「行くぞ、糸色イィィィィッ!!!」
「来なさい!」
バシャリッ…!と雨に濡れた地面を蹴り、錫杖を縦に振り落とし、翻すように錫杖が跳ね上がる。一動作に二度の攻撃を繰り出してきた流君の動きは、あの時よりも格段に素早く力強く感じる。
ああ、この力強さは本気だ。
ようやく本気を出しているんだ。
「乾ッ!!」
「私に金縛りは効かないわよ!!」
とらにしたように籠状の独鈷を放り投げ、私の動きを縛り付けて封じ込めようと法力を高める流君の独鈷を蛮竜で砕き、一歩前に踏み込んだ、その時だった。
─────流君が、嗤った。
「知ってるさ、爆ぜろォ!!!」
「しまっ」
ドゴオォォ─────ンッ!!!
その裂帛の気合いに呼応するようにバチリと地面に叩き落として砕いた筈の独鈷に法力が目映い光と衝撃を放ち、私の身体を吹き飛ばす。
濡れた道路に背中なら叩きつけられ、ガシャン…!と蛮竜を手放して、爆発の衝撃と痛みに身体が痺れ、ドクドクと心臓の鼓動が異常な程に速まる。
地面に手をつき、あお向けからうつ伏せになりながら身体を起こそうとした刹那、私の髪を掴み、無理やり立たせてきた流君の顔が、あの夜のように近付いてきた。
「咄嗟に後ろに跳びやがったな」
「ハッ、ハアッ…!」
震える身体に力を込め、彼の腕を掴む。
「ハハ、まだまだ元気一杯だよなァ!!」
「あ゛ッ、ごふっ?!」
メキリと私のお腹に彼の硬い拳がめり込み、手加減も何もされていない男の人の拳に身体が跳ね上がり、爆発の衝撃で痛めた内臓が更に傷付き、私は嗚咽を混ぜながら血反吐を吐き出してしまう。
「いったい、わねえッ…!」
お腹の痛みに涙を流しながら二重の極みを流君の胸に撃ち込み、強引に間合いの外に殴り飛ばしたものの、私の一撃は不完全だったのか。
流君は平然と佇んでいる。
「なあ、糸色……お前は何のために戦う?」
「…ッ、はあ…ゴホッ……何が言いたいのよ…」
「お前、本当は退屈なんだろ?少しやれば何でも出来る、家柄も血筋も何もかも持ち合わせて生まれた天才の自分を呪ったことがあるんだろう」
「…悪いけど。有り得ないわ、自分の生まれを恨む?呪う?ふざけるんじゃないわよっ!!私を、この私を誰だと思っているの!!!」
バシャリと雨の降り注ぐ地面を踏み締める。
何を言うかと思えば、自分の過去や人生を恨んだり呪ったりしただろうですって?そんなふざけたことを聞いてくるなんて流君はバカすぎる。
「私は、糸色妙だッ!!!!」
他の誰でもない絶対不変の私自身だ。
「お婆様が言っていたわ。自分に溺れる者はいずれ、闇に落ちる。二十と少ししか生きていないのに私達が何でも出来るなんて思い上がるだけ甚だしい!!」
蛮竜を引き寄せ、右手を差し出して手招きをする。
「来なさい。私が
「ハハ、ハハハッ!!!ふざけんじゃねえ…!」
私の言葉に怒りを顕にした流君が吼えた。