われは、くだけぬ……!
ゾワリと溢れ出した嫌な気配の先、蒼月君ととらがバルちゃんという青色の大男だった子供を助け出して直ぐの事だった。白面の者の欠片を使って生み出された妖怪に、ごく僅かだが自我が芽生え始めた。
壊れた身体を無理やり形成し、身体を組み換えて作り直す妖怪の生命力の強さにビックリしながら動けない身体を引きずるように起こし、霊気も何も込められていない普通の手槍を構える。
「フフ、ハハハ、本当に妖怪は何でもありね!」
「馬鹿野郎、あんなもん出来るか!?しっかし、なんだこの臭せぇ臭いはよぉ?」
「臭い?いかんッ、RGガスが漏れている!総員速やかに怪我人を連れて施設を退却しろ!ヘレナ、マルコ、お前達も避難準備を!」
彼の言葉で有害なガスなのは理解したけど。
私の足じゃ逃げられないわね、それに自我が芽生え始めたあの妖怪を押さえ付けるには最大火力の一撃を与えないと本当に意味がないわね。
「ごちゃごちゃうるせぇーっ!!ようはソイツをブッ殺しゃいいんだろうが!!」
何を言っているのか分からないとらは再生を始める妖怪と壮絶な殴打の応酬を繰り返し、足を止めて力比べをするように殴り合いを再開している。
「ちょっと待てよ!?あんなのを残して、アンタら逃げる気なのか!」
「アオツキ、君達も逃げることだ」
「……最悪の状況だけど。貴方達の作ったそのキルリアン振動機を最大出力で叩き込めばアイツを押さえ付けることは出来るんじゃないの?」
「Miss.糸色、そう言うが有毒なTGガスが蔓延してしまえば君も危ういのだぞ!況してや、ソドムの塩化ガスを受けて焼けた両足で逃げることは出来るのか!」
ようやく感情的に怒鳴ってきた金髪の男に笑い、手槍を杖代わりに立ち上がる。立つのも呼吸するのもやっとの本当にギリギリすぎる身体だ。
自分でも笑えるぐらいに弱っている。
「嘗めるんじゃないわよ、私は糸色妙だ!!」
ギチギチと嫌な音を立てている両足に力を込めて、男の胸ぐらを掴んで宣言する。この名前を先代から受け継ぐときに誓った矜持が高々生まれたばかりの白面の者の欠片ごときに破れるものか!!
「キルリアン振動機の使い方を教えなさい!」
「……はあ、お馬鹿ね。そっちの女の子もついてらっしゃい、それに幾ら賢くても本体を見ずに聞いたって意味はないわ。マルコ、ニコラス、貴方達は外部でバックアップをしてちょうだい」
「は、はい!」
そう言ってくれたヘレナと呼ばれたおばさんに両足を引きずるように歩きながら、別室で私を観察していた場所まで上がる途中、何か叫んでいる二人の科学者に「おばさんなら絶対に助けるわよ、任せときなさい」と告げる。