「お前に惚れた!オレの女になれ!」
「お断りする!!」
「しとりの曾孫をテメェなんぞにやるか!!」
私に手を伸ばす妖狼族の青年の顔面に回し蹴りを叩き込み、手槍を振り伸ばして弾き飛ばす。其処へ追撃するように一鬼の棍が彼の胴を殴りつぶす。
これで追ってくることはない。そう安堵しながら一鬼の背に乗ったまま蒼月君達を追いかける。あんな変態に関わっている暇は私にはない。
何より婚約者候補は既に三人もいるのに四人になったら怖いことになりそうだからイヤだ。それに只でさえ男の人に迫られるのが苦手だと分かったのに、妖怪まで加わったらこの上無く恐ろしいことになる気がする。
「しとりの曾孫も大変だな。長飛丸の野郎、傍に居た癖に手助けもしてやらねえのか?」
「とらは蒼月君とだからね」
そう言いながら一鬼の肩に手を置き、空に聳える巨大な山にも城にも館にも見える建造物に向かっていた刹那、私の腕から蛮竜が弾き飛ばされた。
「がはッ?!」
「ぐおおおおおおっ!?」
真下から私の首に巻き付く蛇と一鬼の身体に齧りつきながら血を啜る蛇が現れ、私達は力任せに分断される。どうして、こんなに大きな蛇が見えなかった!?違う、コイツには気配がなかったッ…!
「東の妖怪は人に助勢を頼むのかあ?」
「テメェは西の妖蛇ッ…!!」
「い゛ッ、痛いわねぇ!」
虎翼を引き伸ばして私の首を締め上げる蛇を切り裂き、一鬼に飛び付き、彼の身体に絡み付き、血を啜る蛇も同じように切り飛ばす。
「助かったぞ、しとりの曾孫」
「どういたしまして、一鬼」
「おのれ、人間風情がッ」
「あら?その人間風情に不意打ちを仕掛けて、バカみたいに勝ったつもりになっていたのは誰かしら。改めて言って上げるわ、この糸色妙に勝てると思うなら真っ向勝負を仕掛けて来なさい!」
「ヘッ。流石は曾孫、オレも乗らせてもらう!」
虎翼の矛先を突きつけ、ニヤリと笑みを向ける。
「それによぉ……人間の強さも妖逆門も知らねえ雑魚がしとりの曾孫に粋がるんじゃねえ!テメェ、オレにブッ殺されてえのか小蛇がァッ!!!」
グパァッ…!
私としとりお婆様のために怒ってくれた一鬼の顔が山のように大きく膨れ上がり、悲鳴を上げて背を向けた西の妖怪を丸呑みにしてしまった。
「けっ。喰えたもんじゃねえな…百年前に一緒に喰った羊羮や金平糖のほうが、ずっと、ずうっと美味くてハラん中がいっぱいになったのによぉ……」
「フフ、それなら今度一緒に食べましょう。しとりお婆様もきっと貴方に会えるのを楽しみにしているもの。だから、約束して、また遊びに来るって」
「また遊びに来る、か……良いなあ…そりゃあ…」
私の提案に一鬼は笑ってくれた。