「そこの黒髪のお姉さん、話を聞いてんええやろうか」
蒼月君にお外堂さんの事を伝えておこうと学校の校門脇の花壇に座って待っていたとき、綺麗に焼けた褐色肌の女の子が話しかけてきた。
しかし、妖気を纏っている。式神か妖怪を使役するタイプの祓い屋と考えるべきか。それとも奈落か白面の者の寄越した相手なのかも候補に入れておこうかな。
「良いわよ。何かな?」
「蒼月と一緒におるところを見たんやけど。お前もはぐれ外堂を飼うちょるヤツか?」
「へえ、こっち方面に詳しい子も通ってるんだ。でも君の言っている『はぐれ外堂』は知らないけど、従姉妹がお外堂さんっていうのに襲われたわ」
「何処におる!その従姉妹はいるんや!」
「先ず最初に言っておくけど。私の従姉妹と蒼月君達に手を出したら殴るわよ。二つ、妖怪退治をするなら怒りを静めず、手足に力を込めて立ちなさい」
そう言いながら彼女の後を追っていた蜂の妖怪をジャンパーに隠していた鎌槍で切り裂き、直ぐに袖の中に槍を仕舞って缶コーヒーのプルタブを開ける。
最猛勝。
奈落の目となり耳となる蜂の妖怪に気づいていなかったから、おそらく私を捕らえるために彼女を利用しようと考えているんでしょうね。
本当に気持ち悪いヤツね。
「改めて。糸色妙よ、お妙さんって呼んでね」
「いとしきって、あの糸色か?!百年前から妖怪退治もやり始めた霊能大家でありながら政界や医界、果てには交易や家電まで何でもしちょる化け物んごと賢い家!!」
「ば、ばけもんって酷い言いぐさね。まあ、確かに私も陶器で有名だけど。それより貴女も辛いならお妙さんに話してみなさい」
そう言うと彼女は僅かに狼狽えたものの、実力差を理解してくれたのか。私の言葉に頷いて、ゆっくりと私の後ろをついてくる。
聞き分けは良いし、良い子なのは間違いない。
奈落が利用しようとするくらい霊気も高いと考えれば、それにお外堂さんが関わっているのも事実だろうし。この子も一緒に動いてくれると助かるか。
「そう言えば君の名前は?」
「あ、あー、設楽水乃緒や、です」
「……フフ、タメ口で良いわよ」
「なら、うす」
やっぱりまだ警戒したように視線を逸らすシダラ、多分、設楽でいいのかな?と思いながら彼女を連れて喫茶店に入り、コーヒーを二つ注文する。
「何か他に欲しいものはある?」
「あ、いや、大丈夫や」
「そう?」
ゆっくりと頷く設楽さんの言う通りにして、メニュー表を閉じてコーヒーを待つ間に話したいことや聞きたいことを応えてあげる。