とらの拳の猛打と互角に渡り合う紅煉に獣の槍を突き立て、その赤黒い髪を切り裂き、一撃必殺の攻撃を見舞う蒼月君を見上げる。
「おおおおおおおおおおおっ!!!」
「んにゃろおおぉっ!!!」
「かかかっ。馬鹿みたいに熱くなりやがって、俺は弱っちくて情けないヤツをブッ殺したいんだよ!特に自分は強いと自負している其処の女を痛め付けて、ブチ殺してやりたいのさ!!」
そう言って私を見下す紅煉の横面に蒼月君の振るった獣の槍ととらの拳がめり込み、力任せで乱暴すぎる程に力強く吹っ飛ばしてしまった。
他の黒い妖怪を巻き込み、紅煉は飛んでいき、何かを叫びながら遠くに逃げる。いや、獲物を変えて先におじさんを片付けるつもりなのだろう。
「けっ。二度とこの儂に向かって偉そうにすんじゃねえよ。うつけが!」
「お妙さん、行こう!」
「……ハハハ、良いよ。行こうか!」
私に手を差し出す蒼月君の手を掴み、とらの背中に飛び乗ると白面の者を目指して移動を再開する。ただ、嫌な予感が背筋にずっと張り付いている。
ふと蒼月君の頬を赤い筋が伝う。
「蒼月君、頬っぺたに傷が出来てる」
「え?ああ、さっきアイツに引っ掻かれてさ」
「動かないで…」
流石に消毒液はないけど。
一応、絆創膏は持っているからと彼の頬っぺたに絆創膏を貼ってあげると顔を赤くしていた。フフ、かわいいなあ。男の子だから可愛いはいやかな?
そう思いながら移動していたとき、グウゥゥッ…!と重々しく唸るような音が聞こえて周囲を警戒する私と蒼月君に「…白面のせいでハラ減ってきたなあ……」と溜め息混じりに呟いていた。
思わず、キョトンとしてしまう。
「ぷっ、あはははははっ!!今から死ぬかもしれないのにお腹が空くなんて本当に大将さんはすごいね。うん、時間がないけど、ご飯にしようか」
「えっ、でも?」
「儂ははんばぁがぁで良いぜ」
そう言ってご飯に賛成するとらに蒼月君も渋々と理解してくれた。思えば、本家から出てきて蒼月君ととら、私も一度も休まずに動いている。
少し休んでおかないと身体が持たないわね。
まあ、それに気付いたのはとらのお腹の虫のおかげだ。なんだか面白すぎて笑っちゃうわね。それに死ぬつもりはないから、最後の晩餐ってわけじゃない。
地面に降りたとらは私に化ける。
「はんばあがあだ。百個くれ」
「えと、オレは三つとコーラで」
「私はコーヒーだけで」
私達の言葉にビックリする店員に前払いでお金を渡しておき、あまり詮索しないようにお願いする。婢妖はいないだろうけど。
一応、警戒だけはしておこうかな。