「白童子、其処を退きなさいッ」
「儂とて退けるなら退きたい。が、兄の身体を獣の槍で貫かれては困るのでな!」
「ぐっ、おおおおっ!?」
薙刀を獣の槍に絡めるように振るい、蒼月君の身体を殴り飛ばす白童子の冷徹な眼差しに混ざり、屈辱や怒りなど私達ではない誰かに向けた悪感情を感じる。
いや、これは奈落に向けた悪感情だ。
虎翼を仕舞って蛮竜を構えつつ、蒼月君ととらに視線を向ける。二人とも不意打ちで攻撃を受けた分、ダメージも大きく苦しげに呼吸を繰り返している。
それなら、わざと煽って注意を得る…!
「白童子、この前の続きしましょうか」
「……ホウ。奈落ではなく儂か」
私の意図に気がついた白童子も煽るように奈落の名前を呼び、私の蛮竜と薙刀を叩き合わせ、お互いの身体のギリギリをなぞるように穂先を振るう。
「風の傷っ!!」
「弾き返せ…!」
私の放った風の傷を薙刀を回転させることで妖気の渦に絡めとり、蛮竜の妖気が白童子の青紫色の妖気に呑まれ、私に向かって逆流してきた。
それならカウンターにはカウンターで返す!
「爆流破っ!!」
三つの妖気が絡み合って更に巨大な竜巻を作り出しながら荒々しく白童子の身体を貫き掛けた刹那、奈落の触手によって白童子は砕ける事はなかったけれど。
「貴様、まだ意識が残っているのかッ!」
「兄は儂らの中で一番頑固だからな。奈落、お前も知っているだろう、産み落とし、心の臓を握り潰そうと歩み続け、貴様を追い詰めていた儂らの偉大な長男を」
「……下らん。儂の切り捨てた肉体から生まれただけのコイツにあるのはお前達を守るべき対象と見定める人間のような気色の悪い感情だけだ」
「家族を守ることの何がいけないのよ。奈落、貴方は自分の矛盾に気付いてすらいないのね。妖怪のさとりも人の父親になりたいと願った。───その願いを踏みにじっておいて、私に母親になれだあ?ふざけんじゃないわよ!!」
白童子の話を聞けば聞くほど奈落の矛盾に気付く。
コイツは自分のために用意周到に準備している癖に、自分と似た願いを想った妖怪や人間を攻撃している。すべてが薄っぺらな上部だけのみせかけだ。
「『母親になれ』っていう言葉もどうせ白童子かもっと他の誰かの記憶や意志を通して、自分が想ったことだと勘違いしているのよ」
「……くくっ。確かに、奈落の目的が変わったのは神無が一人の人間の女と暮らしてからだ。儂は元は貴様の心臓、これまでの記憶は残っている」
そう言うと白童子は奈落を嘲笑うように見下し、全てが偽りだらけの奈落を見据えていた。