業火と雷鳴の舞う境内の端に流君達を見つけ、もう追い付いてきたのかと感心しながらも流石に手出しする事は無いけれど。三人とも字伏を警戒している。
いや、そうせざるを得ないのだろう。
私も蛮竜と北落師門に手を伸ばせば瞬時に黒い妖怪はおじさんではなく私に標的を変える。とらにも劣らない圧倒的な強さを持つ妖怪だからこそ、この鉾と槍の脅威を理解しているんでしょうけど。
「かかか。どうしたァ!動きが鈍いぞ!」
「十五雷正法『九爪』ッ!!」
「効かねえって言ってんだろうが!」
霊刀を引き伸ばしておじさんを切り裂こうと駆け出した刹那、女の人の悲鳴にも泣き声にも聴こえる身体の芯に響く雄叫びに黒い妖怪は動きを止め、忌々しそうに大きく舌打ちをした。
「チッ。もう時間かよ。おめえらは本気で白面の者とやり合いてえみたいだが、この紅煉の分身を相手にしてもまだ言えるかぁ!?」
そう言うと赤黒い雷撃は夜空を切り裂き、夥しい数の黒い妖怪に埋め尽くされていた。百どころか千、ひょっとしたら万に到達する軍勢が其処にいる。
随分と数を集めているけど。
そんなに獣の槍が怖いのかしらね。
「それとおめえもだぜ、女ァ…!俺にけったくそ悪いもんをぶつけやがって、手足を千切って腸を生きたまま喰ってやるからなァ!!」
「ハハハ、それら無理じゃないかな。だって、貴方はおじさんに負けるんだから白面と戦う私達のところには絶対に現れないでしょう?」
私の言葉に嘲る笑みを消し、睨み付ける黒い妖怪に微笑みを向ける。私の言葉にムキになるってことはおじさんの事を脅威と感じている証拠だって彼は気付いているのかな。まあ、気付いていないわよね。
なんだか、すごくバカそうだし。
飛び去っていく黒い妖怪達を見据えつつ、傷だらけの三人に気付いた蒼月君が「まさか、さっきの奴らと戦っていたのか!」と叫んだ瞬間、三人が私の事を見つめ、サッと顔を逸らすと呆れたように溜め息を吐くおじさんが私の事を見下ろしていた。
「っと。おじさん、傷の手当てしようか?……えと、流君達もするよね?」
「「「当たり前だろ」」」
「あ、あはは、当たりが強いなあ……ごめんね?」
蒼月君におじさんを任せて、流君達を支えようとする私の代わりにとらが杜綱悟と強羅を担ぎ上げ、二人は不服そうに私を見つめているけど。
それは、とらに言ってほしいかな。
「お前に負けたのも案外役得かもな」
「それ、褒めてるの?」
「さあねぇ……だが、面白いものは見れそうだ」
一瞬、流君の目がほの暗い目に変わった気がする。