「類、此処を頼める?」
「任せなさい。私も元は糸色よ」
そう言うと私達は別れる。
「おめえは残っても良いんだぜ?」
「全く何言ってるのよ。私が行かなきゃ白面の者と戦う意味ないでしょう?」
とらの珍しく私の身を案じる言葉にクスクスと笑いながら、そう言い返すと「けっ。うしお、行くんだろ」なんて話題を急に変えてしまう。
まあ、それが彼の良いところだけど。とらの背中に飛び乗った蒼月君に手を振り、私と流君はハマー機関の大型ヘリコプターで移動する予定だ。
「じゃあ、オレ達は先に行ってるから!」
「行くぜぇーっ!!」
研究所の壁と天井を破壊して飛び上がった蒼月君ととらの事を見上げつつ、流君に「流石に今からあのスピードを追うのは時間が掛かりそうだね」と話し掛け、研究所の警報を聴きながら廊下を歩く。
それにしても、だ。
蒼月君の気配が少しだけ薄まっていた様にも感じて、あの時のように獣に成り果ててしまうんじゃないかと不安を募らせてしまう。
もしものときは私が受け持つ。
「妙、ちょっと良いか?」
「なに?んむッ…ん…っ、はあ…」
私を呼ぶ声に応えるように後ろに振り返ると、いきなり流君にキスをされた。恋人になってから初めてのキスなのは嬉しいけれど。
時と場合を考えてほしい。
「どうしたの、いきなり」
「アイツらに会ったとき、自慢したくなっただけだ」
「……ばかなの?」
「男はそういうもんなんだよ」
男の人って本当によく分からないわね。
でも、なんとなくだけど。確かに好きな人と恋人になれたのは自慢したい気持ちは分かるかな。うん、私も自慢してみたいし。
「ほら、行こうぜ」
「なんだか良いように言いくるめられてない?」
「気のせいだろう。それに、強羅と悟に会ったときはそっちも恥ずかしがらずにオレの事を恋人だって宣言してくれるよな」
「……まあ、うん…」
どこか執着じみた言葉に頼りなく頷きつつ、流君の少しだけドロリとした瞳にドキドキとしてしまう。あんなになるまで私の事を想っててくれたんだ……♪︎
言い様のない多幸感に包まれ、顔が緩みそうになりながらも流君の隣を駆け抜け、ヘリコプターに飛び乗った瞬間、ガクンと多幸感から倦怠感と吐き気に襲われ、ぐったりと座席にもたれ掛かる。
ヘリコプターで移動するんだった。
その事を思い出してヘリコプターの揺れの気持ち悪さに気分を悪くしながらも飛び立つ外の景色を眺める。幸いにも雨はあがり、視界は良好だ。
あとは何にも邪魔されずに白面の者のところまで行ければ良いんだけど。