私が着いてきても良かったのだろうかと思いつつ、中学生の中に放り込まれた現実を忘れるために缶コーヒーを飲み、和気藹々とした少年少女の笑い声を聞く。
最近はボトルタイプの缶コーヒーも販売しているみたいで持ち運びは楽になったけど。プルタブを開けて飲む方が私は好きだと再確認した。
「蒼月、あのお姉さんって結局誰なの?」
「えー、なんて言ったら良いんだろ」
「ハハハ、私は蒼月君の親戚のお姉さんだよ。そんなに私を警戒しなくても
背中合わせの後部座席を覗き込むように助け船を出してあげると蒼月君も同じように頷き、蒼月君のガールフレンド?かもしれない中村麻子が私を警戒するように見つめてきた。
本当に取ったりしないんだけどね。
「うしおちゃんの親戚か!道理でヘンテコなものを持っているわけだな!!ハッハッハッ!」
「蛮竜がヘンテコなもの扱いとはすごいね」
そう言って缶コーヒーのキャップを閉め、コトリと缶コーヒーを窓枠の手すりに置き、電車と並走してスピードを競っているとらを眺める。
流石は炎と雷の化生と謳われる大妖怪。
このスピードにも楽々追い付けるなんて、本家の奴らが良く話していた戦国時代に蛮竜と獣の槍の二振りを相手取った話は実話みたいだね。
私の事を怪しむ視線を受けながら、とらの事を眺めていると「うしおのお姉さんも一緒にトランプしようぜ!」と蒼月君のクラスメート達が話しかけてくれた。
「……フフ、ありがとうね。でも大丈夫だよ」
若者の優しさに嬉しくなるけど。
私の事を警戒して怪しんでいる女の子がいるのに、いきなり近づいて一緒に遊ぼうと歩み寄るのはナンセンスだ。程好い距離を保って、のんびりと距離を縮めていけばそれだけでいい。
「(しかし、海に近づくに連れて変な気配がする)」
妖怪や精霊、神様みたいな気配とは違う。
純粋な悪意や敵意を塗り固めて作ったハリボテのような感じだけど。ハッキリと見るまで、どういう相手なのかも分からない。
「おいこら、女!儂のメシがねえぞ!」
「売店で買ったヤツならあるわよ?」
プンスコと怒っているとらに電車の窓を開け、焼き肉のお弁当を差し出すと「変な臭いだぞこれ。本当に食えるのかよ」と怪しまれた。
食べれば分かるわよ、焼き肉だもの。
「お茶はこれね。捻れば開くから」
「……けっ。食ってやらあ」
最近のとらは物分かりが良くて助かるわね。
蛮竜を使わないから警戒していないのかしら?