「ぷふぅ~~~っ、久しぶりに喰ったぜぇ」
「とらがまたブタになったな」
ポンポンと真ん丸と大きく膨れ上がったお腹を叩いて、屋根の上に寝転んでいるとらに辛辣な言葉を向けつつ、蒼月君も彼に負けないくらいお腹が膨らんでいる。
全くとらに対抗心を燃やして無茶するからだよ。
それにしても満漢全席って本当に無くなるものなのね。やっぱり蒼月君が育ち盛りなのもあるのかしら?とらの食欲もそうだけど。
とらは食べる度にエネルギーを蓄えて、妖気をチャージしているようにも感じる。まあ、五百年も飲まず喰わずで封印されていれば、そうなるのも仕方ないわね。
「お妙さんはこの後どうするの?」
「私?私は何も無ければまたお見合いを組まされたから、ちょっとだけ本家に戻ることになるかもね。爺やとしても私の晴れ姿は見たいだろうし」
「私は妙様の幸せを願っておりますので無理に恋愛をする必要はございません。奥様も類お嬢様も一目惚れが結婚の要因でございますので」
「私は惚れっぽくないもんね……」
そう言うと蒼月君が目を見開いて、私の事を見上げてきたけど。本当に何もないわよ?と言えば「お妙さん、もしかして鈍いの?」と言われた。
失礼ね、勘は鋭いわよ。
「流兄ちゃんや悟兄ちゃん、あと強羅は?」
「あれは婚約者候補でしょう。恋人じゃないわ」
「でも流兄ちゃんとチューしたんだろ?」
「んッ!?な、なんで知ってるのかなぁ?」
思わず、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになりながらも何とか我慢して蒼月君にそう問いかけると「流兄ちゃんが二人に自慢してたし」と教えてくれた。
絶対にぶん殴る。私の事、なんだと思っているのよ。まだ手も繋いでないし、デートもしていないのに、いきなりキスなんてしたら勘違いされるじゃない。
……まあ、私からもしたわけだけど。
「蒼月君、内緒にしてくれる?」
私は自分の口許を隠すように両手を合わせ、少し恥ずかしさで熱くなった顔で彼の事を見上げた瞬間、とらの牙が蒼月君の事を狙っていた。
「(私の葛藤していた意味は?)」
「妙様、節度ある交際を」
「……まだ付き合ってないもん。いきなり押し倒されてキスされただけで、私は好きなんて言われてないからまだセーフだよね」
「お目付け役として言えるのは、いきなり押し倒す等する下衆な男にトキメキを感じる妙様はやはり奥様の娘なのですね。もっとも奥様は強かに攻めて旦那様を捕まえていましたが」
そういう親の恋愛話は聞きたくない。
聞いたら多分私もやってみよとするから。