というか数学の勉強って必要っすかね!俺の頭じゃ分からんです!
ってなわけで第三話!
「は、入っていいよー」
暫く扉の前で待っているとそんな声がかけられた。元から美形な汐音の女装…さて、どんなもんかな。
「わーお…」
扉を開け、少し離れたところに立つ汐音を見てそんな声が出た。肩を出した白いオフショルダーのブラウスを着ている。
下は短パンでスッとしながらも適度に肉付きのある脚が露出されていた。
瞳はカラーコンタクトでもしているのだろうか、いつもの黒から碧色に変わっている。髪も綺麗に整えられていてサラサラ、造形のよい顔が良く見えるようになっている。先ほど感じた違和感はこれだったか…
「ど、どう?」
体を捻ってモジモジとさせている汐音が頬を赤らめ上目遣いで聞いてきた。輝く瞳は潤んでいて、首元には緊張ゆえか一筋の汗が流れている。
「あ、あぁ…すごく、可愛いよ」
クッソ、なんでこんなにも可愛いんだよ。男のはずなのに、肌はやたらと白いし、体付きは細いし、唇はほどよくピンクに色気づいていて…つーかなんでそんな露出してるんだよ!
ぐぬぬっ…いやはや、本当に予想外だ。こごでの変化は思っても見なかった。
「そ、そっか…ふふっ…ありがとう」
汐音が優しい微笑みを向けてきた。キラキラと光る瞳と細められた目。赤く染まる頬…
「と、時成?どうしたの…?動かなくなっちゃって…やっぱり変だったかな!?結構頑張ってメイクとかしたんだけど!」
はっ!いけない、つい見惚れ…いや!唖然としてしまっていた!
「あ、いや…別に何でもないんだが…」
俺の言葉を受けて汐音はコテッと首を傾げた。自分の可愛さに気付けアホ!まったく…!!
「えっと、今日はこのまま過ごそうと思うんだけど…いいよね?」
「いや、まぁ…全然構わないが…」
だがなぁ、この格好の汐音と一日中、2人きりで?弁当を食べたり?ゲームしたり?勉強したり?するわけでしょ?
なんだそれ!いや、本当になんだよそれ!!陰キャボッチな俺がこんな美少女を前にしてキョドらずに話せるとでも!?
「ふぅ…だいぶ変わったと思うんだが、メイクとか髪とかどうしたんだ?」
取り敢えず深呼吸をして息を吐き、落ち着いて質問してみる。
「ん、えっとね。知り合いに美容に詳しい人がいたから相談してみたんだ。そしたら色々コーディネートしてくれて…正直、僕もこれはちょっと恥ずかしいんだけど、時成が来るから」
出たぞ、汐音の謎の人脈。このマンションやメイク、まぁその他諸々。汐音は謎に色んな分野の人と関わりがあるらしく、こういうことはままあるのだ。
「少し早いけどそろそろお昼ご飯食べない?時成のお弁当、楽しみにして待ってたんだから」
汐音はそう笑って俺に歩み寄る。それと同時に柔らかな香水の匂いが漂ってくる。マジでやめてほしい。特にその可愛い顔と口調と香りで近付いてくるのとか。いや、割とマジメに。
「あいよ、不味くても文句言うなよ」
「時成のお弁当が不味かったことなんて一度もないよ」
そんな会話を交わしながらリビングへと歩く。ソファに並んで座るとショートバッグから弁当を取り出してテーブルに置く。
「こっちがお前の、これが俺のな」
ピンク色の布で包んだ弁当を汐音の方へ渡す。俺の弁当は青色の布で包んだやつだ。
「それじゃ…」
そう言って手を合わせながら俺をチラリと見る汐音。俺も小さく頷いて手を合わせる。
「「いいただきます」」
2人で同時にそう言って弁当を開ける。まあ、自分で作ったものなので特に驚くこともないのだが…
「ん〜!美味しいよ!」
汐音はとても美味そうに食ってくれる。コイツは俺が作る飯を大体こんな感じで食ってくれるので毎回気分がよくなる。なのだが…
「そんなに美味いか?普通の食材しか使ってないぞ?」
嬉しいには嬉しいのだが、正直疑問に思う。別段、高いものを使っているわけでもないし、高尚なお料理テクニックを使ったわけでもない。自分でも食べてみるが、まぁ…結構普通な味ではないだろうか。
「時成が作るご飯はなんでも美味しいよ?」
汐音はそう微笑んでくれた。お世辞なのかは知らないが、そこまで言ってくれるなら俺はなにも言うまい。褒められるのは普通に嬉しいからな。
「ね、ねぇ…時成。その、あ~んとか、してくれない…?」
すると汐音がそんなことを言い出した。え、いや…え、マジっすか?マジにやるんすか?え…え?
とテンパっていると汐音は俺を潤んだ瞳で見つめてきた。恐る恐るといった様子ではあるが強い意識を感じる。
くっ…!しょうがない…美少女となった汐音にあ~んをするのは精神的にどうにかなってしまいそうだが、なんとかやってみよう…!
「じゃ、じゃあ…はい、あ~ん…」
震える手で箸を掴んで唐揚げを一つ、汐音の口元に向ける。
「あ、あ~ん…ん、もぐもぐ…」
汐音は目を瞑って俺が差し出した唐揚げをパクリと食べた。改めて近くから見ると汐音はやっぱり美少女のようで…
「やっぱり、可愛いな…」
「ングッ!?」
あ、やべ。俺の言葉に驚いた汐音が唐揚げを飲み込む時に喉に詰まらせてしまったみたいだ。
「だ、大丈夫か?悪いな、突然…」
優しく汐音の背中をさする。
「ン、ごほっごほっ…ありがとう、大丈夫…」
汐音は涙目になって息を整えながら顔を上げた。そして、ムッと怒ったように俺に身を寄せて叫んだ。
「もうっ!時成!そういうこと突然言わないでよ!照れちゃうじゃん!」
照れるってことは嬉しかったってことでは?そう思ったがここでそんなことを言うと更に不機嫌になってしまうだろう。ここは素直に謝るべきだな。
「悪かったよ、本当に汐音が可愛くて…」
そう言うと汐音は更に顔を赤くして俯いてしまった。俺が思うことは一つ…可愛いなー!オイ!
俯く唯一の友人を眺めて俺は微笑む。次の機会があれば今度は俺が汐音にあ~んしてもらおうかな、とか考えていたのだった。
女装描写むじー。何故俺は女の子の可愛い服装をネットの海原で見繕っていたんだ…彼女もいねぇのに…!次はもっと細く上手く書きたい侍。