「や、明けましておめでとう。井上のお嬢さん」
「お妙さん!明けましておめでとう!!」
「お年玉もどうぞ」
「わーい!」
蒼月君と打って代わって嬉しそうにお年玉を受け取ってくれた井上のお嬢さんの隣に立っている中村のお嬢さんにも「明けましておめでとう。お年玉もどうぞ」と手渡したらビックリされてしまった。
まあ、あまり話さなかったものね。
「ハハハ、すごいビックリした顔になってるわね」
「あ、あはは…」
「麻子ったら『うしおが盗られるかも』なんて不安になってたのよ!お妙さんはお婆ちゃんの知り合いとお見合いしたから心配していないのにねぇ?」
「ちょ、ちょっと真由子!?」
「あらあら、可愛いわねえ~♪︎」
くしゃりと中村のお嬢さんの頭を優しく撫でてあげる。
少し恥ずかしそうにしながらも頭を撫でる手を受け入れてくれた彼女の優しさにまた「フフ、可愛いなあ」と思わず、心の中で思ったことを呟く。
やっぱり若くて初々しいわね。しかし、井上のお嬢さんは何でお見合いの事を知って……いや、多分、しとりお婆様か御角お婆様が話してしまったのかな。
「ところで、お見合いって」
「井上のお嬢さん、大人の恋は面倒臭いものよ」
「つまりもう結婚!」
「…………中村のお嬢さん、いつもこうなの?」
「ま、まあ、大体はこうかな?」
確かに私の結婚を望む人は多いけど。
まさか年下の女の子にまで期待を向けられるとちょっとだけ困ってしまう。向こうに提示した条件に三人はまだ見合っていないのだ。
流君も杜綱悟も強羅もみんな強いけど。
私を倒せる程じゃないしね。
「お妙さん……だっけ?」
「うん。昔から遊んでくれてるの」
「あれって男物のジャンパーよね?」
「……まさか、そういう?」
「有り得そうよね」
ないからね?と言いたい気持ちはあるものの、確かに今も着ているジャンパーは流君の私物で、あの夜から借りたままになっている。
「コイバナ、しよ?」
「うっ……わ、分かったわよ」
「やったー!」
「お妙さんって真由子に弱いの?」
「多分、子供全般にお願いされたら断れないかも」
私の事を心配してくれる中村のお嬢さんにそう言いながらも奈落が子供に化けていても蹴るか殴る自信はしっかりと残っている。
それに白童子は愛馬を取り戻すために、また総本山に忍び込む可能性も有り得るし。なにより私が一番気になっているのは、奈落に「母親を求める感情」を与えた妖怪だ。その妖怪はきっと糸色に深く関わっている。
なんとなくだけど。
そんな気がする。