東京まで最速で飛んでくれた蝶のおじ様にお礼を伝えて、中村のお嬢さんと井上のお嬢さんに話し掛けても警戒されている蒼月君の隣に飛び降りる。
「二人ともまずは落ち着きなさい」
「お妙さん?どうして、お妙さんがそんな変なヤツと一緒にいるのよ!」
戸惑いと困惑の声で叫ぶ中村のお嬢さんの頭を軽く撫でながら「彼は大丈夫だよ。絶対に貴女達を傷付ける事はしないから」と話してあげる。
爺やの話を聞いて東西の妖怪の動向を怪しんでいたけど。まだ二人のところには来ていないのね。ほうっと安堵の息を吐いた刹那、私の背中にドンと衝撃が走り、身体を突き抜ける刀身が見えた。
「…あ、れ?…ハハ、まじかぁ…」
「ママの仇だッ…!」
「キリオ、おまえぇえっ!!!」
ずるりと痛みを伴って引き抜かれた鎌を振るい、血糊を地面に払い落とすキリオ君に悲鳴を上げそうになるお嬢さん達に叫ばないようにお願いする。
とらに蒼月君を預けて、お腹を押さえる。
「斗和子を殺したのは私だよ。でもさ、少なくとも彼女は本当の意味で死んでいないと思う……現には蛮竜に彼女の妖気は取り込まれていないからさ」
「うるさいっ!お前が、ママを殺すところは見たんだ!奈落が、教えてくれたぞ!」
「あー、そういうことね」
妙に納得できる。
おそらくキリオ君の鎌を警戒して斗和子は金剛槍破を受けて消えた。そして、だんだんと使いづらくなってきたキリオ君を奈落に押し付けるように隠れたと考えるのが妥当ではあるけれど。
「奈落、見ているんでしょう」
「くくくっ。やはりお前は儂の事を良く理解しているな、そこの小僧は既に儂の術中、お前を斬り、弱らせるまで動き続けるだろう」
「本当に大っ嫌いだわ!!」
結界に守られている奈落を蛮竜で吹き飛ばし、私と彼のやり取りを聞いていたキリオ君は止まらず、私の事を狙って走り出す。
蝶のおじ様は奈落を追いかけるみたいだし、本当にタイミングが悪すぎる上、人の感情を弄ぶ奈落という存在は不愉快すぎる。
「……蒼月君、また先に行っててくれる?井上のお嬢さんと中村のお嬢さんも彼の事を警戒したりしないで、ゆっくりと話を聞いてあげてね」
私はそう言ってキリオ君を見つめる。
「おいで、相手をしてあげる」
「待て!」
キリオ君を手招きすると同時に家屋の屋根に飛び移り、出来るだけ人気も少なくて妖怪の妨害も受けない場所を探していると黒衣に鎧を纏った生き物が現れた。
「あなた、あの時のッ?!」
「私は九印だ」
そう名乗った黒衣によって私の身体を殴り飛ばされ、電柱に背中をぶつけ、血反吐を吐き、お腹の傷口の痛みを堪えるように彼らを見据える。
白面の者に加えて、奈落の妨害もある。
少し面倒臭い事になってきたわね。