Duchess in Borderland   作:M.T.

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本作の♠︎Qは、本作オリジナル国民によるオリジナルげぇむです。
正直ドラマは、♠︎Qは女王が格闘家って事以外♠︎要素無くて、むしろ♣︎Qの方がよっぽど♠︎っぽかったので、どう見てもマーク逆やろという感想でした。
本作では、♠︎らしい絶望感と無茶苦茶さを表現できるように頑張ります。



【特別編3】すぺえどのくいいん(1)

ヒーロside

 

 『ねくすとすてぇじ』開催2日目、午後11時55分。

 私とジュンさんは、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』の『げぇむ』会場の前に来ていた。

 『♠︎(すぺえど)』なら、私達二人で力を合わせれば『くりあ』できるかもしれない。

 そう考えて、私達は『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』にエントリーする事にした。

 

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』の『げぇむ』会場は、江東区亀戸の警察署だった。

 警察署の前には看板が立てられていて、看板にはこう書かれていた。

 

 

 

《エントリー締切 午前0時マデ》

《エントリー数 無制限》

《武器の持ち込み可》

 

 

 

「エントリー数無制限、武器の持ち込み可……か。気味悪いな……」

 

「武器を集めておいて良かったですね」

 

 私達は、『エントリー数無制限』、『武器の持ち込み可』という不気味な表記を見て顔を見合わせる。

 この二つの条件を見る限り、『げぇむ』の内容は十中八九『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』との殺し合いだろう。

 相手が『今際の国』の国民とはいえ、私達はこれから人殺しの『げぇむ』に参加する。

 生きて元の世界に帰る為に仕方のない事だと割り切って、人を殺す事に罪悪感を覚えなくなっている自分が嫌になってくる。

 それでも……やるしかない。

 私は、皆で生きて元の世界に戻って、家族が待ってる家に帰るって決めたんだ。

 私達が『げぇむ』会場に入ろうとすると、後ろから声をかけられる。

 

「アンタら、生きてたのね」

 

 聴き覚えのある声に振り向くとそこには、かつて一緒に『げぇむ』を生き延びた義足の女子高生、ヘイヤが立っていた。

 

「ヘイヤ…!!」

 

「嬢ちゃん、あの時の…!」

 

 良かった…ヘイヤ、無事だったんだ…

 私とヘイヤは、お互い生きてこうして再会できた事を喜んだ。

 

「まぁ、立ち話もなんだ…もうすぐエントリー締め切っちまうし、さっさと入ろうぜ」

 

「そうね」

 

 ジュンさんが先に『げぇむ』会場に入り、私とヘイヤも続けて会場に入る。

 会場の中に入ると、既に男の人が13人、女の人が3人いた。

 『げぇむ』会場にいたのは、ほとんどが武装した屈強そうな男の人だった。

 女の子二人は友達か姉妹なのか、同じセーラー服を着ていて、同じ場所に固まっていた。

 

「男ばっか……」

 

「私達を入れて、19人…ですね」

 

 なんて会話をしていると、先客が私とヘイヤをジロジロ見てくる。

 

「おい、また女が来たぜ。あの髪の長い方、モロオレ好み」

 

「オレは髪の短い方が好みだな。良い身体してやがる」

 

 他の『ぷれいやぁ』が私達の方を見てヒソヒソと話すと、ジュンさんは私達を庇う形で前に立ってくれた。

 丸聴こえよ……男ってなんでこうも欲望に忠実なのかしら。

 なんて考えていると、ちょうど日付が変わり、警察署のドアが勝手に閉まった。

 

《エントリーを締め切りました。『げぇむ』を開始します。『げぇむ』、『いんふぇるの』。難易度、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』》

 

 合成音声が会場内に鳴り響き、モニターがパッと点く。

 モニターには、♠︎のQのトランプが表示される。

 そしてその直後、画面がパッと切り替わり、人影が映る。

 

『ようこそ、アタシの『げぇむ』会場へ』

 

 モニターに映っている人影が、少しずつクリアになる。

 映っていたのは、白髪混じりの長い髪をポニーテールにして、右眼に眼帯をつけた60〜70代くらいの高齢の女性だった。

 深く皺が刻み込まれているけど、顔立ちは整っていて、美人だとわかる顔立ちだ。

 

『アタシは剣崎(けんざき)貴那(アテナ)。『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』さ』

 

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)

 剣崎(けんざき)貴那(アテナ)/アテナ

 元・警視庁警備部機動隊員(爆発物処理班所属)

 

「この婆さんが『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』だと?」

 

「おいおい、冗談だろ?」

 

「どう見ても『♠︎(すぺえど)』の『げぇむ』に向いてねぇだろ」

 

「今回は楽勝だな」

 

 対戦相手が高齢の女性だと知って油断したのか、他の『ぷれいやぁ』は馬鹿にしたように笑っていた。

 絵札の『げぇむ』なんだから、楽勝なわけがないと思うけど……

 なんて思っていると……

 

《『るうる』の説明。『げぇむ』会場が倒壊する前に、会場内にどこかにいる『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を殺害し、『げぇむ』会場から脱出できれば『げぇむくりあ』。『ぷれいやぁ』の皆様が1人残らず『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に殺された場合は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』ただ1人が『げぇむくりあ』。なお、『くりあ』条件を満たす前に参加者全員が『げぇむ』会場の倒壊に巻き込まれた場合は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』諸共『げぇむおおばぁ』となりますので、ご注意ください》

 

「は……?この『げぇむ』会場、倒壊すんの?トラウマあんだけど…」

 

 ヘイヤは、『るうる』の説明を聞いて顔を引き攣らせる。

 他の『ぷれいやぁ』も、『るうる』を聞いて不安そうな表情を浮かべていた。

 

「お姉ちゃん……」

 

「大丈夫よ、ハル。私が守るから」

 

 シニヨンとタレ目が特徴的な女子高生が不安そうにしていると、ショートヘアとツリ目が特徴的な女子高生が微笑みながら背中を撫でる。

 あの二人、姉妹だったのか……

 

「おいおい、そう不安になるなよ。相手は婆さん1人なんだぜ?」

 

「こっちは20人もいるし、腕っぷしに自信のある男ばっかりだ。『くりあ』出来ねぇわけがねぇよ」

 

 『げぇむ』を前に不安になっている妹を姉が励ましていると、屈強そうな男の人二人も、姉妹を安心させる言葉をかけながら笑った。

 だけどそんな希望を打ち砕くかのように、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』ことアテナが口を開く。

 

『おっと、ババァだからって舐めてもらっちゃ困るよ。こう見えても、昔ゃ機動隊で身体張ってたんだ。若造共に簡単に殺されやしないさ』

 

 道理でお婆さんが『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』をやっているわけだ。

 もし彼女の言葉が本当なら、身体の衰えを考えても、一筋縄ではいかないだろう。

 

《最後に、この『げぇむ』会場には、皆様を即死に追いやるトラップが複数設置されています。充分に気をつけてください。それでは、『げぇむすたあと』》

 

 『げぇむ』が始まると、他の参加者はバラバラになって移動を始めた。

 皆移動するの早いな…

 

「あ……皆、もう行っちゃった…この『げぇむ』、皆で協力した方がいいと思うんだけど…」

 

「ま、赤の他人と協力しろっつー方が無理だろうよ。こんな事もあろうかと、コレ用意しといて良かったぜ。持っとけ」

 

 そう言ってジュンさんは、ヘイヤに無線機を投げ渡す。

 いきなり無線を渡されたヘイヤは、キョトンとしていた。

 

「え、何?」

 

「もし『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を見つけたら、コイツで居場所を教え合おう。これだけの人数で一斉に襲いかかられりゃあ、あの婆さんも何もできねぇだろ」

 

「へぇ……アンタ、見た目の割に頭良いね」

 

「うるせぇ、見た目の割にって何だよ」

 

 こんな事もあろうかと無線機を持ち込んでいたジュンさんをヘイヤが誉めると、ジュンさんは照れ臭そうに頬を微かに赤くした。

 ジュンさんから無線を受け取ったヘイヤは、奥の廊下を指差す。

 

「じゃ、アタシはこっち探すから」

 

「うん……気をつけて」

 

 ヘイヤと分かれた後、私もジュンさんと手分けをして『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を探そうとした。

 

「それじゃあジュンさん、私も…」

 

 そう言って私がジュンさんと別行動を取ろうとすると、ジュンさんが突然私の腕を掴んできた。

 

「え……?」

 

「ヒーロちゃんはオレと一緒にいろ。君はまだ『げぇむ』に慣れてない。1人で移動するのは危険すぎる」

 

「でもジュンさん、私達も手分けした方が良くないですか?私達は無線を持ってるんだから、手分けして探して情報を共有した方が効率が良いと思うんですけど…」

 

「1人になった時に『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』にエンカウントしたらどうするつもりだ?逃げてる途中で発作を起こしたら?『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は、発作が治るか他の『ぷれいやぁ』が助けに来てくれるのを待っちゃくれねぇぞ。君の足は、いざって時の為に温存しとけ」

 

 そう言ってジュンさんは、銃を構えて警戒しながら警察署内を片っ端から調べて、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が潜んでいそうな場所を探した。

 『げぇむ』に参加すると決めた時から、ジュンさんは、何かの覚悟を決めたような目をしている。

 その時からずっと、聞けなかった事がある。

 ジュンさんはどうして、急に『げぇむ』に参加したいなんて言い出したんだろう。

 なんて考えていると……

 

 

 

 ――ボォオオオン!!!

 

 

 

「え……!?」

 

「なんだ……!?」

 

 ちょうど真上から爆発音が聴こえ、建物全体が激しく揺れる。

 爆発音に混じって、ピシッと硬いものがひび割れる音が聴こえた。

 

「ッ!!ジュンさん!!」

 

 私は咄嗟に、ジュンさんを抱えて大きく前に跳んだ。

 その直後、後ろからドゴ、ガコッと天井や壁が崩れる音が聴こえた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あ、ああ…すまねぇ……」

 

 私は、ジュンさんの身体に怪我がないかを確認した。

 どこも怪我していない…良かった……

 

「それよりヒーロちゃん、そろそろ離れてくれねぇか?」

 

「えっ?あっ、ごめんなさい!」

 

 ジュンさんの身体に胸が当たっている事に気付いた私は、すぐにジュンさんから離れた。

 恐る恐る振り向くと、天井と床が崩れて1階に瓦礫が積もれ、瓦礫の周りで炎が上がっていた。

 床に開いた穴を覗くと、他の『ぷれいやぁ』が倒壊に巻き込まれたのか、瓦礫には血や肉片が飛び散っていた。

 

「な、何よこれ…!?」

 

「『るうる』の説明にあったトラップってやつか……天井ごとぶち抜く威力の爆薬とか、聞いてねぇよ…!」

 

 私とジュンさんは、血や肉片のついた瓦礫を見て思わず青ざめる。

 ジュンさんは、下を睨みつけながら拳を握りしめる。

 

「くそ…これ、思ったより時間ねぇぞ」

 

「え……?」

 

「『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は元機動隊員っつってたな…おそらく、所属は爆発物処理班だろう。爆弾の扱いを熟知してやがる」

 

「えっと、つまり?」

 

「あの婆さんは、どこにどれだけの爆薬を仕掛ければ、会場がどう崩壊していくかを計算してトラップを仕掛けてやがるんじゃねぇかって事だ。チマチマ『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を探してる間にジャンジャントラップを引いちまったら、あっという間に『げぇむ』会場が倒壊しちまう。そうなりゃ全員『げぇむおおばぁ』だ」

 

「え……いや、でもおかしいですよ!それじゃ『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』も死ぬじゃないですか!」

 

「それも承知の上って事だろうよ。そもそも、こんなイカレた国で『げぇむ』を仕掛けてるような奴等に、正当性や常識なんてものを当てはめる方が間違いなんだ。『♡Q(はあとのくいいん)』も言ってただろう?アイツらは『病気』なんだよ」

 

「そんな…」

 

 どのみちこの警察署が倒壊するまでに『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を見つけられなければ、全員『げぇむおおばぁ』になってしまう。

 だったらもう、なりふり構ってる場合じゃない。

 私は、床に開いた穴から大声を張り上げた。

 

「みんなぁ!!!!聞いて!!!!私は今、南棟2階の会議室の前にいる!!!来られる人はすぐに来て!!!!!」

 

「おいバカ!『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に見つかったらどうするんだよ!?」

 

 私が叫ぶと、ジュンさんが私を止めようとする。

 私は、止めようとしたジュンさんの手を振り払って叫ぶ。

 

「どのみち敵を殺さなきゃ生き残れないのは『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』も同じ!大声を出して『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を誘き寄せるのよ!『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』の居場所さえわかれば、彼女の近くにいる『ぷれいやぁ』を助けに行ける!大人数で一斉に襲い掛かられたら、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は何もできない、そうでしょ!?」

 

 私が言うと、ジュンさんがハッとする。

 この『げぇむ』は、どこかに隠れている『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を見つけて殺す『げぇむ』だと思ってたけど、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』も『ぷれいやぁ』を殺さないと生き残れない『るうる』なら、彼女も『ぷれいやぁ』を探しているはず。

 ここから大声で叫べば、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は必ず私達を殺しに現れる。

 いくら相手が機動隊員でも、私達が束になればこっちに勝機がある。

 そう考えて、私が大声で叫んで他の『ぷれいやぁ』に協力を呼びかけていると……

 

「その作戦、オレ達も乗らせてもらえませんか」

 

 後ろから、声をかけられた。

 振り向くとそこには、筋肉質な体格の男の人と、優しそうな女の人の二人組が立っていた。

 二人の左手薬指には、同じデザインの指輪がはめられていて……見たところ、夫婦だろうか。

 

「オレは布良(ふら)明悟郎(あきごろう)、こっちは妻の針子(はりこ)です。仲間内じゃ、『フラミンゴ』と『ハリネズミ』で通ってました」

 

「よろしくお願いします」

 

 夫の明悟朗さん…ええっと、フラミンゴさんと、妻の針子さん…ハリネズミさんは、礼儀正しく自己紹介をした。

 

「フラミンゴさんとハリネズミさんですね。私は大木場柊色…で、こちらは赤鉾(あかほこ)楯兵(じゅんぺい)さんです。仲間内では、『ヒーロ』と『ジュン』で通ってます」

 

 私が自己紹介をすると、二人はペコリと頭を下げる。

 この『げぇむ』で、『ぷれいやぁ』同士が結託するのは難しいんじゃないかと思ってたけど…

 二人とも良い人そうでよかった……

 でも、どうして私達に協力してくれるんだろう?

 

「お2人はどうして、私達に協力してくれるんですか?」

 

 私がそう尋ねると、二人は顔を見合わせて事情を説明してくれた。

 

「実はオレ達、幼い息子を元の世界に置いてきてしまったんです」

 

「あの子の為にも、生きて家に帰らないと……」

 

「オレ達が生き残る為に、協力させてください」

 

 そう言って二人は、私達に頭を下げて頼み込んできた。

 元の世界……か。

 そう、だよね…皆、元の世界で帰りを待ってる人がいるんだよね。

 それは私も同じだ。

 

「…分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 私が手を差し出すと、布良さん夫婦は私の手を取った。

 二人に改めて作戦を手短に伝え、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を迎え討つ為の準備をしようとした、その時だった。

 

 

 

 ――ボォオオオン!!!

 

 

 

「爆発……!」

 

「また…!?」

 

 またしても、警察署内のどこかで大爆発が起こり、ビル全体が大きく揺れる。

 今の爆発で、多分また誰かが『げぇむおおばぁ』になった。

 まさか、今の爆発に巻き込まれたの、ヘイヤじゃないよね…!?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

アテナside

 

 『げぇむ』開始早々、三人組の『ぷれいやぁ』が私の仕掛けたトラップにかかって脱落した。

 もうトラップが発動したかい。

 こりゃあ、私も急いで『ぷれいやぁ』を殺しに行かなきゃ間に合わないかもね。

 なんて考えていると、下のフロアから叫び声が聴こえてくる。

 

「みんなぁ!!!!聞いて!!!!私は今、2階の会議室の前にいる!!!来られる人はすぐに来て!!!!!」

 

 下のフロアでは、最後に入ってきた髪の短い方のお嬢ちゃんが、他の『ぷれいやぁ』を呼んでいた。

 協力してくれる『ぷれいやぁ』を集めて、あわよくば『♠︎Q(アタシ)』を誘き寄せて皆で殺そうっていう魂胆かい。

 いいね、威勢のいい子は嫌いじゃないよ。

 

「ふぅん…なかなか頭の切れる子だねぇ。いいよ、乗ってあげる」

 

 そう言って私が下の階に降り、お嬢ちゃん達のところへ向かう。

 その途中で、爆発が起きて『ぷれいやぁ』が二人『げぇむおおばぁ』になっちまった。

 バカな子達だねぇ、闇雲に探したって私が見つかるわけないじゃないか。

 なんて考えつつ5階に降りた、その時だった。

 

「おい、いたぞ!!」

 

 ちょうど、5階で待ち伏せしていた男共と鉢合わせた。

 全部で5人……全員銃を持ってるね。

 

「これでオレ達ゃ『げぇむくりあ』だ!!」

 

「死ね、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』!!」

 

 そう言って男共は、一斉に私に銃を向けてくる。

 私は、まずは得物の92FSを抜いて、目の前にいた男の眉間を撃ち抜いた。

 最初に撃ち殺した男は、血と脳漿をぶち撒けながら倒れる。

 

「えっ……?」

 

 ウラを取られた男共は、呆気に取られて思考停止していた。

 私は、その一瞬を見逃さず、ハンドガンをもう一丁抜いて左右の二丁で二人を撃ち殺す。

 

「うっ、うわあああああああ!!!」

 

 残りの二人は、パニックになって叫び散らしながらやたらめったらに撃ってくるが、まともに狙いも定めていない状態で当たるわけがない。

 私は咄嗟に身を屈めて二人の斜線から逸れると、残り二人の心臓を同時に撃ち抜く。

 5秒にも満たない時間で五人を脱落させた私は、床に転がった死体を見下ろして鼻で笑った。

 

「銃を抜いてから引き金を引くまでが遅いよ。出直してきな、ボウヤ達」

 

 そう言って私は、床に開いた穴から飛び降りる。

 すると私の視界に、別の『ぷれいやぁ』が映り込んだ。

 

「あっ」

 

 見つけた。

 次の獲物は、あの子達で決まりね。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヒーロside

 

 ビルのどこかで爆発音が響いた、その直後。

 今度は上のフロアのどこからか、銃声が聴こえた。

 

「銃声……!?」

 

「『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』がすぐ近くまで来てる…誰かが応戦してるんだろう」

 

「私達も行きましょう!」

 

 私達四人は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』と応戦中の『ぷれいやぁ』を助けようと、銃声のした場所へ駆けつけようとした。

 すると、その時だった。

 

「誰かぁ!!!助けてください!!!『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は今、西棟4階の会議室にいます!!!」

 

 ちょうど真上から、女の子の声が聴こえた。

 この声……さっきの女子高生姉妹のどっちか…多分妹の方だ。

 早く行かないと、あの子達が危ない。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

キズナside

 

 私とハルは、4階で『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を待ち伏せしていた。

 無理に『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』を探しに行こうとすれば、他の『ぷれいやぁ』達みたいに、トラップに引っかかってしまうかもしれない。

 今も、ついさっき別の『ぷれいやぁ』が誤発させたトラップが爆発して、廊下が吹き飛んだ。

 

「ハル、大丈夫?」

 

「うん、平気……」

 

 私は、爆発に驚いて尻餅をついているハルの背中を摩った。

 ハルを立ち上がらせて、その場から移動しようとした、その時だった。

 

「おやおや、素晴らしい姉妹愛だねぇ。泣かせるじゃないか」

 

「「ッ!!」」

 

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が、天井に開いた穴から飛び出してきた。

 

「アタシも混ぜとくれよ」

 

 そう言って『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が着地し、ハンドガンの銃口を向けてきた。

 ハルは、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』と目が合うなりみるみる青ざめた。

 

「お姉ちゃん……!」

 

 ハルは、私の制服を掴んで震えていた。

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は銃を持ってる。

 しかもさっき、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は元機動隊だって言ってた。

 私は剣道部だし、ハルはキックボクシングを習ってるけど、多分私達二人がかりで戦っても二人とも殺される。

 私は、ハルを庇う形で『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』の前に立ちはだかり、道場で手に入れた鉄刀を抜く。

 

「ハル、よく聞いて。このまま2人で戦っても、多分2人とも死ぬ事になっちゃう…だから、よくあるパターン…!ここは私が時間を稼ぐから、アンタだけでも逃げて!アンタは逃げて…できるだけ多くの『ぷれいやぁ』に助けを呼んできて!早く!」

 

 私は、立ち尽くしているハルに向かって叫んだ。

 二人で戦っても殺される。

 でも私一人なら、ハルだけでも逃げられるかもしれない。

 私が鉄刀を構えると、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が銃を向けて私に狙いを定める。

 

「敵前でベラベラと…アタシが黙って見てると思ったのかい?アンタも、アンタの妹も、誰一人逃がしゃしないよ」

 

「させない…私がアンタを止める…!」

 

 私は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が銃を撃つ前に、鉄刀を振りかぶって駆け出した。

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は、私の突進にも怯まずに、躊躇なくハンドガンで撃ってくる。

 

「あ゛あっ!!」

 

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が撃った弾が脇腹に掠り、鉄刀を振り下ろそうとした腕がブレる。

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は、私の鉄刀を難なく躱すと、私の懐に入り込んでお腹に膝を入れてきた。

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に膝蹴りされた私は、思いっきり身体を吹っ飛ばされて、後ろの壁に背中を打ちつける。

 

「がはっ!!」

 

 くそっ……肋にヒビ入った……!

 うまく息ができない……

 私がなんとか起きあがろうとすると、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は私に歩み寄り、お腹を思いっきり踏みつけてきた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

 

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が私を踏みつけると、肋骨がバキバキと折れる音が聴こえ、内臓が破裂したのか、口からゴポゴポと血が溢れ出る。

 いっその事気絶してしまえたら、どんなに楽だっただろうか。

 

「誰かぁ!!!助けてください!!!『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は今、西棟4階の会議室にいます!!!」

 

 私が踏みつけられている後ろで、ハルは必死に助けを呼んでいた。

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は、冷たい目を私に向けながら、眉間に銃口を突きつけてくる。

 

「さっきのボウヤ達よりは筋が良いじゃないか。何か言い残す事は?」

 

 本当は死にたくないから、ハルには助けを呼んできてって言ったけど……薄々わかってた。

 誰も見ず知らずの私達を助けには来てくれないって事くらい。

 そもそも、得意な『♠︎(すぺえど)』なら私がハルを守れば二人で『くりあ』できるかもしれないっていう見通しが甘かったんだ。

 絵札の『げぇむ』は今までと同じように『くりあ』できないって事くらい、わかってたはずなのに。

 

 でも、これでいい。

 私が囮になれば、ハルを守る事ができる。

 ハル、私はもうここまでだけど、アンタだけでも生きて元の世界に……

 

 

 

 ――ドッ!!

 

 

 

「…………?」

 

 私は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に撃たれると思って目を瞑ったけど、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は私を撃ってくる事はなかった。

 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』の右腕には、矢が深く刺さっていた。

 振り向くと、私と同い年くらいの義足の女子高生が、出入り口の前で弓矢を構えていた。

 

「くそ…やっぱ来なきゃよかったかな」

 

 女子高生が『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に狙いを定めてもう一度矢を放とうとすると、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』はハンドガンを連射してくる。

 女子高生は、出入り口の裏側に隠れて銃弾をやり過ごすと、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』目掛けて矢を放った。

 すると『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』が矢を避け、後ろにいたハルに当たるか当たらないかというところに矢が通る。

 

「ちょっとアンタ…!」

 

「アンタらはちゃんと外してる!戦わないんなら、お荷物連れてさっさと行け!」

 

 そう言って女子高生は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に狙いを定めて弓矢を構える。

 重傷の私と、戦意喪失しているハルがここに残っても、私達に出来る事は何もない。

 私は、肋骨が折れてうまく動かない身体に鞭打って、ハルのもとへ駆けつけようとした。

 だけど私が駆けつけるより早く、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』がハルに銃を向ける。

 

「させると思ったかい?」

 

「ハル!!逃げて!!!」

 

 私は、ハルに向かって叫んだ。

 だけどハルは、足がすくんでしまったのか、その場から離れなかった。

 

「チッ……!」

 

 女子高生は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』目掛けて矢を放とうとするけど、間に合わない。

 私も、ハルのもとへ駆け寄ろうとするけど、全身が痛くてうまく走れない。

 死を悟ったハルは、目を瞑ってその場で身を屈めた。

 ダメ……!!

 お願い、誰かハルを助けて……!!

 

 その願いは、天に届いた。

 

 

 

「え……?」

 

 一瞬、何かがバッと目の前を横切る。

 見上げると、最後に『げぇむ』会場に入ってきた陸上女子が、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に跳びついていた。

 

「間に合った……!!」

 

 陸上女子は、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』に組みついて銃口をハルから逸らした。

 彼女は息を切らし、全身に汗をかいていた。

 

 まさか……まさか……!!

 あの人、ハルの声を聴いてここまで走ってきたの!?

 

 私のそんな疑問を他所に、陸上女子は『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』の首に両腕を回して絞め落とそうとしていた。

 だけど陸上女子に組みつかれてもなお、『♠︎Q(すぺえどのくいいん)』は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。

 

「やるね」

 

 

 

 げぇむ 『いんふぇるの』

 

 難易度 『♠︎Q(すぺえどのくいいん)

 

 残り時間 ?分

 

 生存者 20名中10名

 

 

 

 

 




本作の♠︎Qのげぇむ会場のモデルは江東区北砂の城東警察署および新砂の警視庁第九機動隊本館なのですが、原作を見返してみると♠︎Qのげぇむ会場の位置が亀戸か大島っぽかったので、本作では亀戸にある警察署が舞台って事にしてます。
原作でも、千代田区に刑務所があったりしたし、気にしたら負けだとは思いますが。

オリ主と一緒に行動している男性(ジュン)ですが、本名は赤鉾(あかほこ)楯平(じゅんぺい)といいます。
一応、チェスの赤の騎士が名前の由来になっています。
そしてJK姉妹は、姉の方が富庭(とみば)(キズナ)、妹の方が富庭(とみば)(ハル)といいます。
二人の名前を音読みにして並べ替えて繋げると、ハンプティ・ダンプティになるという小ネタ。
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