はぐれ外堂の確保を終えた設楽さんは帰ってしまい、蒼月君も寂しそうにしていたとき、異様な気配を感じて虎翼を構える。が、現れたのは遠野で私と少しだけ戦った蛇の妖怪の一鬼だった。
しかし、私と戦ったときよりも酷い傷を負い、紫色の血を畳に落とし、苦しげに私を見下ろす彼の事を支えるように抱き締める。
「ちょっと大丈夫!?」
「しとりの曾孫、助勢を頼みたい…!」
「オーライ。受けるわよ、一鬼」
私に頭を下げようとする彼の肩をコツンと手の甲で叩き、彼に笑顔を向ける。しとりお婆様の大切な友達であり、かつて開かれた「妖逆門」というゲームに於いて、彼はしとりお婆様と一緒に戦ってくれた。
時折、蛮竜がその頃の光景を夢で見せてくれる。
その中でもしとりお婆様を一番助けてくれたのは彼ともう一人の妖怪だ。黒いモヤが掛かっていて、まだハッキリと見ることは出来ないけれど。
どこか見覚えのある姿だった気がする。
「感謝する。背に乗れ」
「うん」
「落ちるなよ!!」
とらとは違う。
まるで爬虫類の様なひんやりとした一鬼の背中に身体を預け、窓を破壊して飛び立つ彼と私を追いかけるように飛来してきた蛮竜を握りしめる。
私を乗せて飛行する一鬼の豪速は凄まじく、まだ助勢の理由も聞いていないけど。それほどまでに彼が焦っているということだ。
「お妙さん、と一鬼っ?!」
「儂の家来を勝手に連れ出してんじゃねえよ!」
「来てくれたのですね!」
「お久し振りです、糸色殿」
一鬼の豪速に追い付いてきたとらと蒼月君、それから鎌鼬の三兄妹の姿に混ざって飛ぶカラス天狗の姿に一瞬だけ目を見開く。
本当にカラス天狗っているのね。
「チッ。ここにも待ち伏せか、長飛丸!テメェの愚鈍な足でもカラス天狗にゃ追い付けるだろ!さっさと九州まで飛んでいけ!!」
「蒼月君、とら、そういうことだから宜しくね!」
私の両足に蛇を絡ませて固定してくれた一鬼の背中に乗り、此方に向かって飛来する妖怪の群れに蛮竜を突きつけ、ニヤリと笑みを浮かべる。
「遠野妖群頭、一鬼!テメェ等に構ってやる時間も暇もねえ死にたいヤツだけ、俺に掛かって来い!纏めて喰い潰してやらあっ!!」
「わお、カッコいいじゃん♪︎」
一鬼の名乗りに笑いながら蛮竜を担ぎ、構える。
「雷撃よ!!」
私の声と共に蛮竜は青白い雷撃を拡散し、妖怪の身体を貫いていく最中、巨大な棍を取り出した一鬼が動きを止めた妖怪を殴り砕く。
───刹那、雷撃が切り裂かれた。
「貴様、狼風情がぁっ!!」
「ヘッ。妖狼族を嘗めんじゃねえよ、ヘビスケ!!」
妖狼族?
それって確か本家の蔵書にも載っていたはずだ。