楽しく読んで貰えると嬉しいです!
ごみごみと鬱陶しい程に人の溢れ返った東京都の人混みを掻き分けて花壇の縁に腰かけながら缶コーヒーのプルタブを片手で開け、私は深い溜め息を吐く。
「…全く本家の人達ははお婆様の書き記した漫画を信じすぎているのよね。早々漫画の出来事が何度も現実に起こるなんていう事は有り得ないでしょうに」
そう愚痴を吐露したその時だった。
いきなり目の前に黄色い隈取り模様に逆立った橙色と金色の毛並み、獰猛な大虎を彷彿とさせる妖怪の放った雷撃に目を見開き、次々と車を鋭い爪で切り裂き、ふん反り返った妖怪を見上げる。
糸色本家の禁書庫の奥の棚、未来の一部を漫画として書き記した書物に描かれていた金色の妖の飛び去る背中を見上げ、くしゃりと前髪を掻き上げる。
「お婆様の予言、マジで的中していたわね」
一口でコーヒーを飲み干し、ゴミ箱に空き缶を捨てて彼を追うように歩き出す。とら、長飛丸、字伏、色々と呼び方は有るみたいだけど。
私はどう呼んであげようか。
「蛮竜を使うには人混みもあるし」
適当なビルの間に入り、壁を蹴って排気口を踏みつけ、ビルの避雷針を掴んで空を飛んでいるとらの事を見つめようとした瞬間、五匹の空飛ぶ頭が見えた。
ここまで予言と一致していると驚きより感心するわね。お婆様の話って、いつも謎だらけで未来視や日本の兵器や発展に関わっていたなんていう話もある程だ。
誰にも気付かれないように地面に戻り、とらの事を追いかけようとした瞬間、小さな中学生くらいの男の子が私の真横を駆け抜けていった。
「姉ちゃん、そこ退いてくれ!!」
「ちょっと、人混みで走るのは危ないわよ」
「ごめん!急いでるんだ!」
そう言って走り去っていく男の子の担いだ布に包まれた長物と彼の顔を思い出して、ついに蛮竜と同じ武器を見ることが出来るという気持ちになる。
妖刀や霊槍は刀の格付けと同様に
───代々糸色家の受け継いできた戦国時代に億万の妖怪を斬り、大陸に渡って尚も妖怪を斬り続けていた蛮竜もその
「今回は虎翼で我慢しようか」
思わず、弾んだ声を出してしまった自分に驚きながら私は蒼月潮を追いかけるために走り出し、空を飛ぶ額に穴を穿たれた巨大な生首の一つに向かって伸縮式の槍「虎翼」を叩きつけ、蒼月君に絡み付いていた髪の毛を切り落とす。
「ね、走るのは危ないって言ったでしょう?」
「さ、さっきの姉ちゃん?」
「話は後でしてあげる。さっさと助けに行ってあげなさい。コイツは私が相手しておいてあげるわ」
「誰か知らないけど、ありがとう!!」
「どう致しまして♪︎」
お礼を言えるなんて蒼月君は偉いわね。