なんというか小説書かないとムズムズするようになってきちゃいました…趣味のガンプラに当てる時間がドンドン減っていくのかなちぃ…時間管理はしっかりせないかんですね。
TSウォッチャーズの朝は早い。
午前6時を少し超えたあたり。携帯電話のアラームが鳴り響く前に、雁月夏鈴は目を覚ました。
洗面所で顔を洗い、手早く歯を磨く。制服に袖を通し、スカートを整える。リボンを結び、髪を梳かして身だしなみを確認する。時計を見ると6時30分、予定通りだ。
キッチンに向かい、棚からカロリーメイトの箱を取り出す。時間短縮の為、朝はこれだけで済ませる。
カロリーメイトを齧りながら、リビングの窓際――彼女の定位置へと向かう。
窓からは、時成と汐音が合流する交差点が見える。基本的に二人はここで待ち合わせをして一緒に登校している。夏鈴たちウォッチャーズは、この合流地点から警護を開始することになっている。
双眼鏡を手に取り、交差点を注意深く観察する。まだ人通りは少ない。信号機の点滅、電柱の影、路地から出てくる可能性のある車両――全てをチェックしていく。
7時20分。時成の姿が見えた。続いて反対方向から汐音も現れる。二人が笑顔で挨拶を交わすのが見える。
夏鈴はすぐさま携帯電話を取り出し、生徒会兼ウォッチャーズ会長である風峰凛子に電話をかける。
「会長、お二人が合流しました。警護を開始します」
夏鈴の声は落ち着いているが、その奥には緊張感が滲んでいる。
『ええ、今日もよろしく頼むわね。くれぐれも、二人に不幸がないように』
電話越しに聞こえる凛子の声は穏やかだが、そこには確かな信頼と期待が込められていた。
「ハッ!」
夏鈴の返事は短く、力強い。彼女のシャキッとした返事に、電話越しの凛子は優しく微笑み、静かに電話を切った。
夏鈴は携帯電話をポケットにしまうと、双眼鏡を再び構える。時成と汐音が歩き始めた、警護の始まりだ。
――――――――――
夏鈴は周囲に上手く紛れながら、時成と汐音の進路を追っていく。二人は通学路を並んで歩いて、何気ない日常の一コマのように見える。だが、夏鈴の目は決して油断していない。
周囲の状況を常に把握する。道路を走る車両、歩いてくる歩行者、建物の陰から出てくる可能性のある自転車――全てが潜在的な脅威である。
そんな時だった。
遠方、およそ100メートル先の道路を、一台のトラックが不自然な走り方をしているのが目に入った。車線をはみ出しかけ、また戻り、明らかに蛇行している。
夏鈴の表情が引き締まる。スマホを取り出しカメラ撮影を起動、倍率を上げ、運転席を確認する。運転手の頭が時折前に傾いでいる。居眠り運転中のようだ。
このままでは、時成と汐音が歩いている歩道に突っ込む可能性がある。
夏鈴は即座に判断を下した。チーム用の通話グループに接続する。
「100mほどの距離に居眠り運転のトラックを確認しました。至急、近くのメンバーは対処をお願いします」
声は冷静だが、緊迫感を帯びている。彼女の呼びかけに、電話越しの数名が「了解」と頷くのが聞こえた。
すぐに、近くで待機していたメンバーの一人から返答があった。
『スマホからパトカーのサイレン音を流して意識を覚醒させます。数名ほど手伝いをお願いします』
「了解。他のメンバー、協力お願いします」
夏鈴の指示に、複数のメンバーが応答する。
彼女らは既に配置についている。道路沿いに点在する数名が、一斉にスマートフォンを取り出し、パトカーのサイレン音を大音量で再生する準備を整えた。
「3、2、1――今!」
その掛け声と共に、数秒後、パトカーのサイレン音が周囲に響き渡った。
「ウゥゥゥゥーーー!」
けたたましい音が静かな住宅街に響く。トラックの運転手はその音にハッと飛び起きるように意識を取り戻した。急ブレーキの音が響き、トラックは車線内で正常な走行に戻る。
そして何事もなかったかのように、時成と汐音の歩いていた歩道の脇を通り過ぎていった。二人は何も気づいていない。それでいい、それが一番いい。
夏鈴は小さく息を吐き、緊張を解く。危機は去った。
「皆さん、ナイスです!このまま警護を続けますよ!」
夏鈴がそう元気に呼びかける。スマホ越しに聞こえてくる幼いながらも透き通った声に、誰もが小さく微笑んだ。
そして10分ほど経った頃。
時成と汐音は学校の校門前に辿り着いた。二人が門をくぐる瞬間を、遠くから双眼鏡で確認した夏鈴は、すぐさま生徒会会計である海谷理祢に電話をかける。
「理祢さん、お二人が校門を通過しました。続きはそちらにお願いします」
『分かったっす!私が守るからには、学校内で怪我一つ負わせないっす!』
理祢の元気な声が電話越しに響く。その自信に満ちた返事に、夏鈴は静かに頷き、電話を切った。ここからは理祢が率いるチームの仕事である。
――――――――――
校舎、廊下の窓際。
海谷理祢は窓から校門を見下ろしながら、耳に付けた小型のインカムのスイッチを入れた。学校内ではスマホの使用が禁止されているため、こうした通信機器を使用する。
「皆さん、おはようっす。夏鈴さんからバトンを受け取ったっすよ。これより校内警護を開始するっす」
インカム越しに、配置についたメンバーたちから次々と返答が返ってくる。
『2年1組前、スタンバイ』
『昇降口、異常なし』
『1年の廊下、同じく問題なし』
理祢は一つ一つの報告に頷きながら、時成と汐音の姿を目で追う。二人は昇降口で上履きに履き替え、校舎に入っていく。
理祢も廊下を歩き出す。さりげなく、しかし確実に二人の後を尾ける。距離は10メートルほどをキープし、違和感のないように。
二人は2年1組の教室へ向かっている。理祢は常に視界に二人を捉えながら、同時に周囲の人物にも目を配る。
その時だった。
廊下の向こうから、一人の男子生徒が汐音の方へ近づいてくるのが見えた。話かけるつもりかもしれない。
理祢の目が鋭くなる。インカムに小声で囁く。
「お二人に話しかけようとする邪魔者を一名発見したっす。茶髪の見るからにムードーカー気取りな生徒っすね。近くのメンバーは、適当に先生が呼んでたとか言って注意を逸らせてくださいっす」
すぐに返答があった。
『了解。こちらで対応します』
数秒後、廊下の角から二名の女子生徒が現れた。男子生徒に近づき、明るい声で話しかける。
「ねえねえ、さっき職員室で先生が呼んでたよ?何か用事があるんじゃない?」
「え?俺に?」
男子生徒は戸惑いながらも、女子生徒たちに促されるまま方向を変えた。面倒そうにしながらも、職員室の方へと歩いていく。
「皆さん、ありがとうっす。他にも警戒すべき対象は多いので、注意していきましょう」
理祢の小さいながらも強い意志の籠もった声に、誰もが同じく頷いた。
――――――――――
放課後、生徒会室には二人の人影があった。
片方は生徒会長の席に座り、足を組んでスマホを開き、書類の整理をしているようだった。
もう片方も書類の整理をしながら、部屋の中を忙しく歩き回っている。
そして、仕事も一旦の落ち着きを迎えたのか、二人はソファに腰掛けゆっくりと紅茶を淹れる。
「今日も警護は順調そうね。二人になんの不幸もなくて安心したわ」
そう言ったのは生徒会会長である風峰凛子。彼女と向かい合うように座る生徒会副会長・青崎静音が答える。
「そうですね。夏鈴も理祢もしっかりと仕事をしてくれたみたいで、これから生徒会室に来ると連絡がありましたよ」
静音が優しく言うと、凛子がどこか申し訳なさそうに口を開いた。
「二人には申し訳ないわね。生徒会の仕事もあるのに、ウォッチャーズの警護の仕事まで…」
「ウォッチャーズに所属する全員が、時成くんと汐音さんの平和を願っているのです。二人も覚悟の上ですよ」
「そうかしら…」と静音を見やる凛子に、彼女は「ええ」と確かに頷いてみせた。その様子に気を持ち直した凛子は、ソファから立ち上がり伸びをしながら会長席に歩む。
「それじゃ、休憩もそこそこに書類整理に戻りましょうか。夏鈴と理祢のためにも仕事は減らしておきたいし」
「そうですね。早めに終わらせて、皆でゆっくりしながら改めて報告を聞きましょうか」
凛子の言葉に頷いた静音もソファから立ち上がる。それと同時に思い出したように声を上げた。
「そう言えば…彼、天宮胡桃さんへの対応はどうするのですか?前々から一応の話し合いはしてきましたが…そろそろ決めておくべきでは?」
静音の提案に、会長席に座り直した凛子が改まった声で答える。
「胡桃さんへは何もしないわ。汐音さんのお兄さんでもあるし…何よりあの|天宮家次期当主ですもの。手を出したらこっちが終わるわよ」
静音は分かっていたかのように、「そうなりますよね…」と頷いて、書類整理をしながらしみじみとした感じで呟いた。
「にしても、汐音さんがうちの高校に入ったときは驚きましたね。日本でも|5本の指に入る巨大財閥・天宮のご子息だったんですもの」
「そうね…それのせい、とは言わないけれど、それが原因でウォッチャーズは開設されたのだし」
「まぁ、そのことを知るのは生徒会メンバーだけだけどね」と語る凛子。
そう、TSウォッチャーズとは、巨大財閥・天宮の元に生まれた汐音を守るために作られた組織だった。それが、汐音の友人である時成も守るということになり…。
もっとも、その実態は「守る」というより「徹底的な監視のもと、トラブルを先回りして潰す」奇妙な集団でもある。
二人が知ることのないところで、彼らの日常は今日も静かに――しかし過剰に――守られているのであった。
ねむ~い…今日は投稿するつもりなかったのに投稿しちまいました…我ながら今のところ不定期じゃなくね…?いやまぁ、これから不定期にしたいんすけど…