Duchess in Borderland   作:M.T.

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くらぶのくいいん(3)

マリside

 

 『げぇむ』  『これくしょん』

 難易度    『♣︎Q(くらぶのくいいん)

 エントリー数 15名

 制限時間   5時間

 

 『るうる』

 ・15名の参加者が首輪を装着し、配布された端末に名前を入力し、ログインして『げぇむすたあと』。

 ・くらぶのくいいんチームが15名の参加者の中に3名紛れており、ぷれいやぁチーム12名とくらぶのくいいんチーム3名で対決を行う。

 ・ぷれいやぁチームとくらぶのくいいんチームが、『げぇむ』会場内にいる100種の『もんすたぁ』を奪い合い、最終的に100種全ての『もんすたぁ』を所持していたチームが『げぇむくりあ』。

 ・参加者には、『げぇむ』開始時全員に『らいふ』が100点分ずつ割り振られ、『らいふ』を使って『もんすたぁ』を捕獲したり召喚したりする事ができる。

 ・参加者は、以下の機能を使用できる。

『ぼおる』『もんすたぁ』や『あいてむ』に『ぼおる』を当てる事で、

対象の『もんすたぁ』や『あいてむ』を入手できる。

ただし『ぼおる』を1個投げるごとに、『らいふ』を1消費する。

『ぽけっと』『ぼおる』で入手した『もんすたぁ』や『あいてむ』を

任意のタイミングで召喚し、使用できる。

『もんすたぁ』や『あいてむ』は、原則自分自身か、

半径3メートル以内にいる他者に使用できる。

ただし、一度使用した『もんすたぁ』や『あいてむ』は消滅する。

また、召喚には『もんすたぁ』や『あいてむ』ごとに

割り振られた分の『らいふ』消費が伴う。

『ちゃっと』チャット機能を使って参加者同士でやり取りできる。

『らいふ』消費なし。

仲間に『もんすたぁ』や『あいてむ』を送る事も可能。

ただし1つにつき『らいふ』を1消費する。

 ・個人の『らいふ』が0を下回った者は、首輪が爆発し『げぇむおおばぁ』。

 ・『らいふ』が0を下回った者のセーブデータは、全て削除される。

 ・『げぇむ』における禁止事項は以下の2つ。

  ・『もんすたぁ』や『あいてむ』以外の手段で他者を殺害する行為

  ・首輪や端末を物理的に破壊する行為

 

 

 

 

 

「マリ…アンタ……まんまと罠にハマったわね♡」

 

 ツエダちゃんは、『ばくだんじかけのしにがみ』を無駄撃ちした私に向かって微笑んだ。

 これで『かいとうるぱん』が入ったスマホは、5分間操作できなくなった。

 でも私にはまだ、自分のスマホがある。

 操作不能が解けるまでの5分間、ツエダちゃんのスマホを操作不能にすれば…!

 だけど、次の行動に移ろうとした時には、すでに遅かった。

 

「『きんぐいなずぅまうす』召喚。半径3メートル以内にいる全員を攻撃」

 

《No.075 きんぐいなずぅまうす》

《レア度 A》

《消費らいふ 10》

《いなずぅまうすの おうさま。》

《はんけい 3めぇとる いないにいる あいてに つよい でんげきを あびせる。》

《でんげきを あびた あいては 5ふんかん こうどうふのうになる。》

 

「か、『かがみうつし』召喚!」

 

《No.074 かがみうつし》

《レア度 C》

《消費らいふ 7》

《かがみに すみついている ようせい。》

《てきの こうげきを いちどだけ はんしゃする。》

 

 私は、ツエダちゃんが召喚した『きんぐいなずぅまうす』に対して、自分のスマホに入っていた『かがみうつし』で対抗しようとした。

 だけど…

 

《『かがみうつし』は使用できません。『かがみうつし』は消滅します》

 

 『かがみうつし』は消滅して、『きんぐいなずぅまうす』の電撃が私に直撃した。

 全身に痛みが走って、身体が痺れて動かなくなる。

 電撃を喰らって立っていられなくなった私は、その場に倒れた。

 

「っ…!!」

 

「『のろいののろこさん』召喚。半径3メートル以内にいる全員を攻撃」

 

《No.044 のろいののろこさん》

《レア度 B》

《消費らいふ 7》

《うしみつどきに いつも わらにんぎょうに くぎを うっている。》

《あいてに かかった のろいの こうかを ばいにする。》

 

 ツエダちゃんは、『きんぐいなずぅまうす』と『のろいののろこさん』を重ねがけして、私のスマホを完全に封じた。

 なんで…!?

 なんで、私の『もんすたぁ』が使えないの…!?

 ツエダちゃんは、私の攻撃を妨害する『もんすたぁ』なんて、召喚してなかったのに…!

 ツエダちゃんは、身体が痺れて身動きが取れない私を見下ろしてニヤリと笑う。

 

「アタシさぁ、実はアンタがもう一台スマホを持ってる事、わかってたんだよね。そして、そのスマホを使って、アタシを殺してから『もんすたぁ』を奪おうとする事も予想できた。だからこっちも、ちょっとした防御法を編み出させてもらったよ」

 

「防御法って…一体何をしたの!?キミ、防御系の『もんすたぁ』を召喚すらしてなかったじゃん…!」

 

「あら、アタシは何もしてないわよ?今のは、アンタが勝手に自滅しただけよ。『るうる』説明、ちゃんと聞いてなかったの?ダメじゃない。『もんすたぁ』は、相手が半径3メートル以内にいる時に召喚しなきゃ♪」

 

「何を言って…」

 

「『るうる』説明の前、何をしたか覚えてるでしょ?」

 

 ツエダちゃんは、自分の頭を指差しながらニヤリと笑った。

 『るうる』説明の前…

 そんなの、スマホを起動して、その後……

 

 

 

 ――端末が起動したら、名前を入力してログインしてください。

 

 ――えっ、マジか。自分で名前決められんの?じゃあサザエさんにしていい?

 

 

 

「まさか……!!」

 

 私は、名前を入力する時に、ツエダちゃんが言っていた言葉を思い出した。

 あの時ツエダちゃんは、自分で好きな名前を入力できるという事に着目して、何かを思いついたようにニヤニヤしていた。

 まさか、まさか…!!

 

「やっと気づいた?アタシのこの『げぇむ』でのハンドルネーム、『マヒル ユウジ』なの」

 

 そう言ってツエダちゃんは、ニヤリと笑う。

 ツエダちゃんは『マヒル ユウジ』、マヒル君は『ツエダ センジュ』としてアプリにログインしてたって事…!?

 普通は皆、自分の名前でアプリにログインするから、仲間同士で名前を入れ替えてログインするなんて、普通思いつかない。

 

 いや、ちょっと待って!?

 それ、おかしい…!

 

「いや…でも、おかしいよ!スマホの名前は、ツエダちゃんの名前になって……」

 

 そうだよ、ツエダちゃんの持ってるスマホは、ちゃんとツエダちゃんの名前で登録されてる。

 ツエダちゃんがマヒル君の名前を使ってログインしたんだとしたら、ツエダちゃんのスマホには『マヒル ユウジ』って表示されているはず。

 

 あれ…?

 ちょっと待ってよ…そういえば…

 『げぇむ』開始直後、ツエダちゃんがスマホを落として、マヒル君が拾って渡してたけど…

 まさか…!!

 

「あの時、スマホをすり替えてたの…!?」

 

「そういう事♪」

 

 私が尋ねると、ツエダちゃんはウインクしながら答える。

 あの時、マヒル君がスマホをすり替えてツエダちゃんに渡してたの…!?

 

「『げぇむ』の序盤はまだ『もんすたぁ』も『あいてむ』も全然揃ってないし、チームを組んで一緒に行動していれば仲間の居場所は一目瞭然だから、誰も仲間のスマホなんか確認しない。スマホの入れ替わりになんて、気づかなかったでしょ?」

 

「今までちゃんと『げぇむ』が成立してたのは、キミ達が今までずっと半径3メートル以内にいたから…!」

 

 気付くわけないじゃん、名前とスマホで二重の入れ替えをしていたなんて…!!

 しかもマヒル君とツエダちゃんはずっと二人で一緒にいたから、私は二人の入れ替わりに気付きようがない。

 私をこの場に二人きりにしたのは、私を自滅させる為だったの…!?

 最初から、私達は嵌められていた…!?

 

「もちろん、スマホを入れ替えたまま3メートル以上離れたら、スマホ自体は機能するけど呪いや回復『あいてむ』の対象からは外れる事は、アンタがいないところで検証済み。アンタはアタシを攻撃できないけど、アタシは一方的にアンタに攻撃できる。この『げぇむ』のバグを利用した、最強の防御法ってやつ?」

 

 そう言ってツエダちゃんは、ニヤリと笑った。

 私達が気づかなかった攻略法で、私達を罠に嵌めてくるなんて…

 コイツら、一体何者なの…!?

 

「……おかしい…やっぱり、そんなのおかしいよ…だって、名前を決める時は、どんな『るうる』の『げぇむ』かもわかってなかったじゃない!!名前を入れ替えても意味がない『げぇむ』だった可能性もあったし、スマホの入れ替えが『るうる』で禁止される可能性だったってあったのに…!運良く私を嵌められる事を信じて、私を騙す為だけに名前を入れ替えたとでも言いたいの!?」

 

「もちろん、名前の入れ替えが通用しない『げぇむ』だった時の考えもあったわよ。というか、名前の入れ替えは、本名じゃない名前を入力しても通るのかを実験する意味で試したのもあったし。思いつきでやった事が、たまたま今回功を奏した。それだけの事よ」

 

 ツエダちゃんは、タバコの煙を吐いてニヤリと笑いながら言った。

 ツエダちゃんは、そのままマヒル君を探してどこかへと走っていった。

 最初から、負けていたのか…

 プロゲーマーとしてずっとゲームをしてきた私が、『ぷれいやぁ』に負けるなんて……

 残り時間は、あと5分と少し…

 このままだと、負ける…!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ノバラside

 

 マリと別れてネズミ、カタビラ、レイの三人と一緒に行動していた俺は、他の三人にくらぶのくいいんチームだって事を看破され、三人に一斉攻撃を喰らった。

 だが、既に死んだ参加者から奪ったスマホを持っていた俺は、もう一台のスマホで三人の攻撃を防いだ。

 攻撃用の『もんすたぁ』も、防御用の『もんすたぁ』も、俺の方が数も種類も多い。

 こうなりゃ、コイツらの『らいふ』が切れるまで続けてやる。

 

「くそっ…」

 

「スマホ2台持ちなんて、聞いてねぇよ…!」

 

「あ、『らいふ』が…!!」

 

「回復『あいてむ』が切れたようだな。こっちにはまだ『かがみうつし』がいるんだ。返り討ちに遭いたい奴は撃ってこいよ」

 

 そう言って俺は、手招きをして『ぷれいやぁ』達を煽る。

 三人とも、今持ってる『いなずぅまうす』が最後の一匹。

 そしてもう、『らいふ』はほとんど残ってない。

 それに対して、俺にはまだ攻撃も防御も回復も、『もんすたぁ』や『あいてむ』が残ってる。

 コイツらをさっさと片付けて、早いとこマリのところへ行かねぇと…

 

「そうだな…じゃあ、遠慮なく撃たせてもらうよ」

 

 そう言ってネズミとカタビラは、スマホを構える。

 そしてそのまま、俺の方へ走り出した。

 は…?

 コイツら、何をして…

 

「!?」

 

 ネズミとカタビラは、同時に俺に飛びついてきた。

 そしてその状態で、『いなずぅまうす』を召喚した。

 コイツら、まさか…!!

 おいおい、マジかよ!?

 

「「『いなずぅまうす』召喚!」」

 

 二人は、俺に抱きついた状態で、自分に向かって『いなずぅまうす』の電撃を放った。

 二人が電撃を放つと、一緒にいた俺も巻き添えを喰らって、身体に高圧電流が流れる。

 二人は、『いなずぅまうす』の電撃で痺れながらも、俺の身体にしがみついてありったけの電撃を浴びせた。

 

「自分への攻撃なら、『かがみうつし』は使えねぇだろ!?」

 

「防げるもんなら、防いでみやがれ!!」

 

「がああああああっ!!」

 

 コイツら……

 自分ごと電撃を浴びせるとか…イカレてやがる…!!

 くそ、身体動かねぇ…!!

 マジでやべぇこれ、意識飛ぶ…!!

 

「今だ、レイ!」

 

「うん…!」

 

 ネズミが叫ぶと、レイは俺に向かって『いなずぅまうす』を放つ。

 くそ…身体が動かねぇ…

 防御が使えねぇ…!!

 

「がああああああっ!!」

 

 レイは、俺に『いなずぅまうす』の電撃を浴びせた。

 高圧電流で身体が痺れ、一瞬で意識が飛ぶ。

 くそっ…やられた……

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

スミレside

 

 マリと別れてマヒル、ダイナ、ビルの三人と一緒に行動していた俺は、くらぶのくいいんチームだって事を看破されて、三人に足止めを喰らった。

 だが、こんな事もあろうかと攻撃や防御に使える『もんすたぁ』や『あいてむ』をしこたま集めておいたおかげで、俺は『ぷれいやぁ』にやられるどころか、むしろ『ぷれいやぁ』の『らいふ』を削っていた。

 

「ははっ、もう『らいふ』切れか?ざまぁねぇな」

 

「くっ…」

 

 三人は、『らいふ』が不足して攻撃の手が止まった。

 この状況で使える回復『あいてむ』も無い。

 まさに詰みってやつだな。

 

「アンタら、よくやった方だと思うぜ?だけどな、こっちはずっとゲームでおまんま食ってきてんのよ。ゲーマー舐めんな、ビギナー共」

 

 俺が『ぷれいやぁ』を煽ると、ビルが肩をすくめる。

 

「そうだなぁ…もう打つ手がないし、諦めるしかないかぁ…」

 

 ビルは、ポケットに手を突っ込んで、俯きながらため息をつく。

 なんだ、もう終わりか?

 そう考えた、次の瞬間。

 

「……なぁんてね♪」

 

 ビルは、俺の不意をついて『もんすたぁ』を召喚した。

 

《No.008 あべこんべぇ》

《レア度 C》

《消費らいふ 5》

《あいてと じぶんの じょうたいを いれかえる。》

《「ぽけっと」の なかの 「もんすたぁ」と 「あいてむ」は いれかわらない。》

 

 ビルは、さっきまで持っていなかったはずの『あべこんべぇ』を使って、俺と自分のスマホの状態を入れ替えた。

 俺のスマホは、残り『らいふ』が1になって、回復『あいてむ』すら召喚できない状態になった。

 

「な……!?お前、どうして……!!」

 

「奇遇だねぇ〜、実はオレも同じ事考えてたんだ♪」

 

 ビルは、ニヤリと笑いながら、パーカーのポケットからもう一台のスマホを取り出した。

 ビルが持っていたのは、最初に死んだ『ぷれいやぁ』のスマホだった。

 コイツ……俺達と同じ事を……!?

 死んだ参加者のスマホは、他の参加者が引き継いで使う事ができる。

 元の持ち主の『らいふ』が0になってセーブデータが消えちまったスマホも、回復『あいてむ』を使う事で、スマホを復活させて使う事ができる。

 俺達が、『げぇむ』で実験をしているうちに見つけた裏『るうる』だ。

 まさか、『ぷれいやぁ』のコイツが、その裏『るうる』を利用してくるなんて…!!

 

「お前は、あと一度でも『もんすたぁ』か『あいてむ』を使用すれば『げぇむおおばぁ』が確定する。詰みだよ」

 

 くそっ……

 ビギナーだと思って油断した俺がバカだった。

 コイツら、強ぇじゃねぇか。

 ……でも。

 

「…悪いな。最後に勝つのは、オレ達だよ」

 

 ビルが『あべこんべぇ』を使って、俺とステータスを入れ替える直前、()()()()()()()()()をさせてもらった。

 俺は負けても、()()は負けねぇ。

 あとは頼んだぜ、マリ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ツエダside

 

 マリの動きを封じた私は、マヒルのもとへ向かった。

 100種目の『もんすたぁ』は、私が今持ってるスマホを、マヒル本人が持っていないと呼び出せない。

 『げぇむくりあ』するには、マヒルにスマホを返して、100種目の『もんすたぁ』を『ぽけっと』に収めないといけない。

 残り時間は、あと1分。

 

「いた……!」

 

 マヒルを見つけた私は、全速力で駆けつける。

 この国に来たばかりの頃は、別に生きようが死のうがどっちでもいいと思ってた。

 でも、今は違う。

 私が生きて帰らなきゃ、死んじまう奴がいるんだよ。

 絶対『くりあ』して、生き残ってやる。

 

「マヒル!!」

 

 私は、『もんすたぁ』が99種揃ったスマホを、マヒルに渡した。

 マヒルが私からスマホを受け取ると、♣︎のQのトランプが現れる。

 マヒルがトランプにボールを当てると、トランプがマヒルのスマホに吸い込まれた。

 

《No.100 あるじぃぬ》

《レア度 SS》

《消費らいふ ー》

《すべての 「もんすたぁ」を すべる、 「くらぶ」の じょおう。》

《このくにに、 たったひとりしか いない。》

《ぱぁとなぁに 「くらぶのくいいん」の 「くりあ」と 12にちかんの あんねいを やくそく する。》

 

「これで『もんすたぁ』が、100種揃った…!」

 

 マヒルのスマホに、全100種の『もんすたぁ』が揃った。

 『げぇむ』終了まで、残り10秒。

 これをあと10秒守り抜けば、私達の勝ち。

 

 だけどよりによって、その最後の1分で、マリが追いついてきた。

 ……!!

 やっべ、私とした事が油断した。

 コイツ、仲間に送ってもらった回復『あいてむ』で、状態異常を解除したのか。

 私も甘くなったなぁ…

 ちゃんとトドメ刺しておくんだった。

 

「『かいとうるぱん』召喚!!ツエダの『もんすたぁ』を全部奪っ───」

 

 マリが『かいとうるぱん』を召喚してマヒルの『もんすたぁ』を根こそぎ奪おうとした、その時。

 

「『みがわりくがめ』召喚!!ツエダを守れ!!」

 

《No.035 みがわりくがめ》

《レア度 A》

《消費らいふ 15》

《はんけい 3めぇとる いないにいる なかまの のろいを ぜんぶ うける。》

 

 ビルが、『みがわりくがめ』を召喚して、『かいとうるぱん』の呪いの身代わりになった。

 ビルがマヒルの身代わりになってマヒルの『もんすたぁ』を守ると、マリが目を見開く。

 これでもう、マリは『かいとうるぱん』を使えない。

 最後の最後にぷれいやぁチームの『もんすたぁ』を守り切ったビルは、不敵な笑みを浮かべた。

 

「……フフ、皆の勝利ってやつ?たまにはこういうのも、悪くないね」

 

 ビルがそう言って微笑んだ直後、制限時間のカウントが0になった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

マリside

 

 私とノバラとスミレの三人は、孤児院で育った。

 私は、小さい頃にお母さんに孤児院に預けられて、前はそこで過ごしていた。

 お母さんは、知らない男の人と一緒にどっかに行っちゃって、それから一度も会っていない。

 口下手でトロい私は、孤児院でうまくやっていけるか不安だった。

 だけど、そんな私に優しくしてくれたのが、ノバラとスミレだった。

 

「なぁ、お前新入り?このゲームやってみろよ!面白ぇぞ!」

 

 二人は、当時流行っていたゲームを私に勧めてくれた。

 初めて二人と一緒にやったゲームは、とても面白くて、楽しかった。

 ゲームをする楽しみを教えてくれたのは、空っぽだった私の心に水を注いでくれたのは、ノバラとスミレだった。

 

「うわ、お前上手ぇな!本当に初めて?」

 

「うん……」

 

「そういや、まだ名前聞いてなかったな。オレはノバラ!コイツはスミレ。お前は?」

 

「……マリ。四葉真里」

 

 その日から、私は、ノバラとスミレと友達になった。

 二人は、いつも私を助けてくれた。

 ノバラはいじめっ子から私を守ってくれて、スミレは学校を休みがちな私に勉強を教えてくれた。

 だけど、いつも助けられてばかりじゃ嫌だった。

 私も、二人の役に立ちたかった。

 

「ゲーム大会?」

 

「うん…優勝したらお金貰えるんだって。わたし…参加してみようと思うんだ」

 

 100万円の賞金をかけたゲーム大会が都内で開催されるという情報を手に入れた私は、その大会に参加する為の特訓をしていた。

 得意なゲームなら、誰にも負けない自信があった。

 何より、いつも私を助けてくれた二人に恩返しがしたかった。

 

「わたしはいっつも、ノバラとスミレに助けられてばっかりだから…今度は、わたしが2人の役に立ちたいの」

 

 私が二人に大会の事を相談すると、二人は顔を見合わせて言った。

 

「それさ、オレらにも一緒にやらせてくれないか?」

 

「じゃあさ、いっそこの3人でチーム組んでプロゲーマー目指すのはどうよ?」

 

「お、いいなそれ!」

 

 私達は、三人でチームを組んで、ゲームの大会に出場した。

 その大会には年齢制限が無くて、子供の私達でも参加できた。

 私達は、日々の特訓の成果を出し切って、その大会で優勝した。

 初めて出場した大会で優勝したのは、ノバラとスミレが中学生、私が小学生の頃だった。

 

「わぁ、すごい…こんな大金初めて見た…」

 

「焼肉食いたい放題だな〜!」

 

「焼肉もいいけど、新しいゲーム機買おうぜ」

 

 優勝して手に入れた賞金の使い道を皆で話し合っていた時、誰かが私達に声をかけてきた。

 

「すみません。私、こういう者です」

 

 そう言ってスーツを着た男の人が、私達に名刺を差し出してきた。

 私達に声をかけてきたのは、ゲーム会社の人だった。

 その人は、私達のプレイを見ていたらしくて、私達とスポンサー契約を結びたいと言っていた。

 

「スポンサー契約か…」

 

「どうする?やるか?」

 

「やろうよ!」

 

 スポンサー契約を結んで有名になれば、お金がたくさん入る。

 そうすれば、二人に今までの分の恩返しができる。

 私達は、企業とスポンサー契約を結んで、プロゲーマーとして色んなゲームの大会に出場した。

 私が高校に上がる頃には、eスポーツの世界大会にも出場して、天才ゲーマーとして世間に知られるようになった。

 経営とプログラミングを学んでいたスミレ主導で、自分達でゲーム会社を立ち上げたりもした。

 二人とも喜んでくれて、とても嬉しかった。

 だけど…

 

 

 

「どうして……」

 

 『今際の国』に迷い込む直前、私達が経営していたゲーム会社が倒産した。

 お金に目が眩んだディレクターが暴走して、会社のお金を横領した挙句逮捕されて、そのせいで製作チームの統率が取れなくなって最新作の制作も結局中止になって、多額の赤字を抱えてしまった。

 その件で精神的にいっぱいいっぱいになってしまった私は、しばらくお休みを貰った。

 私はただ、大好きなゲームで役に立って、大好きな二人に喜んでほしかっただけなのに。

 どうしてこんな事になっちゃったんだろう。

 

「マリ、体調大丈夫か?お前の好きなケーキ買って来たぞ。食欲あるなら食えよ」

 

「ごめんね…わたし、2人の足引っ張ってる…」

 

「何言ってんだ、お前は何も悪くねぇだろ。そんな事より、ゲーセン行こうぜ」

 

 落ち込んでいる私を見かねた二人が、息抜きにゲームセンターに連れて行ってくれて、三人で一晩中ゲームをした。

 ゲームセンターからの帰り道、空に上がる花火を見た。

 

 

 

 ――ミーンミンミーン…

 

「え……?」

 

「どこだ、ここ…」

 

 気がつけば私達は、『今際の国』に迷い込んでいた。

 私達は、命懸けの『げぇむ』を、三人で協力して生き延びてきた。

 不謹慎かもしれないけど、三人で『げぇむ』に参加するのは、少しだけ楽しかった。

 何より、二人がいてくれたから、怖いものなんて何もなかった。

 

 『ねくすとすてぇじ』で先代の『♣︎Q(くらぶのくいいん)』を倒した私達は、そこで永住権の事を聞いた。

 『げぇむ』を『くりあ』した後、私はノバラとスミレと話した。

 私達は、この国でどう生きていくか。

 

「永住権か…どうする?」

 

「わたしは……永住権を手に入れようかなぁ。わたしは、この国で、ずっと3人で暮らしていたいなぁ」

 

「…ああ。オレもだ」

 

「おう。オレらは、死ぬ時までずっと一緒だ」

 

 私達は、永住権を手に入れる事にした。

 この国は、私が今までやった事がないような楽しいゲームがたくさんある。

 私は、この国で三人で一緒にずっと『げぇむ』をしていたかった。

 

 …というより、私は、三人でずっと暮らしていけたら、どんな世界でも良かった。

 それがたとえ、血を血で洗う、絶望に満ちた世界でも。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

《制限時間を過ぎました。現時点で100種集め終えていないくらぶのくいいんチームの皆様は全員、『げぇむおおばぁ』》

 

 合成音声が、私達の負けを知らせる。

 最後の最後に、『もんすたぁ』を総取りしようと思ってたんだけどなぁ。

 そううまくはいかないか…

 

「あーあ…負けちまったか」

 

「結局死ぬのは、オレ達の方か…」

 

 スミレと、私の元へ駆けつけてきたノバラが、フッと笑う。

 

「……ノバラ、スミレ。ごめんね。わたし、負けちゃった」

 

「誰も責めてねぇよ、そんな事」

 

「ああ。いつも言ってただろ。死ぬ時も3人一緒だって」

 

 私が負けちゃった事を謝ると、二人は笑って許してくれた。

 私は、ノバラとスミレがいてくれたから、今日まで生きられた。

 二人がいなきゃダメだった。

 この二人じゃなきゃダメだった。

 『げぇむ』には負けちゃったけど、最後まで三人で戦えた、それだけで充分。

 

 私達は、これから死ぬ。

 でも、死ぬのはちっとも怖くない。

 だって、二人がいるから。

 

「ずっと一緒にいようね」

 

「ああ」

 

「もちろん」

 

 

 

 ――ボンッ!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ツエダside

 

 『げぇむ』が終わって、マリ、ノバラ、スミレの首輪が爆発した。

 首から上がなくなった三人の死体が、私達の目の前で倒れる。

 

《ぷれいやぁチームは、見事『もんすたぁ』を100種集める事ができました。こんぐらちゅれいしょん。げぇむ『くりあ』。げぇむ『くりあ』》

 

 無機質な合成音声が、私達の勝利を知らせる。

 それと同時に、スマホの電源が落ち、首輪が外れた。

 

「勝ったんだね…」

 

「ああ…」

 

 モニターに表示された『こんぐらちゅれいしょん』の字を見て、レイとマヒルが呟く。

 結局最後まで生き残ったのは、くらぶのくいいんチームも含めて15人中7人だった。

 ゲームセンターの1階に置いてあったレジに行くと、7人分のトランプと『びざ』が発行された。

 

「それじゃ、オレ達はもう行くよ」

 

「本当にありがとう」

 

「ああ…オレ達が生き残れたのは、アンタらのおかげだよ」

 

「オレも〜、もう『びざ』は手に入ったし、そろそろおいとましようかな♪」

 

 ネズミ、ダイナ、カタビラ、そしてビルの4人は、私達より先に『げぇむ』会場を後にした。

 

「皆、元気でね」

 

 レイは、去っていく皆に手を振った。

 なんだかんだ、気の良い奴らだったわね。

 ビルも最後、私達を助けてくれたし。

 

「それじゃ、アタシもそろそろ失礼するわ。2人とも元気でね〜」

 

「ああ…お互いにね」

 

 私は、マヒルとレイに別れを告げてから、先に『げぇむ』会場を後にした。

 

 

 

 ───今際の国滞在67日目

 

 残り滞在可能日数

 

 潰田千寿 75日

 

 

 

 『ねくすとすてぇじ』開催7日目

 

 『げぇむ』 残り2種

 

 『ぷれいやぁ』 残り70人

 

 

 

 




くらぶのくいいんチーム

♣︎Q(くらぶのくいいん)

◆プロフィール

本名:四葉(よつば)真里(マリ)/マリ
性別:女性
年齢:17歳
身長:148cm
出身地:東京都
職業:高校生/プロゲーマー
得意ジャンル:『♣︎(くらぶ)』(バランス型)
好きなもの:ゲーム全般(クソゲー含む)、スフレケーキ


◆容姿

明るい茶髪の外ハネボブ。瞳の色は琥珀色。
小学生にも見える小柄な体格。

◆服装

白いワンピースの上に黄色いパーカーを羽織り、リュックを背負っている。
首にはヘッドホンをかけている。

◆人物

♣︎Q(くらぶのくいいん)』の絵札の主。
高校生にして、企業とスポンサー契約を結び自身でもゲーム会社を経営していたプロゲーマー。
ゲームならオールジャンルで活躍する天才ゲーマー少女。
幼馴染で仲間のノバラやスミレとは、血よりも濃い絆で結ばれている。
『ぷれいやぁ』の中に紛れていた時は少しオドオドした性格だったが、本来はおっとりしていて強かな性格。

元の世界では、ノバラやスミレと一緒に孤児院で幼少期を過ごし、二人に恩返しがしたいという思いから、プロゲーマーとして世界的に活躍していた。
ディレクターの暴走により自身の会社が倒産した事でショックを受け、一時的に活動を休止しており、ノバラやスミレに息抜きにと誘われたゲームセンターの帰りに『今際の国』に迷い込む。
『今際の国』で過ごしているうちに、3人で『げぇむ』を乗り越える事に楽しさを覚えるようになり、『今際の国』の永住権を手に入れ国民になった。

開催6日目にマヒルやツエダ達と『げぇむ』をし、開催7日目に敗北という形で決着。仲間のノバラとスミレ諸共首輪が爆発して死亡した。

名前の由来は、ドキドキ!プリキュアのキュアロゼッタこと四葉ありすと、クラブのクイーンのモデルになったシャルル7世妃のマリー・ド・アンジュー(アルジーヌ)。



野茨(ノバラ)荊太(けいた)/ノバラ

◆プロフィール

性別:男性
年齢:19歳
身長:178cm
出身地:東京都
職業:プロゲーマー
得意ジャンル:『♠︎(すぺえど)』(肉体型)
好きなもの:フィジカルゲーム


◆容姿

黒髪を長く伸ばしており、低めの位置で結んでいる。

◆服装

黒いシャツに青いズボン。

◆人物

くらぶのくいいんチームのメンバー。
企業とスポンサー契約を結び自身でもゲーム会社を経営していたプロゲーマー。
身体能力が高く、フィジカルゲームが得意。

元の世界では、マリやスミレと一緒に孤児院で幼少期を過ごし、マリをサポートする形でプロゲーマーとして世界的に活躍していた。
ディレクターの暴走により自身の会社が倒産した事をきっかけに一時的に活動を休止しており、マリを連れてスミレと一緒に行ったゲームセンターの帰りに『今際の国』に迷い込む。
『今際の国』で過ごしているうちに、3人で『げぇむ』を乗り越える事に楽しさを覚えるようになり、『今際の国』の永住権を手に入れ国民になった。

開催6日目にマヒルやツエダ達と『げぇむ』をし、開催7日目に敗北という形で決着。仲間のマリとスミレ諸共首輪が爆発して死亡した。

名前の由来は、鏡の国のアリスに登場する喋るバラ。



鷲見(すみ)蓮紫(れんじ)/スミレ

◆プロフィール

性別:男性
年齢:19歳
身長:175cm
出身地:東京都
職業:プロゲーマー
得意ジャンル:『(だいや)』(知能型)
好きなもの:ボードゲーム、プログラミング


◆容姿

紫色の短髪を逆立てている。

◆服装

紫色のシャツに白いズボン。
耳と眉にピアスをつけている。

◆人物

くらぶのくいいんチームのメンバー。
企業とスポンサー契約を結び自身でもゲーム会社を経営していたプロゲーマー。
頭の回転が速く、ボードゲームなどの戦略ゲームが得意。

元の世界では、マリやノバラと一緒に孤児院で幼少期を過ごし、マリをサポートする形でプロゲーマーとして世界的に活躍していた。
ディレクターの暴走により自身の会社が倒産した事をきっかけに一時的に活動を休止しており、マリを連れてノバラと一緒に行ったゲームセンターの帰りに『今際の国』に迷い込む。
『今際の国』で過ごしているうちに、3人で『げぇむ』を乗り越える事に楽しさを覚えるようになり、『今際の国』の永住権を手に入れ国民になった。

開催6日目にマヒルやツエダ達と『げぇむ』をし、開催7日目に敗北という形で決着。仲間のマリとノバラ諸共首輪が爆発して死亡した。

名前の由来は、鏡の国のアリスに登場する喋るスミレ。
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