ハンバーガーを食べ終えた私達を出待ちするように駐車していた男の人に思わず、鼻を摘まんでしまった。この人ものすごい煙草の臭いがする。
「──探したぞ。蒼月潮」
「おじさん、オレのこと知ってるのか!?」
「その話は後だ。乗ってくれ」
いきなり、そう言ってきた彼に戸惑う事もなく車に乗り込んでいく蒼月君の純真さにクスリと笑いながら、助手席の方に乗り込み、蛮竜を車の屋根に括り付ける。
流石に車内には持ち込めないからね。
ただ、乗り物酔いしたら私は使い物にならないかも知らないことは覚えていて欲しかったわね。いや、覚えているんだろうけど。
かなり緊迫した状況だから仕方ないか。
ゆっくりとシートベルトを締めて、煙草臭さに顔をしかめながら窓を開けたくても雨が降り始めてしまい、更に乗り物酔いという不幸が重なる。
「まずは自己紹介しとく。オレは守矢克美、7チャンのテレビ丸の内の記者だ。お前の話…いや、関わってる事件を追っていたひとりだ」
「……ッ、その記者が…ゔっ…どうして?」
「さっきも言ったがニュースフィルムで蒼月の事件を追っていたんだよ。そうしたらどうだ?お前に関係したかもしれねえ事件を誰も覚えていない!こりゃあ何かあると思って」
「───オレとお妙さんにたどり着いた」
「儂もいるだろうが」
のっしりと私の頭に顎を置くとらに文句を言いたいものの、余計に気分が悪くなりそうだから叫ぶのも我慢しながらダストボックスから飛び出ている名刺を取る。
守矢克美。ウソや誤魔化しは使っていないし、蒼月君の事を調べていたのはおそらく事実だろうけど。私の事は知らないのかな?
「しかし、なんで陶芸家の糸色さんもいるんだ」
「ゔぇっ…えぶ…ッ、友達だからよ……」
「すまない、煙草の臭いがダメなのか?」
「お妙さんは乗り物全部に酔うんだよ。飛行機も船も酔ってて動くにしても時間を置かないと凄く気持ち悪そうにしてるんだ」
「…オレの車は悪手だったわけか」
二人の話を目を瞑って聴いていたとき、雨音に混じって何かの動く音が聴こえてきた。この車じゃない、もっと小さいものが走っている。
どこかで聞き覚えがある。
安心できる、地面を走る音────。
「後ろの単車、なんか動きが変だな…」
「え?」
「たんしゃってなんだ?」
蒼月君ととらが守矢さんの言葉に釣られて後ろに振り返った瞬間、コンと窓ガラスを叩く音が聞こえて目を開けると信じたくないものが其処にいた。
シャランと錫杖の音が響き、車が真っ二つに裂けた。
守矢さんを受け止めながら雨で濡れた道路に転がり、爆煙を起こして燃える車。その近くに着地したとらと蒼月君の視線の先にはバイクに跨がった男がいる。
ああ、本当に最悪の展開だよ。