「てんめえーっ、何しやがる!」
「バカッ、先走しんじゃねえ!!」
蒼月君の制止も聴かずにヘルメットとゴーグルを身に付けた長身の男と戦うとらも薄々気付いている。いや、蒼月君も気付いているのに迷っているわね。
ゆっくりと蛮竜を呼び寄せて守矢さんにいつでも逃げられるように伝えつつ、私はいつでも二人の戦いに割り込めるように構える。
「どういうつもりだ、てめぇ!!」
「乾!」
とらの雷撃を錫杖の通して受け流し、八本の独鈷を投げ撃って方術を放つ。見覚えがある。知っている。動きの所作の全てがリンクしていく。
「おかしい。オレが聞いていた白面の者の息がかかった光覇明宗の法力僧がいるという情報と違う……こんなトップクラスの強さを持つ奴が、どうして?!」
そんな困惑の言葉をこぼす守矢さんの肩を掴み、怒りをぶつける蒼月君の手を握り締めて落ち着かせ、渡しも信じたくないけれど。
あの力は光覇明宗の物だ。
ぐらりと身体を崩した風に見せ掛け、地を這うように駆け抜けるとらに動きを変える。が、とらの鋭い爪がヘルメットとゴーグルを千切り、容易く砕く。
「やっぱり、おめえかよ」
「秋葉、流…!」
信じたくなかった。信じられない。
「あははァ……相変わらず強えなァ。とら」
「……儂を覚えてやがるのか。それにおめえ、なんで他の法力僧と一緒に石になってねえんだ」
「よォ…そっちも元気そうだな、うしお」
「流兄ちゃん、オレを覚えてるのかい?」
にこやかに笑う流君は静かに「ああ、ちゃんと覚えているさ」と蒼月君の問いかけに応えた。あまりの嬉しさに飛び出すかと思ったけど。
恐る恐る、蒼月君は流君に近づく。
「やだなぁ、急に車を攻撃してくるんだもん。ビックリしたじゃないかよぉ…」
「ワリィなァ……妙が気分悪そうだったからよ」
その言葉に安堵する蒼月君だったけれど。
「折角のチャンスだったからなァ…」
────彼の言葉に目を見開いた。
「流兄ちゃん、まさか婢妖!?それかこのおじさんが白面のスパイだったのか!?」
「い、いや、オレは……」
「蒼月君、違うわ」
「そうだぜ、うしお」
私は静かに流君を見据えて、彼も私を見つめる。
「「答えは〝NO〟だ」」
私達の言葉が重なる。
「ウソだ、そんな…ウソだよな!」
「守矢さん、とら、蒼月君をお願い。私はこの馬鹿をとっちめないといけない」
「……チッ。行くぞてめぇら」
「離せよッ、とら!」
「ギャーギャーうるせえんだよっ!少しゃ儂の言うことを聞きやがれ!!オラ、そこの何かクセぇのも儂に掴まっとけ!」
暴れる蒼月君と守矢さんを抱き抱えて飛ぶとらを守るように蛮竜を構える。───けれど、流君は無防備なとらに攻撃を仕掛けず、私を見つめている。
「こうしてやり合うとは三度目か?」
「そうなるわね」
ザアザアと降り注ぐ雨が嫌に冷たく感じる。
「ねえ、どうして白面の者についたの?」
「決まってるだろ?勝つのは白面の者だ。いくら獣の槍だろうが蛮竜だろうが、あの強大な妖怪にゃ絶対に敵わねえのさ」
「私は糸色妙だもの。負けないわ」
「その塗り固めたメッキを剥がしてやる」