ゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆるすまいゆすまいゆすまい……ッ!!!
ギチギチと嫌な音を立てて暴れる獣の槍に我に返り、慌てて蒼月君の手を握りしめるが、鋭利に伸びた牙と爪は海水を切り裂き、妖気を吸って伸びた毛はしなるように海水を打って蒼月君を白面の者に放つ。
「蒼月君、まだ行っちゃダメだったら!」
「バカ女がッ、結界が間に合わんだろが!!」
私の身体を掴んで押さえつけるとらを睨むも、蒼月君───いや、獣の槍はあの時と同じように彼の身体を使って白面の者に向かい、鈍い銀閃が螺旋を描いて走る。
八寸、高速の回転と突進による一撃必殺の技。
それをいとも容易く行われ、目を見開く。
「私の、技を…!?」
「ったく。仕方ねえなあ、儂も行ってやらあ!」
とらのその言葉に驚くも彼なら蒼月君を止められる。
「任せるわよ、とら」
「けっ。アホのうしおも家来みたいに素直だったら万倍は優しく喰ってやるのによぉ!!」
「東も西も下がりなさい!今は英断の退却、次に備えて各々の準備を始めて!!」
そう宣言すると同時に白面の者の尾は海水を薙ぎ、巨大な渦と激流を作り出す。しかも、軽く尻尾を振るってこの広範囲に及ぶ攻撃───受ければ死ぬと直感し、蛮竜の結界に私の霊気の結界を重ね、イズナ君を守る。
刹那、私に──いや、イズナ君に向かって婢妖の群れが放たれ、蛮竜の結界を押し潰すがごとく四方八方に群がって……目が気持ち悪い!!
「雷撃よ!!」
青白い雷撃を放つも海水によって放電する範囲が狭まり、雷撃の浸透よりも婢妖の攻める数に圧倒され始める。このままだと不味いことになりそうだけど。
「どうするんだよ、お妙っ?!」
「手段はあるけど。この距離だと不安なのよね」
そう呟きながら蛮竜の刀身を黒く漆く闇夜の空のように染め上げ、未完成・不完全の冥道残月破を振るうためにイズナ君を着物の中に仕舞う。
「冥道残月破あっ!!!」
蛮竜を振りかぶり、振り下ろすと同時に冥道を切り裂く。が、しかし、全ての婢妖を呑み込めるほど大きな冥道は開けず、三日月にすら程遠い不完全な月の残り傷を海水の中に作り出す。
「……吸われてるけど、海水ごとね」
多分、プランクトンも死んでるわね。
「おのれ、御方様の御好意を裏切るか!」
「お妙、次が来てるぞ!」
「何発だって撃ってあげるわよッ!!」
三日月にもなれない冥道残月破を繰り出す度、イビツに歪み、不安定な状態の月は海水に刻まれ、魚群のごとく迫り来る婢妖を吸い込み、冥道に引きずり込む。