施設内に存在する全てのキルリアン振動機をこの実験室に砲身を向け、あの妖怪に向かって一斉掃射し、動きを完全に止めている間に爆破するという流石は映画大国のアメリカだと思わず、私はヘレナおばさんの言葉に感心してしまった。
「Miss.糸色、辛いでしょうけど。貴女に防衛を任せるわよ、私とそこの彼女には妖怪の攻撃を防御する方法は一つもない。貴女はガスの侵入を防ぐためにドアの隙間に出来る限りのモノを詰めなさい」
「はい!」
「オーライ。任せときなさい」
両手を組むように重ねてお祈りをするように意識を集中し、蛮竜には及ばないながらも妖怪の攻撃を防ぎ、守るには十分な結界を張る。
実験室の中では蒼月君ととら、バルちゃんと呼ばれた青色の大男が白面の者の欠片を使って生み出された妖怪と戦っている。圧倒的に強いとらでさえも攻めきれず、攻撃を受けることが増えてきた。
三人を相手にしながら石礫を結界に撃ち込んでくる妖怪の知性の高まりに舌打ちをしそうになりつつ、結界の外側に更に分厚く結界を展開し、二重の障壁となるように霊気を振り絞る。
「蒼月君、かなり消耗しているわね」
「潮ッ…!」
「落ち着きなさい。マルコ、ニコラス、そちらの準備は終わっているわね」
『ああ、終わっている。だが、施設を丸ごと爆破する量のプラスチック爆弾だ、今すぐ逃げなければ』
ブツリとパソコンの電源が切られた。
「全くデータ収集を優先するように伝えたのに」
ヘレナのおばさんはそう文句を言いつつ、カチッとボタンを押し込んだ、その時だった。
白面の者の欠片を使って生み出された妖怪の身体が捻れるように歪み、蒼月君達の最後の攻撃が妖怪の身体を粉々に粉砕し、今度こそ倒すことに成功した。
「はあ、疲れたわ……」
ゆっくりと結界を解き、壊れた窓から部屋の中に入ってきた蒼月君達と中村のお嬢さんのやり取りを眺めるものの、この足じゃどのみち走ることは出来ないわね。
類も東京にいるとは言っていたし、怪我を治して貰えるように連絡しておかないといけない。あー、絶対に小言や嫌みを言われる。
「おい。さっさと出るぞ、ここは窮屈だぜ」
「……ハハハ、大将さんらしいね」
蒼月君達を担ぐとらの首に抱きつき、ドタドタと全員を乗せている分、いつもより遅い足で駆け抜けるとらにクスクスと笑ってしまう。
「とらッ、だから食い過ぎだって言ったろ!?」
「オメェらが重たいんだよ!!」
「こんなときにまた喧嘩しないの!」
二人の事を怒れる中村のお嬢さんは流石だ。
それにしても、やっぱり二人はかっこいいね。