「お外堂さん、分類的には犬神とかなのね」
喫茶店の肉厚なハンバーグを美味しそうに食べるお外堂さんに困惑する設楽さん、名前は水乃緒を書くと教えて貰った。素敵な名前だと思うよ。
「あたしのお外堂さんがハンバーグごときで骨抜きのおらんのごとなってしもうた」
「あら、ハンバーグ嫌い?」
「あ、いや、あたしは肉なら何でも好いちょる」
「フフ、じゃあもっと食べなさいな」
とらも蒼月君も美味しそうにご飯を食べるから、こうして誰かと食事をするのが楽しくて仕方ない。まあ、お外堂さんの事もあるから悠長に出来ないけれど。
───はぐれ外堂。
設楽水乃緒の一族が総出で探し歩いているお外堂さんの放たれた存在であり、彼女はその確保あるいは討伐のために香川からやって来た。
その目星として蒼月君ととらを狙ったものの、とらは二千年を生きる大妖怪。しかも五百年前に封印されていたと知り、かなり恥ずかしがっている。
年相応の反応はやっぱり可愛いわね。
「ああ、そうだ。これを渡したかったのよ」
私はジャンパーの内側に仕舞っていたものを彼女に差し出す。類に頼まれていたものと言うべきか、動物の妖怪を使役するものには必要なものらしい。
「なんか?これ」
「類、私の従姉妹の作った七つ道具よ。元々は糸色景の考案して設計図だけ残していた物を彼女が勝手に作ったのよ。まあ、好きに使っていいわよ」
そう言って私は霊撃輪具とイタコ笛を差し出す。指輪の方は私と類の霊気を込めているから十発は最大火力で撃つことは出来るけど。
飛び道具って苦手なのよね。
「あと私からもあげるわね」
「数珠?」
「言霊の念珠。キーワードを決めて相手の首に掛けると相手の動きを止める事が出来る道具だけど。ウチの分家にそれを使っていた変態もいるわ」
「変態」
「自分の奥さんに念珠を自分に掛けて貰うとかね」
「ひ、ひえぇ…!」
私の言葉に恐れ戦く設楽さん。
すごく分かるわ、私も聞いたときはビックリしたもの、まさか当主になった自分を支配して貰おうなんて考える変態さんが居るなんて想像もしていなかった。
お母様とお父様もああだったのかと考えると恐ろしく感じるけど。趣味嗜好は人其々なわけだから、私がとやかく言える立場にはいない。
「(まあ、蒼月君ととらの誤解は解けただろうけど。問題は奈落の存在だ、最猛勝を使って監視していたということは彼女を使い、はぐれ外堂を取り込もうとしている可能性も捨てきれない)」
本当に面倒臭い男だわ、あの妖怪。