もしよかったら感想とかくだちい。
「んしょ……」
『今際の国』滞在8日目。
私は、ボーシヤやアグニと一緒に、プロパンガスのガスボンベを夜通しホテルへ運び込んでいた。
あれから、特定の分野に特化した人材を集める為に毎日交代で『げぇむ』に参加して勧誘を続けているうちに、『ビーチ』にも人が増えた。
その関係で、ガスや発電用のガソリンが足りなくなってきたので、追加のガスを運んでいたのだ。
「ほらアンタ達、休んでないでキビキビ動きな!」
「す、すいません姐さん!」
自分でもボンベを運びつつ、一緒にボンベを運んでいる新入りの男達に喝を入れる。
発電機やポンプのメンテやバイクの整備、あとはたまに物資の調達をしてくるのが私の仕事なんだけど、ガスの運搬をボーシヤとアグニだけにやらせるのも悪いので、自分の仕事が終わったら手伝う事にしている。
ただ、女一人で手伝うのも非効率なので、最近入ってきた子達にも一緒に手伝ってもらっているのだ。
新入りの子達が手伝ってくれるおかげで仕事はだいぶ楽になったけど、人数が増えた分メンテの回数も増やさないといけなくなったので正味プラマイゼロだったりする。
あ゛〜、肩外れそう。
体力ゲーは嫌いじゃないけど、力仕事が得意なわけじゃないんだよっ。
つーか、マジしんどい…タバコやめよっかな……
……いや、やっぱ無理。ヤニの魔力には逆らえん。
私が息を整えていると、クズリューが様子を見に来た。
クズリューは、私達が運び込んだ大量のガスボンベを見て驚いていた。
「夜通し…運んだのか…!?」
「流石に肩が外れそうだ!そろそろ車を直せる整備士を探さねーとな!川のポンプも発電機もうまく動いてるし順調だが、人も増えてきたし…ここの全員が資源を気にせずジャンジャン使えるようになるには、まだまだ踏ん張らねーとな!」
「…何故、そこまでする…?」
「大勢で楽しく騒いでんのが好きなんだ。きっと、根が寂しがり屋なんだよ。こんなロクでもねぇ世界で生きてんだ。理想まで捨てたらおしまいだべ!」
クズリューが尋ねると、ボーシヤは満面の笑みを浮かべながら答える。
理想……ねぇ。
面白そうじゃん♪
さーてと、私も一肌脱ぎますか。
私も、その理想とやらに興味を持ったバカの一人だからね。
私は、プロパンガスのボンベに両肘をついて体重を預けながら口を開く。
「ねぇ。今日の『げぇむ』、アタシが参加してこようか?『げぇむ』会場でなら、整備士が見つかるかもしれないし」
◇◇◇
私は、3日目に整備したCB400SFを走らせて『げぇむ』会場に向かった。
今日の『げぇむ』会場は、車が何台か停まっている高速道路だ。
車がある『げぇむ』会場でなら整備士がいるかもしれないという安直な考えだけど、運のいい事に、初日で整備士に会えた。
「あの…何なんですか、これ…?東京ってどうなっちゃったんですか?」
会場には、おそらく初参加者のお兄さんがいた。
私は、彼を注意深く観察した。
筋肉質な体格に、マメやあかぎれで荒れた手。
今日この国に来たばかりのはずなのに、やけに黒く汚れた指先と靴。
膨らんだスポーツバッグから微かに漂うオイルの匂い。
仕事終わりなのか作業着は着てないけど、元の世界で整備をしていたとみて間違いなさそうね。
しかも趣味レベルじゃなくて、ずっとそれで飯を食ってきてる職人とみた。
「ねぇ、オニーサン。何のお仕事してるの?」
「あっ…えっ…と、車の整備を…」
「まあ素敵♡ねぇ、向こうで一緒に話さない?ここの事、色々教えてあげる」
私は、早速お兄さんに接触を試みた。
初参加者を逆ナンしている私を見て、他の参加者は顔を引き攣らせていた。
多分私達が死ぬと思ってるんだろうね。
どんな『げぇむ』かもわからないし、今のうちにお互いの事を知っておいた方が得策だと思うけどな。
私がお兄さんを口説いていると、どこからかアナウンスが鳴る。
《エントリーを締め切りました。『げぇむ』を開始します。『げぇむ』、『ごおかぁと』。エントリー数、2名ずつ。賞品、なし。制限時間、2時間。難易度『
「『
『げぇむ』の種類と難易度を聞いて、私はほっとため息をつく。
チーム戦の『げぇむ』で良かった、せっかく見つけた整備士がここで死んだらもったいないもんね。
「こ、殺し合うって…何の話ですか?」
「んー、そうねぇ。今から起こる事は、何かの番組とかイベントとかじゃなくて、紛れもない現実…とでも言っておこうかしら」
私は、状況がわかっていない様子のお兄さんに、現実を教えてあげた。
まあ初参加者だから飲み込めなくて当然だし、むしろ初っ端から人が死んでもすぐに『げぇむ』に適応した私の方が異常なんだと思う。
ぶっちゃけ私は整備士を連れて帰れればそれでいいから、『役に立て』だなんて、そこまでの事を求めてるわけじゃないし。
《『くりあ』条件。2人1組で『かぁと』に乗って、制限時間内に地図に書かれた『ごおる』に辿り着く事。制限時間内に『ごおる』に辿り着けなかった場合は『げぇむおおばぁ』。ただし『ごおる』到着時に『かぁと』に乗車していない場合、『げぇむくりあ』と見做しませんので、皆さま必ず『かぁと』にご乗車ください。最後に、『げぇむくりあ』のヒントは『英語』です。『英語』を見逃さないようにしましょう》
「あの…『げぇむおおばぁ』って…どうなるんですか?」
「死ぬわよ」
「えっ…?」
「いい?死にたくなかったら、今からアタシの言う通りにしなさい。そうすれば、アンタだけは生きて帰れるわ」
「あ…はい……」
「いい子ね。とりあえず、乗りましょうか」
そう言って私は、先に『かぁと』に乗り込み、彼を隣に座らせた。
『かぁと』の助手席には、地図が置かれていた。
地図は縦横7本ずつ線が引かれていて、行に1〜8、列にA〜Hの文字が割り振られている。
地図上では今私達がいる地点には『すたあと』の文字と赤い星が、途中でY字に分かれている道の片方に青い星が絵描かれていた。
この地図に書かれている『ごおる』を頼りに『かぁと』を運転しろって事ね………あれっ?これ…
《それでは、『げぇむすたあと』》
開始の合図と同時に、『かぁと』を発進させる。
すると開始早々、嫌な予感がした。
「ぎゃああああああっ!!!」
突然道路が爆発し、私達の前を走っていた『かぁと』が爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ。
地雷か…
「ほ、本当に人が死んだ…!!」
「だから言ったでしょ、現実だって」
お兄さんは、初めて人の死を目の当たりにして腰を抜かしていた。
もしかして、と思った私は、道路を観察する。
地雷が埋まっている部分だけコンクリートの色が違っていて、地雷の位置はよく見ればわかるようになっている。
『げぇむ』の仕掛けに気付いた私は、ハンドルを捌いて地雷を避けながら進んだ。
「あ、あの、その運転、どうやって身につけたんですか…?」
「
お兄さんの質問に、私は『かぁと』を運転しながら答える。
まったく、ボーイフレンド達と一緒にセックスとビデオゲームに明け暮れたユニバーシティ時代を思い出すぜ。
思えば、あの頃が私の全盛期だったな。
私達が地雷を避けながら進むと、他の参加者が私達の後ろをくっついて進んだ。
なるほどね、私達についていけば安全だからね。考えたな。
まあ、失敗して地雷を踏んだ組もあったけど。
地雷エリアを抜けると、今度は地面がところどころ凍っているエリアに突入した。
しかも追い討ちをかけるように冷風が吹きつけてクッソ寒い。
こんな仕掛けがあるなら、革ジャンなんて着てくるんじゃなかった。
何組かは突風に煽られて凍っている道路を走ってしまい、スリップして遮音壁に車体を激突させた。
冷風で体力と思考力が鈍っているせいだろうけど、さっきの地雷エリアより難易度が上がっている気がする。
F××KだF××K、乗るのは波とバイクと男だけでいいんだよ。
「うわああ!!あああ!!し、死ぬ!!死ぬ!!助けて!!」
「ちょっと黙れ!」
お兄さんが騒ぎすぎてうるさくて集中できないので、咄嗟に叫んで黙らせた。
何とか凍結エリアをクリアし、インターチェンジに辿り着いた。
だけどその時だった。
「きゃあっ!?」
「クソッ、タイヤがパンクした…!」
私達の後ろを走っていた若い男女の二人組が、『かぁと』のタイヤがパンクして足を止めていた。
最初の地雷トラップに巻き込まれかけ、さっきの凍結エリアで足踏みしていた二人組だ。
多分、地雷の熱と凍結エリアの冷気による急激な温度差のせいで、タイヤのゴムが変質してパンクしたんだと思う。
『るうる』説明には、『『ごおる』到着時に『かぁと』に乗車していない場合、『げぇむくりあ』と見做しません』とあった。
タイヤがパンクしたからといって、『かぁと』を置いてゴールする事はできない。
つまりああなってしまったら、もう詰みだ。
「どうしよう、どうしよう!」
「嘘だろ、こんなところで『げぇむおおばぁ』かよ…!!チクショオオ!!」
タイヤがパンクして立ち往生してしまった二人は、パニックを起こして泣き喚いていた。
そんな二人を見て、お兄さんが口を開く。
「助けましょう」
「は?」
「『
何を言い出すかと思えば…何言ってんのよコイツ。
そんな事したって、私らにメリット無くない?
「ふざけんじゃないよ、そんな事してアタシらが『くりあ』できなくなったらどうすんのよ!大体、修理する道具なんて無いでしょ?」
「何が無いって?」
そう言ってお兄さんは、『かぁと』のトランクを開けた。
トランクの中には、修理用の工具が一式揃っていた。
「『げぇむ』が始まる前に、一応調べておいたんです」
「……マジかよ」
お兄さんの言葉に、思わず呆れる。
こういうところで無駄に親切にしてんじゃないわよ。
なんて思いつつ、私達は、トランクに積んであった工具を使って、立ち往生してしまった参加者の『かぁと』のタイヤの修理をした。
その間にも、他の参加者が次々と進んでいくけど…そりゃあ、自分の命がかかってるのに人の為に時間を割いたりしないよね。
◆◆◆
???side
俺達は、地図に描かれた『ごおる』に向かって『かぁと』を走らせていた。
地図に描かれた星印の場所に、『ごおる』があるに違いない。
そう考えて進んでいると、英語の看板が見えた。
看板には、『GO STRAIGHT』と書かれていて、そのまま先に進むと今度は落石の絵と『AHEAD』という文字が書かれた看板が見えた。
そのまま進んでいると、岩が大量に降ってきて、後ろを走っていた1組が岩に押し潰されて脱落した。
しばらくして、『MINIMUM SPEED 90 km/h』と書かれた標識が見える。
スピードを上げるのが間に合わなかった奴等がレーザーで撃たれた。
標識の指示に従わないと即『げぇむおおばぁ』って事かよ…!
「クソっ…『英語を見逃すな』って、こういう事かよ…!」
無数に仕掛けられた罠を避けつつも前に進むと、『END 90km/h MINIMUM』と書かれた標識が見えた。
さらに走ると、『ONE WAY』と書かれた標識が見え、その直後、『かぁと』から警告音が鳴った。
『かぁと』に設置されたモニターに、『VIEW THE MONITOR』の字が表示され、その直後、俺達が今いる道路の映像が映し出された。
映像を見ていると、俺達が今いる車線が赤く光る。
咄嗟に右側に逃げたその直後、俺達がさっきまでいた場所に大量の火矢が飛んできた。
「クソォ…これじゃあ『
何度かミスって火矢が掠るが、モニターの明かりを頼りに火矢のゾーンを抜けた。
だがその直後、モニターに一瞬だけ『EVACUATE LEFT』の字が現れる。
俺が咄嗟に左に避けた直後、右側の車線に大量の強酸が降り注ぐ。
直撃は免れたが、強酸の飛沫が降りかかって肌を焼いた。
「ぎゃあああああっ!!」
強酸の雨を浴びて気が狂いそうになるほどの痛みが襲うが、それでも『かぁと』を全速力で走らせた。
ひたすら走り続けて、俺達のペアだけが残り時間3分のところで地図上の青い星の地点まで辿り着いた。
辿り着いたけど……
「何だよこれ……」
『ROAD CLOSED』と書かれた壁が、目の前に聳え立っていた。
「で、でもさ、オレ達『げぇむくりあ』したんだよな…?」
そ、そうだよ。
俺達は、アナウンスの通り、ちゃんと『英語』に注意して『ごおる』に辿り着いたんだ。
これで『げぇむくりあ』…
……いや、待てよ?
本当にここは『ごおる』なのか…?
そもそも、地図の赤い星には『すたあと』って書かれていたが、青い星の方には『ごおる』とは書かれてなかった。
じゃあ、地図に描かれたこの青い星の意味は何だ…?
「………!!」
この時、俺はとんでもない見落としをしていた事に気がついた。
今までの英語の指示の頭文字を順番に並べたら、浮かび上がるメッセージは…
「『
インターチェンジを超えてからやけに難易度が跳ね上がったと思ったら、根本から間違えてたのかよ…
どこが本物の『ごおる』かわかんねぇし、今更引き返したところで間に合うわけがない。
《時間となりました。現時点で『ごおる』に辿り着けなかった皆様は、『げぇむおおばぁ』》
アナウンスの直後、目の前の壁にピシッと亀裂が入る。
その刹那、逃げる間もなく爆炎が襲いかかる。
クソっ、クソっ…!!
死にそうになって、やっとここまで来たのに…!!
「チクショオオオオオオオ!!!」
◆◆◆
ツエダside
《こんぐらちゅれいしょん。げぇむ『くりあ』》
「や、やった…『げぇむくりあ』…!」
「言ったでしょ?アタシの言う事聞いてりゃ生き残れるって」
私は、目に涙を浮かべながら♣︎の5のトランプを握りしめているお兄さんに向かってドヤ顔をした。
デカデカと『GOAL』と書かれたガソリンスタンドに到着した私達は、レジで『びざ』を受け取っていた。
アナウンスのヒントは、『英語』じゃなくて『A5』。
他の参加者が渡らなかった方の道には、地図のA行と5列が交差する『A5』のマスがあった。
地図上の『A5』地点をライターで炙ったら、案の定『ごおる』の字が浮かび上がった。
結局、今晩の『げぇむ』を『くりあ』できたのはアタシと整備士のお兄さん、それから私達がタイヤを直した二人組だけだった。
他の参加者は、『げぇむ』の意図を読み違えて全員死んだ。
「ああ、ありがとう…ありがとうございます…!」
「あなた達はオレ達の命の恩人です。この礼はいつか必ず…!」
私達が助けた二人組は、泣きながら礼を言ってきた。
『げぇむくりあ』した私は、帰る途中でお兄さんに『今際の国』の説明をしつつ、お兄さんを連れて『ビーチ』に帰った。
「す、すごい…この国にこんな場所があるなんて…」
お兄さんは、電気と水が通っているホテルを目の当たりにして驚いていた。
『ビーチ』のプールでは、水着を着た若い男女が馬鹿騒ぎしていた。
最初は私を含めて7人しかいなかったのに、随分と賑やかになったものだ。
「ここ創ったボーシヤに感謝しなよ?ここにいる皆が楽しく暮らせてるのも、彼が夜通しガスボンベを運んでくれたおかげなんだから」
そう言って私は、お兄さんをボーシヤのもとへ案内した。
私が戻ってくるなり、ボーシヤが大袈裟に喜ぶ。
「ツエダ、無事だったか!」
「ええ。それともうひとつ朗報。車を直せる整備士を連れてきたわよ」
「あ、あの、よろしくお願いします…」
「カカッ、マジかよ!今朝言ったばっかだべ?よく見つけてきたな!」
「まあ、日頃の行いかしら?」
私がドヤ顔しながら言うと、ニラギが私を馬鹿にしたように笑ってきた。
「どの口が言ってやがんだ、ババァ」
「うるさいね。チンピラばっかり連れてくるアンタにだけは言われたくないわよ」
私はアンタと違って、ちゃんと役に立つかを見極めてから連れてきてんだよ。
ニラギがチンピラばっかり連れてくるせいで、ソイツらがゴミを散らかしたり、喧嘩したりするのが、毎晩のように目に留まる。
『げぇむ』攻略を諦めて『びざ』切れを待つ奴も増えたし、いい方向に進んでいるようには思えない。
人数が増えればこうなる事は薄々わかってはいたけど…
そろそろ、滞在者を手当たり次第『ビーチ』に勧誘するのはやめた方がいいかもね。
◇◇◇
整備士のお兄さんをボーシヤに紹介した後、私達は早速車の整備を任された。
車のボンネットを開けて、オイルフィラーキャップを外してオイルレベルゲージを取り出し、オイルレベルゲージの挿入口にオイルチェンジャーのチューブを慎重に挿入していく。
オイルチェンジャーのピストンを10回くらい手でポンピングすると、古いオイルが排出され始める。
今が夏場でよかった、冬だとオイルが硬くて排出に梃子摺るからね。
古いオイルを捨ててレベルゲージを元に戻した後は、オイルジョッキに新しいオイルを注いで、フィラーキャップがはまっていた注入口からオイルを注入していく。
適量を注げた事が確認できたら、フィラーキャップをしっかり閉めて作業完了。
「よし、この調子でジャンジャン直しちゃいましょ」
「あの…ツエダさん。手伝ってくれてありがとうございます」
「効率を重視した結果よ。アンタがここに来る前は、アタシがバイクの整備とかしてたし。お姉さんに任せなさい」
私は、若干申し訳なさそうにお礼を言うお兄さんに対して、サムズアップをしながら答える。
さーてと、ちゃっちゃと整備作業終わらせちゃいますか。
「あ゛〜〜〜づがれだ〜〜〜」
整備作業を全部終わらせた私は、腕を伸ばして凝り固まった身体をほぐした。
夜通し作業してたから、流石に身体中バッキバキだわ。
作業を終えてオレンダインをラッパ飲みしていると、クズリューが話しかけてくる。
「一晩で全部直したのか…!?」
「アタシがっていうよりお兄さんがだけどね。アタシは〜…何つうか、下手の横好きって感じ?」
私は、そう言ってケラケラ笑いながら、キャメルの箱からタバコを一本取り出し火をつける。
あ〜、これだわこれ。
人は簡単に裏切るけど、酒とヤニは裏切らないね。
私が酒とヤニに浸っていると、クズリューが口を開く。
「君は…何故そこまでする?」
何故…か。
そうだなぁ……
「ずっと、何の為に生かされてるのかわからない人生だった。それでかは知らないけど、ボーシヤが『皆の為に『
私がそう言うと、クズリューが少し驚いたような表情を浮かべる。
おうおう、私が自分の意見持ってんのがそんなに意外かい。
少し勢いをつけてタバコをちゅうっと吸うと、先端から少しずつ灰になっていく。
少し上を向いて煙を吐くと、クズリューが忠告してきた。
「生き延びたいなら、タバコは控えた方がいい。アルコールもだが…」
「ははっ、だったらどれだけやれば寿命が縮むか実験してやるよ」
私がクズリューの忠告に対して笑いながら冗談を言うと、クズリューは少し困惑したような表情を浮かべる。
そういえば似たような事、ナナミにも言われたな。
最初は仏頂面だと思ってたけど、何だかんだ優しいのね。
◇◇◇
『今際の国』滞在9日目。
「はぁ〜、車に乗れるって快適だわぁ♪」
そんな事を呟きつつ、使えそうなものを調達してきた私は、整備された車に乗って『ビーチ』に戻った。
あれから、整備士をスカウトしたおかげで、ガスボンベの運搬や物資の調達は格段に楽になった。
新しい酒とタバコも手に入ったし、上機嫌で黒のBMWを運転して『ビーチ』に戻ると、だ。
「きゃああああああっ!!」
私が『ビーチ』に戻ったその時、プールサイドから悲鳴が上がる。
プールサイドは、『ビーチ』のほとんど全員が集まって騒然としていた。
私は、近くにいた仲間の一人に声をかけた。
「何?どうしたの?」
「今日入ってきた新入りがヤベェんだよ」
そう言って彼が指をさすので、私は人混みをかき分けて前に出た。
「う、うぅ…!」
「い、いきなり斬りつけてきて、何なんだよお前っ!?」
目の前には、腕から血を流してプールサイドに座り込んでいる女の子と、彼女を介抱しているお兄さんがいた。
二人の視線の先には、顔に刺青を入れ、ハイライトのない目をした細身のお兄さんが立っていた。
「……………」
刺青のお兄さんは、右手に握った日本刀を振りかぶり、今にも二人に斬りかかろうとしていた。
私は咄嗟に、刺青のお兄さんに声をかけた。
「何をしてるの?」
私が声をかけると、お兄さんは私に注意を向けた。
他の皆がザワザワする中、私は笑顔でお兄さんに歩み寄る。
お兄さんが私に注意を向けている間に、さっきの二人はお兄さんから距離を取った。
「アンタ、新入りね?アタシ、ツエダっていうの。よろしく♡」
私が握手を求めると、お兄さんはいきなり刀を私に向けて振るってきた。
この距離で刀を振られても死ぬ事がないのはすぐにわかったので、私は瞬きも後退りもせず笑顔を向けた。
その瞬間、ブンっと銀閃が視界を縦断し、パラっと私の濃紺の髪が舞った。
うわぁ〜お、マジで斬りかかってきたよこの人。
女子に握手求められていきなり無言で斬りかかるとか、コイツもしかして童貞なんじゃね?
女の子の落とし方がわかってないね、まったく。
つーか、今ので髪がバランス悪くなったんだけど。どうしてくれんのさ。
「ヒュウっ、アンタ相当イっちゃってんね。ドープ?コーク?それともクリスタル?」
私が舌をベッと出して、完全に頭がイっちゃってるお兄さんを煽ると、お兄さんは私の首に刀を突きつけてきた。
ヤバい奴ではあるんだけど、ヤクじゃこうはならない。
学生時代のボーイフレンドの中にはヤクやってた奴もいたし、何なら付き合ってた先輩がオーバードーズしてお星様になっちゃったから、ヤクに手を出した奴がどうなるかはよく知ってる。
ヤクじゃないとなると、こりゃあ真性ですな。
「……まあいいや、アタシ今日『げぇむ』行くんだけどさ。一緒に参加する?」
私が『げぇむ』に誘うと、お兄さんは刀を下ろして無言で去っていった。
私はこの日、後に『ビーチ』で『ラスボス』と呼ばれるようになる男、タカトラと出会った。
私がタカトラと一緒に『げぇむ』に行くと言うと、アグニとニラギがついてきてくれた。
新入りの実力が見たいとかなんとか言ってたけど、何だかんだ私の事大好きじゃん♪
「ねえ。せっかくだからベンツ乗りましょベンツ。元の世界で乗った事ないでしょ、こんな高級車」
私が黒塗りのベンツのドアを開けながら言うと、タカトラが私に刀を向けてきた。
「あはぁ♪美女と一緒にドライブデートできて嬉しいってさ」
「完全にブチギレてんじゃねえか、クソビッチ」
「やった、ババァからクソビッチに昇格♪」
「むしろ降格だろ」
私を馬鹿にしてくるニラギを逆に揶揄うと、ニラギは呆れたようにハッと鼻で笑う。
ちなみに、ニラギを誘惑するのはもうやめた。
いつまでも私に靡かないのはプライドを傷つけられたみたいで癪だけど、人をババァだのビッチだの罵ってくる奴にしつこく構うのも時間の無駄。
そもそも最初に誘ったのも単なるストレス発散の為でしかなくて、『ビーチ』に人が増えた今、コイツに固執する理由はどこにもない。
今となれば、誘えばOKしてくれる男はたくさんいるからね。
「おい。ふざけてねぇで行くぞ」
「はぁーい」
アグニが言うと、私は間延びした返事をする。
ベンツに乗って向かったのは工場だった。
私達がエントリーすると、既に20人くらい集まっていた。
《エントリーを締め切りました。『げぇむ』を開始します。これから皆さんに参加していただく『げぇむ』は、『ばくだん』。エントリー数無制限。制限時間、2時間。賞品、サバイバルナイフ。難易度『
「……マジかよ」
わりい、私死んだ。
《『るうる』の説明。この会場内の至る所に、爆弾が仕掛けられています。制限時間内に爆弾に繋がれた『こおど』を全て見つけ出して切断し、『げぇむ』会場から脱出できれば『げぇむくりあ』》
目の前のテーブルにはサバイバルナイフが大量に入った箱が置かれていて、モニターには工場全体の地図と、『こおど』の隠し場所が表示されている。
私が地図を頭の中に叩き込んでいると、近くにいた小柄な女の子が口を開く。
「ねぇ…要するにこれ、制限時間内に爆弾を止めろって事?」
「だろうな…」
「そ、そんなの無理だよぉ!この工場、どれだけ広いと思ってんだよぉ!?」
「無理とかじゃねぇ、やるしかねぇだろ…!それしかオレ達が生き残る道はねぇ」
恰幅のいいお兄さんが泣き言を言うと、ガタイのいいお兄さんが黙らせた。
とりあえず、手分けして近い場所から順番に探していこうって事になって、私達もバラバラになって『こおど』を探した。
『こおど』を見つけたら、配られたナイフで『こおど』を切断していく。
そして残り時間が半分を切ったところで、残る『こおど』はあと一つとなった。
「最後の1つ…!ねぇ、そっち見つけた!?」
「…ああ。見つけたが…」
私は、最後の『こおど』を見つけたアグニのもとへ駆け寄った。
だけど彼は、『こおど』を目の前にして困惑していた。
「おい…どっち切ればいいんだこれ」
最後の『こおど』は導線が2本あって、『どっちを切るか選んでね』『片方切れば『げぇむくりあ』』と書かれた看板が設置されていた。
……マジかよ。
2本あるとか…聞いてないんだけど。
「最後は、勘か……」
アグニは、最後は勘に任せて『こおど』を切ろうとした。
当たりなら『げぇむくりあ』、外せば死………
……いや、待てよ?
私が初日に参加した『
『
何か、見落としてる事があるはず……
……!!
わかった、そういう事か…!
「……違う…アグニ、切っちゃダメ!」
「あ゛!?」
「ニラギ、タカトラ!このフロアに安全な場所がないか探して!」
「何なんだ急に…時間ねぇんだぞ!」
「その『こおど』、多分どっちを切っても爆発する!この『げぇむ』の『くりあ』条件は、『爆弾を止める事』じゃなくて、『脱出する事』…要は、爆破した工場から脱出しろって『げぇむ』…だから『
「んだと…!?」
私が言うと、アグニが驚いた表情を浮かべる。
『るうる』説明の時、『制限時間内に『こおど』を切断しろ』とは言われたけど、『爆弾を解除しろ』とは言われていない。
これは制限時間内に爆弾を解除する『げぇむ』じゃなくて、制限時間内に工場を爆破して、木っ端微塵になった工場から脱出する『げぇむ』。
それなら、『
私がこの『げぇむ』の運営なら、たとえ理不尽なクソゲーだったとしても、確実に参加者が生き残れないような『げぇむ』にはしない。
だとすると、『こおど』からそう遠くない場所に比較的安全な場所があるはず…
「…おい。あったぞ。ここ、頑丈な壁で囲まれた空洞になってる」
ニラギが、最後の『こおど』がある部屋の壁を叩きながら言った。
その壁を注意深く観察すると、壁に小さな隙間があるのを見つけた。
「タカトラ、ここ開けるの手伝って!」
「………チッ」
私が指図すると、タカトラは壁の隙間にナイフを差し込んでこじ開けた。
充分人が通れるスペースを確保し、先にニラギとタカトラを通してから、まだ残っているアグニに向かって叫ぶ。
「アグニ!!こっち!!」
私が叫ぶと、アグニが駆けつけてくる。
そして振り向きざまにハンドガンを構え、『こおど』に向かって発砲すると同時に、隠し部屋の中へ飛び込んだ。
その直後──
――ボォオオン!!!
◆◆◆
アグニside
……助かった。
目の前の瓦礫と火の海を見ながら、心の中でそんな事を呟く。
ふと足元を見ると、黒焦げになった肉の塊が転がっていた。
おそらく、逃げ遅れた他の参加者
最後にツエダが気づかなければ、俺達もこうなっていた。
まさか、生き残ったのが俺だけって事はねぇよな…?
「ゲホッ…ゲホッ……ぎゃはっ、とんだクソゲーだぜ。まあ、楽しけりゃ何でもいいがよ」
「……………」
ニラギと佐村が、瓦礫を押しのけて立ち上がる。
無事だったか……
あとはツエダだけだが…死んだのか…?
「!」
振り向くと、瓦礫の隙間から女の腕が一本だけ出ているのを見つけた。
急いで瓦礫をどかすと、ツエダが血を流しながら倒れていた。
ツエダの腹には、金属の破片が刺さっていて、頭からも出血している。
「おい、生きてるか」
俺がツエダに声をかけると、だ。
「あ゛あ゛あ゛、痛い、痛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
意識を取り戻したツエダが、破片の刺さった腹を抑えて絶叫した。
重傷ではあるが、これだけ大声で叫べるって事は、まだ間に合う。
「叫ぶ元気があるって事は、まだ大丈夫だな。帰るぞ」
俺はタンクトップを破いてツエダの腹を止血してから、ツエダを抱えて『げぇむ』会場の外に出た。
4人で会場の外に出ると、会場の外にはモニターが置かれていた。
《こんぐらちゅれいしょん》
《げぇむ『くりあ』》
モニターにそう表示され、下に置かれたレジがカタカタと動く。
レジからは、4人分のレシートとトランプが発行された。
俺はレシートとトランプを受け取ると、重傷のツエダを先に車に乗せ、4人で『ビーチ』に帰還した。
◆◆◆
ツエダside
「あっ、アグニさん達が帰ってきた!!」
4人で『げぇむ』を『くりあ』して『ビーチ』に戻ると、仲間達が歓声を上げながら私達を迎えた。
結局、『
ったく、最年長なのに一番重傷とか…ざまぁないわね。
アグニの肩を借りている私を見るなり、ボーシヤ、アン、マヒルの3人が駆け寄ってくる。
「ツエダ!!」
「大丈夫か!?しっかりしろ!」
「多分臓器は貫通してない…けど、メッチャ痛い……あと、おなかすいた……」
私が間抜けな発言をすると、命に別状はない事に安心したのか、マヒルは安堵のため息を漏らし、アンは少し呆れたような表情を浮かべていた。
アンとマヒルに手当てしてもらったおかげで、命に関わる重傷には至らなかった。
今までに『くりあ』した『げぇむ』は、全部で5つ。
最初の方に参加した『
昨日今日で連日『げぇむ』に参加したけど、今回は流石にちょっと調子に乗りすぎたかもな。
まあ、生き残ったんだから何でもいいけどさ。
───今際の国滞在9日目
残り滞在可能日数
潰田千寿 29日
オリ主がスカウトした整備士は、タッタとは別人です。
この頃は、タッタはまだ入国すらしていません。