精霊の涙』を材料に造ってみましたけど……本当にこんなもんで『精霊
これは、一日前。
「うん。今回エレン君には、大量の『精霊の涙』を
ヘスティアがそう説明しながら、エレンが手に持っていた数個の青い色をした丸い結晶体を指した。エレンが手に持っているこの結晶体は、エレンから採取できた『精霊の涙』を大量に溶かして一つに纏めたもので、ヘスティアはこれを『精霊結晶』と名付けていた。
「エレン君。君はどうやったら自分が『精霊状態』になれるか覚えているかい?」
「えっ?え~と、『魔力』を使えば使うほど体温が上がって、体温が40°を超えると『精霊状態』になれる───でしたっけ?」
「うん。前にボクが言ったことを覚えていてくれているようなんだけど───ちょっと
「言い忘れていたこと?」
「うん。さっきエレン君が言った通り、君は『魔力』を使えば体温が上がっていくんだけど───正確には“『魔力』を使えば使う程、周囲の『魔素』を喰らって『
「……変換している?それはどういう意味なんですか」
「えっとね───」
ヘスティアからの追加の説明を聞いたエレンは耳を傾げた。何やら『喰らう』やら『変換』やらの単語に頭の上に?マークを浮かばせていると、ヘスティアが豊満な胸の谷間から伊達メガネを取り出して身に着け説明をしてくれた。
「元々『精霊』には『魔法』の残滓である『魔素』を吸収することができてね。吸収した『魔素』をそのまま自分の
「───そんなことが」
「うん。でも、エレン君はちょっと特殊でね。『
「……魔力を消費している時に、ですか。全く気が付きませんでした」
「無理もないよ。そもそもこんな状況は『精霊』特有の現象なんだ。それに、君が吸収した『魔素』は
「───吸収した『魔素』が、『
ヘスティアからの説明を聞いたエレンは自分自身の身体に視線を向けた。今まで全く知らなかった特性にぽか~んとしていると、『そこでこれの出番だ!』とエレンの持っている『精霊結晶』を指さした。
「エレン君が『精霊
「なるほど───ん?ヘスティア様、ちょっといいですか?」
「何だい、エレン君?」
「取り込むって……どうやってですか?」
「飲み込む」
「───飲み込む?」
「うん」
「……これ、テニスボールぐらいのサイズなんですけど」
「ファイトだよ、エレン君♪」
「…………」
満面の笑みで答えるヘスティアに、エレンは手に持っているテニスボールぐらいの大きさの『精霊結晶』を凝視した。飲み込めるかどうか怪しい───というか、下手すれば喉に詰まらせて窒息しそうな代物。戻ってきたら絶対に改良を加えようと決心したエレンだった。
***
「(喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!喉に詰まりませんように!)───ゴクリッ!!!」
「おいッ!【ドレッドノート】が何かを飲み込んだぞッ!?何かされる前に一斉に『魔剣』を叩き込めッ!!」
外套を被った一人のアマゾネスがエレンの行動を目撃するとすかさず他の仲間に合図を送り、外套の内側から『魔剣』を取り出し、一斉に『魔剣』を振り下ろした。エレンの周囲を様々な属性を帯や『魔力』の爆発が包み込んだ。
「……おい。流石にやりすぎなんじゃないか?いくらイシュタル様に『いざとなったら殺せ』と言われているからと言って、『魔剣』の一斉射撃なんて……」
「バカ。
やりすぎなんじゃない? と漏らすLv.2のアマゾネスの言葉に、合図を出したLv.3のアマゾネスが反論する。現にこれだけの人数を相手に仕留めることが出来なかった相手。本当にLv.2なのか疑いたくなる耐久力。
合図を出したLv.3のアマゾネスは追撃の『魔剣』を放とうと再び合図を出そうとした瞬間───舞い上がった黒煙の中から物凄い速さで合図を出そうとしたアマゾネスに向かって突っ込んできた。
「オラァァァッ!!!」
「───グゥッ!!?」
「ガハァッ……グフッ……オェッ……」
「お、おいっ!?大丈夫か!!」
「ねぇ、なにあれッ!?あんな姿、初めて見たんだけどぉ!!」
エレンの攻撃を食らったアマゾネスは予想外のダメージに口から口から血を吐き、仲間から数本の
「(飲み込むのに苦労したけど……ヘスティア様の言う通り。何とか『精霊状態』になることができた)」
今のエレンは17階層で『
「や、やぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「えっ、ちょっ!?一人で行っちゃダメぇぇぇ!!」
自身よりレベルが高い仲間がやられる光景を見せられてしまった影響か、取り乱した一人のLv.2のアマゾネスが大剣を持ってエレンに向かって走り出していった。どうやら完全にパニック状態に陥っているようで仲間の声など届いておらず、高く跳躍しての渾身の一撃を叩き込もうとしたが───。
「──────えっ?」
防がれてしまった。
「うちの妹分に何やってんだい!」
「───ッ!?」
エレンの攻撃が相手に命中しようとした瞬間───突如エレンの視覚外から現れた一人のアマゾネスがエレンの胴体に強力な蹴りの一撃を叩き込み、エレンを岩壁へと叩きつけ、その衝撃で崩れ落ちた壁の一部が倒れたエレンに覆い被さった。。
「ア、アイシャさん……」
「いつまで経っても戻ってこないから様子を見に来たら……それだけ、あの雄が厄介な存在だったということかい」
崩れ落ちた岩石を押しのけて立ち上がったエレンの姿を見たアイシャは、仲間のアマゾネス達に『お前達はさっさと行きな』と言い、アイシャは
「あの雄は私が抑えといてやる。お前達は予定通り
「わ、分かった。アイシャもすぐに来てね」
アイシャからの命令を聞いたアマゾネス達は周りにいるモンスターをあっという間に制圧しながら地上への通路に向けて走り去っていった。アイシャはその様子を少し見送るや否や、持っていた
「お前の相手は私だよ」
「ベルと命さんを返せ!!」
「知らないね。そんな坊主と小娘のことなんて……」
「知ってるじゃねーか!!」
エレンの問いにさらっと嘘をつくアイシャ。両者の大盾と
「ははっ!本当にLv.2か?そこらのLv.3より断然強いぞッ!!」
「そりゃどうも!!」
エレンはアイシャの
「───ぐぅっ!!?(この人、さっきのアマゾネス達より強いッ!レベルもそうだけど長い脚を使った攻撃がうまく捌けない!?)」
アイシャの足技をどうにかしようと試みるエレンだが、まるで踊り子のように舞うアイシャの動きの翻弄され、攻撃の隙を作ることができない状況が続いていた。
「───このぐらい時間を稼げばいいか。少し名残惜しいが、この辺で引かせてもらうよ」
「なぁ!?行かせるかぁ!!」
「いいのかい?あんたのお仲間さんは随分手こずっているようだけど?」
「──────ッッ!!?」
アイシャの言葉にエレンが後ろを振り返ると大量のモンスターに囲まれているヴェルフとリリの姿。そして、エレンが目を離した隙にアイシャは逃亡。それにエレンが気が付いた時にはアイシャの姿はなく、エレンは苦虫を嚙み潰したよう表情を浮かべながらヴェルフ達の元へと向かった。
「【
エレンは【
「ヴェルフ、リリ。大丈夫っ!?」
「あ、あぁ~。助かった」
「し、死ぬかと思いました……。って、そんなことよりベル様と命様はッ!?」
「……ごめん。襲ってきた連中を逃がしちゃった。多分、ベル達はその連中に連れ去られたと思う」
「「…………」」
エレンはヴェルフとリリに事情を説明しながら回復魔法を施した。回復魔法によって体に蓄積されたダメージや疲労感が無くなり、幾分表情は良くなった二人だったが、ベルと命を取り戻せなかったことで、その表情はかなり暗かった。
「……エレン。俺とリリ助はこの階層でベル達がいないか探す。お前はさっきの集団を追ってくれ」
「えっ?で、でも……」
「今のエレン様なら、まだ追いつけるかもしれません!リリ達と一緒では足手まといになってしまいます!!」
「…………分かった。ちょっと行ってくる!」
ヴェルフとリリにさっきの集団を追ってほしいと頼まれたエレンは、二人に魔剣【
「(会話は全部は聞こえなかったけど、確か『10階層に向かえ』って言っていた……。取り合えず、
向上した
ここまで読んでいただきありがとございます。
『精霊結晶』はオリジナルの代物です。エレンから採取できる『精霊の涙』を大量に溶かして一つに纏めたものです。
今回登場したエレンの『精霊
ほかにも色々と出来ることはありますが───それはこの先のお楽しみということで♪