聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

6 / 37
『活動報告』の方でも書いていることですが、『タイトル』を変更させてもらいました。




6話 精霊は人助けをする

彼女(アイズ)は走っていた。今回の『遠征』で【ロキ・ファミリア】や【ヘファイストス・ファミリア】を含め団員の3分の1が『毒妖蛆(ポイズン・ウェルミス)』の劇毒にやられ、動けない状態になっていた。リヴェリアを含めた魔導士や治療師(ヒーラー)達でも完全な解毒は困難だった……。

 

そんな状態に解毒ができる治療師(ヒーラー)が現れたのだ。今も苦しんでいるみんなを助けることができるかもしれない。そんな想いで彼女(アイズ)は彼を()()()()()()()()。いや、()()()()()()()()()というべきか……。

 

(エレン)はひどい目にあっていた。【剣姫】に突然腕を掴まれたと思えば、いきなり連れ出され、体は宙に浮き、森の中では木々にぶつかりながら、【剣姫】が細切れにしたモンスターの返り血を浴びたり、地面を引きずり回されるなど、散々な目に遭っていた……。

 

【ロキ・ファミリア】のベースキャンプに入り、真っ先に病人がいるテントに向かうアイズ。見回りをしている同じファミリアの団員達が何やら慌てていたが、今はそれどころではない。テントに入ると魔導士のリヴェリアと治療師(ヒーラー)のリーネがいた。

 

 

「リヴェリア!治療師(ヒーラー)を連れてきたよ!」

 

「アイズ……?どうした、そんなにあわてt……」

 

 

テントの中にいたリヴェリアは慌てて入ってきたアイズに疑問に思ったが、彼女が()()()()()()()()()を見て、固まった。隣にいたリーネなんかは、顔面が真っ青な状態になっており、アイズは首を傾げていた。

 

 

「すまない、アイズ……。もう一度言ってくれないか……」

 

「?治療師(ヒーラー)を連れてきたよ」

 

「……私には()()()にしか見えないが」

 

「?」

 

 

『リヴェリアは何を言っているのだろう?』と思い、視線を後ろにやるがそこには(エレン)はおらず、下を見るとそこにはボロボロの(エレン)がいた……。全身が血や土で汚れ、所々擦り傷や打撲などの怪我をしている状態だった。

 

 

「一体、誰が……!」

 

「お前以外の誰がいる!!!この馬鹿者がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ふぎゃっ!!!」

 

 

まさか原因が自身にあるとは思わず、疑問に思っているところに王族妖精(ハイエルフ)のゲンコツが落ちた。リーネはすぐに(エレン)に近づき、状態を確認するが、脈はちゃんとあり、意識もしっかりとある状態だった。リーネが回復魔法を使おうとすると、突然彼が青い炎に包まれ、慌てるリーネだが、血や土汚れがきれいになくなり、傷もきれいになくなっていた。

 

 

「えええ⁉もしかして回復魔法⁉」

 

「……『詠唱』なし。ベル・クラネルと同じか」

 

「ひ、ひどい目にあった……」

 

「すまない。うちのバカが迷惑をかけた」

 

「えっと……」

 

「自己紹介がまだだったな。私はリヴェリア・リヨス・アールヴ。【ロキ・ファミリア】の副団長をしている」

 

「私はリーネ・アルシェといいます」

 

「……【九魔姫(ナイン・ヘル)】と【道化の従者(ロコライト)】。あっ、【ヘスティア・ファミリア】のエレン・エウロギアといいます。えっと、ここに連れてこられた理由を聞いても……」

 

「……アイズ」

 

「えっと、この人が毒の治療が出来るっていうから……」

 

「それでここまで連れてきたんですか?アイズさん」

 

「うん」

 

 

どやら毒の治療の為にここまで連れてこられたようだ。もう少し何とかならなかったのか……。あれは『連れてくる』というより、『誘拐する』に近いやり方だった。現にベル達とははぐれてしまったし、リヴェリアさんも片手で頭を押さえて頭が痛そうにしているし、リーネさんの苦笑いをしているし。

 

 

「ちなみにエレン。『ポイズン・ウェルミス』の毒は解毒できるのか?」

 

「『ポイズン・ウェルミス』?」

 

「待て。アイズから何も聞いていないのか?」

 

「はい。毒の治療ができるかどうかを聞かれたぐらいで……」

 

「……アイズ」

 

「待ってリヴェリア!私は、みんなを助けたくて……」

 

 

何やらリヴェリアさんから黒いオーラのような出てきたと思ったら、アイズさんに方に握り拳を作った状態で徐々に距離を詰めていった。アイズさんもよく見たら頭に大きなコブができており、涙目になりながら、必死に謝るが次の瞬間……テントの中に悲鳴が響き渡った。

 

 

「えっと……よかったら、毒の治療をしましょうか?」

 

「『ポイズン・ウェルミス』の劇毒ですよ!」

 

「難しいですか?」

 

「私も治療師(ヒーラー)ですけど、解毒は出来ていません。『ポイズン・ウェルミス』の解毒は専用の特効薬か【ディアンケヒト・ファミリア】の【戦場の聖女(デア・セイント)】の魔法ぐらいで……」

 

「都市最高の治療師(ヒーラー)……」

 

 

エレンの治療師(ヒーラー)として、話には聞いてことがあった。都市最高の治療師(ヒーラー)戦場の聖女(デア・セイント)】。なんでも死の1歩手前なら蘇生ができるとか。そんな治療師(ヒーラー)でしか治せないと聞かれれば、自信は落ちるが、やらないよりかはいいだろう。テントの中には、『ポイズン・ウェルミス』の毒にやられたのだろうか苦しそうに寝ている人達がいるんだ。完全な解毒ができなくても、緩和程度はできるだろう。

 

 

「頼めるだろうか?」

 

「リヴェリアさん。いいんですか?」

 

「現状、私を含めた魔導士や治療師(ヒーラー)では、症状の重いものを優先して治療し、気休め程度の回復を繰り返すぐらいだ。そんな状態が少しでも良くなる可能性があるのなら、打てる手は打っておきたい」

 

 

リヴェリアもこの現状に頭を痛めていた。解毒系の『魔法』使える魔導士や治療師(ヒーラー)は希少だ。毒に苦しむ団員達もだが、彼らの苦しむ姿はほかの団員たちの士気にも影響を与える。いくら18階層が【ロキ・ファミリア】にとって行き慣れた場所でもここは『ダンジョン』。油断を許さない場所だ。

 

少なくとも【ヘスティア・ファミリア】は【ロキ・ファミリア】の主神同士の仲は余りよくないようだが、【フレイヤ・ファミリア】のような敵対関係でもない。なら、出来ることなら協力をあおり、友好関係を作っておいたほうが先の為にもなるだろうと考えていた。

 

なお、解毒についてはリヴェリアはエレンにあまり期待していなかった。言い方は悪いが、『ポイズン・ウェルミス』の劇毒だ。いくら希少な解毒系の治療師(ヒーラー)とはいえ、変に期待をするのは彼にプレシャーを与えるだけだと考えていた。

 

なお、治療を開始したエレンが『ポイズン・ウェルミス』の劇毒をきれいに解毒して見せ、リヴェリアの予想をいい意味で裏切る形になった……。

 

 

 

***

 

 

 

「団長!アイズさんが青髪のヒューマンを引きずって18階層を爆走していたとの目撃情報が」

 

「団長!アイズさんが青髪のヒューマンをこの『ベースキャンプ』に引きずって連れてきたと、団員からの目撃情報が」

 

「団長~!大変っす!18階層に来た他派閥のパーティから『そちらの【剣姫】様がうちの治療師(ヒーラー)を誘拐した!』と訴えているっす~」

 

 

今、多くの団員たちから報告を受けているのは、【ロキ・ファミリア】団長のフィン・ディムナ。ガレスとともに今後の【ファミリア】について話を進めていたところだった。何しろ今回の『遠征』には、『壊れない』特性を持つ武器『不壊武器(デュランダル)』に『魔剣』が30以上……とどめに希少種(レアモンスター)の『ポイズン・ウェルミス』の素材から作られる特効薬の買い占め。冒険者の収入源の1つでもあるドロップアイテムは【ヘファイストス・ファミリア】に譲る話になっているので、【ファミリア】が火の車になるのは目に見えていた。

 

派閥をまとめる立場にある彼らは今後のことを話していたが、そんなところに今の報告が入ってきた状態だ。うちの姫君が問題を起こすのは今に始まったことではないが、さすがに他派閥の治療師(ヒーラー)を誘拐してくるような子ではない。

 

おそらく何かしらの考えのもと行動を起こしたのだろうが、引きずりまわすのはどうだろうか。フィンは、そろそろいい知らせの1つでも聞きたいと思っていたその時……。

 

 

「フィン。ガレス。少しいいだろうか」

 

「ん、なんだい?リヴェリア。今は君の『娘』についての報告でおなか一杯なんだ。できれば『いい知らせ』の1つでも聞きたい気分なんだが……」

 

「……アイズについては、すでにこちらで手を打った。そして安心しろ。持ってきたのは『いい知らせ』だ」

 

「ほう、この状況で『いい知らせ』か。ぜひ、聞いてみたいのう」

 

 

テントに入ってきたリヴェリアが持ってきた『いい知らせ』に食いついたのはガレス・ランドロック。フィンとともに今後の【ファミリア】について話していたがアイズのついての報告にフィンとともに頭を悩ませていたところだった。そんな状態に『いい知らせ』が届いたのだ。これで悩みの種の1つでも消えてくれると助かるものだ。

 

 

「『ポイズン・ウェルミス』の劇毒にやられていた団員達は、全員完治した」

 

「「……ん?」」

 

「『ポイズン・ウェルミス』の劇毒にやられていた団員達は、全員完治した」

 

「「は?」」

 

「……アイズが攫ってきた治療師(ヒーラー)が毒にやられた団員達を全員治療して、完治させた」

 

「「……」」

 

 

リヴェリアが持ってきた『いい知らせ』を聞いたフィンとガレスが絶句していた。確かに『いい知らせ』に期待していたが、さすがにスケールがデカすぎた。しかも、先ほどまで報告を受けていたアイズが攫ってきた治療師(ヒーラー)が治療したのだ。団長として後でアイズには色々と言ってやらないといけないと考えていたフィンだが今回ばかりは褒めるべきか?

 

 

「特効薬についてだが、今集めているものは【ディアンケヒト・ファミリア】とリヴィラの街の連中に売り込もうと考えている。『ポイズン・ウェルミス』はまだ『下層』にいる。我々のほかにもあの毒による被害は続くだろう……。特効薬は希少だ。今回の『遠征費用』をいくらか補填はできるだろう」

 

「それについては、僕も賛成だね。リヴィラ価格より、少し安く売り込めば、それなりの金額になる」

 

「ワシもその案に賛成じゃ」

 

 

『ポイズン・ウェルミス』はまだ『下層』に存在する。部隊の撤収の為、リヴェリアが通路を『魔法』で塞ぎ、被害を最小限に留めたが、今頃は突破しているころだろう。

 

まさか【ファミリア】を救う特効薬が金策に悩む彼らを救う存在に変わるとは、人生何が起こるか分からないもんだ。とにかくその青髪の治療師(ヒーラー)にはお礼をしなくては。そう考えたフィンは報告に来ていたラウル・ノールドに彼らお仲間と思われるパーティをリヴェリアにも青髪の治療師(ヒーラー)をここに連れてくるように命令を出した。

 

 

「がははっ、『中層』に進出したその日には18階層か!なるほど、フィン、リヴェリア、確かにこの未熟者(わかぞう)共は面白い!」

 

「やっぱり、君も興味を持ったか。ガレス」

 

「フィン、ガレス、この場は内輪だけではないんだ。抑えてくれ」

 

 

毒にやられた人達の治療を終えた後、リヴェリアさんに呼ばれて、首領人のキャンプに案内されている。途中【ロキ・ファミリア】の団員に案内されたベル達と無事に合流でき、今に至る。どうやら、毒の治療のお礼がしたいとのことらしいが、ここまで来た経緯を聞かれ、情報交換の意味もかねて話したら、賞賛の嵐。ここに来る決断ができたのはリリの考案があってこそだったので、そのことも話すと【ロキ・ファミリア】団長のフィンさんはリリのことを気に入ったようだ。

 

 

「お礼と言っては何だけど、君達を客人としてもてなそう。ただ、食料を始めとした物資はもうあまり残ってないんだ。配分できるものには限りがあるから、それだけは理解してほしい」

 

「いえ、むしろ十分すぎるぐらいかと……」

 

 

ベル達のパーティはここまで来る予定ではなかったので、物資類はそんなに持ってきてなかった。18階層に来れたのはいいけど、この先をどうするべきかを考えているところだった。そんな所にフィンさんからの提案は正直助かる内容だったので仲間と話し合い了承した。

 

 

「周囲と揉め事を起こさなければ、あのテントを好きに使ってもらって構わない。団員達にも僕の口から伝えておくよ」

 

「何から何まで、ありがとうございます」

 

 

 

***

 

 

 

「よかったのか、フィン?物資もだいぶ余裕はないが……」

 

「団員達を助けてもらった恩人だ。礼はするべきだろう?」

 

「……本音は?」

 

「少しでも好印象を持ってもらって、()()()()()来てくれないかと思って」

 

「はぁ……」

 

 

彼らがテントを退出した後、リヴェリアがフィンに尋ねる。いくらエレンが団員達を助けてくれたとはいえ、今の【ロキ・ファミリア】には『客人』をもてなす余裕はあまりない。そんな状況に『客人』として、もてなす理由を尋ねると案の定だった。

 

フィンの狙いはエレンの『改宗(コンバージョン)』である。治療師(ヒーラー)は希少だ。しかも、『ポイズン・ウェルミス』の劇毒を完全に解毒できるとなると、【戦場の聖女(デア・セイント)】と同等の『魔法』を持っていることだ。それほどの『魔法』を持っている治療師(ヒーラー)をスカウトしない理由はない。

 

無論。()()()()()()()()()、方法はいくらでも存在するが、それはいくら団長の立場のフィンでも【ファミリア】内から反感を買う恐れもあるし、(エレン)との信頼関係を築くことは難しいだろう。なので、少しでも好印象を持ってもらい、『改宗(コンバージョン)』についての話し合いを優位に進めれるようにしたいと考えていた。

 

 

「それで、リヴェリア。(エレン)の『魔法』について聞きたいんだけど……」

 

(エレン)の『魔法』はベル・クラネルの『魔法』同様……。『詠唱』要らずの超短文詠唱。その性能は知っての通り、【戦場の聖女(デア・セイント)】並みだ」

 

「ン~。やっぱりほしいね~」

 

「ただし、1度に癒せるのは1人のみ。しかも、手が触れられる距離でないと他人を癒せないのが欠点だ」

 

「確かに戦闘中みたいな状況だと、厳しいだろうが、それでも破格の性能じゃろう」

 

 

フィンの質問にリヴェリアが答え、『魔法』の性能、欠点を挙げるが、それら全てを含めても()()()()()だとガレスが断言する。『詠唱』要らずの超短文詠唱で【戦場の聖女(デア・セイント)】と同じ『全癒魔法』。この情報だけで、(エレン)治療師(ヒーラー)としての価値は計り知れないといっても過言ではない。

 

そんな首領達が話しているエレンはベル達と一緒にLv.4の冒険者【超凡夫(ハイ・ノービス)】ラウル・ノールドの案内で【ロキ・ファミリア】の『ベースキャンプ』を案内されていた。さすが都市最強と言われる【ファミリア】だけあって、ここにいる団員達は多種多様。しかも、ここにいる団員たちはほとんどが、Lv.3以上の実力者ばかりだというのだ。

 

「あれ?もしかしてベル?」

 

「え?アリーゼさん⁉」

 

「やっぱりベルだー!!」

 

「ぐはぁ⁉」

 

 

なにやら声が聞こえたと思ったら、突然赤髪女性がベルに向かって突っ込んできて、ベル諸共吹っ飛んでいた。

 

 

「おいおい、アリーゼ。突然飛び出してどうしたんだ?」

 

「見て見てライラ!ベルだよベル!ベルがここにきてるの!」

 

「……マジか」

 

「アリーゼ様にライラ様⁉」

 

「【紅の正花(スカーレットハーネル)】と【狡鼠(スライル)】か!」

 

「【アストレア・ファミリア】が何で【ロキ・ファミリア】のベースキャンプに?」

 

「今回の『遠征』は、【ヘファイストス・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】が同行してもらっているっす」

 

 

どうやら、今回の【ロキ・ファミリア】の『遠征』には武器、防具の整備に【ヘファイストス・ファミリア】が、その護衛の為、【アストレア・ファミリア】が同行していたようだ。こっちのパーティにも【ヘファイストス・ファミリア】所属のヴェルフがいるが、『深層』まで潜るためLv.3以上の上級鍛冶師(ハイスミス)が同行しているようだった。

 

 

「おいおいアリーゼ。そろそろ兎を離してやれ、瀕死だぞ?」

 

「嫌よ!『深層』であんな怪物と戦って死にかけたのよ!これはその疲れを取るための『癒しよ』☆」

 

「アリーゼ様!ベル様から離れてください!!!」

 

「ダメ……ベルから、離れて……」

 

「嫌よ!このモフモフ兎君は、私が堪能するんだから!」

 

 

一体何を見せられているのだろう?リヴェリアさんのげんこつから回復したのだろうか、アイズさんがいつの間にかここにいて、さっきまで何事もなかったのにベルが女性達にもみくちゃにされたり、引っ張られたりするなどのカオスな状況が出来上がったいる。アレかな?これがモテなのか?

 

 

「あれ?アルゴノゥト君だ!」

 

「ベル・クラネル⁉どうしてここに⁉」

 

「!。ティオナ、レフィーヤ!お願い手伝って……」

 

「うーん、どんな状況か分からないけど、分かった!」

 

「ア、ア、アイズさんとあんなに近くに……。許せません!ベル・クラネル!アイズさんから離れなさいーーーー!!!」

 

 

このカオス状態にアマゾネスとエルフの女性が追加された闇鍋状態。ベルの体が『大の字』の状態で頭、右腕、左腕、右足、左足それぞれ5方向から引っ張られる状態。泣き叫べながらこちらに助けを求めるが……。ごめんベル。まだ死にたくない……。

 

 

 

***

 

 

 

「みんな、聞いてくれ。もう話は回っていると思うけどれど、今夜は客人を迎えている。彼らは窮地を打破するため、この18階層まで辿り着いた勇気ある冒険者だ。仲良くしろとまで言うつもりはない。けれど同じ冒険者として、そして『ポイズン・ウェルミス』の毒から仲間を救ってくれたものとして、敬意をもって接してくれ。……それじゃあ、乾杯!!!」

 

「「「「「「乾杯」」」」」

 

 

ベルがひどい目にあった後、夕食を頂いている。ここは不思議な場所で地下のはずなのに、『空』があり、今は真っ暗な『夜』になっているのだ。さらには『ダンジョン』に『街』が存在するようだ。食事の内容は携帯食に、ここ18階層でとれた『雲菓子(ハニークラウド)』と呼ばれている甘い果物類だった。

 

どうやらベルは甘いものが大の苦手なようで、食べかけの『雲菓子(ハニークラウド)』をリリが欲しがりそうにしていたのを、アリーゼさんに横からパクリと横取りされ、涙目でキーッキッーと言いながらアリーゼさんを蹴ったりするなど、軽い修羅場状態になった。

 

 

「アルゴノゥトくーん!」

 

「え?」

 

「話、色々聞かせなさいよ。一宿一飯の恩よ、構わないでしょ?」

 

「うん、聞きたい聞きたーい」

 

「えーと、話って何を……」

 

「どうやったら能力値(アビリティ)()()()S()()()()()()?」

 

「「……は(え)?」」

 

 

双子のアマゾネス姉妹。ティオネ・ヒリュテとティオナ・ヒリュテの2人がベルの何が聞きたいのか気になっているとまさかの内容だった。ベルはどうして過去の数値を知っているか。エレンは能力値(アビリティ)オールSに思わず『は?』と言葉が漏れる。

 

エイナさんの座学で得た知識だが、能力値(アビリティ)は得意、不得意があるように差が生まれる。『エルフ』なら『魔力』。『ドワーフ』なら『力』や『耐久』。『小人』なら『器用』。『獣人』なら『敏捷』が伸びやすいものや、逆に伸びにくいものがある。

 

『ヒューマン』は、ほかの種族に比べると特に特徴はない。ベルの成長の速さはエレンの知っていたが、能力値(アビリティ)オールSは初めて聞く内容だった。エレンも詳しく話を聞きたいところだったが、ベルはヒリュテ姉妹に詰め寄られて、それどころではなかった。

 

 

「ぐぬあぁぁぁぁぁっ⁉」

 

「今の声は……」

 

「あり得ません!ここは『ダンジョン』ですよ!」

 

「でも、さっきの声は間違いなく……」

 

 

聞き覚えのある声。しかし、『ダンジョン』では決して聞こえてくる筈のない声が響き渡った。ベルは真っ先の声が聞こえた方に走り出し、そのあとをリリとエレンが後を追った。向かった場所は17階層と18階層を繋ぐ連絡路。そこには【ロキ・ファミリア】の見張りの人達が集まっており、その視線の先には……。

 

 

「おおおおお……⁉あ、あんな巨大なモンスターがいるなんて聞いてないぞ⁉」

 

「あっはははははっ⁉死ぬかと思ったー!!!」

 

「神様⁉それとヘルメス様⁉どうしてここに……」

 

 

そこにはなぜか、ベルとエレンの主神のヘスティアの姿があった。そして、もう1柱の男神の姿。どうやらベルは知っている様子だが、エレンは初めて見る神様である。この男神が誰なのかベルに尋ねようとすると、ヘスティアが2人に気づくと同時に、一直線に飛びつき2人を両手で包むように抱き着いた。

 

 

「……良かったぁ、良かったぁ」

 

 

ヘスティアは力一杯2人を抱きしめた。どうやら危険を承知だここまで探してきてくれたようだ。言葉にしなくても、その想いに気づいた2人はヘスティアが落ち着くまでそっとしておこうと思ったが、周囲には人が集まっている状況であり、多くの人達に今の格好を見守られている状況……。とても恥ずかしい。

 

 

「いい加減にしてください、ヘスティア様」

 

「あ、コラッ、感動の再会に水を差すんじゃない⁉は、離せーっ⁉」

 

 

リリが空気を読んでくれたのかヘスティアの襟首を掴んで引き離していく。ヘスティアも必死に抵抗するがリリは『サポーター』とはいえ『恩恵持ち』。ずるずると、幼女が幼女を引きずる光景ができていた。

 

 

「遭難したと聞いてここまで来てみれば、中々なものを見せつけてくれますねぇ~」

 

「クラネルさん、エレンさん、無事でしたか?」

 

「見れば分かるだろうリオン。めっちゃぴんぴんしてんじゃん」

 

「輝夜さんにリューさん、ネーゼさんまで……」

 

 

次に気づいたのは【アストレア・ファミリア】のメンバー。輝夜達は、もしものための場合に備えて地上で待機していたメンバーだった。神ヘスティアと主神のアストレアの命を受けて捜索隊としてここまで来てくれたと説明してもらった。

 

 

「やあ、ベル君会いたかったぜー!」

 

「ヘルメス様にアスフィさんまで、どうしてここに?」

 

「久しぶりですね。ベル。私はいつものヘルメス様の無茶ぶりに振り回されているだけです……」

 

「そ、それは……お疲れ様です……」

 

「なぁに、オレ達は心友(マブダチ)じゃあないか。それに君達を助けたいと言っていた、彼女の望みでもある」

 

 

そういってヘルメスはヘスティアのほうに視線をやる。

 

 

「それに感謝ならオレ以外の子達にしてやってくれ。アストレアの子ども達や、()()のおかげで、ここまで来られたようなものだからね」

 

 

ヘルメスの視線の先を辿ると、そこには統一された装備を身につけられた冒険者が3人いた。そして、その装備には見覚えがある姿だった……。




ここまで読んでくださりありがとうございます。

【アストレア・ファミリア】のアリーゼとライラの登場でした。アリーゼがベルに積極的な感じですが、かわいい弟を可愛がるみたいな感じをイメージしています。

エレンの『回復魔法』ですが、『炉の火の精霊』でもあり、『聖火の精霊』の側面もあるので、汚れや穢れを清める効果もあります。そのせいで、どっかの『精霊』にめっちゃ恨まれるけど……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。