私と蒼月君は病室の外で話を聞いていたけれど。ミノル君はさとりを受け入れてくれた。ものすごく嬉しそうに笑うさとりと蒼月君の二人は本当に楽しそうで、私も嬉しくて楽しくなってきた。
「さとりを退治しにやって来た蒼月君のお父さんには私が伝えておくから。二人とも怪我しないように帰るか手術を見守るなりしておきなさい」
「お妙さん、ありがとう!」
「あ、ありがとよ」
「……ハハハ、どういたしまして」
二人のお礼を伝える言葉に返事を返して、暗い道を歩いていると笠を被った蒼月君のお父さんに出会う。偶然……いや、おそらく私達の動向を見ていたんだろう。
そうでなければ、こんなに早く会えるわけがない。
「糸色殿、どういうおつもりか」
「別にどうもこうもないかな。さとりは間違いを犯したけど、これから償っていけば……償えるように絶対に私は諦めない」
「その考えは危険だ。潮ととら殿も居るとはいえ一度人を襲った妖怪は人を襲いたいという欲求を抑えることが出来なくなってしまう」
「……分かっているわ。甘い考えなのも理解しているけど、そらでも愛を知った妖怪が見たかった夢を見ることは一度くらいあってもいいじゃない」
そう言うと蒼月君のお父さんは「全く糸色殿も潮に似てきてしまって」と呟き、それに乗るように「あら、じゃあ、お父さんって呼んであげましょうか?」と笑みを浮かべて話し掛けた、そのときだった。
微かに誰かの悲鳴が聞こえてきた。
虎翼を引き抜いて私は歩いてきた道を蒼月君のお父さんと一緒に駆け戻っていく最中、さとりが眼球を入れていた袋が地面に落ちており、まさかと嫌な予感を振り払うために地面に続く血を追う。
「とらあっ!さとりのオッサン!」
「ぐっ、けったくそ悪りぃなあ!!」
マンホールを突き破って伸びた触手に身体を貫かれ、夥しい量の血を吐くさとり、触手に四肢を貫かれて動きを封じられたとら、その二人を助けるために戦う蒼月君の姿が見えてしまった。
触手の根本に見える顔に怒りが勝る。
「ならああああああくっ!!!」
「来たか。糸色妙」
「お妙さんッ、さとりがオレを庇って奈落に身体をブッ刺されちまったんだ!とらの火も雷もコイツには効かねえんだ!」
「獣の槍で触手をブッた斬りなさい!」
怒声にも聴こえる声を張り上げ、虎翼を振りかざして触手を切り裂き、さとりの身体を貫く奈落の触手を引きずり出す。
クソ、私の見通しが……!
「…へ、へへへ……おれぁ死なねえぞ…ようやくミノルと一緒に暮らせるんだ……死んで、堪るかよ」
「えぇ、生きたいなら意識は残してなさい。私が戻るまでに死んでたら絶対に許さないわよ!」
さとりの口に手首を斬り、血を流し込み、僅かに回復できるように栄養を与えて、瞬時に止血と縫合を行い、虎翼を掴んで奈落の事を睨み付ける。
「この外道がァ…!」
「くくくっ。やっと怒りを向けてきたな」
人の幸せを奪うヤツは許さない。