「熱風っ!」
「坎ッ!!」
雨を切り裂いて、高熱の熱風を繰り出す蛮竜の基本とも言える技を放つ。が、錫杖を地面に突き立て、熱風その物を掻き消す。
少し焦げた錫杖を引き抜き、流君は構え直す。怒りのままに形相は深まり、私の言葉に憎しみを抱き、私を殺してでも倒そうとしている。
「風もまた雷と同じく木行だ。お前の得意な雷撃も風もオレには通じねえぞ、糸色ィッ!!」
「お生憎様、私の蛮竜には手札はあるのよ!」
大鉾を横薙ぎに振るって向かってきた彼の錫杖と斬り結んだ刹那、緑色の紋様は魚鱗のごとく片刃に浮き上がり、流君の纏う力強い法力を吸い上げる。
「があッ?!!て、テメェ……なんだそりゃあ!!」
「───如何なる妖術方術も吸い取る無敵の蛮竜、この刃を使うのは初めてだから手加減は期待しないでちょうだいね!!」
そう言って私は竜鱗の刀身に変化した蛮竜を振り落とし、錫杖の纏う法力を根こそぎ奪い取るように錫杖の柄を切り裂き、彼の法力と熱を身体に受け止める。
やっぱり、冥道と同じで使いにくいわねッ…!
そう吐露するように悪態を吐きつつ、蛮竜を地面に叩きつけて地面を破壊し、ぐらりと体勢を崩した流君の顔に二重の極みを叩き込み、一気に地面に叩き伏せる。
「ごふっ?!」
「さっきのお返しだけど。お釣りはいらないわよ」
「…だ、まだ…まだだァ!!!」
「……良いわ。とことん付き合ってあげる」
血反吐を吐きながらも立ち上がってきた流君の叫びに応えるように蛮竜を握り締めて、ゆっくりと彼の事を見つめて構える。
僅かに視線が逸れた。
いや、逸らされた。
私の目を彼は嫌がったんだ。
「行くぞ、糸色ッ!!」
「えぇ、来なさい。流君」
両の手を祈るように叩き合わせ、孤月の印を結ぶ流君の前方に新月から満月までの月相が重なり合う。綺麗な真ん丸としたお月様が現れる。
私も蛮竜の刀身を金剛石に変化させ、渾身の力を蓄えるために振りかぶり、私自身の霊気も蛮竜に注ぎ込み、地面を踏み締め、構える。
「光覇明宗単独最強降魔捨法…!!」
「金剛オォ……!!」
「
「爆流破ァッ!!!」
綺麗な真ん丸としたお月様を身体に受けながらも繰り出した一撃は枝分かれしたように渦を巻き、金剛石の傷痕が走り抜け、流君の身体に絡み付いたところに二撃目の金剛石の槍が降り注ぐ。
「……ッ、こんな傷負わせて……」
ガシャン……!と。
私は蛮竜を落とし、ふらつきながら歩く。
せめてこれだけは言わせて貰わなくちゃ気が済まない。ボタボタと滴り落ちる血を押さえるように胸に手を当て、地面に倒れ伏したまま血まみれで動けない流君に近付き、彼と目が合う。
「……殺れよ、オレァ…うらぎぶおっ?!…」
ドンと彼に馬乗りになりながら私は流君の顔を両の手で掴み、光覇明宗の境内でしたときも、旅館の部屋でしたときも、全部向こうからの行為だったキスを私は彼の目を見つめながらした。
「おまっ、いきなりッ」
「好きよ、流君。大好き、だから辛そうに私の目を見るのはやめてほしいの……糸色妙としても緋村妙としても私は貴方の事が好き、ずっと一緒にいて欲しいっ」
もう雨か涙かも分からないものを吐き出すように私は傷だらけの彼に抱きつき、そう自分の想いをぶつけるように言った。
「ハハ、ハハハ、本当に敵わねえなァ……」
私は流君に抱き締められ、またキスをした。