「お妙さんは着いて来なくても良いんだぜ?」
「お友達を心配するのはダメかな?」
そう言って蒼月君の顔を覗き込んだら顔を赤くして顔を逸らしてしまった。まだ、昨日の事を気にしているのかと思いながら純情な青少年の心を乱してしまった事を反省するものの、あれは不可抗力だも思う。
私だって恥ずかしいからね。
「けっ。ガキの癖に色気付きやがって」
「とらぁ!!」
「いでぇっ!?本当の事だろうがッ!?」
空港で文句を言い合う二人の事を眺めながら、流石に持ち運ぶには蛮竜は大きすぎるからと本家の使いに蛮竜の管理を頼み、虎翼と同じく仕掛け槍の「如意棍槍」を鞘に納めてカバンの中に仕舞う。
薙刀を使おうにも刀身の隠匿は難しく、私の服の中に仕込んだ槍も一文字や鎌槍、十文字の三種類しか存在しておらず、大型の槍は持っていない。
そして、困ったことはもう一つだけある。
私は乗り物に酔う。
この前の小船のときは年上の頼り甲斐を見せるために我慢していたけど。北海道に付く頃には、蒼月君の頼れるお姉さんを見る目は、乗り物酔いの酷いお姉さんになっていることだろう。
「おいおい。オレをぶん殴って倒した癖に何に冷や汗流してるんだよ、糸色妙ちゃんよ」
「あら、鼻が折れたのね」
「まあな。でも、あの略奪を目論んでた権力に取り憑かれた馬鹿な高僧はお役目様にお叱りを受けて、一からやり直しているぜ」
私の隣に腰掛けた先日の若い男は法衣ではなくジーンズやパーカーなどラフな格好で私の隣に居座り、いつでも攻撃できる位置で武器を隠している。
「ああ、お役目様の言伝てだ。『糸色殿、此度の失態をお詫び致します。ですが、何卒彼らを許して頂きたいのです。白面の者と戦うには、一人でも多くの人手を必要としています故』だってさ」
「とやかく言うつもりはないわ。───だけど。女の子の胸を凝視するのはやめてくれない?普通に貴方のいやらしい視線を感じているわよ?」
「……悪い、軽率で最低の行為だった。オレは生まれてから厳しい修行ばっかりだったから、こんなに女の子と接したのは初めてかもしれない」
「そう。だからって、谷間を見るのはやめて」
シャツを摘まんでジャンパーのファスナーを限界まで上げると不服そうに男は目を瞑り、ブツブツと「落ち着け。いくらドストライクなスポーティー美女だからって興奮するのは不謹慎だ」と騒いでいる。
距離は離れておこう。
蒼月君みたいに初々しい反応は可愛いけど。彼の視線は兎に角エロスと破廉恥さを煮詰めたエッチな事に意識を囚われてしまっている。
ウチの家系は人を選ぶから仕方ないわね。