聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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気づいたら、お気に入り数が500を超えていました。とてもうれしい限りです。

週1で火曜日や水曜日に投稿していきたいと思っているので、これからもよろしくお願いします。



オリオンの矢
9話 神月祭


遠い昔、神々は『刺激』を求めて『下界』に降りてきた。『神の力』を封印して、不自由さと不便さに囲まれて、楽しく生きていた。

 

 

 

ある者は『娯楽』を求めて。

 

 

 

ある者は『英雄』を求めて。

 

 

 

そして、ある者は『救い』を求めて。

 

 

 

***

 

 

 

「はぁぁぁぁ!」

 

「ウォーーンッ!」

 

「ヴェルフ!」

 

「任せろっ!」

 

 

18階層で起きた『黒いゴライアス』の一件から三日後、ベル達のパーティは13階層の『中層』でダンジョン攻略を進めていた。あの一件は【ギルド】は神々が関わって起きた『神災』として認定し、箝口令をだし、今回の件を一切の口外禁止した。

 

そして、禁止事項を破り『ダンジョン』に無断で侵入した、神ヘスティアと神ヘルメスの両派閥には【ファミリア】の半分の資産の差し押さえが命じられた。【ヘスティア・ファミリア】は出来たばかりの【ファミリア】の為、損害はそんなに大きくないが、【ヘルメス・ファミリア】には大打撃の結果になった。

 

 

「伏せてください!」

 

「っ!」

 

 

ベル達は約束通り、捜索隊として来てくれた【アストレア・ファミリア】のメンバーと、【ロキ・ファミリア】のリヴァリアを含めた数名と【ヘファイストス・ファミリア】の椿を加えた。メンバーで無事、地上に戻ることができた。

 

 

「リリも……ね!」

 

「きゃぁっ!」

 

 

そして、今再びダンジョン攻略を進めるべく、ベル達のパーティは『中層』に再チャレンジしていた。【ギルド】に差し押さえられた財産。20万ヴァリスを回収するべく、『モンスター』達と戦闘を繰り広げていた。

 

 

「あ、ありがとうございます。エレン様」

 

「大丈夫だった?リリ」

 

「はい、ベル様。エレン様のおかげで何とか……」

 

「まだ慣れないが、最初に比べれば結構やれてるんじゃないか?」

 

「そうですね。エレン様が前衛として戦えるようになったのが大きいです」

 

「リヴィラの連中を吹っ飛ばしていたが、もしかして、もう【ランクアップ】できたりして?」

 

「【ランクアップ】はまだ無理みたい。【ステータス】は伸びていたけど、『偉業』が()()()()って」

 

「「逆に『偉業』を成し遂げれば、【ランクアップ】できる⁉」」

 

「うん。できるみたい」

 

「「……」」

 

「アハハ……」

 

 

エレンの【ステータス】は『魔力』のみだが、伸びが凄まじく。400オーバーの伸びで、D評価になっていた。エレンの考えでは、18階層でたくさん回復魔法を使用したことが、ここまで伸びた原因ではないか予想している。

 

 

「あっ、2人は今夜の『お祭り』に一緒に行かない?」

 

「はい!リリもご一緒させてください」

 

「なら……。もう少し、稼いでいくか」

 

「お!ちょうど良いところに」

 

 

今夜はオラリオで『お祭り』が開かれる日なのだ。そして、『お祭り』にはお金が必要不可欠。そんな彼らが話をしている所に集団でやってきた『モンスター』達。だが、哀れにも、兎を率いるパーティに『魔石』へと変えられてしまった。

 

 

 

***

 

 

 

「ねぇねぇ、ベルって、『神月祭(しんげつさい)』は初めてだよね?」

 

「は、はい。初めてです……」

 

「「「「……」」」」

 

「『神月祭(しんげつさい)』って、神様達が下りてくる前の祝祭の日なんだって!」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「「「「……」」」」

 

「確か、『月』を神に見立てて、『モンスター』の魔の手から無事を祈る、だったかな?」

 

「……誰?」

 

「え?」

 

 

先程まで、ベルにくっついていた女性にエレンが沈黙を破って声をかける。先程までリリ、ヴェルフと合流できたばかりで、これから屋台巡りでもしようとしている所に突然現れたのだ。

 

 

「フフッ、それなら答えてあげる!私は【ガネーシャ・ファミリア】所属、品行方正で人懐っこくてシャクティお姉ちゃんの妹のアーディ・ヴァルマだよ。じゃじゃーん!」

 

「思っていた以上の、大物だった……」

 

 

彼女の名はアーディ・ヴァルマ。【ガネーシャ・ファミリア】の副団長であり、少し前にLv.5になった、第1級冒険者である。

 

 

「アーディ君!ベル君から離れるんだ!これじゃあ、せっかく店長に土下座してもぎ取った休みが台無しになるー」

 

「そーです!ベル様にくっつき過ぎです!もっと離れてください!」

 

「いやー!せっかくベルと会えたのに!もっとお祭りデートを楽しみたい!」

 

「イダダダダダァッッ!3人とも、そんなに引っ張らないで!千切れちゃう!エレンさんとヴェルフも助けてください!!」

 

「ごめんベル。焼きそば食べてるから無理」

 

「すまんベル。タコ焼き食ってるから無理」

 

「嘘でしょ⁉」

 

 

そして、いつかの18階層の時のようにベルは女性達の手によって、引っ張られ悲鳴を上げていた。男性陣の2人は傍観の構えである。ぶっちゃけ巻き込まれたくない。

 

 

「さあさあ、お立合い!」

 

「「ん?」」

 

「遠き者は音に聞け、近き者は目にも見よ!」

 

「……あれは、ヘルメス様?」

 

「だな、今度は何やってんだ?あの神は」

 

「そして、腕に覚えがある冒険者ならば、名乗りをあげろ!」

 

 

少し遠くの舞台で演説しているのは神ヘルメス。前回に旅人のような恰好ではなく、少し洒落な恰好であった。すぐ近くには何やら水晶に突き刺さった『槍』?ようなものが見える。

 

 

「さあ!この『槍』を引き抜く英雄は誰だぁ⁉」

 

「行ってみる?」

 

「あぁ、おいベル。あそこに行ってみようぜ!」

 

「その前に助けてッッ!!」

 

 

さすがに可哀想になり、エレンの助けによって、無事に救助されたベルを連れて舞台の近くまで行った。すでに演説の効果も出始めており、周囲には大勢の人が集まっている状況だった。

 

 

「これは選ばれた者にしか抜けない伝説の『槍』! 手にした者には、貞潔たる女神の祝福が約束されるだろう!」

 

「(選定の儀かな?)」

 

「更に! 抜いた者は、豪華世界観光ツアーにご招待! 既に【ギルド】の許可済みだぁ!」

 

 

最後の言葉に周囲には歓喜の声が広がった。ここ『オラリオ』では入るには簡単だが、出るのは難しい場所。『ダンジョン』という貴重な『経験値』を稼いだ人材を他国に流出させないための措置らしい。

 

そんな閉鎖された場所から出られる機会だ。当然ながら多くの冒険者達が挑戦しては『槍』を引き抜けずに、退散していった。やはり、選ばれた者にしか抜けない伝説の『槍』だけあって、そうそう抜けないらしい。

 

 

「面白そうじゃないか。やってみようぜ、ベル君、エレン君!」

 

「「はい」」

 

「私達もやってみましょう! アイズさん」

 

「うん……いいよ」

 

「ん?」

 

「「あーーーっっ!」」

 

 

なにやら、聞き覚えのある声が聞こえたと思うと、そこには【ロキ・ファミリア】のアイズと【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の2つ名を持つレフィーヤ・ウィルディスがいた。

 

 

「ベル君!これは【ファミリア】の威信をかけた戦いだ!」

 

「アイズさん!この勝負、負けられません!」

 

「「「「……」」」」

 

 

何か変なことになり、舞台に連れていかれたベル。最初はレフィーヤ、次にアイズが挑戦するが、『槍』はびくともせず、ベルの番が回ってきた。『槍』を両手で握り、引き抜こうとした瞬間……。

 

 

 

「(見つけた……)」

 

 

 

「「えっ……⁉」」

 

 

『槍』が突き刺さっていた水晶が砕け、ベルは『槍』を持った状態で尻餅をつき、エレンは先程聞こえた声の主を見つけるべく周囲を見渡していた。だが、声の主を見つけることができず、ヴェルフとリリ、そしてアーディに聞いても、そんな声は聞こえなかった。と言っていた。

 

 

「(ただの、気のせい?)」

 

 

エレンがただの幻聴だったと思っていると、なにやらヘルメスがスポンサーの紹介と言うと、エレンと同じ、青い髪の女神が現れた。

 

 

「アルテミス! アルテミスじゃないか!」

 

「お知り合いですか?」

 

「『天界』で交流していた神友だよ! ボクのマブダチさ!」

 

 

どうやら、ヘスティアの知り合いだったようで、ヘスティアは笑顔で神友の名を呼びながら、彼女に近づいて行った。向こうも同じように笑顔で走っていき、まるで、感動の再会シーンを彷彿とさせる場面だったが……。

 

 

「見つけた、私の『オリオン』!」

 

「へっ⁉」

 

「オリ……」

 

「オン?」

 

「オリオンって、ベルのこと?」

 

「(あの声……。さっきの)」

 

 

神生(じんせい)は何事もうまくいかないものらしい。ヘスティアは何もない空間を抱きしめたまま固まり、彼女はベルに抱き着き、ヴェルフ、リリ、アーディの3人は『オリオン』の単語に戸惑い、エレンは先ほどの声と同じだったことに気が付いた。

 

そのあとは、ヘスティアが大声で発狂してしまい、ひとまず、【ヘスティア・ファミリア】の拠点に戻ることになった。

 

 

 

***

 

 

 

「さっきのは、どーいうつもりだ! アルテミス!」

 

「……すまない。つい嬉しくて」

 

「嬉しいってどういうことだー!」

 

「まぁまぁ、落ち着いてください。ヘスティア様」

 

「これが落ち着いていられるかー!」

 

「別にベルが女性に抱き着かれるなんて、今に始まったことでもありませんし」

 

「エレンさん⁉」

 

 

ここは【ヘスティア・ファミリア】の本拠。廃教会。ヘスティアの神友。神アルテミスの事情を聴こうとするが、ヘスティアを落ち着かせるのに苦労している所だった。

 

 

「ヘルメスー!」

 

「ん?」

 

「あれがアルテミスだって⁉ おかしいだろう!」

 

「いや~、アルテミスも『下界』の生活に染まっちゃったじゃないかな?」

 

「そんなバカな!」

 

「そんなにおかしいですか?ヘスティア様」

 

「アルテミスはボクと同じ処女神なんだ。しかし、大の恋愛アンチ!それなのに~」

 

「あれですね!恋する乙女みたいな顔してますね!」

 

「どうして、こうなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

リリの質問に神アルテミスが大の恋愛アンチなのが開示されたが、目の前の神アルテミスはベルを恋する乙女のような顔で見ていることをアーディが指摘し、再び発狂するヘスティア。

 

 

「でも、なんでアルテミス様が()()()()()()()()()?」

 

「ん?どういう意味だ」

 

「えっとね、【アルテミス・ファミリア】は『オラリオ』の外で活動している【ファミリア】で、『モンスター』による被害を減らすために活動している【ファミリア】なんだ」

 

「え?そうなんですか」

 

「あぁ、それについては、オレが説明しよう」

 

「ヘルメス様がですか?」

 

「これには、ちょっと事情があってね」

 

「事情、ですか」

 

 

アーディの話だと、神アルテミスは『オラリオ』の外で活動している【ファミリア】の主神。それがどうしてここに?と聞こうとすると神ヘルメスが間に入ってきた。どうやら、『オラリオ』の外で厄介な『モンスター』を発見したが、あまりの強さに『オラリオ』に救援を求めようとしていたらしい。

 

 

「つまり、観光ツアーとは名ばかりの……」

 

「アルテミス様がご依頼された『モンスター』討伐の冒険者依頼(クエスト)、というわけですか?」

 

「さすがするどい!」

 

「ただの詐欺じゃん……」

 

 

どうやら、世界観光ツアーは『槍』に選ばれる者を見つけるための嘘だったらしい。だが、気になることがあったエレンがヘルメスに尋ねた。

 

 

「しかし、『モンスター』の討伐の冒険者依頼(クエスト)なら、【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】みたいな実力のある所のほうが……」

 

「いや、それじゃあ、意味がないんだ……」

 

「アルテミス様」

 

「あの『モンスター』を倒すには、この『槍』でなくてはいけないんだ」

 

「ベルの引き抜いた『槍』のことですか?」

 

「あぁ、そして、この『槍』を持つ資格は『強さ』ではない。『汚れ』を知らない『純潔の魂』」

 

「つまり、ベルには『槍』を持つ資格があったと」

 

「そうだ」

 

 

あの選定の儀には、ちゃんとした意味があったみたいだ。『槍』を持つ資格は『強さ』じゃなくて『純潔の魂』。それは探すのに苦労しそうな条件だった。

 

 

「その白き魂を携え、私と一緒に来てほしい、オリオン……」

 

「僕は……」

 

「そぉーーーいっ!」

 

 

何を考えたのか頭突きを繰り出すヘスティア。当然反動ダメージで悶えていたところをアルテミスに心配される場面があったりするなど、いくらベルといい雰囲気だったとはいえ、ほかのやり方はなかったのか。

 

 

「アルテミス! その冒険者依頼クエスト、引き受けた!」

 

「えっ、神様?」

 

「神友が困っているなら、助けるのは当然だよ!」

 

主神の意向で冒険者依頼クエストを受けることになったベルとエレン。これにリリ、ヴェルフが加わることになり、アーディが私も!と手を挙げるが、ヘルメスによって止められた。なんでも、【ガネーシャ・ファミリア】みたいな実力のある【ファミリア】にはやってもらう()()()()があるらしい。

 

 

「よーし! それじゃあ出発しよー!」

 

「いつ出発するんですか?」

 

「今から!」

 

「え?」

 

「今から出発するんだよ!エレン君!」

 

「……」

 

 

こんなすぐに出発することになるとは思っていなかったエレンは言葉を失った。このような旅まがいな冒険者依頼クエストはもっこう準備がいるもんじゃあ……。と突っ込むがすでに準備はできてるらしい。

 

 

「それじゃあ、みんな! 準備できた者から北側の外壁の上に来てくれ! そこに迎えが来る手筈になってるから」

 

 

それだけ、言い残していったヘルメスを見送った後、一同は準備のため一旦解散となった。ベルとエレンは『モンスター』との戦闘の為、【ステータス】の更新をすることになった。

 

 

 

ベル・クラネル 

LV.2

力  : F 365

耐久 : G 271

器用 : F 349

敏捷 : E 469

魔力 : G 270

 

幸運 : I 

 

《魔法》

【ファイアボルト】

・速攻魔法

 

《スキル》

英雄願望(アルゴノゥト)

・能動的行動アクティブアクションに対するチャージ実行権。

 

 

 

エレン

レベル1

力  :H 122

耐久 :H 177

器用 :I 70

敏捷 :I 72

魔力 :D 590

 

◾️魔法

聖なる火よ(セイクリッドフレア)

・回復魔法

・速攻魔法

 

【】

 

【】

 

《スキル》

 

聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)

 

・盾の装備時、発展アビリティ『盾士』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、発展アビリティ『堅守』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、発展アビリティ『魔防』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、全アビリティ能力超高補正

 

 

 

「(ベル君の【ステータス】の伸びは相変わらずだねぇ。問題はエレン君……)」

 

 

ヘスティアはエレンの【ステータス】を写した羊用紙を見て、考え込んでいた。ヘスティアはエレンに『半精霊』であることを伝えられていない。この『魔力』の成長速度は『精霊』としての側面を持つエレンだからこそのものだった。

 

 

「(やっぱり、伝えた方がいいのかなぁ~)」

 

 

ベルは『憧憬一途(スキル)』についても教えていない。ベルは嘘がつけない性格なので、ヘスティアはあえて伝えていない。エレンの方は恐らく大丈夫だが、『半精霊』という神々ですら、予想したことがない種族に未だに困惑していた。

 

 

「ヘスティア様ー! そろそろ出発しますよー!」

 

「ご、ごめーん! すぐに行くよー!」

 

 

結局、伝えることができなかった。そして、彼女は知らないこの先、彼が『同族?』と出会うことを……。

 

 

 

***

 

 

 

「この!この!この!」

 

「へぶっ、ぐふっ、がふっ」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「このクソ神!ダメ神!クズ神!」

 

「あ、アスフィさん!顔面、顔面の形が変わっちゃう!」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「うるさい!人をあんな危険地帯に送り込んで、貴方はなに『オラリオ』に戻ってるんですか!」

 

「あ、アスフィ。君が行ったのは()()()()()()じゃあないか……」

 

「あんな危険地帯! この間の18階層より、やばい所ですよ!生きた心地がしませんでしたよ!」

 

 

準備ができ、ヘルメスの指定した城壁の上に来ているが、なんか修羅場みたいな状況になっていた。具体的には、【ヘルメス・ファミリア】の団長。アスフィ・アンドロメダが主神を馬乗り状態で、ボコボコにしているのだ。

 

 

「あ!ベル君頼む!助けてくれぇー!」

 

「は?ベル……」

 

 

ヘルメスがこちらに気づき、助けを求めるとアスフィが反応した。後ろを振り返ると『槍』を背負ったベルを見て、この世の終わりのような表情になり、へルメスの腹に見事な右ストレートが入った。

 

 

「ごふっっっ⁉」

 

「何やってくれてるんですか!?この人でなしがぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「し、仕方ないんだ!『槍』がベル君を選んだんだ!オレは悪くない!」

 

()()()()になんて説明するつもりですか⁉私は嫌ですよ⁉」

 

「頼むアスフィ!君が何とかしてくれ!オレが説明すると絶対ひどい目に遭う!」

 

「そ、そうだ……。生贄、このクズを生贄として()()()()に差し出せば、私は助かる……」

 

「頼むアスフィ⁉オレを見捨てないでくれ⁉」

 

 

何やら、深刻そうな話をしているが、こっちには全く理解できないでいると、突然突風が吹いた。

 

 

「ハハハハーーーーー!!」

 

「がッ、ガネーシャ⁉」

 

「そう! 俺がガネーシャだ!!」

 

 

上から降ってくるように現れたのは【ガネーシャ・ファミリア】の主神ガネーシャ。そして、彼の後に続くように4匹の『モンスター』が下りてきた。

 

 

「もしかして、この子達に乗っていくのかい?ガネーシャ」

 

「ヘルメスに頼まれてな。移動用に『モンスター』を用意してほしいと」

 

 

【ガネーシャ・ファミリア】は都市を守る憲兵としての役割を果たしている【ファミリア】でもあるが、調教師(テイマー)を多く抱える【ファミリア】でもある。とは、『モンスター』を屈服させ、主に従わせる者を指す。その難易度は『討伐』や『捕獲』をより難しい。

 

 

「なぁ、数足りて無くないか?」

 

「ぶっちゃけ、揃えれなかった!! と言うわけで2人ずつで乗ってくれ」

 

 

ベルとアルテミス

 

ヴェルフとリリ

 

ヘルメスとアスフィ

 

エレンとヘスティア

 

 

数を揃えられなかったようで2人1組で乗ることになった。なお、ベルとペアになれなかったヘスティアを一緒のペアになったエレンが道中、ヘスティアを宥めることになった。

 

 

 

***

 

 

 

2日後

 

 

 

「いやぁ、エレン君のおかげで早く着きそうだよ!」

 

「貴重な回復魔法を、このような使い方をするとは……」

 

 

ヘルメスがエレンの活躍を褒め称え、とアスフィが何とも言えない表情をしていた。理由はエレンが飛行中の飛竜達に回復魔法で疲れを癒し、飛行時間を延ばしていたのだ。そのおかげで、本来なら飛行でも1週間かかる距離を3日に短縮することができた。

 

 

「ヘルメス様ー!あとどのぐらいで、目的に着くんですか?」

 

「あと、1日ってところかな、みんな少し降りて休憩に……」

 

「大変です! ベル様とアルテミス様がどこにもいません!」

 

「えっ」

 

 

ヘルメスが休憩を提案しようとした瞬間、後ろを飛んでいたリリから報告が入った。いつの間にかにベルとアルテミスがいなくなっており、次の瞬間。少し離れた場所で、爆発が起きた。

 

 

「……あれは、ベルの『魔法』か?」

 

「⁉ エレン君!あそこに!」

 

「はい!」

 

 

爆発あった場所に飛竜を向かわせると、地表に大量の『モンスター』から、親子の2人組を助けようとするベルとアルテミスの姿が見えた。

 

 

「ベル君⁉ アルテミス⁉」

 

「あれは、蠍?」

 

「見たことがないぞ? あんな『モンスター』⁉」

 

 

ベル達を囲んでいる『モンスター』は真っ黒に蠍型だった。少なくとも『ダンジョン』では見たことがないタイプのモンスター。しかも地表を埋め尽くす程の数。

 

 

「エレン君!ベル君達の援護を」

 

「それは構わないんですけど……」

 

「? どうしたんだい?」

 

「ヘスティア様。飛竜の操縦って、できます?」

 

「あっ」

 

 

そう。ここまでエレンが飛竜の手綱を持っていたのだ。訓練を受けていた飛竜の為、至って難しいことはしてはいないが、いきなりは難しいだろう。それでも、この状況だ。やればできますよ!と手綱をヘスティアに渡して、飛び降りようとした瞬間。凄まじい衝撃波が起きた。

 

 

「うおぉ!」

 

「えっ?」

 

「なんだ⁉」

 

 

大きな砂埃が起き、視界が悪くなるが、すぐに収まった。だが、地上にいた大量の『モンスター』が()()()()()()。地面には、何やら削られた跡があり、その先にベルが引き抜いた『槍』があった。

 

 

「すげぇ……」

 

「あれが、『槍』の力……」

 

「ヤバすぎるでしょう……」

 

 

そのあとは、ベルとアルテミスと合流。どうやら、親子が先ほどの『黒い蠍』に襲われているところをアルテミスが見つけて、助けに行っていたみたいだ。その後は親子2人に事情を聞き、エレンとヴェルフの2人は『魔石』を回収していた。

 

 

 

すると……。

 

 

 

「(あれ?)」

 

 

1つだけ大きな『魔石』に目に入る。『魔石』とは大きさや形に違いはあれ、その色は紫紺色である。エレンが拾った『魔石』は大部分が紫紺色であったが、一部が()()()()()()

 

 

「エレンくーん! 回収は終わったかーい?」

 

「! はい。今終わりました」

 

 

どうやら、移動の時間のようだった。手にした『魔石』を袋に入れて。ベル達の所に戻るエレン。親子の2人は少し離れた村に行く予定だったみたいだが、こちらも先を急がないといけないので、送ることができなかった。

 

それを見かねたアルテミスがパン以外の食料を全て、親子2人に譲ってしまったことには、とても驚いた……。

 

 

「申し訳ありませんでした!」

 

「なんなんですか⁉ このポンコツはーー」

 

「おいおいリリ助、一応女神だぞ……」

 

「女神さまだろうと、ポンコツはポンコツです! ポンコツを司るポンコツ女神です!」

 

「なんでこうなったかなぁ……」

 

「そんなに違うんですか?ヘスティア様」

 

「あぁ、怖いくらいの毅然として、女傑というか……。『天界』じゃ沐浴を覗かれただけで……」

 

ーーー「恥を知れ! この豚ども!」

 

ーーー「「「「「ありがとうございまーす!」」」」」

 

「いや~、そんなこともあったな……」

 

「何お礼を言ってるんですか、ヘルメス様」

 

「死ぬばいいのに」

 

「アスフィ⁉」

 

 

アルテミスの変わり様にヘスティアは困惑し、ヘルメスは過去アルテミスの沐浴を覗き、罵倒され、喜び、お礼を言うなど、エレンが突っ込み、アスフィのストレートな『死ぬ』発言を放つ。

 

 

「? おい、ベルは何処に行った?」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「みなさ~ん!」

 

「あっ、いた」

 

 

気づいたと時には、ベルがおらず、森の奥から両手いっぱいの果実を持って帰ってきた。

 

 

 

***

 

 

 

「なるほど、『マサラの実』か……。熱すると、中の果肉が溶けて芳醇な果汁となる。 まさに森のレストランやぁ!」

 

「よく知ってたな、ベル?」

 

「すごいです、ベル様」

 

「うん! おいしいぞ! ベル」

 

「オリオン。貴方は博識なのだな」

 

「いやぁ、『オラリオ』に来る前に、お爺ちゃんと叔父さんにこういうの、教えてもらって……」

 

 

ベルが持ってきたのは『マサラの実』と呼ばれる果実だった。焚火で熱することで、実の中の果肉が程よく溶けて、スープのように食べることができる果実だった。

 

途中、アルテミスが食事に手を付けていないことに気づいたベルが、口に合わなかったのか尋ねるが、アルテミスはなぜか『あ~ん』を実施。

 

それを目撃したヘスティアとリリの2人は、やらせるかぁー!と自身のスプーンをベルの口に突っ込んでいた。悶え苦しむベルを横目に見ながら、エレン達は『マサラの実』をおいしく頂いていた。

 

 

 

***

 

 

 

夕食を終えたベル達はヘルメスから今回の冒険者依頼クエストの経緯を聞いた。ことの発端は『モンスター』の異常な増殖。いくつもの【ファミリア】が調査に遣わされたが全て消息不明。

 

それを見かねた【オラリオ】の創設神であり、【ギルド】の『主神』。神ウラノスは【ヘルメス・ファミリア】に『エルソス』に向かっていた【アルテミス・ファミリア】と合流し、連合軍として調査を行うことを命じた。

 

 

「調査で分かったことは、『モンスター』の異常な増殖の発生源は、彼の地『エルソス』」

 

「そこの遺跡にはある『モンスター』が『封印』されたいたんだ」

 

「『モンスター』?、ですか……」

 

「古代、『大精霊』達によって封印された『モンスター』。

 

『アンタレス』」

 

「(『大精霊』……。エレン君と()()……)」

 

 

ヘルメスの説明にアルテミスがそこの遺跡には。『モンスター』が『封印』されていたことを告げる。その『モンスター』の名は『アンタレス』。かの『三大クエスト』の『モンスター』達と根源を同じ『黒きモンスター』。

 

そして、エレンは『精霊』の中でも、『大精霊』に分類される。ただし、『ハーフ』の影響か本来の半分以下の力しかなかった。

 

 

「まさか、『アンタレス』が『封印』を破ったのかい⁉」

 

「違うんだ、ヘスティア。『アンタレス』は()()()()()()()()()。『神』の手によって……」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「『神殿の門』は本来なら『私の神威』でしか開けないが、ほかの神の『神威』で無理やりこじ開けられた形跡があった」

 

「それを確認したオレ達は調査の為、『神殿』に入ったが、『アンタレス』に()()()()を食らってね、返り討ちにあったんだ」

 

「待ち伏せって……ッ⁉」

 

「……幸い。『大精霊』の『封印』がまだ残っている影響で、なんとか命拾いしてね! 怪我人は多数出たが、()()()()()()()()

 

「そ、そうかい。それはよかったよ……」

 

「……」

 

「?」

 

 

ヘルメスとアルテミスからの情報に驚きを隠せないヘスティア達。『アンタレス』が神の手で『封印』から解放された事実。『アンタレス』は『封印』からは完全には解放されてはいないが、それも時間の問題。

 

幸い死者は出てはいないようだが、アスフィの表情が暗いのが気になるエレン。ヘルメスからは向こうに着いたら、怪我人の治療をお願いされたが、何かあったのだろうかぁ。

 

 

「なぁに、大丈夫! 『槍』さえあれば、全て上手くいくさ」

 

 

明日に備えて、今日はもう寝ることになったベル達。夜の見張りはアスフィさんがしてくれることになったが、目の下にクマができていたが、大丈夫だろうか。

 

 

 

***

 

 

 

「アルテミス、『アンタレス』の様子は?」

 

「……大丈夫だ、まだ動いていない、()()

 

「ただ?」

 

「……『アンタレス』の()()()()()()()

 

「どうゆうことだ?」

 

「すまない。私も分からない。ただ、違和感を感じる。それしか、分からない」

 

「……」

 

 

ベル達が就寝した後、ヘルメスとアルテミスが密談していた。『アンタレス』の()()()。そして、『アンタレス』の()()。今のアルテミスは『アンタレス』を見ることができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、同時にアルテミス、彼女を通して、()()()()()()()()……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハッ」




ここまで、読んでくださりありがとうございます。

この作品では【アルテミス・ファミリア】は【ヘルメス・ファミリア】と一緒に『神殿』に入ったおかげで死人は出ていません。死人は……。

エレンについては、『大精霊』に分類していますが、『ハーフ』の影響で、半分以下の性能になっています。回復魔法が『全癒魔法』なのは、『大精霊』としての力の影響です。
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