呑み込まれた先には全員が集まっていた。
よく見れば鎌鼬の三兄弟ととらは拘束されておらず、最後の最後で私に不意打ちを仕掛けてきた神野も正座して静かに上座に座っている。
「お妙さん…!」
「蒼月君、大丈夫なのそれ?」
身体の半分が何かに取り込まれている蒼月君に思わず、そう問い掛けると「痛くないけど、動けないんだ」と言われ、私も同じように手足の半分が呑み込まれていることに気付き、どうしたものかと考える。
シャツがずれてお臍が見えてるし。
「糸色様、今お助けを!」
「かがりさん、ありが……シャツを直すだけなのね」
格子越しに私のシャツを直してくれたかがりさんにお礼を言いつつ、蛮竜を手放して地面に突き刺す。背部の虎翼か別の槍を使えれば良いんだけど。
……いや、一つだけ手段があったわね。
「んッ…よっ、と!…」
腰と胸を上手く動かし、ジャンパーの金具を噛み千切って霊気を込めると同時に蛮竜に吹いて、私の身体を縛り付ける結界を破壊する。
「フゥ!」
木の格子を二重の極みで粉砕し、広間のような場所に出る。とらや鎌鼬の三兄弟は私のやったことに驚き、遠野で出会った鼻の長いおじいちゃんは感心していた。
「ホウ。破魔の矢を使えるのか」
「矢というよりチャックだけどね」
流君のジャンパーだから直して貰わないといけない。そう私は少しだけ悩みながら蒼月君の事を引っ張り出そうとしたその時、雷撃を纏った鉤爪が目の前をすり抜け、私のシャツを切り裂いた。
「二度もオレを落としやがって、絶対に巣穴に連れ帰ってやるよ。糸色妙…!」
「し、しつこい男ねえ…!」
妖狼族の青年の宣言に舌打ちをしながら、私を見ながら顔を真っ赤にする蒼月君に気付き、慌てて胸元を隠すために二人に背中を向ける。
どうしたものかと視線を動かし、真っ先に近くにいた蒼月君達と一緒にいた白いカラス天狗とは違う。おそらく西の妖怪の黒い天狗に話し掛ける。
「そこの黒い天狗さん、何か着るものある?」
「わ、わしかいな!?あ、あー、お前ら何か持ってきてくれ」
困ったように右往左往して天井に話し掛けた瞬間、紅白の着物が落とされた。巫女装束、ちょっと古いけど。何もないよりマシと思おう。
「糸色様、私が壁になります。そこの卑劣な狼は後ろを向け!」
「ありがとう。見たら本気で滅するわよ」
素早く着替えて赤い鉢巻きで髪を結う。
その間に動ける雷信君と十郎君、とらの三人にタコ殴りにされている妖狼族の青年を無視して、私はゆっくりと黒い天狗を見上げながら「ありがとう。助かったわ」と感謝の言葉を伝える。
「……巫女装束って苦手なのよね」
そう文句を言いながらジャンパーを着込み、スニーカーを履き直し、かがりさんにお礼を告げる。しかし、問題はこれからどうなるのかが分からないことね。
移動する手段も脱出する手段もない。
「全く糸色は面倒事に事欠かぬな。往け」
その言葉が聴こえると同時に私達は外にいた。
「あんにゃろう、突然すぎるぞおっ!!」
「お妙さん、手を伸ばして!」
「えっ、きゃあっ!?」
私の身体を抱き寄せた蒼月君にお姫様抱っこされ、思いっきり真上に向かって放り投げられ、一鬼に身体を受け止めて貰ったけど。
「長、何処へ!」
「白面のもとへと向かう、着いて参れ!」
…………遂に、白面の者の本体に会える。