東西の妖怪も蒼月君ととらの事を覚えておらず、雷信君達も私の事は覚えていても蒼月君ととらの事は完全に忘れてしまい、調査に向かってくれた各方面の協力者に感謝の気持ちを伝える。
ただ、伝えられた情報の獣の槍を新しく作り直すという意味に首を傾げる。私は獣の槍の生誕を知らないから何とも言えないが、そう簡単に獣の槍は造れるものではないはずだ。
それを今度は妖怪達が作ろうとしている。
「二人は知っているの?」
「獣の槍は人を贄に捧げて、生まれた武器なんだ。ジエメイさんもギリョウさんもこの槍の中でずっと白面の者に囚われ続けている」
その言葉の意味を理解できる程、私は獣の槍に詳しい訳でもなければ獣の槍を使える人間でもない。ただ、リィン……!と刃を鳴らす獣の槍は酷く悲しげに見えた。
「で、とらはいつまで食べているのかしら」
「仕方ねえだろ。家来共がお供え物だって儂にうまいもんを献上してやがるんだ。喰ってやらねえと勿体ねえじゃねえかよ」
「確かに、それもそうね」
「だからって魚の頭まで齧るなよ」
蒼月君がそう言うと「馬鹿野郎、人間も魚も頭が一番うめえんだよ。脳は知識も蓄えるから好んで喰らうヤツもいるぐらいだ」ととらは言い返した。
本当にいるのかな?と思いながらもとらはウソを言わないから、本当の事なんでしょうけど。流石に脳を食べるのはダメだと思うわ。
しかし、蒼月君も昨日に比べれば大分回復してくれた。これなら婢妖に記憶を蝕まれている、みんな助けるために行動することは出来るかもしれない。
問題があるとすれば婢妖だ。
おそらく糸色本家に移動している私にもう一度記憶を消す婢妖を放っているなら、そろそろ大軍勢が押し寄せてきても不思議じゃない。
「蒼月君、みんなを助けるわよ」
「おう!」
「とらも来てくれるわよね?」
「
今後も糸色本家は記憶を取り戻すために動きつつ、白面の者と奈落を警戒して行動するように伝える。分家に通達する頃には向こうも対策を講じている筈だけど。
「ちょっと待ちなさい、妙」
出鼻を挫き、呼び止められたことに苦笑しながらも振り返ると工房を出てきた煤まみれの刀々斎様が何かを放り投げてきた。
「コイツらも連れていきな」
「……虎翼、他の槍も打ち直してくれたのね」
「まあな。次は砕くなよ」
「分かってるわよ、ありがとう」
二十本を越える槍を服の中に仕舞い、蒼月君ととらを追いかける。これだけ揃ったなら負けることは絶対に有り得ない。