No side
世田谷区では『
落ちていく二つの飛行船を見た『ぷれいやぁ』達は、驚嘆の声を上げる。
「落ちた…!!飛行船が落ちたわ!!」
「しかも…2機同時に…!!」
「……これで、『げぇむ』は後…いくつ残ってるんだ…!?」
◆◆◆
アンside
『ねくすとすてぇじ』初日に『
「アリス達とはぐれてから、もう1週間か…私達、もうこれ以上『げぇむ』に参加しなくていいのかな…?」
「アタシら充分やったじゃん…初日に『
マシロがこのままここで隠れている事に疑問を呈すると、アカリが反論した。
「ええ。最後の知能戦、『
『
そう考えていると、キシベがバタバタと足音を立てて駆け込んでくる。
「オオイ!!お前らァ!!」
「キャア!!」
「何よ!?」
「お…落ちたぞッ!!『
これで残ってるのは…『
◆◆◆
ヤブヤベside
ウチは、高層ビルの最上階で、お茶を嗜んどった。
ヤバはんとバンダはんは、ワインを飲み交わしながら、空に浮かんだ『
ウチもおとなやったら、一緒にお酒を楽しめたんやろうけどなぁ。
なんて考えとったら、『
「もうすぐだね…」
「ああ」
「そうどすなぁ」
「これで…残す『げぇむ』は…」
「『
◆◆◆
ドードーside
『
ヘイヤさんの仕掛けた罠に引っかかって死にかけたところを助けてもらって、ヘイヤさんが暮らしていた小屋の中で目を覚ましたかと思ったら、また『
『
逃げた先で、俺はアグニさんと再会した。
俺がアグニさんを置いて逃げた事を謝ると、アグニさんは俺が逃げた事を許してくれた。
その後、飯を食べている途中で、俺の『びざ』が今日で切れる事を思い出すと、アグニさんは俺とヘイヤさんが寝ている間に、どこかへ行ってしまった。
アグニさんは、俺を救う為に、一人で『
俺は、アグニさんを探しに行こうと、ヘイヤさんにも助けを求めたけど、ヘイヤさんは一緒には来てくれなかった。
俺は、一人でアグニさんを探しに行った。
楽しい事なんて、何もない毎日だった…
未だに、何の為に生き延びてるかなんてわからない…
今だってこんなに怖いのに…
それでも俺は…
何の為に走ってるんだ…?
――過去だ。オレは…オレを縛り続けている過去と…もう、決別したいだけだ…
――何が何でも生き延びるだけよ。全ては、未来の為。
逃げても戦って負けてもどのみち今日が最後の日なら…
オレの…オレが戦う為の意志は…
今日…この日を守りたい…
二人を絶対、死なせない!!
「どこにいるの…?アグニさん…!!」
――ダァァーーー…ン!!
「銃声…!!アグニさん…!?呼んでるんだ…『
アグニさん…差し違えてでも、『
急がないと…!!
◆◆◆
アグニside
俺はショッピングモールの地下の駐車場で、『
奴は、正面から現れて、銃口を俺に向けてきた。
だが奴は、発砲しなかった。
俺がプロパンガスやガソリンの栓を開けておいたからだ。
「発砲すれば、2人とも吹き飛ぶ…お前の手で引き金を引いて終わらせても、オレは一向に構わねぇぜ…『
俺が尋ねると、『
この反応は…図星って事か?
もし俺が言った事が本当なら、俺が『
これでアイツを、救ってやれる…
ようやくオレの死に場所に、巡り会えた…
「アグニさんッ!!」
『
バカな…何故ここに…!?
「…バカが…!!何故ここに来た…!!」
『
奴が左手でナイフを握ったまま一歩ずつドードーに歩み寄ると、ドードーはハンドガンを構えた。
「銃は使えねぇ!!逃げろッ…!!」
「くっ…!!」
俺が叫ぶと、ドードーは非常階段を駆け上った。
すると『
まずい…!!
俺は手榴弾が爆発する前に、咄嗟にその場から飛び退いた。
――ドゴォ!!!
大爆発と共に、俺の身体は爆風で吹き飛ばされた。
俺の背中に、無数の瓦礫が飛んでくる。
全身を瓦礫で打たれた俺がそのまま倒れ込むと、上から瓦礫が降ってきた。
俺は降ってきた瓦礫を押し除けて、瓦礫の中から抜け出した。
「ぐ…うぅ…ドードー…!!」
俺は、ドードーが駆け上がった非常階段を駆け上がった。
すると、アサルトライフルの銃声が聴こえてくる。
『
俺が駆けつけると、非常口に向かって走るドードーと、ドードーの背に銃口を向ける『
俺はショットガンを構えながら飛び出し、『
『
「今だ!!急げッ!!」
俺が叫ぶと、ドードーが俺のもとへ駆けつけてきた。
俺達と『
「…今のが、奴と心中する為に残しておいた最後の1発だ…余計な事をしてくれたな…あれが奴を倒す唯一の機会だったかもしれねぇんだぞ…!!」
「…そんな事は、わかってますよ…!だからダメなんですよ!」
「あ゛…!?」
「『
ドードーは、覚悟を決めて銃を構えていた。
初めて会った時とは見違えるように強くなったな…
「…とにかく、こうなっちまったら、ここから脱出して奴と距離を…」
――ゴゴゴゴゴゴ…
「!?」
外から何かが押し寄せる音が響き、モール全体が大きく揺れる。
「な…何の…音ですか!?」
ドードーが叫ぶ中、俺は『
奴もこの事態は想定外だったのか、珍しく動揺を見せていた。
「土石…流…!?」
まさか…
昨日上陸した台風で、土石流が流れてきたのか…!?
俺がドードーを連れて逃げようとすると、土石流のせいでモールが大きく傾き、ドードーがバランスを崩した。
「うわぁぁッ!!」
「さっきの爆発で主柱が脆くなってる…!直にここは、崩れるぞ…!!」
俺がドードーに向かって叫んだ、その時だった。
「ぐ…お…お…ぐお…おお…!!オオオオ!!!」
『
『
「何が起こっているんだ…!?」
「わからないけど…あの人は…怯えてる…」
PTSD…か。
『
「行こう……この機に脱出するぞ…下のフロアは、もうダメだ…上に逃げても、望みは薄いが…」
俺とドードーは、モールの屋上に逃げた。
外に出ると、暴風が吹きつけていて、倒壊した建物が土石流の中に沈んでいた。
「うわッ!!なんて風…立ってるのがやっとだ…」
ドードーは、屋上の柵に掴まって下を見下ろした。
予想外の速さで瓦礫が流れていて、土石流に飛び込んでも助からないのは目に見えていた。
「すごい流れだ…!!ダメです!!飛び降りても…とても助からない!!このままじゃ…このモールが崩れるか…その前に…アイツが来る…!!」
クソッ…ここまでか……
――ドガァッ!!
近くの車のボンネットに、矢が突き刺さった。
よく見ると矢には、ワイヤーが巻き付けられていた。
この矢は…
「ったく、飛び込んだり倒壊したり…アタシが参加する『げぇむ』はこんなんばっかよ…!ワイヤーの先にロープを結んである!!手繰り寄せて固定したら、ソイツを伝って脱出しろォ!!」
「やっぱり…来てくれたんですねッ…!!ヘイヤさん!!」
振り向くと、ヘイヤが反対側のビルの窓から身を乗り出していた。
「言っとくけど、アンタの為じゃねーからなヘナチョコ!!テメェらみたいなお人好しを見殺しにして生き残っても、アタシはこの先幸せになんてなれねぇ!!コイツは、アタシ自身の未来の為よッ!!」
「それでもッ!!嬉しいですッ!!」
ドードーがヘイヤに向かって叫ぶと、ヘイヤは照れ臭そうに舌打ちをした。
俺は、ヘイヤが放った矢に括り付けられたワイヤーを手繰り寄せる。
「いいぞ…これで奴を、ここに置き去りにできる!」
俺は車に手繰り寄せたロープを括り付けて、ドードーにベルトを手渡した。
「よし…!!そのベルトを滑車代わりに、一気に滑り降りろ!」
俺がドードーに指示を出している間に、『
『
「急げドードー!!」
「ア…アグニさんは…!?」
「ここまで来たら今更、奴と心中するつもりはねぇよ…だから先に行け!!」
「はいっ…!!」
俺は、『
『
「くっ!!」
俺は弾を避けると、布切れを滑車代わりに、ロープを使ってモールの屋上から降りた。
だがふと前を見ると、先に行ったはずのドードーの姿が無かった。
振り向くと、ドードーは、屋上の柵にしがみついたまま、右手にハンドガンを構えていた。
「ドードー!?」
「今、2人で飛び出せば、アイツにとって恰好の的です…オレがここに残って『
そう言ってドードーは、笑顔を浮かべた。
「ドードーォオ!!」
◆◆◆
ヒーロside
「う……」
私は、痛みで目を覚ました。
ここは…病院……?
「ヒーロさん…良かった、目が覚めて…」
「キズナちゃん…」
目を覚ました私の顔を、キズナちゃんが覗き込む。
…思い出した。
私は、キズナちゃん、クイナさん、それとドレッドさんと一緒に『
クイナさんは…どこにいるんだろう…?
「…クイナさんは?」
「もう行っちゃいました。最後の『げぇむ』に参加してくるって言って…」
「最後の『げぇむ』…?」
最後の『げぇむ』って、どういう事…?
まだ『げぇむ』は4種くらい残ってるはず…
「アタシ達が『げぇむ』をしている間に、『
あと2種か……
いよいよ、この『げぇむ』も終わりに近づいてるんだね…
◆◆◆
ツエダside
「いねーじゃん。あの野郎マジふざけんな」
『
先に『
この私が嵐の中戻ってきてやったってのに、いないってどういう事よ。
『
まぁ、ここに戻ってくる義理が無いって言われりゃそうなんだけどね?
そうだけど…そうなんだけどさぁ……
「しょーがない、探しに行ってやりますか」
私は、荷物をまとめてマンションを出た。
残る『げぇむ』は、23区外の『
今生き残ってるほとんどの『ぷれいやぁ』は、最後の『げぇむ』を見届けに、港区に集まってる。
もしアイツが無事なら、多分港区のどこかにいる。
虱潰しに探してみますか。
どのみち暇で暇でしょーがないし。
◆◆◆
チシヤside
『げぇむ』を『くりあ』した後、俺はバスのルーフの上に座って、ハンドガンを握って考え事をしていた。
あの後、一度は死ぬ事も考えたけど、死ねなかった。
『げぇむ』でのクズリューとの会話を思い出した。
「これから…どうしようか…無性に…誰かと話したいと思うのは何故だろう…?」
誰かと会って、話がしたい。
誰にも話した事がない、俺自身の話を。
俺は、さっきまで『
ツエダは今頃、『げぇむ』を『くりあ』して帰ってる頃かな…
……そういえば、彼女に『死ぬな』って言われてたっけ。
何故彼女は、あんな事を言ったんだろう。
お互い、ただ利用し合う関係だったはずなのに。
一度は俺の事を、殺そうとしたのに。
何故だろう。
もう一度、彼女に会いたい。
会って、話がしたい。
今になって、こんな事を思うようになったのも、彼のせいかな…
そんな事を考えながら、俺は嵐の中、一人で歩き出した。
何故だろう。
こうして歩いていたら、誰かに会える気がした。
すると、見知った顔を見かけた。
「……やぁ」
「チ…シヤ…?」
俺は、正面から歩いてきたアリスに話しかけた。
「君の事だから、生き延びてるとは思ってたよ。『ビーチ』…以来だね」
「ああ…そういえば、アンタらには随分酷い目に…合わされたっけな…」
「ハハッ……そんな事もあったっけ」
俺は、『ビーチ』でアリスを囮にしてトランプを奪った事を思い出して笑った。
全員まとめてツエダに利用されて、彼女の独りよがりに付き合わされたんだっけ。
当の本人は、勝手に開き直ってケロッとしてるけど。
今となっては、とんだお笑い種だ。
「…まだ、怒ってる?」
「いいや…………というより、今は自分の事でそれどころじゃねーのかもな…」
「そっ…か…なんだか落ち着くよ。こうして知った人と話ができるのは…君にまた会えて、嬉しいよ」
「アンタ…なんか、変わったな…」
俺が笑うと、アリスも笑顔を浮かべた。
変わった……か。
彼のおかげかな…
「アリス、誰にも話した事のないオレの話を聞いてくれないか?」
俺がそう言うと、アリスは返事をする代わりに頷く。
「…………オレは───
――ダァアアア…ン!!
◆◆◆
アリスside
「………チ、チシ…ヤ…!?」
突然、銃声が鳴り響いた。
あまりにも唐突な出来事に、一瞬、理解が追いつかなかった。
視線を下に向けると、チシヤが肩から血を流して倒れていた。
「ようやく…この気持ちのぶつけどころが見つかったな…こんな所でまた会えるたァ…嬉しいぜェ…!!」
後ろから声が聴こえて、振り向くと、俺の後ろには、ライフルを構えたニラギが立っていた。
「ニラギ…!!」
俺が振り向いた次の瞬間には、ニラギが撃ってきた。
俺は咄嗟に、車の影に隠れた。
「くっ…!!何の…つもりだ…!?テメェ…何でチシヤを…!?」
「ぎゃはは…ハグでもすりゃ良かったのか…?オレ達3人は…そんな仲でもねぇだろう…?殺し合おうぜ!!オレ達が再会してする事なんざ、それくらいしかねぇだろうがよ…!!」
くそっ……
なんでだよ…なんでそうなるんだよ…!!
「……カハッ…」
チシヤが、血を吐きながら意識を取り戻した。
「チシヤ!!」
「………ハハッ。急所は…わざと外したね…」
「不意打ちで終わらせるはずねーだろ…さっさと起きろ、始めるぜ…!」
「く…そっ!!なんでテメェは…いつもそうなんだよニラギっ!!くそっ!!こんな時にこんな事をして…一体何がどーなるってんだよ!!オレ達は、同じ『ぷれいやぁ』同士なんだぞ!」
俺は、ニラギに向かって叫んだ。
するとニラギは、急に冷静になって語り始めた。
「…思えば、オレ達3人は…似た者同士なのかもしんねーなァ…社会に適応できねぇはみ出し者で…いつも
そう語るニラギは、いきなり咳き込んで血を吐いた。
「悪ぃが、オレにはもう…『ねくすとすてぇじ』だの、『げぇむくりあ』だの…そんなもんを気にする時間は…残っちゃいねーんだよ…だからいいじゃねーか。
付き合うワケ…ねーだろッ!!
今はこの広場から、脱出する事だけ考えるんだ…!
ライフルの射程は厄介だが、これだけの障害物があるなら、うまく伝えば、ここから…
――ダァンッ!!
銃弾が、俺の行く手を阻んだ。
見ると、チシヤが俺にハンドガンの銃口を向けていた。
「面白いじゃん…君も乗りなよ。君と彼はオレに恨みがあるはずだ。この場でそれを晴らせばいい…どうせ行く当ても無かったんだ…付き合うよ♪」
「チシヤ…」
「いい…ねぇ、ぎゃはは…『今際の国』らしくなってきたじゃねーか…さしずめコイツは『えきしびじょんげぇむ』…『ばとるろいやる』ってとこか?」
ニラギとチシヤが、互いに銃を向け合う。
その直後、ニラギとチシヤが撃ち合いを始めた。
◆◆◆
ツエダside
F**********k!!!
どこにいんだよあの野郎!!
あ゛ー、くっそ、イライラしてきた!
これだけ探し回ってもいないとか、マジふざけんなくそが!!
いなくなるならいなくなるって最初から言っとけやカス!!
つーかなんで私がこんなクッソ嵐の中、アイツを探さなきゃいけないわけ!?
何回か一緒に飯食ってヤっただけで、別に好きでもなんでもなかったじゃん!
そもそも『ビーチ』に誘った当初は、散々利用して殺すつもりだったじゃん!
アイツは私の事なんか、全然興味無かったじゃん!
どこで何してようが、勝手に死のうが、アイツの勝手…私がこんなに必死になる事ないじゃん!
なのに、こんな……っ、いつから私、こんなバカになったのかしら…!!
こんなに必死こいて男を探し回したのなんて、大学以来よ!ちくしょうがぁ!!
「ツエダ……?」
私がチシヤを探していると、どこからか声をかけられた。
振り向くと、私の後ろには、ウサギが立っていた。
ウサギに声をかけられた私は、少しずつ冷静さを取り戻した。
「無事だったのね…」
「あら、死んだと思ってた?」
私が尋ねると、ウサギは首を横に振る。
「あなたの事だから、生きてると思ってた」
「そう…」
ウサギの返答に、私は眉を下げた。
生きてると思ってた…か。
随分と買い被られたものね。
なんて思っていると、ウサギが私を睨む。
「……言っておくけど、私は、あなたの事を許してないから」
「別に許されようなんて思ってないわよ」
ウサギは、私がチシヤとグルになってアリスを囮にした事を責めてきた。
まあ恨まれるような事したしな、しゃーねーわ。
つーか、アリスは一緒じゃないの?
「…アリス君は?」
「まだ帰ってきてないの。心配だから、今から迎えに行こうと思ってたんだけど…」
「あら。じゃあ一緒に探す?」
「あなた、何か探してたんじゃないの?」
「まぁそうなんだけどさぁ。アタシも久々にアリス君と話したいしさ。一緒に行けば、アタシの探し物も見つかりそうな気がするし」
「そう…」
私とウサギは、一緒にアリスを探した。
何となく、チシヤは、アリスと一緒にいるような気がする。
アイツら…こんな美女二人を放置して男二人で話し込むなんて、さてはホモだな。
…とまあ冗談はこの辺にして、アイツらどこにいるのかしら…?
――ダァーーーンッ!!
――パンッ!!パンッ!!
私達がアリスを探していると、どこからか銃声が聴こえてきた。
「銃声…!?」
「あっちね…行ってみましょう」
私とウサギは、銃声が聴こえた方へと走り出した。
あの野郎……死んでたらマジ許さないから。
◆◆◆
アリスside
チシヤとニラギは、お互いに銃を構えて撃ち合いをした。
嵐の中、互いの銃声が鳴り響く。
「ひゃ…はは…楽しいねぇ…こういうのを待ってたんだよ…!!テメェらも隠れてねぇで、もっと派手に撃ち合おうぜェェ!!この強風だ!!弾なんざそう簡単に当たらねぇよ!!」
「なんだよ…けっこー元気じゃん…彼の悩みは高尚すぎた…オレには…こういうのがお似合いだよね…」
「くそっ!!なんで…チシヤまで…!!」
くそっ、二人を止めねぇと…!
俺は咄嗟に、背負っていたショットガンに手をかけた。
殺り合うしか…ないのか…!?
その時、タッタやキューマの顔が、脳裏に浮かんだ。
違う…!!
俺はもう…誰も傷つけたくねーんだよ…!!
「よせよニラギ!!もうやめろッ!!こんな事したって、何になるってんだよォ!!テメェの自暴自棄に、他人を巻き込むんじゃねーよッ!!」
そう叫んだ瞬間、俺は思い出した。
俺の独りよがりに、ウサギを付き合わせた事を。
…オレも、同じなのか…?
「自暴自棄だァ…?そうでもねーよ!オレはオレの好きなように、やりたいようにやってるだけだ!!」
そう言ってニラギは、俺が隠れていた車のルーフに乗り上げた。
俺は咄嗟に、近くのトラックの車体の下に隠れた。
「テメェらだってそうだろう?口を開けば、オレは!オレは!!オレ達はいつも、
そうじゃない!!
…とは、言えなかった…
「何度も死線を乗り越えて、大勢の死に触れて…何でもわかった気になって、お利口さんのつもりかよ…?違うね。オレ達は、大人になれねぇ
ニラギは、俺の一番痛いところを突いてきた。
……そっか、そうだよな…
俺は……
「…確かに、そうかもな…オレ達みたいなポンコツは…ここで殺し合ってんのがお似合いなのかもな…」
「ようやく…その気になったかよ…」
「………だから……ここで、変わらなきゃ…」
ニラギと同じだ…
結局俺は自分の事しか考えてないんだよな…
すぐに自分の殻に閉じ籠り、周りの全てのせいにする…
ウサギを、巻き込んでまで…
「ハハ…カッコ悪ぃな、オレ…………ニラギ、ありがとな。やっぱ
そうだよ…だったら、思い出せ…!!
俺にもあったはずだ…
僅かでも、拙くても、頼りなくても…
辛うじてでも持っていたあの頃の気持ちをもう一度…
大切にしろッ!!
「…オレは、乗らない。オレはこの引き金を、自分だけの為には引かねぇ…!!」
俺は、車のルーフの上に、ショットガンを置いた。
するとチシヤも、項垂れたまま、ハンドガンの銃口を下げる。
「なーんか…シラケちまったよな…………どーすんだよ…?この空気…………オレにはもう…テメェらしかいねぇと思ってたのによォ…」
そう言ってニラギもライフルの銃口を下げた、その時だった。
「あ…なた達…何…してるの…!?」
「は……?何、この状況…?」
俺達のもとへ、ウサギとツエダが近づいてきた。
「ウサギ…!?それにツエダ……何で…ここに!?」
「何でって…帰りが遅いから、心配で…さっきのは…やっぱり銃声…?まさか……あなた達…!」
「チシヤ……!?アンタ、何その怪我…!」
ウサギは困惑した様子で俺達を見回し、ツエダは肩を怪我しているチシヤに駆け寄った。
「ったく、目を離したらすぐこれだよ、このバカガキャ…!」
ツエダがそんな事を呟きながら、リュックを下に降ろした。
するとその時、ニラギがウサギとツエダの方を振り向いて笑う。
「………ぎゃ…はは…そう…か…テメェか…そういや…テメェがいたんだっけか…テメェがいるから…アイツはいつまでたっても
そう言ってニラギは、ウサギにライフルの銃口を向ける。
それと同時に、ツエダが腰の銃に手を伸ばすと、ニラギは引き金を引く直前で標的をツエダに変えて発砲した。
「っ……!!」
ツエダは、銃を抜こうとした右肩に銃弾が当たり、顔を歪める。
「ツエダ!!」
「チッ…水差してんじゃねぇよババァ」
ニラギはツエダを見下ろして舌打ちしながら排莢した。
これは、俺達三人の問題だ。
ウサギとツエダは関係ない。
なのになんで、こんな事するんだよ…!?
「やめろニラギ!!2人は関係ないだろ!!」
「ゲームにはヒロインが必要なんだよ。盛り上げ役だ」
そう言ってニラギは、ライフルの銃口をウサギに向ける。
「ウサギっ…!!逃げろォッ!!」
俺は、ウサギに向かって叫んだ。
だけどもう、遅かった。
ニラギは、ウサギにライフルの銃口を向けていた。
「テメェが…消えれば…オレ達はまた、同族に戻れるんだ…もう…1人は嫌だ…」
「くっ…!!」
俺は咄嗟に、ルーフの上に置いたショットガンを構えて、銃口をニラギに向けた。
「ウサギっ…!!」
俺とニラギは、同時に引き金を引いた。
――ガアァ…ン!!
――ダァーーーン!!
2つの銃声が、同時に鳴り響いた。
俺の撃った散弾が、ニラギに命中した。
「ぎゃっ…は……は…」
ニラギは、車のルーフから転げ落ちて仰向けに地面に倒れ込んだ。
「…………………………………ウ…サ…ギ…?」
……間に合わなかった。
俺は…守れなかった……のか…?
「ウサギっ!!」
俺は、さっきまでウサギがいた方向を振り向く。
俺の視線の先には、突き飛ばされて尻餅をついたウサギと、ウサギの上にうつ伏せに覆い被さったツエダがいた。
ニラギが発砲する直前、ツエダがウサギを突き飛ばしたんだ。
だが、ウサギを突き飛ばしたツエダには、弾が当たっていなかった。
ウサギとツエダの前には、二人を庇う形で、チシヤが立っていた。
チシヤの腹からは、血が滲み出ていた。
「チ…シヤ…!?なん…で…あなたが…!?」
自分達を庇ったチシヤを目の当たりにして、ウサギが目を見開く。
チシヤは、フッと笑みを浮かべたかと思うと、その場に仰向けに倒れ込んだ。
「チシヤっ!!」
「チシヤーーーーーっ!!」