「お妙さん!」
「や。久しぶり、蒼月君」
嬉しそうに駆け寄ってきた蒼月君と挨拶を交わし、彼の背中に乗っているとらにも挨拶をすると「けっ。家来の癖に離れんな」と言われてしまった。
そうは言われても仕事があるからね。
「ああ、そうだ。蒼月君、みのるって知ってる?」
「ミノル?お妙さんもミノルの知り合いなのか?」
「知り合い……その知り合いの知り合いかな?」
蒼月君のお父さん曰く「さとり」という妖怪みたいだったけど。あの妖怪の目的もやりたいこともイマイチ掴みきれていない。
件の「みのる」については蒼月君のおかげで知ることは出来るし、先ずは蒼月君の話を聞いてから「さとり」にも話を聞かないといけないわね。
「そう、目の手術を」
「うん。すげえ怖いんだって…」
さとりの目を狙った理由とミノルという少年の事は分かったけれど。何故、そのミノルという少年に執着しているのか。そらが分かれば対策できるけど。
そう思いながら蒼月君の付き添いとして病院内に入り、受付所で病室と面会可能かを聞こうとした瞬間、背後に妖気を感じて振り返ってしまった。
やっぱり、病院に来ていたわね。
人間に化けているけど、彼はさとりだ。
「…お前、ここまで追ってきたのか…」
「今日は話をするだけよ。蒼月君、ミノル君のところに行っていてちょうだい。さとり、手術の事を教えてあげるから着いて来なさい」
「昨日と違う考え方だ…」
「まあね」
病院内を出ると病室の見える場所に移動し、身体に仕込んでいた二十七本の槍を地面に転がし、心の中も見えるように隠し事もしない。
「……話したい、と思っているな」
「えぇ、子供の事なら尚更話しておきたいわ。先ず最初に言うけど、眼球を交換することは出来ないわ。網膜を張り替える実験はあるみたいだけれど。あくまで海外の技術発展を待つ必要がある」
「ウソだ!いや、ウソじゃねえ?ウソだ…」
「ウソじゃない。やり方は間違えたけど、貴方は殺してしまった人の分だけやり直す事も出来るわ。ミノル君の手術の成功を信じて、人間として彼の父親になるために努力することは出来る」
私の心を読めるさとりは言葉を噤み、静かに私を見下ろしていたその時だった。さとりは「じゃあ、おれはどうしたらいい?」と聞いてきた。
「ミノル君に本当の事を話すのよ。さとり、例え貴方が偽物の父親だったとしてもミノル君を心配して幸せを願う気持ちは決して偽物なんかじゃないわ」
「……ウソを吐かないヤツなんて初めてだ…」
「当然よ、私は糸色妙だもの!」
妖怪だからっめウソを吐く理由にはならないわ。