「行くぞ」
「まだ考え中なんだけどね!」
「知らん…!」
「見えてるわよがっ!?」
痺れを切らした錬金術師の男の鋭い踏み込みと連動して放たれた左のパンチを防ごうとした瞬間、私の顔に拳が叩き込まれ、吹き飛ばされる。
しっかりと拳を掴んだ筈なのに感覚がなかった。
すり抜ける、いや、軌道を変える?
頬を押さえて殴られた場所を擦り、静かに私を見つめる錬金術師の男に溜め息を吐く。蛮竜を地面に突き立てて、ジャンパーを月牙に引っ掛ける。
「来なさい」
「無駄だ。お前にオレは捉えら゛ッッ!?!!?」
何か偉そうに語り始める男の顔面に二重の極みを撃ち込み、左右から揺さぶるように二重の極みを何十、何百、何千、相手の足を踏み潰して固定し、反撃さえも許さずに徹底的に殴り倒す。
「小手先の技で私を倒せるわけないでしょう。私を倒したかったら白面の者クラスの妖怪かそれぐらい強い人間を連れてくることね」
そう言って武装錬金の解除された男を見下ろす。飲んだくれの分家のヤツにも劣るわね。わりと人材不足なのかしら?と考えながら核鉄を拾い上げ、視界の端に見えた金色の蝶を追いかける。
「流石は蝶のおじ様、ナイスタイミングだわ♪︎」
「そうかね」
にっこりと木々の間を縫うように鮮やかに飛び立つ蝶のおじ様───ドクトル・バタフライの手を掴み、彼の作り出す鉄片の蝶に乗り、蒼月君ととらを追う。
「行き場所は分かってるのよね?」
「No Problem。私は君が生まれる前に約束を交わしているからね、必ず君を蒼月潮ととらの元まで安全に届けることを約束しよう」
私の問いかけに力強く応えてくれたドクトル・バタフライはチャフを擦り合わせて炎を起こし、空気の流れを変えて、バーニアのごとく噴射し、凄まじい勢いで弾けるように飛び立つ。
速すぎるけど。
これなら二人にも追い付ける。
向こうでは話し合いが起こっている筈だろうし。なにより斗和子が
キリオ君に何かをさせるつもりか。
はたまた、彼女を倒した私に復讐させて弱ったところを捕まえるつもりなのかも知れないけど。この思惑や策略は奈落の好むものばかりだ。
「(白童子も奈落の思惑と言っていたし。彼は白面の者を出し抜いているという考えも残しておこう。間違っていたならそれでいい)」
もしものときはキリオ君に素直に話そう。