白面の者と対峙してから三日後。
私は蛮竜を含めた槍の研磨と手入れを糸色本家と懇意にしている妖怪の刀鍛冶に頼み、蛮竜以外で最も手に馴染んだ虎翼をジャンパーに隠して、みかど市のハンバーガーショップ「ウマカバーガー」のコーヒーを飲む。
蒼月君と井上のお嬢さんのオススメするだけあって、かなり美味しいコーヒーだけど。とらは私に化けた姿で山のように積まれたハンバーガーを頬張っている。
「んぐっ。ぷはあーっ、はんばぁーがぁーも美味いが向こうの肉も美味かったぜ。もっと喰いてえなァ…家来、喰って良いか?」
「良いけど、食べるのは適度の適量よ?井上のお嬢さんに『とらがブタちゃんになった!』なんて彼女にはもう言われたくないでしょう」
「だから妖怪の儂は太らねえよ!?」
そう言ってハンバーガーの包みを向いて、一口でハンバーガーを頬張るとらに私の風評被害になるのでは?と考えるもいない時にされるよりマシと思う事にした。
「お前、こんなところで何してるんだ」
「あら、強羅じゃない。久しぶりね」
「嗚呼、久しぶりだが何で分身してるんだよ」
「分身じゃなくて、とらよ」
「ま、儂の変化は神業だからな」
法衣を着た男がハンバーガーショップにいるという謎の光景に集まっていた視線は更に集まり、コーヒーを飲みながら彼の事を見上げる。
流君や杜綱悟のように無理やり迫ってくる様子もない。私が警戒するだけ無駄なのかもしれないかな?と自問自答の末に答えに行き着く。
「凶のおじ様は?」
「おじさま?……ああ、オジキは別件だ。まあ、俺が呼ばれたのはお前に関しての事だ。糸色、流や悟に攻められたって聞いたぞ」
「コフッ?!い、いきなりなによ?」
コーヒーを吹きそうになるのを堪えて、私の隣に座ってきた強羅の事を見る。三人とも筋肉質だけど、凶羅といつも一緒に行動している分、二人より強羅のほうが随分とガッシリとした筋肉質に見える。
「おい、あんまり迫ってやんな。儂の家来はテメェと違って色恋沙汰に疎いんだ」
「……マジか。彼氏の一人か二人はいると」
「二股なんてしないわよっ。失礼ね」
とらと強羅の二人の言葉に文句を言いたいけれど。あまり言い返せる言葉が見当たらず、私は不貞腐れたようにコーヒーを飲みつつ、シェイクとハンバーガーを注文しに行く強羅に視線を移す。
そもそも当主としての仕事の多忙さと鍛練に費やしていたから、高校も大学もそんなにトキメキを感じる体験なんてしていないわよ。
私には時間が無かっただけだし……!