ザアザアと降り注ぐ雨に打たれながら、三回目のキスを交わし合ったところで流君の「参った。オレの敗けだ」という言葉にクスリと笑って身体を起こす。
「フフ、また私の勝ちだね」
「本当にズルいぜ」
お互いに傷だらけの身体で立ち上がった瞬間、強烈な突風を巻き起こして現れた存在に私は舌打ちをして、空気を読めずにいる妖怪を睨み付ける。
こういうときは黙って見守りなさいよね。
「認めんぞ。儂は絶対に…!」
「お生憎様、貴方に認める権利はないわ!」
「……まず、誰だよコイツ」
「奈落、糸色の女を狙う変態」
本気の流君と戦って弱ったところを狙ったんでしょうけど。残念だったわね、今の私は誰にも負ける気がしないほどに気持ちが昂っている。
ゆっくりと蛮竜を拾い上げて構えると流君も折れた錫杖と独鈷を握り締めて構える。その姿に奈落はまた顔を怒りに歪め、狒々の毛皮を突き破る程、凄まじい勢いで触手を振るい、薙ぐ。
「不動縛呪、朏の陣!」
「風の傷っ!!」
奈落の触手を三日月状の法力によって固定したところを蛮竜の一撃で薙ぎ払う。が、しかし、金剛槍破を撃つには私の霊気も体力も残っておらず、熱風と風の傷を繰り出すのが精一杯だ。
ハッキリと言えば分が悪い。
「良い日に最悪の来客だよ、本当にさ!」
「オレはお前と一緒に戦えて嬉しいがな!」
手槍を触手に突き刺して張り付け、破邪の霊気を叩き付けて奈落の触手を滅する。でも、このまま使い続けていたら流石に不味いかも知れないわね。
そう考えながら蛮竜を地面に突き刺し、青白い雷撃を迸らせたその時だった。雨の中を泳ぐ雷鳴が呼応するように轟音を響かせ、私の蛮竜に向かって落ちる。
「お前もまた犬夜叉の様に炎雷を纏うかッ」
忌々しげに叫ぶ奈落の首に独鈷が突き刺さり、私は地面を蹴り、触手を踏みつけ、奈落の眼前まで躍り出ると同時に蛮竜を突き立て、青白い雷撃を放つ。
「雷撃よ!!」
「ガアアアアアアアッ!!?」
焼き焦げて消し炭になっていく奈落の身体を飛び出してきた人形を握りつぶして土くれに還っていく奈落の傀儡を見下ろす。
また、本体は遠くで観察しているだけか。
「ッ…けほっ…」
そう思っていた次の瞬間、私は血を吐いて地面に倒れてしまった。ハハ、流石に流君の本気を受け止めすぎて身体が持たないや……。
「糸色ッ、大丈夫か!?」
「……とーぜん、私は糸色妙だもの…!」
ピースサインを差し出しながら流君に微笑み、蒼月君ととら、それから守矢さんを追いかけなきゃいけないから、こんなところで止まってられないのにな。
「やっぱり、流君が一番強かったわね」
「……ハッ、お眼鏡に適って良かったよ」
流君に身体を支えて貰いつつ、ゆっくりと立ち上がると雨雲を切り裂いて、こっちに向かって来ているヘリコプターに目を見開く。
ハマー機関、タイミングが良いわね。