聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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前回の7巻は多くの誤字脱字があり、ご迷惑をおかけしました。

投稿主も、投稿前に確認作業はしていますが、見落とし等が多々あると思いますので、温かい目で見てもらえると幸いです。




8話 最後の英雄

「じ、地震っ?」

 

「いえ、これは……」

 

「『ダンジョン』が震えてるのか?」

 

 

千草、命、桜花が足元を見下ろしながらうろたえた。周囲の木々は左右に揺れ、近くの岩壁には大きな亀裂が走り、一部が崩れ落ちた。明かに『異常事態(イレギュラー)』の出来事にベル達はその場から動けずにいた。

 

 

「……おい。なんだ、()()

 

 

急に18階層全体が薄暗くなったと思うと、空を見上げていたヴェルフが呟いた。天井一面に生え渡る数多の水晶。その中で一際大きい水晶の中に、()()()()()……。

 

ただ、これだけは分かる。それはとても巨大で黒い物体だ。そして、その結晶に亀裂が走り、黒い物体が18階層に落ちてきた。

 

 

「まさか……⁉ モンスター⁉」

 

「ありえません、ここは18階層⁉ 安全階層(セーフティポイント)ですよ⁉」

 

 

エレンの言葉にリリが悲鳴を上げるように叫ぶと、落ちてきた黒い物体が()()()。その姿には見覚えがあった。18階層を目指していたベル達の前に現れた17階層の『階層主』。【ロキ・ファミリア】の第1陣が倒したはずの『モンスター』。

 

一度倒されると2週間は復活しないはずの『階層主』。色は違うが、見間違うはずのない。推定Lv.4の怪物……。

 

 

「ゴライアス……」

 

 

ベルがその『モンスター』の名を呼ぶ。そして、呼ばれた存在はその巨体を大きく起き上がらせ、産声を上げた……。

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

産声を上げるのは『迷宮の孤王(モンスターレックス)』ゴライアス。17階層という定められた領域を飛び越え、『モンスター』が生れ落ちない安全階層(セーフティポイント)に現れた怪物。1000年の歴史を持つ『神時代』でも前代未聞の『異常事態(イレギュラー)』。

 

 

「は、はひゃあああああああああああああああああっ⁉」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアッ!!!」

 

 

叫び声が聞こえたと思うと、『黒いゴライアス』は声の方に進んでいった。声からしてベルを襲っていたモルド達だろうか。どうやら運悪く、『黒いゴライアス』が落ちてきた場所のすぐ近くにいたようだ。

 

 

「……は、早く助けないと⁉」

 

 

真っ先に動いたのはベルだった。モルド達の阿鼻叫喚の聞き、恐怖を振り払って飛び出そうとする。

 

 

「待ちなさい」

 

「っ⁉」

 

 

ベルが走り出そうとした瞬間ベルの前に立ち塞がるのは【アストレア・ファミリア】のリュー・リオンとネーゼ・ランケットの2人だった。

 

 

「本当に、彼らを助けにいくつもりですか?このパーティで?」

 

「やめとけやめとけ。アレはただの『ゴライアス』じゃねーぞ?少なくとも、”Lv.5”はある」

 

 

彼女たちは告げる。無情とも言えるほどの冷徹に、そして絶望的な情報を……。『黒いゴライアス』の潜在能力(ポテンシャル)はLv.5。上級冒険者が5人にも満たないベル達の臨時パーティでは力の差は言うまでもない。

 

『主神を神質にするような奴らを助ける価値はあるのか?』と正義の眷属達はベルに尋ねる。

 

 

「助けましょう」

 

 

間髪入れずにベルは答える。

 

 

「貴方はパーティのリーダー失格だ」

 

 

正義の妖精は非難の言葉をかける。正義の狼は鋭い眼光をベルに向ける。

 

その言葉と眼光は、今まで自分に良くしてもらったベルには、何より胸に突き刺さっただろう。その鋭い胸の痛みに打ちのめされそうになった次の瞬間……。

 

 

「だが、間違っていない」

 

「ま!うちの団長も同じことを言いそうだしな!」

 

 

彼女達は笑った。ベルの発言はリーダーとしては失格だろう。だが、それでいい。少なくとも、アリーゼならそう言うだろうと……。正義の妖精と狼は『黒いゴライアス』にへと向かった。

 

 

「準備はいいか?ベル」

 

 

エレンが後ろから声をかける。ベルは後ろを振り返ると、リリが、ヴェルフが、命が、桜花が、千草が、そしてヘスティアが。誰も異を唱えず、笑みを浮かべ、頷いた。

 

 

「(ごめん……ありがとう)」

 

 

ベルは胸の奥で告げ、叫んだ。

 

 

「行こう!」

 

 

向かう先は『黒いゴライアス』。彼らがやるのは『階層主』の討伐。その挑戦は『無謀』か或いは『破滅』か。それとも……。

 

 

 

『精霊』の助力によって、もたらされる『勝利』か……。

 

 

 

「……行ったか」

 

 

ベル達が『黒いゴライアス』に向かっていくのを遠くから見ていたのは、【アストレア・ファミリア】の副団長。ゴジョウノ・輝夜。すぐ近くには神ヘルメスとその眷属のアスフィ・アンドロメダがいる。

 

 

「神ヘルメス。確認だが、あの『黒いゴライアス』は()()()()()と同じか?」

 

「現物を見てないから何とも言えないが、同じと思って間違いないぜ。輝夜ちゃん。さすがに()ほどの強さはないはずだが……」

 

「当然だ!そんな怪物。二度と相手したくないわ!!」

 

 

輝夜とヘルメスの言っている『奴』とは、7年前に『大抗争』の時にとある1柱の邪神が『深層』で神威を解き放ち、地上に召喚しようとした黒い竜である。その強さはLv.7クラスの階層主級。

 

【ロキ・ファミリア】のリヴェリア、ガレス、アイズと【アストレア・ファミリア】の総動員で、何とか討伐することができた。その竜の名は『神獣の触手(デルピュネ)』。この竜の討伐で【アストレア・ファミリア】は全員が【ランクアップ】。リヴェリアとガレスもLv.6に【ランクアップ】している。

 

「輝夜ちゃんはあの『階層主』を。アスフィはリヴェラに行って応援を呼んできてくれ」

 

「応援?まさかアレと戦う気ですか⁉」

 

「あれを見ろ。アンドロメダ。洞窟は見ての通り塞がれている。どうやら『ダンジョン』は我々を逃がすつもりはないようだ」

 

「~~~~~~~~~~っ⁉」

 

 

ヘルメスの言葉に耳を疑うアスフィに、逃げても無駄だ。と言わんばかりに輝夜が告げる。おそらく『黒いゴライアス』を討伐しない限りここからの脱出はできないだろう。アスフィはやけっぱちになりながらリヴェラを目指して走り出し、輝夜は『黒いゴライアス』へと、向かった。

 

 

 

***

 

 

 

「「はああああああああああああっ!!!」」

 

 

リューとネーゼの2人は『黒いゴライアス』に攻撃を仕掛けていた。リューはエルフの森に生える大聖樹の枝から作り出された『アルヴス・ルミナ(木刀)』で、ネーゼは『アダマンタイト』で作られた双剣で少しでもダメージを与えるべく攻撃を続けていた。

 

 

「ちっ⁉こいつとんでもなく硬いぜ!!おいリオン!そっちはどうだ?」

 

「こっちの同じ手応えです。仮にダメージを与えれても、決定打に欠ける」

 

 

階層主との戦闘には魔導士などによる砲撃が必要不可欠。リューも【発展アビリティ】で『魔導』を持ってはいるが、彼女だけでは火力不足なのが現状。

 

 

「おやおや、正義の眷属たる者がもう弱気になっているのですか?」

 

「輝夜⁉今までどこに?」

 

「何、神ヘルメスと少しなぁ……」

 

「おいおい。こんな状況に喧嘩は止してくれよ?」

 

 

突然現れた輝夜に、今まで何をやっていた!とリューが声を荒げるが、涼しい顔をする輝夜。ネーゼはいつものは止してくれよ?と言う。リューと輝夜はお互いライバルのような関係で少しのことで喧嘩になっては、模擬戦をして白黒をつけたりしている。

 

 

「神ヘルメスからの情報だ。あの『黒いゴライアス』は7年前の『奴』と同種らしい」

 

「……それは、厄介ですね」

 

「クソ⁉薄々感じてはいたが、めんどくせえ!!!」

 

 

輝夜が持ってきた情報を聞き、リューは表情を曇らせ、ネーゼはその苛立ちを抑えきれずにいた。7年前に倒した『神獣の触手(デルピュネ)』は確かに強かった。だが、それだけではない。彼女達が最も苦戦を強いられたのは、()()()()()()()()()()……。

 

 

 

***

 

 

 

「前衛、引けえぇっ!でかいのぶち込むぞ!」

 

 

前線に号令が飛ぶと同時に正義の眷属達は『黒いゴライアス』から距離をとった。どうやら、アスフィが呼びに行った、リヴィラの魔導士達の『詠唱』が完了したようだった。階層主討伐に求められるのは圧倒的な『火力』。

 

前線が階層主の注意を集めている間に後衛は『詠唱』し、『砲撃』の準備をする。これが階層主討伐の常套手段である。

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ⁉」

 

 

『黒いゴライアス』を多属性の攻撃魔法が襲う。エルフを始めとした魔導士達による一斉砲撃。火炎の攻撃、雷の槍の攻撃、氷柱の雨が降り、風の渦が巻き起こった。そこに『魔剣』による攻撃を加わり、『黒いゴライアス』の巨体を覆う尽くす程の規模があった。

 

 

「ケリをつけろ。てめえ等ぁ!! たたみかけろおおおおっ!」

 

 

魔導士達の一斉砲撃が止み、立ち込めた煙が薄れると、そこにはボロボロの『黒いゴライアス』がいた。冒険者達はこれを好機に一気にたたみかけるべく、『黒いゴライアス』へと進んでいった。勝利はもうすぐだと。笑みまで浮かべている冒険者までいた。

 

 

 

だが……。

 

 

 

「クソ⁉」

 

「やはり⁉」

 

「冗談だと言ってくれよ⁉」

 

 

正義の眷属達だけは違った。彼女達は()()()()()。『どうか、この予想は外れてくれと』。最悪の状況。()()()()()()()()()()()()()。『とある能力』の存在を。

 

 

「『自己再生』⁉」

 

 

信じられないものを見たかのようにアスフィは叫んだ。7年前に現れた『神獣の触手(デルピュネ)』も持っていた『自己再生能力』。どんなに強力な攻撃や魔法を叩き込んでも、すぐに再生される『神獣の触手(デルピュネ)』にどれだけ苦しめられたことか。

 

その後の『黒いゴライアス』は、自身の大きな腕を勢いよく地面に向けて振り下ろし、地割れと衝撃波を発生させた。その威力は『黒いゴライアス』の近くにいた冒険者達はもちろん、遠くにいた魔導士達の元まで及び、その全てを吹き飛ばした。

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

『黒いゴライアス』は、大きな雄たけびを上げ、階層中の全ての『モンスター』を呼び押せた。『モンスター』達は返事をするように雄叫びを上げ、たくさんの冒険者達が倒れているこの大草原へと押し寄せていた。

 

 

「クラネルさん!無事ですか!!」

 

「リューさん⁉はい。僕は何とか……」

 

「……クラネルさん、ここに残りなさい。周囲と協力して、『モンスター』の対処を」

 

「リュ、リューさん達は⁉」

 

「私達はあのゴライアスを押さえます。もう一度一斉射撃を行うにせよ、できるだけ時間を稼がなくては。……ご武運を」

 

 

リューは話を切り上げ、先に戦闘をしている輝夜とネーゼの元へと走り出した。

 

 

「(やるしかない)」

 

 

ベルは与えられた起死回生の【スキル】。【英雄願望(アルゴノゥト)】の発動に踏み切っていた。体力と精神力(マインド)を大幅に消費することで次の行動を強化することができる【スキル】。目指すは最高出力の一撃。半端な蓄力(チャージ)ではあの『黒いゴライアス』には通用しない。

 

それが分かっているベルは周囲からの叫び声に泣きそうな顔で歯を食いしばりながら、蓄力(チャージ)を続けていた。

 

 

 

***

 

 

 

「……うぅぅ、あ、ぁぁ……」

 

「【セイクリッドフレア】!もう大丈夫です!今回復魔法をかけています」

 

 

エレンは先程の『黒いゴライアス』によって壊滅した。冒険者達や魔導士達を回収し、拠点になっている小高い兵で治療を続けていた。エレンの回復魔法は『全癒魔法』。骨折などの重傷もエレンの回復魔法にかかれば、すぐに癒すことができる。

 

 

「ヘスティア様。ここの怪我人は全て治療が終わりました。自分は動けない冒険者を回収に行ってきます!」

 

「もう7回目だぜ⁉さすがに少し休んだほうが……」

 

「ここで動けるのは者は限られています。それに疲れても自分の魔法ですぐに回復できるので!それじゃあ、行ってきます!!」

 

 

エレンには【ウエスタ・ダイモーン】の効果で全アビリティの超高補正を受けている。『モンスター』との戦闘を避ければ数人は同時に運ぶことができる。戦力の立て直しのため、怪我人の治療に専念していた。

 

エレンは再び戦場を走り、怪我人の回収するべく、足を動かしていた。『モンスター』との戦闘を避け、ほかに動けない冒険者がいないか辺りを見渡していた。

 

 

 

その時……。

 

 

 

「うおっっ⁉」

 

 

白い稲光と凄まじい爆音が響き渡った。音の聞こえた方を振り返ると……。視線の先には()()()()()『黒いゴライアス』の姿が……。

 

 

「……まさか⁉ベルか?」

 

 

エレンのこの状況に見覚えがあった。それは、過去に『インファイト・ドラゴン』に追われている時に、ベルの【スキル】で強化された【フャイアボルト】で倒した状況に似ていたからだ。いくら『階層主』とはいえ、頭部を失えば、生きてはいないだろう。とエレンが思っていた。

 

 

 

その時……。

 

 

 

頭部を失った『ゴライアス』は、()()()()()()()。首からは赤い光が漏れ出て、あっという間に頭部が再生されると口から『魔力』の塊を放出した。その塊が直撃したのか、1人が宙を舞い、それを庇うようにもう1人現れた。

 

だが、『黒いゴライアス』にとっては関係ない。空中でロクに身動きが取れない2人をその巨大な腕で薙ぎ払い、遠くに殴り飛ばした。エレンからは遠すぎてよく見えなかったが、1人は()()()()()……。

 

 

「……!!! クソ⁉」

 

 

頭部を失っても死なない『黒いゴライアス』に唖然としていたエレンだが、ふと我に返り、走り出した。殴り飛ばされた2人の内1人がベルだ。だが、距離が遠すぎた。ベル達が殴り飛ばされた方向は、エレンのいる場所から最も遠い方向だった。

 

 

 

だが……。

 

 

 

「クソが!!!」

 

 

そんなエレンの妨害をしようとする『存在』がいた。それは大量の『モンスター』の集団である。『マッドビードル』、『バグベアー』、『ガン・リベルラ』、『ミノタウロス』。どれもLv.2の強さを持っている『モンスター』。

 

 

「悪いけど……。先を急いでるんだ⁉」

 

 

エレンは落ちている長剣を拾い上げ、左腕で大盾を構えて、右手に長剣を握りしめた。遠回りをしている暇はない。戦闘を回避している場合じゃない。目指すは最短距離での突破。

 

 

「そこをどけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

エレンは自身に青い炎を纏い『モンスター』の集団に突っ込んだ。『強行突破』。ベルの元へ行くべく、最短距離を選んだエレン。鋭い爪で引き裂かれようが、毒針で体を刺されようが、強力な打撃を受けようが、エレンの青い炎は全ての傷を癒す。

 

『モンスター』を切り伏せ、武器が壊れれば、新しい武器を拾い上げ、再び道を切り開くべく。『モンスター』の集団に突っ込んでいくエレン。その戦い方はとても無様な恰好だろう。とても『英雄』らしくない戦い方だ。

 

だが、それでいい。エレンは『英雄』ではない。エレンのこの自殺行為と言うべき行動原理は、エレンは自覚してはいないが、『英雄』を助けようとする『精霊』としての行動であることを。

 

 

 

***

 

 

 

「桜花っ……」

 

「桜花殿!」

 

「くっ⁉」

 

「こいつは……。ひでぇ」

 

 

『黒いゴライアス』に重傷を負った桜花とベルを千草と命、リューとネーゼの手で安全な場所に運び込まれていた。2人は意識不明の重症。リューはダメもとで自身の回復魔法を使い治療を試みるが、エレンの回復魔法みたいな速効性はない。

 

そして、この重傷を治療できる高等回復薬(ハイ・ポーション)がない。ベル達の傷は通常の回復薬(ポーション)では弱すぎる。骨折などの重傷は通常の回復薬(ポーション)では治すことができない。

 

「ベル君!」

 

「神ヘスティア……」

 

「っ!!エルフ君っ、ベル君の状態は⁉」

 

「息はありますが、体の傷が深い」

 

「っ⁉ 獣人君!!エレン君を探してくれ!!あの子ならベル君達を治せる!!」

 

「了解!女神様」

 

 

ヘスティアはベルの状態を聞き。近くにいたネーゼに指示を飛ばした。獣人の嗅覚を頼りに、エレンの捜索をお願いした。そして、ヘスティアは確信した。あの『黒いゴライアス』を倒せるのはベルだと。

 

「……エルフ君、行ってくれ。少しでも長く、時間を稼いでくれ」

 

「神ヘスティア、しかし……」

 

「君だって見ただろう⁉ベル君ならやれるんだっ、ベル君なら、あの『モンスター』を倒せる!」

 

「……わかりました」

 

 

リューは再び『黒いゴライアス』と戦うべく体を起こし、戦場へと走り出した。

 

 

「……目を覚ますんだ、ベル君!聞こえるだろう、彼女達の声が⁉みんな戦っている、あんな恐ろしい相手に向かって!」

 

 

ヘスティアはベルの手を握って呼びかける。怪我を負う眷属をヘスティアは泣きそうな表情で戦場へ駆り立てた。懸命に声を張り、必死になって訴え、その深紅(ルベライト)の瞳が開けるように懇願する。

 

 

「(声が、聞こえる)」

 

 

ベルは暗い闇の底にへと沈んでいた。いくら自分自身に言い聞かせても、体は動かず、不滅の炎を授けてくれた女神の声が聞こえる光の向こう側から、どんどん離れていった……。

 

 

「もし、英雄と呼べる資格があるとするならば」

 

「ヘルメス⁉」

 

「剣を執った者でもなく、盾をかざした者でもなく、癒しをもたらした者でもない」

 

 

ベルは知っている。それは遥か遠い日に聞いた声。祖父の言詩(うた)

 

 

「己を賭した者こそが、『英雄』と呼ばれるのだ」

 

 

それは、幼いベルが『英雄』になりたいと思うきっかけになった。大好きなだった言詩(うた)

 

 

「仲間を守れ。女を救え。己を賭けろ」

 

 

気が付くと、ベルの意識を()()()が包む。不滅の炎に似た温かな炎だった。

 

 

「折れても構わん、挫けても良い、大いに泣け。勝者は常に敗者の中にいる」

 

 

ベルは()()()()()()()()()。今まで自分を何度も癒してくれた。優しい炎を……。

 

 

「願いを貫き、想いを叫ぶのだ。さすれば……」

 

 

そして、ベルの意識を包んだ青い炎は、暗闇の先にある女神の声が聞こえる光の向こうへと、ベルを運んだ。

 

 

「それが、一番格好いい英雄(おのこ)だ」

 

 

 

***

 

 

 

「ッッッ!!!」

 

「ベル、くん……」

 

「間に合ったか⁉」

 

 

ベルが目を覚ますと、視界にはヘスティアとボロボロのエレンの姿があった。ネーゼがエレンを見つけるのはそう難しくはなかった。エレンは大量の『モンスター』に囲まれながらも、一歩一歩。確実にベルの元に進んでおり、すぐにネーゼに見つけてもらえた。

 

その後、エレンの周りを囲んでいた大量の『モンスター』はネーゼによって倒され、エレンをベルの下まで連れていき、回復魔法で無事意識を回復させた。

 

 

「ベル様ぁ!」

 

 

遠くから大きな黒大剣を抱えてきたリリが走ってきて、ベルに黒大剣を手渡した。黒大剣を受け取ったベルは『黒いゴライアス』を見据えていた。

 

 

 

憧憬(しょうけい)を燃やせ。願望(ねがい)をほえろ。

 

 

 

蓄力(チャージ)を開始する。伴って、神によって刻まれた背の刻印が灼熱の色に燃え上がった。

 

 

「(あの人に、恥じないように……)」

 

 

思い浮かべるのは『アイズ・ヴァレンシュタイン』。ベルが憧れる存在。いつか追い付いて、自分の想いを伝えたい。その一途の想いが【スキル】として発現するほどに。

 

 

「(何よりも。大切な仲間達を救うために……)」

 

 

思い浮かべるのは多くの仲間の姿。自分を何度も癒してくれたエレン。自分に最高の防具を作ってくれたヴェルフ。自分をたくさんの知識を教えてくれたリリ。そして、ここまで助けに来てくれた。【タケミカヅチ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】の面々。

 

 

 

限界突破(リミット・オフ)』。

 

 

ベルのその想いが……。『神の恩恵(ファルナ)』をも超克する想いの丈が、境界を突破し、【英雄願望(スキル)】の力を一時的に昇華させた。リン、リン、という(チャイム)の音が、ゴォン、ゴォォン、という大鐘楼(グランドベル)の音に成り代わる。

 

 

 

***

 

 

 

18階層に大鐘楼(グランドベル)の音が鳴り響いていた。まるで『勝利の鐘の音』のような力強い鐘の音に、多くの冒険者達は奮い立たせるには、十分なものだった。

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

だが、その大鐘楼(グランドベル)の音を快く思わない存在がいた。『黒いゴライアス』だ。あれは『敵』だ!『黒いゴライアス』は、ほかの『モンスター』に号令を掛けた。あれを潰せと。多くの『モンスター』達が大鐘楼(グランドベル)の音の発生源に集まっていった。

 

 

「兎を死守するぞ! エレン。お前も付き合え!」

 

「はい!」

 

「ゴライアスが……!」

 

「クラネルさんを『敵』と認めましたか」

 

「あの小僧の所に、絶対に行かせるな!」

 

 

ネーゼとエレンが蓄力(チャージ)を続けるベルを守るべく押し寄せてくる『モンスター』の波に立ち向かい。アスフィ、リュー、輝夜の3人は『黒いゴライアス』の足止めをする。全ては『最高の一撃』を叩き込むため、各々のできることを最大限に実行していた。

 

 

「【今は遠き森の空。無窮(むきゅう)のや夜天に(ちりば)む無限の星々(ほしぼし)】」

 

 

『黒いゴライアス』に高速で動きながら『詠唱』するのは、【アストレア・ファミリア』のリュー・リオン。本来なら『魔法』を発動するには多大な集中力と正確な『詠唱』が求められ、多くの魔導士達は例外なく足を止め、『詠唱』のみに専念し、『魔法』の準備に取り掛かる。

 

しかし、リューは『詠唱』と『戦闘』の両立させる『平行詠唱』の使い手。『攻撃』、『移動』、『回避』、『詠唱』、この4つの行動を高速で同時展開し、【剣姫】に引けを取らない戦闘技術と【九魔姫】以上の【平行詠唱】を可能にし、【発展アビリティ】【魔導】を習得している『魔法剣士』である。

 

 

「あと少しくらい大人しくしてなさい⁉」

 

「ッッ⁉」

 

 

『黒いゴライアス』が両目を押さえて絶叫を上げる。原因は【万能者(ペルセウス)】の至上魔道具(とっておき)。『飛翔靴(タラリア)』で空中を飛行していたアスフィが『黒いゴライアス』の両目に向けて『爆炸薬(バースト・オイル)』を投擲したからである。いくら『自己再生能力』を持っているとはいえ、目を潰されれば、足止めには十分。

 

 

 

と思っていたが……。

 

 

 

「⁉ そんな……」

 

 

両目を潰され、再生もされていないのに、大鐘楼(グランドベル)の音を頼りに、足を進める『黒いゴライアス』にアスフィは驚き、声を上げる。『自己再生能力』があるとはいえ、『痛み』は発生する。両目をやられれば、想像を絶する痛みのはず……。それなのに『黒いゴライアス』はこちらを見向きもしないのだ。

 

 

「そんなに『兎』が怖いか?デカブツめ!」

 

 

『黒いゴライアス』の進む先で待ち構えるのは【アストレア・ファミリア】のゴジョウノ・輝夜。彼女は自身の刀『彼岸花』を鞘に納めて、意識を集中していた。放つは必殺の居合。彼女の技では分厚い肉体を持ち、『自己再生』を持つ『黒いゴライアス』とは相性が悪いと思い、今まで使ってこなかった『抜刀術』。

 

 

「【禍つ彼岸の花】」

 

 

その技は『魔法』と組み合わせた『魔と刀』の『複合抜刀術』。任意の位置に『魔力』の斬撃を生み出し、包囲した敵に神速の居合を放つ技。その名も……。

 

 

「【ゴコウ】!」

 

 

彼女は5つの斬撃を、あえて()()()()()()()()()()()()()()()。5つの線が1つの線のように、()()()()()()()()()。1度で斬り落とす必要はない。5つの斬撃で、()()()()ことで、()()()()()()()()()()()()

 

 

「⁉」

 

 

『黒いゴライアス』は何が起こったのか理解できなかった。目をやられ、大鐘楼(グランドベル)の音が聞こえる方に進んでいたのに、突然倒れたのだ。起き上がろうとしても、うまく起き上がることもできず混乱していると、声が聞こえた。

 

 

「「【星屑の光を宿し敵を討て】!」

 

声の正体は、緑風を纏った無数の大光玉を生み出し、一斉射撃の準備をするのは、先程まで『詠唱』をしているリューだった。『右脚』を奪われ、ロクに身動きの取れない『黒いゴライアス』に目掛けて、彼女は己の『魔法』を行使した。

 

 

「【ルミノス・ウィンド】!!」

 

 

大量の星屑の『魔法』が『黒いゴライアス』に次々と叩き込まれる。魔法種族(エルフ)に相応しい高い『魔力』、Lv.5の【ステータス】、『魔導』によって高められた『魔法』は、Lv.5の潜在能力(ポテンシャル)を持つ『黒いゴライアス』でも、無視できない大ダメージを出していた。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

「「「っ⁉」」」

 

 

だが、一筋縄で行かないのが『階層主』という存在だ。『黒いゴライアス』は2本の腕を大きく振り下ろし、再び、地割れと衝撃波を発生させた。3人は直撃こそ避けたが、衝撃波をモロに受け、遠くの場所まで吹き飛ばされたしまった。

 

 

「ぐっっ⁉」

 

「っっっ⁉」

 

「しまった⁉」

 

 

3人を吹き飛ばした『黒いゴライアス』は『自己再生能力』を最大限に発動し、3人にやられた両目、右脚、『魔法』で受けた傷を再生させ、再び歩みを進めようとした……。

 

 

 

その時……。

 

 

 

「【フツノミタマ】!!」

 

 

【タケミカヅチ・ファミリア】のヤマト・命の『魔法』が『黒いゴライアス』を()()()。だが、『痛み』は無い。彼女の『魔法』は一振りの光剣を出現させ、『重力の檻』を発生させる。『超重圧魔法』。

 

 

彼女は3人の戦闘に付いていけないことを実感し、『切り札』である『魔法』の準備をしていた。『ダンジョン』のような閉鎖空間では、崩落や広範囲の『魔法』の為、味方を巻き込む危険性を考慮し、主神タケミカヅチから使うな。と厳命されていた『魔法』。

 

だが、18階層は天井が最も高い空間。加えて3人が衝撃波の影響で『黒いゴライアス』から離れたことにより、発動に踏み込むことができた。その威力は格上の相手を十分倒せる程の重力を発生させる。()()の『モンスター』はその重力に耐え切れず、息絶える。

 

 

 

はずなのだが……。

 

 

 

「ぐ、ぅぅぅぅぅぅぅ……⁉」

 

 

光剣で貫き地面に縫い付けしていた『黒いゴライアス』が、耐え切るどころか、ぐぐぐぐ、とゆっくりと身を持ち上げていく。()()()()()()。『黒いゴライアス』の圧倒的な能力(ステイタス)に、歯が立たなかった。

 

「ですが……。まだ!!」

 

 

未だベルの蓄力(チャージ)は終わらない。少しでも時間を稼ぐべく、命は自身の全精神力(マインド)を注ぐ。そして、その彼女に()()()()()がいた。

 

 

「ガアアアアアアアア!!」

 

「⁉」

 

 

現れたのは熊型の『モンスター』。『バグベアー』。そして、今の命は『結界』の維持で身動きができない状態。もし今『バグベアー』への対処をしようものなら、『黒いゴライアス』を閉じ込めている『結界』が無くなってしまう絶体絶命のピンチ。

 

 

「おおおおおおおおお!」

 

「ハァアアアアアアア!」

 

「千草殿⁉それに、桜花殿まで⁉」

 

 

そんな危ない彼女を救うのは、同じ【ファミリア】のヒタチ・千草とカシマ・桜花の2人だった。重症だった桜花をエレンが治療し、ベル同様。意識を回復した後、命の『魔法』を見て、彼女を探している所だった。

 

 

「踏ん張れよ!命!!」

 

「頑張って!命!」

 

「かたじけない!」

 

 

千草と桜花の助けにより、命は『結界』の維持に集中できるが、それでも、刻一刻と、確実に、『結界』は破られようとしていた。

 

 

 

***

 

 

 

 

「虫のいい話だ、分かってるっ、でも、助けたい(やつ)がいるんだ! 頼むっーーーお前を砕かせてくれ!!」

 

 

ヴェルフは1人森を走りながら、肩に担いでいた。『魔剣』に語り掛け、許しを請いていた。この『魔剣』はヴェルフが【ヘファイストス・ファミリア】に入団直後に主神ヘファイストスに命じられて打った、言わば眷属(ファミリア)として、初めての作品だった。

 

 

「今貴方が打てる。最高の作品を打ってみなさい」

 

 

それが、ヘファイストスから命じられた内容だった。ヴェルフは主神の注文通りに全力で作品を作った。確かにヴェルフが作った『魔剣』は、過去最高の仕上がりだった。だが、同時に気づいてしまった。

 

 

 

()()()()()()……。

 

 

 

ヴェルフの作った『魔剣』は()()()()()()()を出せるだろう。同時に()()()()()()()()()『魔剣』でもあった。ヴェルフは『魔剣』が嫌いだ。『魔剣』は使い手を残して絶対に砕けていく。使い手に安易な力を与えて、腐らしてしまう。とりわけ一族(クロッゾ)のものなら、なおさらだった。

 

 

「意地と仲間を秤にかけるのは止めなさい」

 

 

ヴェルフが初めて打った作品をヘファイストスに預ける時に言われた言葉だった。その言葉が、今もヴェルフの頭の中で響いている。『魔剣』はその『力』。使用限界を迎えれば木っ端微塵になって砕け散る。それが『魔法』と同じ力をもたらす代償。避けられない魔の武器の末路だった。

 

使い手を残して逝く武器達が。武器としての本懐を果たしてやれない、そんな『彼等(魔剣)』の定めが、大っ嫌いだ。

 

 

 

だが……。

 

 

 

そんな彼に『友』ができた。『魔剣』ではなく『防具』を欲しがってくれた『友』ができた。その『友』を助けたい。だから『魔剣』を使う。今まで、武器としての本望を遂げられないのなら、人知れず眠り続けていろと。その感傷を……。『意地』を通すのをやめ、『仲間(ベル)』の元へと、走っていた。

 

 

 

***

 

 

 

「破られますっ……⁉」

 

 

遂に命の『結界』が破られ、『黒いゴライアス』が解放された。衝撃波で引き飛ばされた3人も前線に復帰し、迎え撃つ準備に入っていた。

 

 

「お前等ァ! 死にたくなかったらどけぇええええええええええ!!」

 

「「「!」」」

 

 

放たれるのは『クロッゾの魔剣』。かつて『海を焼き払った』とまで言われる『伝説の魔剣』がその威力を解放させた。

 

 

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ⁉」

 

 

誰もが認めざるえない火力。その威力は『黒いゴライアス』の『自己再生』が間に合わないほどの炎が巨人の体を焼き尽くす。だが、()()()()()()……。ヴェルフの放った『魔剣』は全身にひびが入り、砕け散った。

 

 

「……すまねぇ」

 

 

武器としての矜持……。たった一度振るわれ、その命を終わらせる『魔剣』にヴェルフはうつむきながら、呟いた。

 

 

「あれが、『クロッゾの魔剣』……!」

 

「超える⁉ 正式魔法(オリジナル)を⁉」

 

「!! いや、まだだ⁉」

 

 

今もなお、火焔の大渦が、『黒いゴライアス』焼き尽くすのを、目の当たりにし、リューとアスファはその力が本来なら正式魔法(オリジナル)より、低い威力しか出ない『魔剣』がそれを大きく上回る『クロッゾの魔剣』に、驚嘆の声を上げていたが、輝夜が()()()()()()()

 

『黒いゴライアス』は『自己再生』をやめ、口に『魔力』を集中させていた。今の自身の体を燃やす炎の前には『自己再生』は意味がない。と判断した巨人は再生に使っていた『魔力』を攻撃に変換していた。

 

咆哮(ハウル)

本来なら、相手を『恐怖』を喚起し、束縛する『威嚇』だが、『黒いゴライアス』は自身の『魔力』を込めることで、飛び道具のように扱っていた。今から放たれるのは、()()()()。目標は、今もなお、大鐘楼(グランドベル)の音を鳴らす白髪の人間。

 

 

「やばっ⁉」

 

「おい⁉エレン⁉」

 

 

ベルの前に立ち、大盾を構えるエレンにまさか!と声をかけるネーゼ。あの『咆哮(ハウル)』を防ぐ。Lv.1の冒険者が『階層主』の攻撃を防ごうとする。ベルをかばった桜花以上のやばい行動。

 

 

「(あれ?これって結構、まずいんじゃ……)」

 

 

今更そんなことを考えるエレンだが、『黒いゴライアス』は最大火力の『咆哮(ハウル)』を放つ。巨大な『魔力』の塊が、()()()()を纏うエレンに直撃した。

 

 

「……。あれ? 生きてる?」

 

 

確かに直撃した。それなのに生きてることに疑問を抱くエレン。いくら【ウエスタ・ダイモーン(スキル)】で【ステータス】の強化や『魔防』が発現するとはいえ、()()()()()()()()()()。ふと、視線を自身に向けると、体には温かな翡翠色の『魔力』が纏われていることに気づく。そして、翡翠色の『魔力』が拡散し、消えてなくなると、頭部に激しい痛みが走った。

 

 

治療士(ヒーラー)が『階層主』の攻撃を防ごうとするとは馬鹿か?貴様は⁉」

 

「痛ッッ⁉」

 

「まぁ、よいではないか、【ナイン・ヘル】。神々の言うところの「結果良ければ」と言うやつではないか?」

 

「私が【緑光の加護(ヴェール・ブレス)】で守ってなかったら、この者は消し飛んでいたぞ!」

 

 

後ろから声が聞こえると、第2陣として出発した筈のリヴェリアと椿。そして、エルフの団員が数人後ろに控えていた。

 

 

「リヴェリアさんに椿さん! どうしてここに?」

 

「地上を目指していた時に『ダンジョン』の()()()()が起きてな。『お前たちが18階層に野暮用がある』と言っていたのを思い出して、部隊をフィンに任せて戻ってみれば、この有様というわけだ」

 

 

どうやら、あの地震は地上を目指していた。【ロキ・ファミリア】の所まで響いていたようだった。そこで、偵察部隊としてリヴェリアや椿の含めた数人のメンバーが18階層まで引き返したようだった。

 

 

「しかし、18階層に『階層主』が現れるとは……。これは『イレギュラー』か?」

 

「まず、間違いないだろう。『ダンジョン』の揺れも、おそらくはあの『階層主』が原因と見て問題ないだろう」

 

 

2人が『黒いゴライアス』を見据えて、戦闘準備をしようとしたその時、白い光を帯びた少年が、2人のすぐ近くを通り過ぎた。

 

 

「なっ⁉」

 

「あれは……。ヴェル吉と契約してる小童か?」

 

 

『黒いゴライアス』に向けて走り出す少年。多くの冒険者達が少年の進路から離脱する。そして、『黒いゴライアス』と接触した瞬間。純白の極光がすべての冒険者達の視界を埋め尽くした。

 

 

「……すごい」

 

「消し飛ばした、だと……」

 

「はは、これは、笑うしかないな」

 

 

エレン、リヴェリア、椿の目に映るのは上半身の無い『黒いゴライアス』の姿だった。胸にある『魔石』ごと消し飛ばされた『黒いゴライアス』は残された下半身を灰に変えて、消滅した。

 

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

大歓声が広がった。多くの者が勝利を噛みしめ、分かち合っていた。

 

 

「エレン。お前は負傷者の手当てに行け。椿、お前は我々と周囲の『モンスター』の掃討に行くぞ」

 

「はい」

 

「承知した」

 

 

 

***

 

 

 

「ああ……ああっ、嗚呼!」

 

 

1柱の神が、少年の成し遂げた『偉業』に、興奮に身を委ねていた。

 

 

「『素質がない』それは本当か?ザルド」

 

「『ただの凡人』それは本当か?アルフィア」

 

「『大成する器ではない』それは本当か?ゼウス」

 

 

ここにはいない少年の保護者達に尋ねる。今の少年の姿を見ても同じことを言えるのかと。

 

 

「喜べ、あの子は本物だ!あの子こそが、最後の英雄(ラスト・ヒーロー)だ!!」

 

 

ヘルメスは1人喜んだ。ここには多くの英雄候補がいる。だが、足りない。世界は英雄を求めている。あの『黒き終末』を覆すには足りなかった……。だが、ベルは見せた。『可能性』を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、ヘルメスは気づいていない。『英雄』だけでは()()()()。『英雄』だけでは『幸せな結末(ハッピーエンド)』にはならないことを……。『幸せな結末(ハッピーエンド)』をもたらすには、まだ『役者』が必要であることを……。




ここまで、読んでくださりありがとうございます。

今回の戦闘はアニメ版のダンまちの戦闘シーンを参考に書いてみました。

輝夜の魔法【ゴコウ】はアニメ第5期でリューが使っているシーンを見て、投稿主が独自解釈で考えてみたところです。

あと、『デルピュネ』のLv.は原作には載っていなかったので、オリジナルで考えました。

エレンがベルを庇うシーンでは、いくらチートスキルを持っているエレンでも、ぐちゃぐちゃのトマト野郎になっていたので、リヴェリアの『防護魔法』の存在は大きいです。
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