神の視点からのみわかる情報、という事で。
作者はお漏らし癖があるので(つーか垂れ流し)、シーズン3の内容も本編にぶち込んでしまうかもです。
まだネトフリ版見てない人はすまんな(反省の色ゼロ)。
私がギャンブルを始めたのは、9年前の8月。
カジノで遊べるようになる21歳の誕生日、ちょうど夏休み中という事もあって、昔馴染みの友達がラスベガスのカジノで誕生日を祝ってくれた。
せっかくだから、ものの試しと思って遊んでみたら、持ち前の強運と頭のキレで連勝した。
だけど勝てたのは最初だけで、すぐに勝てなくなった。
ポーカー、ブラックジャック、ルーレット、いろんなゲームで遊んだけど、どれも最初の数回しか勝てなかった。
「あら?また負けちゃった」
お金ももう無かったし、負けてばかりでつまらなくなったから帰ろうとした。
私が席を立ったその時、ゲームに参加せずに遠巻きに見ていた客が、私に話しかけてきた。
ガッシリとした身体つきで、精悍な顔立ちの、30代後半くらいの男だった。
「あれ?もう帰るのかい?」
「ええ、負けちゃってもうお金がないので帰ります」
私は、客を適当にあしらって帰ろうとした。
するとその客は、ニヤリと笑って言った。
「キミ、日本人だろ?ギャンブルのやり方がわかってないね」
彼は、私が日本人だという事をすぐに見抜いてきた。
私は、何となく彼に興味が湧いて、ギャンブルのやり方とやらを訊いてみる事にした。
「やり方?どんなやり方があるんですか?」
「悪いが情報はタダじゃない。…わかるよな?」
客は、品定めするような目で私を見てきた。
彼の言葉の意味がわからないほど、私も馬鹿じゃない。
だけど不思議と、嫌な気分はしなかった。
「えぇ、是非聞かせてもらえるかしら?」
私が彼の誘いを受けると、彼は驚いた表情を浮かべた。
多分、今までナンパしてきた女の子は警戒心が強くて、私みたいに積極的に売り込みに行く女は珍しかったんだと思う。
元々セックスは嫌いじゃないし、イケおじが相手ならむしろご褒美だと思った。
その上もっとゲームを楽しませてくれるなら、乗らないわけがない。
「面白い子猫ちゃんだ。OK、それじゃ場所を移そうか。天国を見せてやるよ」
彼は、私の肩に手を回してそう呟いた。
その後私は、お持ち帰りされて美味しく戴かれた。
それが私の元カレ、エリックとの出会いだった。
まだ若かった私は、同年代のボーイフレンドにはない経験豊富な大人の男の魅力に、思わず心をときめかせた。
思う存分楽しんだ後、エリックは約束通り、稼げるゲームの見極め方や、カジノでよく使われるイカサマの手口なんかを私に教えてくれた。
初めて会った時に私が日本人だとすぐに見抜いたのは、不正なギャンブルのカモにされるのは東アジア系の中でも日本人が圧倒的に多いからだとも言っていた。
ちなみに私に声をかけたのは、私の頭の回転の速さやツキの良さに興味が湧いたからだという。
酒とタバコの味も、彼に教わった。
その日の彼はすこぶる機嫌が良くて、煽てたら高級酒とタバコをご馳走してくれた。
まあ、そのおかげで今じゃ酒カスヤニカスギャンカスのカス三冠女になっちゃったんだけどね。
だけど今、彼に教わった事が私の命を救ってくれている。
彼には感謝しないとね。
◇◇◇
10回戦目。
これで親が一巡し、男の子が2回目の親になった。
現時点でのチップ数は、成金が107枚、スーツのお兄さんが65枚、サングラスのおじさんが50枚、男の子が38枚、そして私が30枚。
成金は、さっき二人を殺してトップに躍り出た。
「あーあ、今度は一気に2人減っちまったな。お仲間がいなくなって悲しいなぁ、お嬢ちゃん」
さっきお兄さんと女子高生を殺した成金が、私に話しかけてくる。
こういうとこ見せられると、無性にムカついてくる。
私がムカついているのは、私に『げぇむ』の事を教えてくれた親切な人達を殺した事に対してじゃない。
人を騙すのが下手すぎて、高い金を払って劇場に見に行った映画がC級映画だった時みたいな苛立ちが湧いてくる。
私には、コイツの魂胆がわかる。
コイツは、さっきの勝負でイカサマをした。
自分が親なのをいい事に、わざとあの二人に強い役のカードを配って、たんまり『れいず』させてトばした。
そして多分だけど、次は私を標的にしようとしている。
それ自体は別に問題ないけど、コイツの場合、それを隠すのが下手すぎる。
コイツはこの『げぇむ』の間、確実に自分が勝てる勝負にしか乗らなかった。
そんなの、イカサマをしてますと自分から言ってるようなものだ。
多分他の3人もコイツと同じように他の参加者をトばそうと考えてたんだろうけど、他の3人はそれを隠すのが上手くて、チップを大量に失う勝負にも乗ってきた。
しかもさっきの勝負では、私を含めて7人中4人がフルハウス以上の役を引いた。
この『げぇむ』はテキサスホールデムだけど、それでも7人中4人がフルハウス以上の役を引く確率はそう高くない。
イカサマを疑うのは当然。
ちなみにコイツは、カードを配る時にリフルシャッフルをしていた。
多分コイツがやっていたのは、パーフェクトシャッフルと呼ばれる、厳密なリフルシャッフル。
パーフェクトシャッフルは、必ずカードの並びが規則的になり、8回繰り返せば元のカードの並びに戻る。
さっきの勝負でコイツは、それを利用してキングから10のカードが『でっく』の上の方に固まるように混ぜ、脱落した二人にわざとフルハウスを引かせた。
そして勝てると思わせてたんまり『れいず』させて、クワッズで負かして破産させた。
多分他の3人の手札も、フルハウスだったんだと思う。
3人は、それを見抜いていたからさっきの勝負で降りて、破産を免れた。
うまく隠せてるつもりだろうけど、リスクを取らなきゃ人は騙せないよ。
《生存者が5名となりました。新『るうる』を追加します。これ以降は、脱落者が1人出るごとに新『るうる』を1つずつ追加します。新『るうる』その1。これ以降は、強制『べっと』に支払う枚数を『
ふぅん。
つまり、強制『べっと』の金額を釣り上げて相手を強制的にトばすって戦法が取れるようになったって事ね。
次からは、たとえゲームに乗る気が無くても、強制『べっと』で『げぇむおおばぁ』になる可能性が出てきたってわけ。
「聞いたか?強制『べっと』の額を自由に決められるんだってよ。早速脱落者が1人決まっちまったなぁ?」
『るうる』説明を聞いた成金が、ニタニタ笑いながら私に話しかける。
だけど私は、自分が強制『べっと』でトばされるとはこれっぽっちも思わなかった。
「人の心配してる場合?」
「あ!?」
「アタシは、現時点でチップ数が多ければ勝ち残れる…とは思わないケド。皆はどう思う?」
私がそう言うと、他の参加者は顔を見合わせる。
多分、私が言わんとしている事がどういう事か、理解できたらしい。
配られたカードを手に取った私は、チラッと成金の方を見る。
アンタは、この私を完全に怒らせた。
後悔したって、知らないよ?
◆◆◆
カネミツside
俺は、勝ち目のない10回戦と11回戦を降りて、次の勝負に備えて作戦を考えた。
俺はこの『げぇむ』でイカサマをしている。
さっきはゲーム慣れしてない素人にわざと強い役を配って、破産させてチップを独占した。
だが、それの何が問題だ?
他の奴等だってやってる事じゃねえか。
問題は、最低でも『
俺は今、2位の男とは30枚以上も差がついてる。
他の奴等は、負ける可能性があるのにいきなり強制『べっと』の金額を引き上げる事はできないはずだ。
あと2ターン乗り切れば、今度は俺が親になる。
親になった時にチップを取り返せば問題ない。
《それでは、12回戦を始めます。次の親は、ツエダ様です》
俺の右隣のスーツの男は、躊躇いなくチップの束を場に出した。
「強制『べっと』30枚」
「………あ?」
コイツ、今何つった?
「『あ?』じゃねえよ。大富豪なんだろ?さっさと払えよ、チップ60枚」
「テメェっ…何のつもりだ!?」
「何のつもりって、目障りなんだよお前。まずはお前から消えろ」
そう言ってソイツは、親指で首を横に切った。
勝負に乗ろうが降りようが、俺は強制『べっと』にチップを60枚も持っていかれる。
『れいず』の金額が跳ね上がらない以上、ここで降りるメリットは無い。
俺は、勝負に乗る事にしたが、結局負けてチップを60枚失う羽目になった。
「……チッ」
「悪いな、チップいただき」
そう言ってスーツの男は、俺から奪い取ったチップをかき集めた。
これで60枚以上も差をつけられちまった。
だがあと1回凌げば、次は俺が親になる。
13回戦、俺は『
そして14回戦目。
俺はさっき親だった時と同じように、自分の役が一番強くなるようにカードを配った。
するとだ。
「『れいず』40枚」
サングラスの男が、チップを大量に注ぎ込んだ。
馬鹿が。
俺がカードを配ってる限り、俺が負ける事はねぇんだよ!
チップ40枚使って自滅しろ!
当然俺は『こおる』をした。
俺は全額賭ける事になるが、勝つんだから問題はない。
そうなれば、俺はまた1位に躍り出る事ができる。
最後に勝つのは俺なんだよ。
《『べっとらうんど』が終了しました。それでは、『しょうだうん』》
「10と9のフルハウス」
俺はアナウンスの直後に、自分の手札を公開した。
勝った…!!
コイツにはスリーカードになるようにカードを配ったから、俺には絶対に勝てない。
「10のフォーカード」
………は?
フォーカード、だと…!?
何で!?
コイツに配ったのは、7と5だったはず…!!
フォーカードが作れるわけがねぇ!!
コイツ、まさかイカサマをしたのか!?
「は?は!?は!?嘘だろ、あり得ねぇ!!なんでお前がフォーカードなんだよ!?お前、絶対イカサマしただろ!?こんなのインチキだろうが!!」
「イカサマ?何の事だかわからねえな」
俺が問い詰めると、そいつは平然と笑った。
あり得ねぇ…俺の作戦は完璧だったはずなのに…!!
「お前ら、まさか俺を嵌めたのか…!?」
もしやと思って女を見ると、女は俺を小馬鹿にしたようにほくそ笑みながらタバコの煙を吐いた。
「やっと気づいた?この『げぇむ』は最後にチップを独占した参加者が勝つんだから、生き残りたいなら弱い奴を最後まで残しておいた方が得策。もしトップをキープし続けようとしている大富豪がいたとしたら、まずはソイツをみんなで潰せば良いよね?」
クソっ…
さっき『チップ数が多ければ勝てると思わない』って言ったのは、そういう事かよ………
《ここで、チップが0枚になった参加者がおられます。その参加者は、『げぇむおおばぁ』》
アナウンスが鳴ると同時に、俺の首に巻かれた縄の上の方からカチッと音がする。
おい、まさか俺、このまま吊るされるのか…!?
嫌だ、嫌だ、嫌だ…!!
死にたくない、死にたくないぃぃぃ!!!
「うぉぁああああぁあああああああ!!!!」
◆◆◆
ツエダside
私の思惑通り、さっき参加者を二人殺した成金が、チップを失って『げぇむおおばぁ』になった。
他の参加者は、もしトップを独走している大富豪がいたとしたら、私より先にソイツを殺そうとするはず。
それを見越した私は、チップ数が多い二人が成金を潰すように仕向けた。
これで参加者は、残り4人。
ここからは、『るうる』次第で誰が脱落してもおかしくない。
《脱落者が出ました。新『るうる』を追加します。次の勝負からは、イカサマをしていると判断した参加者に対し、『だうと』を宣言できます。『だうと』を宣言した方は、『だうと』の対象者がどんなイカサマをしているかを言い当てていただきます。正解の場合、宣言された方は『げぇむおおばぁ』。所持チップは全て、『だうと』を宣言した方に移動します。ただし不正解の場合、『だうと』を宣言した方が『げぇむおおばぁ』。所持チップは、『だうと』を宣言された方に流れます。『だうと』が宣言された場合、勝負は流れとなり、賭け金の移動は無効となります》
アナウンスが鳴り、テーブルの上に『だうと』宣言用のボタンが現れる。
イカサマを当てたら、イカサマをした参加者のチップを全部獲得できる、か…
誰がイカサマをしてるか当てるだけじゃダメっていうのがキツいね。
《それでは、15回戦を始めます。次の親は、ナナミ様です》
次の親は、男の子だった。
サングラスのおじさんと私が強制『べっと』を支払うと、男の子が私達にカードを配る。
サングラスのおじさんは、私に強制『べっと』30枚を要求してきた。
もしこの勝負に負ければ、私は『げぇむおおばぁ』。
私、ピンチじゃん。
こうなったら、一か八かで『だうと』ボタンを押してみるか?
なんて思っているとだ。
「『だうと』、トージョーさん」
男の子が、『だうと』のボタンを押してサングラスのおじさんを指差した。
「アンタが出したカード、別の『げぇむ』で手に入れたやつだよね?」
男の子が、サングラスのおじさんのイカサマを指摘した。
するとサングラスのおじさんのテーブルのランプが赤く点滅し、ブザーが鳴った。
《ナナミ様が『だうと』に成功しました。『だうと』されたトージョー様は、『げぇむおおばぁ』》
サングラスのおじさんは、袖口に隠していたカードをバラバラと出しながら笑った。
「……何でわかるんだよ、クソッ」
おじさんがそう言って笑った、その直後。
ピィン、と赤いレーザーがおじさんの頭を貫いた。
ビシャっと赤黒い液体が飛び散り、私の顔にもかかる。
その時飛び散った血が、テーブルの上のカードについた。
「…………」
《ナナミ様が『だうと』しましたので、勝負は流れとなります。トージョー様のチップは、ナナミ様に流れます》
サングラスのおじさんが持ってたチップが、全部男の子に流れる。
私は、男の子が『だうと』を宣言して勝負が流れになったおかげで助かった。
これで残り人数は、あと3人。
チップ数100枚超えの二人に対して、私はたったの30枚。
さっきの成金の時みたいな手は使えないし、いよいよピンチになってきたね。
◆◆◆
センダside
残りの参加者も、俺を含めてあと3人。
チップ数たったの30枚の女と、さっきの『だうと』で1位に躍り出たガキ。
まあ、初めからオマエら『ぷれいやぁ』に勝ち目なんか無かったんだけどな。
何故なら…
『でぃいらぁ』の俺が用意した専用の『でっく』を使えば、負けようがないんだからな!
この『でっく』には、裏側に素人にはわからない微妙な模様の違いがあって、それを見れば『ぷれいやぁ』が何のカードを持っているのかがわかる。
そもそも『でっく』に細工がされてるなんて誰も思わない。
おっと、俺を責めるのはお門違いだぜ。
『イカサマ行為は禁止』だなんてどこにも書かれていない。
なぜこの『げぇむ』が『
初めから『ぷれいやぁ』が勝てない『げぇむ』だって事を疑いもせずに、バカ正直に『げぇむ』を続けたオマエらが悪い!
もちろん、トージョーが前の『げぇむ』で手に入れたカードを使っていたのもわかってたぜ?
『げぇむ』で発行されるトランプには、何の細工も施されていないからな。
『だうと』はガキに先越されちまったが、俺が『でっく』に施した細工には気付きようがない!
この勝負、勝った。
《脱落者が出ました。新『るうる』を追加します。次の勝負からは、全額を賭ける『おおるいん』を宣言できます。『おおるいん』が宣言された場合、他の参加者は勝負を降りる『ふぉおるど』か、同様に全額賭ける『こおる』しか選択できません》
『るうる』説明の後、16回戦が始まった。
次の親は、あの女だ。
「『べっと』3枚」
俺は場に3枚のチップを出し、ガキはチップを6枚出した。
女は、チップを6枚場に出し、俺がさらにチップを3枚追加して16回戦が始まった。
「次は、アンタが親だぜ」
俺は、隣に座っていた女に声をかけた。
女は、手をしきりにハンカチで拭いていた。
「おい、何やってんだ?さっさとカードを配れよ」
「ああ、ごめんなさい。さっきおじさんが死んだ時に飛び散った血が気になって。カードに血でもついたら、困るでしょ?」
そう言って女は、ハンカチをポケットにしまうと、テーブルから飛び出てきた『でっく』を手に取る。
女は、カードをよく切って俺達にカードを2枚ずつ配り、さらに追加でチップを5枚場に出した。
「『べっと』5枚」
女が『べっと』すると、俺とガキが『こおる』をし、『ぷりふろっぷ』が終わった。
すると女は、『でっく』のカードを3枚場に出した。
場に出ているのは、ダイヤの9、ハートの8、スペードの8。
俺のカードは、クラブの8とダイヤの4。
この時点で、俺の手札がスリーカード以上である事が確定した。
女のカードは、ダイヤの6とスペードのエース。
ガキのカードは、クラブのクイーンとハートの3。
全員が『ちぇっく』を選択し、『ふろっぷ』が終わると、女が4枚目のカードを場に出した。
4枚目のカードは、クラブの2だ。
この時点で、女とガキはワンペアしかできていない。
『たあん』でも全員が『ちぇっく』を選択し、『たあん』が終わると、女が最後のカードを場に出した。
最後のカードは、ダイヤの5だった。
勝った。
親なのをいい事に何かイカサマを仕掛けてくるかとも思ったが、所詮は素人だったか。
ここでこの女を殺しておけば、俺が1位になって、後の勝負を有利に進められる。
トージョーを殺して1位になった『ぷれいやぁ』が未知数だが、所詮はガキだ。どうにでもなる。
こんなズブの素人どもに、『でっく』の仕掛けがわかるはずがない。
「『べっと』10枚」
「……『ふぉおるど』」
俺が賭け金を設定すると、ガキは少し考えてから、勝負を降りた。
次は、女の番だ。
「ほら、どうした?早く賭けるか降りるか選べよ。ああ、もしかして、怖気付いちまったか?」
俺は、女の顔を覗き込んで煽った。
この女には、勝負を降りるという選択はできない。
降りたところで、後の勝負が余計に不利になるだけだからだ。
どのみち、この女はここで終わりだ。
「『おおるいん』」
な……!?
『おおるいん』だと!?
コイツ、チップ数が残り少ないからって、この勝負で決着をつける気か!?
「お前、正気か!?負けたら『げぇむおおばぁ』だぞ!?」
「だったらアンタにとっては願ったり叶ったりでしょ?アタシは、死ぬまで『おおるいん』しかしない。手札に自信があるなら、さっさとアタシを殺しなよ。ああ、それとも、怖気付いちゃった?」
女は、不敵な笑みを浮かべながら、さっきの俺と同じ煽り文句を言った。
俺は、この目を知ってる。
死をこれっぽっちも恐れていない、ぶっ壊れた人間の目。
コイツ……
………馬鹿が。
最期まで、誰がこの『げぇむ』を支配してるのか気づかずに全額賭けちまうとはな。
『げぇむ』を支配してるのは、オマエら『ぷれいやぁ』じゃなく、俺達『でぃいらぁ』なんだよ!!
でもまぁ、同情するぜ。
どの道オマエら『ぷれいやぁ』には、ハナから勝ち目なんかなかったんだからな。
「……『こおる』だ」
俺は、残りのチップを全額賭けた。
ガキの前に、まずはテメェだ。
死ね、ぶっトんじまえ!!
《『べっとらうんど』が終了しました。それでは、『しょうだうん』》
「スリーカード!」
アナウンスと同時に、俺はカードを公開した。
俺のカードは、8のスリーカードだ。
女の手札は、8のワンペア。
この勝負、俺の勝ちだ。
「ナインハイストレート」
…………は?
今、なんて?
「おい、今ストレートっつったか?何かの聞き間違いだろ?」
「現実だよ。よく見てみろよ」
そう言って女は、自分の手札を見せてきた。
女が持っていたのは、ダイヤの6とスペードのエース……ではなく、ハートの7だった。
何で…何で、コイツがハートの7なんか持ってんだよォ!!?
◆◆◆
ツエダside
《16回戦の結果を発表します。勝者、ツエダ様。場のチップは、全てツエダ様に移動します》
「あはぁ♪やった、勝てた」
勝負に勝った私は、場にあったチップを全部回収した。
すると、私に負けたスーツのお兄さんがテーブルをバンッと叩いて抗議してきた。
「おい、オイオイオイオイオイ!!どうなってんだよコレ!?お前のカードは、ダイヤの6とスペードのエースだろうが!!何でハートの7なんか持ってんだよ!?お前、さてはカードを入れ替えただろ!?こんなの反則だ!!」
反則だぁ?
うるせえよ、今まで散々イカサマしてきたくせに。
「アンタ、何でアタシのカードがスペードのエースだと思ったわけ?」
「っ……!!」
私が訊くと、お兄さんの顔が歪む。
バレバレだよ、私のカードを盗み見してた事くらい。
いい加減認めればいいのに、どのみち『げぇむおおばぁ』なんだから。
「なるほどねぇ…アンタが見てたカードは、これなんじゃないの?」
そう言って私は、血のついたスペードのエースのカードを見せた。
それを見たお兄さんが、ハッとした表情を浮かべる。
「これ、前回の勝負で使ったカードなのよね。アンタが次の勝負で何か仕掛けてくるだろうと思ったから、念の為にフェイント用に隠し持たせてもらった」
私には、お兄さんがカードの裏の模様を見て私のカードを盗み見していた事がわかってた。
だからお兄さんを騙して勝負に乗らせる為に、前回の勝負で使ったスペードのエースをこれ見よがしに見せた。
たとえ今から『だうと』をしたって、お兄さんには私を殺せない。
だって、私はイカサマなんかしていないから。
確かに前回のカードを使いはしたけど、私はズルして『げぇむおおばぁ』になったおじさんとは違う。
私が場に出したのは前の勝負で使ったカードじゃなくて、ちゃんと新しい『でっく』から引いたカードだ。
その証拠に、フェイント用に使ったスペードのエースにはおじさんの血がついていて、ちゃんと手を拭いてから触ったハートの7には血がついてない。
まあ、イカサマの予備知識がなかったら、多分お兄さんを騙せなかったんだけどね。
学生時代、エリックに『マークドデック』というイカサマの手法を教えてもらってたから、カードの裏面を見てすぐに細工に気付いた。
やっぱり持つべきものは、人生経験豊富な彼氏よね。
「フェイント……?お前、気付いてたのか…いつからだ……?」
「最初から」
「……マジかよ」
私が微笑みながら答えると、お兄さんは呆れたように笑った。
その直後、アナウンスが鳴る。
《ここで、チップが0枚になった参加者がおられます。その参加者は、『げぇむおおばぁ』》
アナウンスの直後、お兄さんの首にかかった縄が引っ張られ、お兄さんが首を吊られて死んだ。
これで、残り人数は二人。
私と、ナナミとかいう男の子。
私がお兄さんを見上げながらタバコを吸っていると、ナナミが私に話しかけてくる。
「……アンタがセンダを嵌めた方法はわかった。でもさ、ひとつわからないことがあるんだけど。ストレートを引き当てたのは、どんな手品を使ったの?」
「ああ、あれ?ただの偶然。運も実力のうち、ってやつかしら?」
私が答えると、ナナミは疑うような目で私を見る。
私はこれまでの勝負で、一回もイカサマをしていない。
だって、そんな事したら『げぇむ』が面白くなくなっちゃうから。
ギャンカスの私にとっては、生き死になんて二の次。
100%負けるゲームになんか参加したくないけど、100%勝つゲームはもっと嫌。
自分が生き残る為のイカサマなんて、もっての外。
私はただ、ギャンブルが楽しければそれでいいの。
《脱落者が出ました。新『るうる』を追加します。次の勝負からは、引き分けはありません。手札の数字が2枚とも被った場合は、数字が大きい方のカードのマークが強い方が勝者となります。マークの強さは、『
引き分けはなし…か。
次からは、お互い『おおるいん』すれば確実に『げぇむ』が終わるわけだ。
私は、私の前に座っているナナミの顔を見た。
……こうして見ると、随分と若いわね。
こんな若い子まで『げぇむ』に参加させられてるなんて、理不尽もいいところだわ。
まあ、何の因果か、初参加者と中学生がここまで生き残っちゃったわけだけど。
「ナナミ、だっけ?さっきはありがとうね。キミが15回戦で『だうと』してくれなきゃ、アタシ死んでたよ?」
「そんなんじゃないよ。トージョーさんを『だうと』しなきゃ、チップ枚数で差をつけられてオレが殺されてたかもしれなかった。それだけだから」
「それはそうと…キミ、『だうと』を押した時、どうやってあのおじさんのズルを見抜いたの?」
「ああ、あれ?当てずっぽうで言ってみたら当たっただけ。運も実力のうちってやつ?」
ふぅん。
この子、なかなか面白いじゃん。
「あはっ、アンタ狂ってんね。道理で中学生が今まで生き残れたわけだ」
「…オレ達、似たもの同士なのかもね」
私が笑うと、ナナミも微笑んだ。
なんだか自分でも不思議。
死の淵に立たされてようやく、同族に出会えるなんて。
きっと私のように、何の為に生きているのかわからない人生を送ってきたんでしょうね。
「ねえ、お姉さん。次の勝負は、一緒に『おおるいん』しない?」
「……正気?」
「お姉さんが言ったんでしょ。『死ぬまで『おおるいん』しかしない』って。どうせいつかは勝敗を決めなきゃいけないなら、今決めようよ。イカサマなしの真剣勝負。どう?」
「アンタそんなにアタシに早く死んでほしいわけ?…まぁ、付き合ってやってもいいけど」
私とナナミは、次の勝負でお互いにチップを全額賭け合う約束をして、ゲームを始めた。
ゲームの途中、ナナミが私に話しかけてくる。
「…ねえ、タバコ臭いんだけど。もしかして、副流煙で集中力削ぐ作戦?」
「あはっ。だとしたら、アタシって相当イジワルじゃん」
「タバコはやめた方がいいよ。この国で長生きしたいならね」
「…優しいのね。でもさ、それ、これから死ぬかもしれない相手に言う?」
ナナミの忠告に対して、私は笑って答えた。
どうせ今から死んじゃうかもしれないなら、健康に気を遣う必要なんかないでしょ。
「ところでさぁ、キミ、彼女いる?それか、好きな人とか」
「…いないけど」
「そっかぁ、いないのか。じゃあさ、この勝負に勝ったらアタシが付き合ってあげようか」
私が笑いながら言うと、ナナミは僅かに目を見開いた。
「…1人しか生き残れないから無理だよ」
「まぁ、そうなんだけどね。生きる理由が無いよりはあった方がいいでしょ?」
私が言うと、ナナミは視線を逸らして考え込む。
そして、5枚目のカードを場に出しながら口を開いた。
「……考えとく」
場のカードは、ハートのキング、スペードのクイーン、ダイヤの7、クラブの5、ハートの2。
私の手札は、スペードのキングとダイヤのクイーン。
もしナナミの手札がツーペア以下なら私の勝ち。
スリー・オブ・ア・カインド以上なら私の負け。
読み合いも駆け引きもない、本当に運だけの真剣勝負。
これで負けても、後悔はしない…かな。
《『べっとらうんど』が終了しました。それでは、『しょうだうん』》
私とナナミは、同時にカードを出した。
ナナミの手札は、ダイヤのキングとハートのクイーンだった。
数字が被った場合は、大きい方の数字のマークが強い方が勝つから、スペードのキングを持ってる私の勝ち。
《17回戦の結果を発表します。勝者、ツエダ様。場のチップは、全てツエダ様に移動します》
「あーあ、負けちゃった……」
負けたナナミは、背もたれにもたれかかってため息をついた。
ナナミは、後悔も命乞いもしなかった。
《ここで、チップが0枚になった参加者がおられます。その参加者は、『げぇむおおばぁ』》
アナウンスの直後、ナナミの首に巻かれた縄の上端からカチッと音が鳴る。
そしてナナミの縄が勢いよく上へと引っ張られ、ナナミの身体は上へと引き上げられる。
その時に首の骨が折れたのか、ナナミは宙吊りになったまま動かなくなった。
《こんぐらちゅれいしょん。げぇむ『くりあ』。これより、『げぇむ』に生き残った方への『びざ』を発行いたします》
ナナミが死んだ瞬間、アナウンスが鳴り、私の首に巻かれた縄が切れた。
最初は10人いたのに、最後の一人になってしまった。
私が席を立つと、ステージの幕が上がる。
ステージの上には、レジと、ギターケースのようなものが置いてあった。
ケースの中を確認すると、猟銃と、弾薬のケースが入っていた。
…へぇ、結構いい銃ね。
私が銃を確認していると、レジからレシートとダイヤの10のトランプが発行された。
「レシートに何か書いてある…」
ーーー
────────
び ざ
入国許可申請証明
────────
潰田 千寿様
────────
今回ポイント 12ポイント
累計ポイント 12ポイント
滞在期限は7月17日(火)です
残りの滞在可能日数には
くれぐれもご注意お願い致します
レジ:♢10
ーーー
「『びざ』…?」
そういえば、さっき一緒に『げぇむ』会場に入った人達が、『びざ』がどうのって言ってたような気がする。
確か、『びざ』がなくなると死んじゃうんだっけ。
生き延びたかったら、自主的に『げぇむ』に参加して『びざ』を手に入れ続けないといけないわけね。
なんて考えていると、ぐぅぅ、とお腹が鳴った。
「お腹すいた……」
そういえば、昼から何も食べてない…
『げぇむ』中に頭使ったしね。
こんな事なら、『げぇむ』の前に夕飯食べときゃよかった。
◇◇◇
「ふぅ、生き返った」
人目につかない叢にテントを張った私は、ケトルに張った水をバーナーで沸かし、沸いたお湯をアルファ米のアルミの包装に注いで、包装の中にプラスチックスプーンを突っ込んでかき混ぜた。
そうして5分ほど待ち、戻って柔らかくなったチキンライスを頬張る。
最近の保存食って、なかなかクオリティが高いわね。
先人達の知恵とメーカーの企業努力に感謝だわ。
『げぇむ』から生還した後、私はアウトドアショップに立ち寄って、キャンプ用品を一通り揃えた。
あとは病院で薬や救急箱を、コンビニで食糧と酒を調達して、アウトドアショップで調達したバックパックに詰めた。
この世界では、過酷な環境下で生き延びるサバイバル能力が生死を分けるらしいからね。
「街の明かりがないと、星ってこんなに綺麗に見えるのね…」
テントの隣に設置した椅子の背もたれに身体を預けて空を見上げると、真っ暗な夜空に浮かんだ星々が輝いていた。
都会じゃ見られない光景だわ。
「ふぁ……ねむっ」
あんな事があって疲れているからか、まだ10時前だというのに眠くなってきた。
私は、テントの中に敷いたマットに横になって、そのまま目を閉じた。
◇◇◇
「んん〜……」
あれからどれくらい時間が経っただろうか。
蒸し暑さで眠りが浅くなって起きかけていたその時、テントの外で物音がした。
テントを開けて外を見てみると、私のテントの前にボロボロのおじさんが倒れていた。
おじさんは、ところどころ出血していて、顔色も悪くなっていた。
「ねえアンタ、大丈夫?」
私がおじさんの肩に手を置いて声をかけると、おじさんは私の手を振り払った。
「オレはもう、『げぇむ』を降りる…!!せっかく生き残っても、また『げぇむ』の繰り返し…もうたくさんだ!!」
おじさんは、頭を掻き毟って嗚咽を漏らしながら弱音を吐いた。
おじさんの近くには、クシャクシャに丸められたレシートが落ちていた。
レシートには、今日の日付が書かれている。
さっき出会った参加者の話が本当なら、このおじさんは今日までしか生きられない。
戦いもせずに自分から死のうとしてんじゃねえよ。
でもまあ、こんなわけのわからない世界じゃ、死にたくもなるか。
……あ、そうだ。
いい事思いついた。
私は、すぐにiPhoneで時間を確認した。
日付が変わるまで、あと5分か…よし、まだ充分時間はある。
せっかく人に会えたし、使えるものは使わないとね。
「あのさ。今から相手してくれない?」
「………は?」
「いきなりこんなわけわかんないとこ来ちゃって、こっちも色々溜まってんのよ。悪いようにはしないからさ」
そう言って私は、レザージャケットを脱いでおじさんの腕を引っ張った。
生き死には二の次って言ったけど、私は自分から死ぬ気なんてさらさら無い。
この世界で生き延びるのに、情報は一番重要な武器。
どんなに小さな情報だろうと、掴む為なら手段は選ばない。
このおじさんを利用して、この世界の情報を一つでも多く聞き出すのよ。
「あ、アンタ、こんな時に何言ってんだ!?」
「こんな時だから言ってんの。アンタ、どうせあと5分で死ぬんでしょ?だったら気持ちよく最期を迎えさせてあげる。その代わり、この国の事色々教えてね」
私は、おじさんをテントの中に誘い込んで美味しく戴いた。
ここを見つける途中に寄ったバーで調達したバーボンを、瓶に直接口をつけて飲みながら、おじさんから聞いた話をメモに残す。
私の隣では、おじさんが体力を使い果たしてグロッキーになっていた。
全然タイプじゃないけどいないよりはマシだし、発散と情報収集が同時に叶うなら一石二鳥。
おかげで、有益な情報が手に入ったしね♪
なんて考えていると、日付が変わるまであと5秒を切った。
「あら、もう時間だわ」
「やっと…やっと、この地獄から解放される…」
おじさんが涙を流して笑った、その直後。
上から赤いレーザーが降り注ぎ、おじさんの身体を貫いた。
おじさんの身体から噴き出た血が、私の身体に降りかかる。
『びざ』が切れた瞬間、この国から強制排除される。
昨日のお兄さんの言葉が、いよいよ現実味を帯びてきたわね。
私に残された時間は、あと12日。
これからどうしようかしらね。
───今際の国滞在2日目
残り滞在可能日数
潰田千寿 12日
初日からやりたい放題やりすぎだろこの女…
さすがカス三冠!
おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
そこにシビれる!あこがれるゥ!