Duchess in Borderland   作:M.T.

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どうも、M.T.でございます。
また性懲りもなく二作目を書いてしまいました(どんだけ暇やねん)。
本作は、酒カスヤニカスギャンカスのカス三冠お姉さんが主人公となっております。
前作に比べて、オリキャラ比率少なめで原作キャラとの絡みに重点を置く予定。
それではお楽しみあれ〜


ふぁあすとすてぇじ編
いまわのくにのだっちぇす


 くだらない日常からの解放。

 

 現実逃避、中二病、ピーターパン症候群…

 

 呼び方なんか関係ない。

 

 どこでもいいから。

 

 どこか知らない国へ行きたいと思った事はない?

 

 

 

「フゥ〜………」

 

 私は、空港の喫煙所でタバコを吸っていた。

 ふぅ、と息を吐くと、白い煙が空中に漂う。

 ゆらゆらと揺れる煙を何となく眺めていると、今までの事をぼんやりと思い出してくる。

 

 ハァ〜イ、アタシ、潰田(ツエダ)千寿(せんじゅ)!もうすぐ30歳の無職の酒カスヤニカスギャンカスのカス三冠王で〜す。

 アメリカでそこそこ有名な企業で人工知能の研究やってたけど、今から日本に帰りま〜す。

 

「はぁ〜、もうやってらんねぇわ。明日からどうするかなぁ…」

 

 別に、仕事を失った事はそこまで深刻に考えていない。

 どうにもならない現実を突きつけられて、ちょっとだけ頭が痛くなってきた、ただそれだけ。

 

 人生なんて、80年は続くクソゲー。

 あと50年もこのクソみたいな世界で生きていかなきゃならないなんて、気が遠くなりそう。

 いっその事、どこか知らない国にでも行けたらなぁ…

 

 なんてね。

 あーあ、明日から仕事どうするかなぁ。

 っていうか、まず住む家を確保しないと。

 無計画に国を飛び出してきたから、帰ってきてからの事を何も考えていない。

 とりあえず、今日明日は近場のビジネスホテルにでも泊まるか。

 予定を確認しようと思ってiPhoneを取り出すと、時刻は最終搭乗案内の1分前を示していた。

 やべっ、ヤニに夢中で時計全然見てなかった。

 早く搭乗口に行かないと。

 急いで荷物を手に持った私は、灰皿にタバコを押し付けて火を消してから、吸い殻をゴミ箱に捨て、搭乗口へと駆け込んだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「間に合った……」

 

 何とかギリギリ機内に駆け込んだ私は、チケットを確認しながら自分の席を探す。

 自分の席の列を見つけると、通路側の席に誰かが座っていた。

 眼鏡をかけたお兄さんが、仏頂面で本を読んでいる。

 見たところ東アジア系だろうけど、中国人ではなさそう?

 私は窓側の席だから、一旦退いてもらおうと、お兄さんに声をかけた。

 

「Excuse me, but may I get to my seat?」

 

「Of course.」

 

 私が英語で話しかけると、お兄さんはすぐに席を立ってくれた。

 改めてお兄さんの顔立ちを見て、あとは、英語のイントネーションでピンと来た。

 

「…あの、もしかして日本人の方ですか?」

 

「ああ、はい」

 

 私が日本語で話しかけると、お兄さんは日本語で答えた。

 やっぱり日本人だったのね。

 まあ東京行きの便だから、普通にあり得る事なんだけど。

 なんて考えていると、お兄さんが私に声をかけてきた。

 

「先に荷物をしまわれますか?手伝いますよ」

 

「ありがとうございます。一人でできるので大丈夫です」

 

 そう言って私は、座席の上の共用収納棚に荷物を置いて、自分の席に座った。

 するとしばらくして、機内アナウンスが流れる。

 

『Please now relax and enjoy your flight. If there is anything you need, please let us know and we will be happy to help. As we will soon be serving drinks, it would be a help to us if you stayed in your seats.』

 

 機内アナウンスを聴き流しながらぼんやりと窓の外を眺めていると、飛行機が離陸を始めた。

 離陸後もしばらく窓の外を眺めていた私だけど、途中で飽きてきて、特にやる事もないので、暇潰しのつもりで隣の席のお兄さんに話しかけた。

 

「あの、アメリカ(ここ)に何をしにいらしたんですか?お仕事?」

 

「えぇ…あなたも、お仕事でここに?」

 

「そうですね。まぁ、仕事辞めちゃったので今から帰るんですけど」

 

「……すみません」

 

 私が自虐のつもりで笑いながら言うと、お兄さんはばつが悪そうな表情を浮かべる。

 私が勝手に喋っただけだし、別に申し訳なく思う必要なんてこれっぽっちもないんだけどな。

 見ず知らずの私に気を遣ってくれるなんて、思った以上に優しい人なのかもしれない。

 私は、興味本位で彼に少し踏み込んだ質問をしてみた。

 

「自分が何の為に生きているのか…考えた事、あります?」

 

 私が尋ねると、お兄さんは考え込むような仕草をしてから、少し戸惑ったように笑った。

 

「さぁ…分かりません」

 

「私もです」

 

 お兄さんが笑いながら答えるので、私も笑いながら答えた。

 何だか、今初めて会ったはずなのに、この人とは他人の気がしない。

 私達、もしかしたら似た者同士なのかもしれないわね。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「はぁ〜……生き返るぅ〜……」

 

 東京の空港に着いた私は、真っ先に喫煙所で一服した。

 飛行機に乗ってて半日も吸えなかったから、フライト後の一服が普段より旨く感じた。

 

 ………あ。

 そういえば、隣の席だったお兄さんの名前、訊くの忘れたな。

 割とハンサムだったし、名前くらい訊いときゃよかった。

 

 …まあいいや、多分もう会う事もないだろうし。

 それよりホテル決めないと。

 もう疲れてるし、近くて安いとこでいいや。

 なんて考えつつ、空港を出てタクシー乗り場に向かう。

 

 ……うわ、最悪。

 時間が時間だから、タクシーが全然無い。

 どうしようか考えていると、さっきのお兄さんがタクシーを捕まえようとしているのを見つけた。

 私は、急いでお兄さんを捕まえて、相乗りさせてもらえないか交渉した。

 

「……スイマセン。ホント申し訳ないんですけど、相乗りさせてもらえませんか?」

 

 私が事情を話すと、お兄さんは仕方ないと言った様子で私を相乗りさせてくれた。

 タクシーでホテルに向かう途中、私は相乗りさせてくれたお兄さんに話しかける。

 

「いやぁ、助かりました。この時間、全然タクシー走ってないから…そういえば、まだ名前聞いてませんでしたね。私、潰田っていいます。あなたは?」

 

「私は……」

 

 お兄さんが名前を言いかけた、その時だった。

 

 

 

 

 

「…ん?何あれ、花火?」

 

 空に、夥しい数の花火が上がる。

 こんな時間に花火?と思いつつも、花火を眺めていると…

 

「……は?ちょっと待って…なんか、デカくない…!?」

 

 一際大きい花火が打ち上げられ、上空で弾ける。

 その瞬間、視界が真っ白になった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「ん゛ん〜…かゆい……」

 

 なんか身体が痒い…と思いつつ、重い瞼を開ける。

 そこには、信じられない光景が広がっていた。

 

「……………え?」

 

 そこには、草木が生い茂った街並みがあった。

 周りに建っている建物は、去年一度日本に帰った時に見た渋谷のビルだけれど、草木で覆い尽くされている。

 私の近くに停まっている車は、蔦で覆われてびくともしなくなっていた。

 私の周りでは、兎が道路を飛び跳ね、見た事のない蝶が飛んでいる。

 まるで子供の頃に読んだお伽話の世界だ。

 

「すみません、誰かいませんかぁ!?」

 

 誰かいないかと思って叫んでみたけど、返事がなかった。

 もしかして、ここには私以外誰もいない…?

 

「……疲れてる時は変な夢を見るって、本当なのかしらね」

 

 私は、これが夢である事を疑った。

 それとも、酒とタバコをやりすぎてとうとう頭がおかしくなったか…

 そうとでも考えなきゃ、こんな事あるはずがない。

 これは夢だ、と結論づけようとしたその時、ぐぅぅ、とお腹が鳴った。

 夢にしては、あまりにもリアルすぎる。

 …やっぱり、これって現実なの?

 

 とりあえず、これが夢であるかどうかは置いといて、お腹が空いて頭がうまく回らないから、食べ物を調達しに近くにあったコンビニに寄った。

 自動でドアが開かなかったから、近くに落ちていたいい感じの棒を使って、梃子の原理でドアをこじ開ける。

 すると溜まっていた埃がバサァ、と一気に落ちてきた。

 半年か、一年か…どれだけ放置してたらこんな事になるわけ…?

 電気もついてないし、どうなってんのよこれ。

 

「うぇぇ…全部腐ってるわ」

 

 コンビニの食べ物は、保存食以外全部腐ってカビが生えていた。

 でも賞味期限は昨日のままなのよね…どうなってんの?

 

 アルコール系はまだ飲めるし、タバコも大丈夫みたい。

 アルコールとタバコがいけるなら問題ないね、ヨシ。

 冷えてないけど、アルコールにありつけるだけありがたいわ。

 

 というかこれ、勝手に取っていっていいのかしら?

 ……うん、誰もいないなら仕方ないわね。

 私は、酒とタバコと保存食をありったけ買い物カゴに詰めて、コンビニを後にした。

 ごめんなさい、酒とヤニの誘惑には勝てなかったの。

 

 

 

「ふぅ、やっとひと息つけたわ」

 

 私は、コンビニから持ってきたカップラーメンでお腹を満たして、ビールとタバコをそれぞれ両手に優雅な朝食を済ませた。

 はぁ〜、こんな朝っぱらからビールとヤニぶちかましても誰にも怒られないなんて最高だわ。

 向こうじゃ喫煙者に対するイメージが悪くて、白い目で見られたからなぁ。

 まあ、それでも吸うんですけどね。

 だって私、ヤニカスだし?健康がどうとか知った事か。

 

 それにしても、ラーメンなんて久しぶりに食べたわ。

 久々に食べると、インスタントでも美味しく感じるものなのね。

 

 ……さて、と。

 お腹も膨れたし、いい加減これからの事を真面目に考えないといけないわね。

 どうやら、今目の前で起こっている出来事は、現実だと受け入れるしかないみたい。

 でも、どういうわけか、この状況を冷静に受け入れている自分がいた。

 自由に過ごせるこの世界は、私にとっては何だか気楽だった。

 

 腹ごなしに、散歩にでも行こうかしら?

 その方がこの世界の事、よく知れるかもしれないし。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 あれから、半日くらい歩き回ってみたけど、結局誰にも会わなかった。

 本当に私以外この世界にはいないわけ…?

 自由なのはいいけど、孤独ったらありゃしない。

 心の中で愚痴っていると、ブゥン、とビルのうちのひとつに明かりがついた。

 

「……あら?」

 

 さっきまで明かりなんてついてなかったのに。

 もしかして、誰か人がいたりするのかしら?

 まあいいわ、行けばわかるでしょ。

 明かりのついているビルに行くと、人が何人か集まっていた。

 ガタイのいいお兄さん、気弱そうなおじさん、女子高生、頭に包帯を巻いたお兄さん、茶髪のお姉さん、中学生くらいの男の子の6人組だ。

 

「あの、これって何の集まりです?」

 

 私が話しかけると、ガタイのいいお兄さんが口を開く。

 

「…アンタ、もしかして初参加者か?」

 

「うーん、多分そうですね」

 

「はぁ〜…初参加者が2人もいるとかマジ勘弁。足引っ張るのだけはやめてよね」

 

「す、すみません…」

 

 私が答えると、お姉さんが深くため息をつき、その後ろでおじさんが小さな声で謝っていた。

 あ、あの人も今日ここに来たばっかなんだ。

 

「まあいい。続きは中に入ってから話すぞ。『げぇむ』に参加できないと、アンタも死んじまうからな」

 

「?」

 

 『げぇむ』?何それ。

 っていうか、参加できないと死ぬってどういう事?

 いまいち状況が理解できない私を他所に、他の6人がゾロゾロとビルの中に入っていく。

 何か中で説明してくれるって言ってたし、とりあえず言う事聞いておいた方がいいのかしら?

 ビルの中に入った瞬間、ぞく、と寒気が走った。

 何、今の……悪寒…?

 

「あの、さっき言ってた『げぇむ』って何ですか?アタシ、今日目が覚めたらここにいて、ここが何なのかもわからなくて」

 

「ここは『今際の国』と呼ばれる世界だ。ここでは、命懸けの『げぇむ』に参加して、『くりあ』しないと死ぬ。『げぇむ』は、病院、学校、神社、あらゆる場所で毎晩開催される。一度『げぇむ』会場に入ったら、『くりあ』するまで外には出られない」

 

 そう言ってお兄さんは、クシャクシャに丸められた紙屑をズボンのポケットから取り出し、外に投げ捨てた。

 その次の瞬間、外に投げ捨てられた紙屑がボゥッと炎を上げて勢いよく燃えた。

 

「………マジかよ」

 

 外に出られないっていうのは、こういう事ね……

 さっきの悪寒の正体は、これだったわけ。

 

 …ん?

 ちょっと待って?

 私にこうやって色々説明してくれてるって事は、この人達は『げぇむ』に参加した事があるのよね?

 なのに何でまた『げぇむ』に参加してるわけ?

 

「ちょっといいですか?アタシに初参加者かどうかを訊いてきたって事は、アナタ達は前にも『げぇむ』に参加した事があるって事ですよね?前回の『げぇむ』を『くりあ』したのに、何でまた『げぇむ』に参加しているんですか?……アタシをここに招き入れて、何を企んでるんですか?」

 

 私が他の6人に疑いの目を向けると、お兄さんはため息をついてから話し始める。

 

「…仕方ない。アンタは話のわかる人だと見込んで、全部話すよ。この世界には、『びざ』と呼ばれるシステムがある。この世界では、『びざ』が切れるとその瞬間に死ぬ。それが嫌なら、『げぇむ』を『くりあ』して『びざ』を手に入れ続けるしかない。まあ、一つ言える事は、オレ達もアンタも同じ状況って事だ」

 

「なるほどね…」

 

 お兄さんの話によれば、この世界には『びざ』ってものがあって、それを手に入れる為に皆『げぇむ』に参加してるみたい。

 お兄さんの話を全部鵜呑みにしたわけじゃないけど、この人達も置かれている状況は私と同じっていうのは、嘘じゃなさそうね。

 

「他の建物は電気通ってなかったのにここだけいきなり明かりがついたけど、もしかして『げぇむ』会場だけ明かりがつく感じ?」

 

「あぁ、『げぇむ』会場だけは、電気や水道が通ってる」

 

「ふぅん」

 

 ところで、『げぇむ』ってどんなものなのかしら?

 ギャンブルは色々やってきたけど、今までアメリカ育ちだったから、日本独自のゲームだったらちょっと自信ないかも。

 他の6人についていくと、ドアに紙が貼られた部屋に辿り着いた。

 紙には、『エントリー数 10名』『エントリー受付 6時マデ』と書かれていた。

 

 ドアを開けると、円形のテーブルの周りに設置された席に既に3人座っていた。

 サングラスをかけたおじさん、スーツを着たお兄さん、成金っぽいおじさんの3人だ。

 3人は、天井から吊り下げられた縄を首に巻いて着席していた。

 モニターには、『首に縄を巻いてご着席ください』と表示されている。

 他の皆が首に縄をかけたから、私も自分の首に縄をかけて席についた。

 私達が全員席に着くと、アナウンスが流れる。

 

《エントリーを締め切りました。『げぇむ』を開始します。これから皆さんに参加していただく『げぇむ』は、『てきさすほおるでむ』》

 

「ふぅ〜ん、テキサスホールデムか」

 

 日本独自のゲームだったら不安だったけど、やった事あるゲームで良かった。

 

「知ってるのか?」

 

「何回かやった事あるからね。ポーカーの一種よ」

 

 私は、さっき色々説明してくれたお兄さんに説明した。

 まさかこんなところでギャンカスが役に立つとはね。

 ちなみに私のギャンブルの師匠は、私の元カレ(セフレ)

 アメリカ時代に色々あったのさ。

 

「ポーカーって事は、『(だいや)』だな…」

 

「ダイヤ?」

 

「えっと、『げぇむ』は大きく分けて4つの種類があるんです。『(だいや)』は頭を使う知能型、『♠︎(すぺえど)』は身体を使う肉体型、『♣︎(くらぶ)』はその中間のバランス型、『(はあと)』は……ごめんなさい、私まだやった事なくて…」

 

「ふぅん」

 

 私の隣の席に座った女子高生は、『げぇむ』について教えてくれた。

 要は、私がこれからやらされるのは知能型のゲームって事ね。

 そう考えていたその時、会場に設置されたモニターにトランプが表示される。

 

《エントリー数10名。制限時間1時間。賞品、猟銃。『げぇむ』難易度…『♢10(だいやのじゅう)』》

 

「だ、『(だいや)』の…」

 

「10…!?」

 

「無理だ…終わった……」

 

 モニターには、♢の10のトランプが表示されていた。

 それを見た何人かは、顔を青くして絶望していた。

 何?難易度10って、そんなに難しいの?

 なんて考えていると、モニターにルールが表示される。

 

 

 

『るうる』

 

・親の左隣の参加者を『SB(すもぉるぶらいんど)』、『SB(すもぉるぶらいんど)』の左隣の参加者を『BB(びっぐぶらいんど)』とする。親は、勝負が終わるごとに時計回りに交代する。

・『SB(すもぉるぶらいんど)』は開始時にチップを1枚、『BB(びっぐぶらいんど)』は2枚支払うこと。

・参加費が揃ったら、親が参加者に『でっく』のカードを2枚ずつ配る。不正防止のため、勝負が終わるごとに新しい『でっく』を使う。

・『BB(びっぐぶらいんど)』の左隣の参加者(『UTG(あんだぁざがん)』)から『べっと』を行う。この流れを『ぷりふろっぷ』とする。取れるアクションは、同じ金額を賭ける『こおる』、賭け金を上乗せする『れいず』、ゲームを降りる『ふぉおるど』の3つ。参加者が1人以下の場合、その時点で勝負は終了。2人以上の参加者が勝負に参加し、全員の賭け金の枚数が揃った場合、次の『べっとらうんど』に移行する。

・『ぷりふろっぷ』終了後、親は『でっく』から3枚引いて場に提出し、『べっと』を行う。この流れを『ふろっぷ』とする。2回目以降の『べっと』は、親の左側から行う。誰も『べっと』していない場合、チップを賭けずにゲームを進める『ちぇっく』を行う事ができる。

・『ふろっぷ』終了後、親は『でっく』から1枚引いて場に提出し、3回目の『べっと』を行う。この流れを『たあん』とする。

・『たあん』終了後、親は『でっく』から1枚引いて場に提出し、4回目の『べっと』を行う。この流れを『りばぁ』とする。

・全ての『べっとらうんど』終了後、全員が手札を公開する。これを『しょうだうん』とする。手札2枚と場のカード5枚で最も強い役を作った参加者が、出揃ったチップを全て獲得できる。

・賭け金が不足していても、『ふぉおるど』しない限りは最後まで勝負に参加できる。ただし勝った場合に他の参加者から獲得できるチップは、『べっとらうんど』中に賭けた分の枚数のみ。残りのチップは返却される。

・『しょうだうん』時にチップが0枚になった参加者は『げぇむおおばぁ』。

・チップを全て手に入れた参加者ただ1人が『げぇむくりあ』。

・制限時間内に決着がつかない場合は、全員『げぇむおおばぁ』。

・生存者が5人になった時点で、脱落者が1人出るごとに新『るうる』が追加される。

 

 

 

「た、たった1人が『げぇむくりあ』って…」

 

「わ、私、どうすれば…」

 

「クソッ、マジで最悪…よりによって『(だいや)』かよ!」

 

 包帯のお兄さんと女子高生は絶望し、お姉さんは不機嫌そうにテーブルを叩いた。

 ああ、これ、人が死ぬとかガチのやつっぽいな。

 なんとなく状況を整理していると、テーブルからチップが出てくる。

 だけどチップの枚数は、人によって全然違う。

 多い人だと70枚以上あるのに、私なんてたったの5枚だ。

 

「ちょっと待って、チップの枚数が全然違うんだけど!?こんなの不公平じゃない!」

 

「おそらくチップの枚数は、『びざ』の残り時間だ」

 

 お姉さんが文句を言うと、スーツのお兄さんが答える。

 もしさっき参加を拒否ってたら、私はあと5時間しか生きられなかったって事か。

 

《最初の親は、ソノダ様です。それでは、『げぇむすたあと』》

 

 スタートの合図と同時に、さっきの気弱そうなおじさんのテーブルにボタンが現れる。

 他の参加者が参加費を支払うと、親のおじさんがカードを配った。

 

 私に配られたカードは、ダイヤのジャックとクラブの8。

 『ぷりふろっぷ』は、親のおじさんと女子高生以外の8人が2枚ずつ賭けた。

 まああの二人も残りチップが5枚しかないし、下手に勝負したくないのもわからんでもないけど。

 

 『ぷりふろっぷ』が終わると、おじさんがコミュニティカードを出す。

 場に出たカードは、スペードの2、クラブの5、ハートのジャックの3枚。

 この時点で、少なくとも私はワンペア以上の役を作れる事が確定した。

 でもただでさえチップが残り3枚しかないのに賭け金上げてる場合じゃないし、『りばぁ』までは様子見かな。

 結局、『ふろっぷ』と『たあん』は誰も降りも賭け金を上げもせずに一巡し、『りばぁ』に突入した。

 親のおじさんが出した残り2枚のカードは、ダイヤの10とスペードのジャック。

 どうしようか考えていると、サングラスのおじさんがチップをテーブルに置いた。

 

「『べっと』3枚」

 

 うわ、こいつ…

 1回戦目から、チップ数の少ない私らを殺しに来やがった。

 まあ、『るうる』上問題ないんだけどさ。

 

「お、降りるわ!チップ全部なんて賭けられるわけないじゃない!」

 

 お姉さんは、チップを全額賭けるという決断はできずに、降りる事を選んだ。

 この時点で、私が取れる行動の選択肢は2つ。

 降りるか、乗るか。

 今降りれば、この勝負で『げぇむおおばぁ』になる事はまずない。

 だけど残り3枚じゃ、次の勝負はもっと不利になる。

 勝負に乗って勝てば、一発逆転のチャンス。

 だけどもし私より強い役の奴が最後まで残ったら、その時点で私は『げぇむおおばぁ』。

 

 …いや、こんなの実質一択でしょ。

 リスクがあるとわかってても賭けちゃうのがギャンカスの性よ。

 

「『こおる』」

 

「「「!?」」」

 

 私は、躊躇なく有り金を全部注ぎ込んだ。

 するとさっきのお姉さんが、私を指さして叫ぶ。

 

「ちょっ、アンタ正気!?この勝負で勝てなかったら死ぬのよ!?」

 

「まあそうなんだけどね?勝負を次に引き伸ばしたって勝てるかどうかわかんないし、だったらチップがまだある今のうちに一発逆転狙うのもアリかなぁって」

 

「頭おかしいでしょ…」

 

 私は、『べっと』を急かすかのように、他の参加者を見た。

 するとガタイのいいお兄さんは冷や汗をかいて自分のカードを伏せた。

 

「………『ふぉおるど』」

 

 結局お兄さんは、勝負から降りた。

 そして成金とスーツのお兄さんも降りた。

 逃げろ逃げろ、ビビってみんな降りちまえ。

 

「……『こおる』」

 

 私の期待に反して、男の子が勝負に乗ってきた。

 ……そううまくはいかないか。

 結局、1回戦は私、男の子、サングラスのおじさんの3人が最後まで残った。

 

《『べっとらうんど』が終了しました。それでは、『しょうだうん』》

 

 最後まで残った3人で、カードを見せ合う。

 男の子は5とジャックのツーペア、サングラスのおじさんは10とジャックのツーペア、私はジャックのスリー・オブ・ア・カインド。

 最初のゲームは、私が勝った。

 場にあったチップが全部私に流れて、合計チップ数は25枚になった。

 

「かーっ!惜しい、負けちゃった。お嬢ちゃんやるね」

 

「んー、まあ最初だし?せっかくだから記念のつもりで賭けてみようと思って」

 

 サングラスのおじさんが笑いながら言うのに対して、私は能天気に答えた。

 もしここで負けてたら、強制退場しちゃってたところだった。

 あっぶね。

 けどこれで首の皮一枚繋がった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 『げぇむ』は4回戦目に突入し、包帯のお兄さんのチップが残り3枚、お姉さんのチップが残り1枚になった。

 しかもお兄さんは今回の『BB(びっぐぶらいんど)』、お姉さんは『SB(すもぉるぶらいんど)』だから、強制ベットが発生する。

 お姉さんに至っては、強制ベットをした時点でチップ数は0になるから、どんなに役が悪くても降りられない。

 ただ1人の勝者を発生させるには、強制ベットのシステムが必要なんだろうね。

 参加費の強制ベットが無いと、残りチップが少ない参加者が勝負に参加せずに『げぇむ』を長引かせて他の参加者を道連れにしようとするから。

 

「もう後がない…今回勝てなきゃ終わりよ…!」

 

 この勝負で私みたいにお姉さんの首の皮が一枚繋がるか、それとも『げぇむおおばぁ』になるか、二つに一つだ。

 『しょうだうん』まで残ったのは『BB(びっぐぶらいんど)』と『SB(すもぉるぶらいんど)』、私、ガタイのいいお兄さん、サングラスのおじさん、スーツのお兄さんの6人で、今回の勝負で勝ったのは、親を担当したサングラスのおじさんだった。

 

「あーあ、惜しかったね」

 

 おじさんは、不敵に笑いながら場にあるチップをごっそり持って行った。

 これで、お姉さんの負けが確定した。

 

《ここで、チップが0枚になった参加者がおられます。その参加者は、『げぇむおおばぁ』》

 

「いやっ…いや、いや!!」

 

 勝負に負けて『げぇむおおばぁ』になったお姉さんは、顔を青くして絶望していた。

 その次の瞬間、お姉さんの首に巻かれた縄がぐんっと上へ引っ張り上げられ、お姉さんの身体が上へ持ち上がる。

 

「きゃあああああっ!!」

 

 お姉さんの身体を引っ張り上げる縄は、3mくらい高く引き上げられたところでいきなり止まり、お姉さんの身体ががくんっと大きく揺れる。

 その衝撃で首の骨が折れたのか、お姉さんはそのまま動かなくなった。

 首を吊られて絶命したお姉さんは、ボタボタと小便を垂れ流した。

 

 ……うわ。

 マジかよ、『げぇむおおばぁ』になったらあんな死に方すんのかよ。

 あんな死に方すんのは流石にちょっと嫌だなぁ。

 

「ひっ…ひっ……!!」

 

 私と同じく初参加のおじさんは、お姉さんが死んだのを見て悲鳴を上げていた。

 そして5回戦目は、残りチップ1枚になった包帯のお兄さんが自暴自棄になって、賭けに負けて死んだ。

 せっかく親だったのに、もったいない事を…

 

 これで残りはあと8人。

 ここから先は、勝てるチャンスを逃したら負ける。

 温存なんて言ってる場合じゃなさそうね。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「『べっと』5枚」

 

 8回戦目、親のスーツのお兄さんが、勝負を仕掛けてきた。

 狙っていた役が来なかったので、今回は降りて高みの見物をしていると、気弱そうなおじさんが残りのチップを全部つぎ込んで勝負に乗った。

 

「っ…『こおる』!」

 

 おじさんがチップを出して『こおる』し、勝負が成立した。

 今回最後まで残ったのは、スーツのお兄さんと気弱そうなおじさんの二人だけだった。

 

《『べっとらうんど』が終了しました。それでは、『しょうだうん』》

 

「す、ストレート…!」

 

 気弱そうなおじさんの役は、ダイヤの3、スペードの4、スペードの5、クラブの6、クラブの7のストレート。

 

「フラッシュだ」

 

 そしてお兄さんの役は、スペードのA、スペードの4、スペードの5、スペードの9、そしてスペードの10のフラッシュだ。

 勝ったのは、スーツのお兄さんだった。

 負けたおじさんは、絶望の表情を浮かべて叫ぶ。

 

「い、イカサマだ!こんなのあり得ない…あなた、イカサマしましたよね!?」

 

「人聞きの悪い事を…どこにそんな証拠がある?」

 

 負けたおじさんが問い詰めるも、スーツのお兄さんはシラを切り通した。

 要は、イカサマもOKって『るうる』なんだろう。

 

《ここで、チップが0枚になった参加者がおられます。その参加者は、『げぇむおおばぁ』》

 

 無機質なアナウンスの直後、気弱そうなおじさんが首を吊られて死んだ。

 また、脱落者が出た。

 これで参加者は残り7人。

 

 そして、『げぇむ』は9回戦に突入した。

 今回の親は、成金のおじさんだ。

 おじさんは、カードをリフルシャッフルしてから、私達に手札を配った。

 

「『こおる』」

 

「こ、『こおる』よ!」

 

 ガタイのいいお兄さんと、私の隣の女子高生は、チップを全額賭けた。

 私の役は、10が3枚、ジャックが2枚のフルハウス。

 本来ならここで乗るべきなんだろうけど、何か嫌な予感がしたので、今回は降りる事にした。

 

「…『ふぉおるど』」

 

 私が降りると、成金の表情が一瞬険しくなった。

 結局、勝負に乗ったのは、サングラスのおじさんと女子高生とガタイのいいお兄さんだけだった。

 

《『べっとらうんど』が終了しました。それでは、『しょうだうん』》

 

 今回の勝負に勝ったのは、成金だった。

 成金の役は、10が4枚のクワッズ。

 あっぶね、乗ってたら私負けてたよ。

 

「うそ…うそ、うそ、うそ…!!」

 

「う…そ、だろ…!?」

 

 負けた女子高生とお兄さんは、絶望の表情を浮かべていた。

 女子高生の役は、10が3枚、クイーンが2枚のフルハウス。

 そしてお兄さんの役は、10が3枚、キングが2枚のフルハウス。

 最初に私が勝った役より強いから、勝負を受ければ勝てると踏んだんだろう。

 

「あーあ、チップなくなっちゃったねぇ」

 

 成金のおじさんは、賭け金がなくなった二人を見てニタニタ笑っていた。

 やだねえ、いい歳こいたおじさんが大人気ない。

 まあ、命がかかってるからそんな事言ってられないんだけどさ。

 

《ここで、チップが0枚になった参加者がおられます。その参加者は、『げぇむおおばぁ』》

 

「クソッ…これだから『(だいや)』はやりたくなかったんだよ…!クソォォォッ!!!」

 

「いやっ…いや、いや!!死にたくない!!私、まだやりたい事いっぱいあるのに…!!」

 

 機械音声が響く中、脱落した二人が泣き喚く。

 女子高生は、隣の席の私に手を伸ばして助けを求めた。

 

「た、助け……」

 

 私は、助けを求めてくる女子高生を無視して、短くなったタバコを灰皿に押し付けた。

 私は君の事なんか知ったこっちゃなくて、結局自分の事しか考えられないみたい。

 こんな奴が生き残っちゃってごめんな?

 

「うぁああぁあああああ!!!」

 

「いやああああああああっ!!!」

 

 二人は、ロープで勢いよく身体を引っ張り上げられて、そのまま絶命した。

 一緒に参加したお仲間が5人も死んでしまった。

 女の子がいなくなって寂しい…とか言ってられる場合じゃないよね。

 さて…と。

 人数は残り5人になっちゃったけど、これからどうするかな。

 

 

 

 ───今際の国滞在1日目

 

 げぇむ 『てきさすほおるでむ』

 

 難易度 『♢10(だいやのじゅう)

 

 生存者 10名中5名

 

 

 

 

 




主人公紹介

潰田(ツエダ)千寿(せんじゅ)

年齢:29歳
身長:168cmくらい
出身地:アメリカ
職業:元・人工知能学者
好きなもの:酒、ヤニ、ギャンブル
容姿:髪は紫がかった紺のボブカット。耳と臍にピアスをつけている。
服装:レザージャケットにジーンズ。下はチューブトップ。

酒カスヤニカスギャンカスのカス三冠をコンプリートしているクズ系お姉さん。
元はアメリカの大企業に勤務していた人工知能の研究者だったが、職を失い東京行きの便に乗って日本に帰国した直後、『今際の国』に迷い込んだ。
日本人で日本語は普通に話せるが、長い間アメリカ暮らしだったため、日本での流行りや常識についてはあまり詳しくない。

名前の由来は、『ダッチェス』のアナグラム -> 潰田(ツエダ)+千(チ)+寿(ス)
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