聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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早く仕上がったので、1日早い投稿です。区切りよくしようとしたら、過去最高の文字数になってしまいました

スマホで自身の作品を見直していたら、所々おかしな部分があったので、余裕を見つけて修正しようと思っています。1話とか2話とか3話とかです。



7話 洗礼

「申し訳ありませんでした」

 

 

貸し与えてもらったテントの中。【タケミカヅチ・ファミリア】のヤマト・命の土下座を目にしている。美しい本気の土下座だ。私がこの域に達したのは20代後半……。おっと、そんな冗談を言っている場合じゃなかった。

 

「……いくら謝られても、簡単には許せません。リリ達は死にかけたのですから」

 

「まぁ、確かにそう割り切れるもんじゃないな」

 

 

リリとヴェルフがそれぞれ自身の言葉を告げる。モンスターの押し付けが『ダンジョン』内で日常茶飯事の行為。それが、『ダンジョン』で生き残る一つの技術で悪意がない限り、『怪物進呈(パス・パレード)』には一定の理解を払わなければならない。とはいえ、死んでもおかしくなかった状況で『はい。分かりました』と割り切るのはそう簡単ではない。

 

 

「あれは俺が出した指示だ。そして俺は、今でもあの指示が間違っていたとは思ってない」

 

「……それをよく俺達の前で口にできるな、大男?」

 

 

一体何を言っているのやら……。大方、仲間の為に自身が恨みの対象になろうとしているのだろうが、この状況で言うセリフでは無い気もするが……。しかし、この状況をどうにかしないといけない状況。ヘスティア様を除けばここでは自身(エレン)が1番年上だ。捜索隊として来てくれた輝夜さん達や神ヘルメスとその眷属のアスフィさんはここにはいない。気は乗らないが自分がどうにかしないといけないだろう……。

 

 

「はいはい。2人とも、そこまでそこまで」

 

「「……」」

 

「要は、この落とし前をどうつけるべきか。と言った所でしょ?」

 

「え、ええ。その通りですけど」

 

「なら、こんな感じはどうかな?【タケミカヅチ・ファミリア】には大きな貸しができた!という形は?そっちも罪滅ぼしをするつもりがあるんでしょ?」

 

「それは、勿論……」

 

「向こうもこう言っていることだし、いざという時は馬車馬のように働いてもらうってことで!」

 

「……そういう、ことでしたら」

 

 

命さんとリリに交互に話を振って、了承を得る。あとは今もにらみ合いをしている向こうの二人だけなんだけど……。

 

 

「……割り切ってやる。だが、納得はしないからな」

 

「ああ……それでいい」

 

 

どうやら、この場はどうにかなったようだが……。こんな修羅場二度と経験したくない!ここは神としてヘスティア様がどうにかしてほしかったが、すでに過ぎた話なのでもう遅いだろう……。現にヘスティア様は満足な表情を浮かべているし、助け舟の一つでも出してほしかったもんだ。そんなことを思っていると、テントの入り口から男神と水色髪の女性が入ってきた……。

 

 

「いやぁ、何とか話が纏まって何よりだよー」

 

「……もしかして、あえて入ってこなかった感じですか?」

 

「まさか。()()()()()()……。俺達も()()()()()()()()だよ?たまたま会話が少し聞こえた程度さ!」

 

 

この神!今まで聞き耳を立てていやがったなぁ!後ろのアスフィさんも申し訳なさそうな表情をしているし!色々問い詰めてやりたいが証拠なんてない。なんだかやるせない感じだが、ここに来たということは【ロキ・ファミリア】から滞在許可がもらえたのだろう。

 

このままでは話もできないので、エレンはその場を譲り、ここ来た目的を話してもらった。

 

「まず、地上への帰還ですが、【ロキ・ファミリア】に階層主(ゴライアス)を倒してもらった後で、我々は18階層を出発しましょう。回避できるのなら、危険な橋を渡る必要もありません」

 

 

もっともだ、と自分達は頷いた。

 

 

「そして、【ロキ・ファミリア】が移動を再開するのは早くて2日後だそうです」

 

「つまり、1日暇がある……せっかくだし明日一杯は18階層を観光でもしようじゃないか!」

 

 

神ヘルメスの提案は受け入れられた。【ロキ・ファミリア】は『ポイズン・ウィルミス』の解毒薬を集めている団員が戻り、特効薬を『街』に売った後に移動を再開する予定だそうだ。

 

話し合いが終わり、後は就寝するのみとなった。女性陣がテントの中、男性陣が見張り兼野宿ということで外に出ようとすると、外に出ようとするとベルがヘルメス様に、ヴェルフがヘスティア様に呼び止められた。

 

ベルは手紙が、ヴェルフは白い布に包まれた武器らしきものを受けとっていた。それぞれ何かしら神様に言われたのか驚いたり、神妙な表情だったりするなど、様々だがあいにく会話までは拾えなかった。

 

18階層の『夜』が終わり、『朝』が来た。今日も朝食を頂き、今日は何をしようか考えているとベルから渡すものがある。と呼び止められた。何やら、昨日の手紙はベルの義母からのようで(エレン)宛の手紙も入っていたようだった。

 

ベルの育ての親については、話では聞いていたが面識なんてない。それなのになんで手紙が?なんて思ったがとりあえず読んでみることにした。(ベルの表情が真っ青なことが気になるが……)」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

エレンと言ったか?貴様はどうやら優秀な治療師(ヒーラー)らしいなぁ。もしベルが死ぬようなことがあってみろ!貴様の『魂』が消滅するまで『魔法(ゴスペル)』を打ち込んでやる。肝に銘じておけ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

まさかの殺害宣言に絶句するエレン。どうやら、エレンが【ファミリア】に入団した日に義母に報告も兼ねて手紙を出していたようだが、その返事らしい。そういえば、転生してもらうときに『依頼に失敗した時は怖〜いお姉さんに魂が消えて無くなるまで拷問される』と聞かされていたが、どうやら死は身近にいたようだ……。

 

『依頼に失敗』の意味がイマイチ分からなかったが、ベルのことだったとは……、あの邪神。わざと説明していないな?まぁ、同じ【ファミリア】として、治療師(ヒーラー)として、死なせるつもりもないし。そうそう会うこともないだろうし、大丈夫でしょう!

 

エレンは楽観的に考えていたが、割とすぐに会うことになるとは、彼はまだ知らない……。

 

 

 

***

 

 

 

「エレン。もう少し『魔力』の発散を抑えてみろ……そうだ、その調子で『魔法行使』を続けろ」

 

「うーん。話には聞いてはいたけど、すごい効果ねー。エレン君の『魔法』は」

 

「そうですよね。同じ治療師(ヒーラー)として、なんだか自信がなくなります」

 

「「「分かる」」」

 

 

エレンはリヴェリアや【アストレア・ファミリア】の治療師(ヒーラー)マリュー・レアージュ。リーネを始めとした、『回復魔法』を扱える魔導士や治療師(ヒーラー)などの集まりに、『魔法』の訓練を受けていた。元々は、今朝ヘスティアに【ステータス】を更新してもらった際、【スキル】が発現しており、その内容がいまいち理解ができなかったエレンが、昨日リヴェリアと交わした『魔法の練習に付き合ってくれる』という約束があったので、ついでに【スキル】について何か教えてくれないかと思って、『王族妖精の試練(ハイフェアリー・ブレイク)』に参加していたのが始まりだ。

 

【スキル】については、重要な個人情報の為、正確な内容は伝えてはいない。ただ、条件付きで【発展アビリティ】を発現させる『スキル』が出た。としか伝えてはいない。それでも全ての効果を知っているヘスティアはあまりの効果にひっくり返っていた……。

 

 

 

《スキル》

聖火の守護者(ウエスタ・ダイモーン)

・盾の装備時、発展アビリティ『盾士』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、発展アビリティ『堅守』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、発展アビリティ『魔防』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、全アビリティ能力超高補正

 

リヴェリアには、『盾の装備時、全アビリティ能力超高補正』の部分は伝えてはいない。文章の内容からして相当の上昇量なのはエレンでも理解はできた。本来【発展アビリティ】は【ランクアップ】をする際に、今までどのような経験値を積み重ねてきたかが反映される。

 

無論、『スキル』で発現する場合もあるが、『レアスキル』にのみ限られるらしい。ちなみにエレンの【ウエスタ・ダイモーン(スキル)】の内容を聞いたリヴェリアは顔を引き攣らせていた……。

 

『盾士』は初めて見る内容だったみたいだが、『剣士』という【発展アビリティ】が存在しており、かつ剣術に補正が掛かる内容で、おそらく盾術に補正が掛かる内容ではないかとの結論。

 

『堅守』は物理攻撃を受ける際、ダメージ軽減の補正が掛かる内容。

 

『魔防』は魔法攻撃を受ける際、ダメージ軽減の補正が掛かる内容。

 

どの【発展アビリティ】も優秀なアビリティ。特に『盾役(ウォール)』が欲しがる内容。ただ、リヴェリアはエレンの場合は『死にスキル』になるのでは?と予想していた。確かに『堅守』や『魔防』などは生存スキルとしては優秀ではあるが、最も輝くのは『盾役(ウォール)』なのだ。

 

最も、近い将来……。『盾役(ウォール)』より厄介な存在になるのは、リヴェリアはまだ知らない……。

 

 

「リヴェリアさん。この『魔法行使』はどのぐらい続ければいいですか?」

 

「ん?あぁ、エレンが『精神疲労(マインドダウン)』で倒れるまでだが?」

 

「???」

 

「『魔法効率』を上げつつ、『精神力(マインド)』を手っ取り早く増やすには、体力と同じく、心身を痛めつけ己を鍛えるのが1番だ」

 

「……」

 

 

精神疲労(マインドダウン)

それは、『魔法』を行使する上で消費する『精神力(マインド)』が枯渇寸前の状態を指す。完全に『精神力(マインド)』が枯渇した状態を『精神枯渇(マインドゼロ)』と呼び、この状態になるには滅多に起きない。

 

一方、ベルは神ヘルメスと女性陣の水浴びを覗いたり、ヤバイエルフに追い回されたり、新種のモンスターによる落とし穴に落ちたりするなど、イベント盛り沢山だったようだようだが、エレンが目を覚ましたのはすべてが終わった後だった……。

 

 

 

***

 

 

 

「おい、いたか⁉」

 

「ダメだ!そっちにはいなかった⁉」

 

「いえ、ベル様もヘスティア様も、どこにも見当たりません!」

 

 

現在、ベルと神ヘスティアが行方不明の状態だった。これから【ロキ・ファミリア】の第2陣が出発間近の状態だった。【ヘスティア・ファミリア】と【タケミカヅチ・ファミリア】は【ロキ・ファミリア】の後をついていくことにことになっているが、()()()()()()()()()()()……。

 

正式に部隊に組み込まれているわけではない。なので、こちらの事情は気にする事なく、部隊を出発させるだろう。

 

「み、みんなー!」

 

「どうした、何かあったか?」

 

 

野営地の奥の方から手を振りながらこちらに走ってくる千草。それに気づいたエレンと桜花がそれぞれ、声をかけと彼女は回復薬(ポーション)が散乱した場所へ案内することで答えた。

 

 

「これは、ヘスティア様がナァーザ殿から受け取っていた……?」

 

「あ、あとね、さっき、クラネルさんがすごい慌てながら森の外に……」

 

「……もう事件に巻き込まれたと考えた方が、よさそうですね」

 

「……そうだね」

 

 

テントには貴重な回復薬(ポーション)などが散乱しており、中には割れている物もあった。さっき聞いた話も合わせると、恐らくヘスティア様は何者かに誘拐され、ベルはそれに気づいて後を追った……。いや、()()()()()()()()()()()()()()……。

 

事態は一刻も争う。ベルとヘスティアの捜索も、もちろんしないといけないが、地上への帰還も考えないといけない。今の自分達だけでは事態の解決は難しいと考えた彼らは、()()()の助けを求めた。

 

 

 

***

 

 

 

「やれぇ、モルド!」

 

「すげぇ、俺達にも()()()()()⁉」

 

「生意気な『兎』の鼻っ面を折ってやれ!」

 

「がっっ⁉」

 

 

ベルは人の悪意、害意、敵意をぶつけられながら、()()()()()()に襲われていた。主神のヘスティアを誘拐され、指定された場所に1人で来るようにと。テントに紙のみが置かれていた。そこにいたのは、いつかの酒場でベル達に絡んできた冒険者の1人のモルド。Lv.2の上級冒険者だった。

 

ここに呼ばれた内容はベルとの1対1の決闘。ヘスティアはベルを誘い出す為の餌にされたのだ。『勝者は敗者に命令を下せる』という内容で決闘に挑んだベルだが、それは決闘より見世物(ショー)に近いものだった。

 

 

 

***

 

 

 

「いた!」

 

「言っておくが、上級冒険者(あいつら)相手じゃ俺は魔法を封じることくらいしかできないからな!」

 

「十分だ」

 

「うおっ!」

 

「何だ⁉」

 

「【リトル・ルーキー】の連れだ!どうしてここがわかりやがった⁉」

 

「構わねえ、予定通りだ!潰しちまえ!」

 

「タケミカヅチごときが粋がってんじゃねえぞおおおおお!!」

 

 

命が先制攻撃で弓矢で矢の雨を降らせるが、流石上級冒険者というべきか、得物を使い矢の雨をすべて叩き落し、易々とかいくぐって、桜花と命に接近する冒険者達。

 

 

 

ただ……。

 

 

 

「げえェっ⁉」

 

「俺達の主神(かみ)()()()()()()だぞ?」

 

 

そんな冒険者達を易々と返り討ちにする桜花と命の2人。彼らの主神は『武神』。かの主神の実力は『第2級冒険者なら20人』『第1級冒険者なら1人』を『技と駆け引き』のみで投げられる……、それも『恩恵』を持たない一般人並みの力しかない身で実現できる神である……。

 

その眷属達もあらゆる戦闘型(バトルスタイル)で交戦できるように武芸を叩き込まれた者たちだ。対人戦だけなら第3級冒険者を超える実力者といっても過言じゃない。

 

 

「おい!何ちんたら『詠唱』してやがる!さっさと撃ちやがれ!!!」

 

 

後方で『魔法』を詠唱を行う魔導士達。どうやら接近戦では勝ち目がないと悟ったようで、遠距離からの魔法攻撃に切り替えたようだ。

 

 

 

だが……。

 

 

 

「【ウィル・オ・ウィスプ】!」

 

 

ヴェルフの『魔法』……【対魔力魔法(アンチ・マジック・ファイア)】が発動し『詠唱』を行っていた魔導士達を()()()()()()()()()()()()()。それは内側から爆発を受けるようなもので、自爆させられた魔導士達は口から煙を吐きながら、黒焦げになって地面へと倒れた。

 

 

「1人おかしな『魔法』を使うやつがいるぞ!」

 

「あいつから潰せ!」

 

 

モルドの仲間である2人のヒューマンの冒険者がヴェルフへと突っ込んでくる。この2人もLv.2の上級冒険者。普通ならLv.1相手にLv.2が2人で襲ってくる絶望的な状況……。

 

 

 

しかし……。

 

 

 

「させませんよ?」

 

「「はぁ⁉」」

 

 

ヴェルフの前に大盾を持った人物が立ち塞がった。それでもモルドの仲間2人は『関係ねぇ!!』と言わんばかりに武器を振り下ろすが……結果は振り下ろし方の武器が木っ端みじんになり、大盾は無傷の状態だった……。

 

 

「お返し……です!」

 

「「ぐはぁ!?」」

 

 

振り下ろされた武器が粉々にされも無防備な状態になった2人にエレンは容赦なく、構えていた大盾を前に突き出し全力タックルを仕掛ける。普通ならLv.1の攻撃なんてLv.2の冒険者からしてみれば、大した攻撃にはならないが、エレンには【スキル】がある。

 

ウエスタ・ダイモーン(スキル)】による全アビリティ能力超高補正。その補正値は【ランクアップ】程とは言えないが、限りなく近い上昇量だった。2人の冒険者はエレンのタックルをもろに受け外壁にぶつかり、意識を完全に落としていた。

 

 

「いやぁ、それにしてもすごいな!この盾」

 

「椿が作った盾だから当然だろう。それよりもLv.2を吹っ飛ばすあんたも大概だろう?」

 

「新しい【スキル】のおかげなんだけどね」

 

「……ちなみにどのぐらいすごいんだ?」

 

「全アビリティ能力超高補正!」

 

「ふざけろ⁉」

 

 

エレンが今使っている大盾は先日【ヘファイストス・ファミリア】の団長。椿・コルブランドから頂いた大盾だ。なんでも『ポイズン・ウィルミス』の毒から団員たちを救ってくれたお礼だ!と言われて半ば強引な形で受け取ったものだ。

 

何でも、『下層』から取れる鉱石『アダマンタイト』を大量に使った業物。駆け出しの冒険者が使っていい盾ではないような気がするが、既に貰ってしまったものだ!大事に使おう!

 

 

 

***

 

 

 

「へぇー。こっちが居なくても、結構出来るじゃん!」

 

「……そのようですね」

 

「なんだよリオン。まだ拗ねてんのかよ?」

 

「いえ、輝夜のやり方が気に入らないだけです」

 

「真面目だなお前は。こんなのは()()()()()()()じゃん」

 

 

冒険者の集団との戦闘を見守るのは【アストレア・ファミリア】のリュー・リオンとネーゼ・ランケットの2人。エレン達はベルとヘスティアの捜索に捜索隊として来てくれた【アストレア・ファミリア】の3人に助けを求めていた。

 

この3人は元々、地上部隊として今回の『遠征』には参加してはいない人達。つまり、部隊には組み込まれていない人材だった。よって、【ロキ・ファミリア】の第2陣にはついていかず、こちらに残ってもらった。

 

 

 

しかし……。

 

 

 

「地上までの護衛はしてやろう。ただし、()()()はお前たちで解決してみろ。それが条件だ」

 

 

【アストレア・ファミリア】の副団長。ゴジョウノ・輝夜が言い放った条件だった。

 

 

今回の事件はベル・クラネルが世界最速兎(レコード・ホルダー)として注目されるのが気に入らない連中が引き起こした騒動だった。そして、オラリオ(ここ)では()()()()()()()()()出来事だ。冒険者とは元より酒と女、富と名声に溺れる無法者達。

 

寧ろ、純粋な冒険を求めるような者が珍しいのだ。そして、活躍する者、有名になるものには先達から『洗礼』を受けるのもまた『冒険者』というものだ。この先本当に『冒険者』として活動していくのなら、『この程度』の騒ぎは自分達で解決してみろ!それが輝夜の言い分だった……。

 

 

「悪趣味ですね……面白いですか、こんなものを見て?」

 

「きついなぁ、アスフィ」

 

ベル・クラネル()の力を自分の目で確かめたい……そうおっしゃっていましたが、こんなものを見るためにわざわざ『ダンジョン』へ?」

 

「本当は『階層主』あたりと戦うところを期待していたんだけど、流石にそう上手くいかないか」

 

 

遠くの方からベル達の戦いを観戦するのは神ヘルメスとその眷属のアスフィ・アンドロメダ。今回の騒動はヘルメスが噂の【リトル・ルーキー】の実力を知りたいが為に、ベル・クラネルのことをよく思わなかった冒険者モルドを唆し【万能者(ペルセウス)】の作り出した魔道具(マジックアイテム)漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を渡している。

 

漆黒兜(ハデス・ヘッド)』の効果は『透明状態(インビジビリティ)』。装備した者は文字通り()()()()となることができる魔道具(マジックアイテム)。この魔道具(マジックアイテム)のせいでベルはモルドの姿を視認できず、苦戦を強いられている。

 

「もし、彼がここで彼が折れてしまったら?」

 

「器じゃなかった、ってことかな」

 

 

アスフィは決心した。もし彼の保護者に何か言われたら真っ先にこの主神を生贄に差し出そうと。

 

 

「ここにいたか」

 

「!【大和竜胆】どうしてここに⁉」

 

「そんなに難しいことじゃない。今回のアレはリヴィラの連中では実行不可能なものだ。それを可能にするには『神』のような頭が切れる奴と便利な魔道具(マジックアイテム)があれば十分可能にできる」

 

 

いつの間にかヘルメスとアスフィの背後にいたのは、【アストレア・ファミリア】のゴジョウノ・輝夜。神ヘスティアの救出を完了し、次に黒幕の確保に動いていた所だった。

 

 

「そして、こんな悪趣味なことを仕掛けるぐらいだ。あの兎がボコボコにされる場面を見たいはずだ。そして、あの場所を見渡せる所は限られている」

 

 

後は、その場所を回ればいい。と彼女は告げる。ゴジョウノ・輝夜はLv.5の第1級冒険者……。アスフィ・アンドロメダは【ギルド】の公式情報ではLv.2となっているが、実際はLv.4の第2級冒険者。ここで実力行使に出ても、結果は明白。もはや手詰まりか……。

 

「それと我らの主神様から神ヘルメス宛てに手紙を預かっておりますので」

 

 

輝夜の主神は女神アストレア。いくら主神から手紙を預かっているとはいえ、この状況で渡すものではないはず……。恐る恐る手紙を受け取り、内容に目を通したヘルメスとアスフィは顔色は青ざめていった……。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヘルメス。24階層の借りを返してもらいたいわ。(エレン)に変なちょっかいをかけないこと。もし、約束を破れば【ファミリア】の眷属()には悪いけど、【ギルド】にレベルを詐称していることを報告するわね!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

以前、【ヘルメス・ファミリア】は謎の黒ローブから冒険者依頼(クエスト)を脅される形で『24階層の異変の調査』を引き受け、【アストレア・ファミリア】に協力を求めていた。その協力のおかげで、重症者を含めた多数の怪我人は出たが、死者は0人。あれだけの大規模戦闘……。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、少なからず、犠牲者が出ていただろう……。

 

そして、【ヘルメス・ファミリア】は、本当の【ステータス】を【ギルド】には報告していない。本当の実力は団長がLv.4。副団長がLv.3。ほかの団員達もそれに近しい実力者揃いで、37階層の『深層』域まで潜ることのできる【ファミリア】なのだ。

 

もし。このことが【ギルド】に知られれば、当然ペナルティーやレベル詐称で低くしていた【ファミリア】の等級が上がり、今まで詐称してきた期間分の税金やなどが一気に請求してくるだろう……。

 

 

「先に言っておきますが、私達には何も知らされておりませんので、変な期待はしませんように」

 

 

輝夜に色々尋ねようとしたが、無駄なようだ。実際、ヘルメスはエレンについて本人に色々尋ねようとしていたが、まさかアストレアに釘を刺されるとは思わなかったようだった。

 

 

「それにしても……向こうは問題ないようだなぁ」

 

 

輝夜の視線の先には、今もリヴィラの冒険者達と戦闘するエレン達の姿があった。数では圧倒的不利ではあったが、その不利を覆す勢いがあった……。桜花と命が先頭で道を切り開き、千草が武器庫の役割を果たし、状況に応じた武器を前の2人に渡してサポートを、後方ではヴェルフが敵魔導士の『魔法』を防ぎ、エレンがヴェルフの護衛の役割を果たしていた。

 

「……エレンと言いましたか、彼は本当にLv.1ですか?」

 

「……Lv.2にしては苦戦している様子から見て、間違いないようだが……。それでもLv.2下位ぐらいの【ステータス】はあるんじゃないか?」

 

 

エレンの戦闘を見て、アスフィとヘルメスが彼が本当にLv.1の冒険者なのか疑問に持ち、輝夜はエレンの戦いぶりを黙ってみていた。エレンの戦いは戦闘にとって重要な『技と駆け引き』が全く無く。相手の攻撃を大盾で防ぎ、その後、防いだ大盾で相手を殴りつける、時にはぶん投げており『盾とは?』というような戦法だった。

 

ただ、そのやり方で苦戦はするものの、何とか相手を倒しヴェルフの護衛の役目を全うしていた。そんなやり方で相手を倒せるとなると【スキル】による【ステータス】の上昇……それも上昇量は【レアスキル】並みだと予想していた。

 

そして、ベルの方でも動きがあったようだ。やられるだけの状態が相手の攻撃を防げるようになり、遂には反撃に出れるようになっていた。アスフィの作り出した魔道具(マジックアイテム)漆黒兜(ハデス・ヘッド)』は透明になれるが、()()()()()()()()

 

ベルはモルドの『視線』を感じ取ることで、反撃に出ていた。気づけば()()()に値踏みされているような視線を感じ続けた。そのお陰か『視線』に人一番敏感になったベルはモルドの『視線』を感じ取り、攻撃を躱し、隙を見ては反撃に出ていた。

 

 

「くそが、くそが、くそがあぁっ⁉」

 

 

見えない自分自身がまさか反撃されるなんて思っていなかったモルドは焦り、とうとう剣を抜いた。ベルは相手が突進してくる気配を感じ回避。モルドは再び剣を構え、ベルに向かって突進する。

 

 

 

が……。

 

 

 

「なっ⁉」

 

 

ベルは見えないモルドに向かって砕けた水晶の結晶を投げつける。この結晶はモルドが最初の突進を仕掛けてきたときに、回避と同時に拾っていた物だった。その発想は、以前エレンが『ダンジョン』に初めて入った際、その辺に落ちてあった石を使って、『投石』に用いていた話を思い出したのが理由だった。

 

 

ベル投げつけた結晶の欠片はモルドの体や長剣に付着し、その輪郭がはっきりとそこに『何か』がいるのか視認できた。そして、姿さえ見えてしまえば、勝機は一気にベルに傾く。

 

 

「はぁぁ⁉」

 

「う、うおあっ⁉」

 

 

ベルは水晶が付着した長剣に向けて『ヘスティアナイフ』を振りかざして、叩き切る。だが、ベルは止まらない。その勢いのまま体を回転させ、左足を軸に右足を振り上げ、ベルに戦い方を教えたアイズ直伝の回し蹴りを繰り出した。

 

 

「がああッ⁉」

 

 

ベルの繰り出した回し蹴りがモルドの頭部に炸裂した。その威力は同じLv.2でも相手を吹き飛ばすには十分な威力であり、モルドの体は遠くに飛ばされ頭の装備していた『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』はベルの回し蹴りをもろに受けた影響かばらばらに砕け散った。

 

 

「く、クソガキがぁぁぁぁつ……!」

 

 

ベルの攻撃をもろに受けても、なお立ち上がるモルド。ベルの方もこれまで受けてきたダメージが響いており、満身創痍の状態。エレン達の方もまだ戦闘は続いていた。ベルは再び襲い掛かってくるモルドに備えて再び身構えた。

 

 

 

その時……。

 

 

 

「やーーーーーめーーーーーろーーーーーっ!!!」

 

 

激しい戦闘音とは違う声が周囲に響き渡る。その声はベル達がこれまで何度も耳にしてきた声だった。間違うはずがない女神の声だった。

 

 

「みんな心配かけてほんとごめん!見ての通り無事だ!君達もこれ以上無駄な戦いはやめるんだ!」

 

 

そこにいたのは女神ヘスティア。救出には輝夜さんが同行してくれることになっていたので、心配はなかったが、無事でよかったとエレンは思った。これで、()()()は戦う理由はなくなったわけだが向こうは……。

 

 

「神の指図ななんざに構う必要はねぇ⁉やれ、やっちまえ!!!」

 

 

どうやら、あちら側はやる気のようだった。やられっぱなしではいられないと。ここまで来たら引けぬ。とばかりに()()()()()()()()()()()()()()、武器を構えなおす。

 

 

「本当にまだやりますか?」

 

「「「「あ”あ”あ”?……はぁぁ⁉」」」」

 

 

エレンの問いに満身創痍になっていた上級冒険者達が声を荒げるが、『ある光景』を目にして驚きの声が響き渡った……。目にするのはエレンの『回復魔法』。しかも、超短文詠唱なのをいいことに次々と味方の回復を済ませていく

 

 

 

その時……。

 

 

 

「止めるんだ」

 

 

その静かな一言が空間を支配した。それは今まで感じたことのない言葉にできない『何か』だった。『恐怖』でもなければその逆の『安心』などでもない『何か』。逆らうことすらできない存在とでも言うのか……そんな感じだった。

 

 

「剣を引きなさい」

 

 

声の主は女神ヘスティア。ただ、ベルとエレンが知る女神ヘスティアとは全くかけ離れていた。聞いたことのない口調、見たことのない顔。今までの神ヘスティアを疑うレベルの変わりようだが、それを口にすることすら許されないかのような威圧感を放っていた。

 

 

「……うあああああああああ⁉」

 

 

1人の冒険者が逃亡したことをきっかけに、次々と逃げ出していった。モルドは最後まで残っていたが、近づく神ヘスティアに恐れて、叫びながら撤退していった……。

 

 

「ベル君、無事かい⁉」

 

「ほわぁっ⁉」

 

 

先程までの威圧感が無くなったと思えば、いつものヘスティアに戻っていた。それはもう大粒の涙を流しながらベルの胸に抱き着く姿はなんだかホッとする……。そんな姿だった。

 

 

「【セイクリッドフレア】……。お待たせ!ベル」

 

「あ!エレンさん。みんな……」

 

「大丈夫か、ベル?」

 

「ご事情は分かりますが、お一人で行ってしまわないでください!リリ達に相談するだけでもやりようはいくらでもあった筈です!」

 

 

エレンに回復魔法で治療してもらい声をかけられ、ヴェルフに苦笑いされ、リリに怒られる場面を命達とリュー達が微笑みながら外から見守る。先ほどまでの戦闘が嘘のような光景が広がっていた。

 

後は、約束通り【アストレア・ファミリア】に地上まで護衛をしてもらい帰るだけだ!と思っていたその時……。

 

 

 

『階層全体』に()()()()が起きた。




ここまで読んでくださりありがとうございます。

エレンのスキル【ウエスタ・ダイモーン】の登場でした。『ダイモーン』は、ギリシャ語で『守護者』の意味です。『盾士』はオリジナル設定。『堅守』、『魔防』は名前は原作では出てきますが、具体的な内容は多分出てなかったので、独自解釈で作らせていただきました。

「え?エレンの『スキル』チートじゃね?」と思われると思いますが、この先の展開的にこのぐらい盛らないと生きていけないぐらいひどい目に合うので……。

『スキル』や『魔法』については『ヘスティアの精霊』の関係上、女神由来の名前で発現します。

……まぁ将来、他の女神の名を関する『スキル』が発現しちゃうんですけどね……。

ヒント 「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
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