「……気持ち悪い…」
「お妙さん、乗り物酔いひどいね」
「けっ。船酔いかよ」
蒼月君に心配されながら、とらに呆れられ、私は離陸して雲を突き抜ける窓の外を眺めることで乗り物酔いの気持ち悪さを解消しようと試みるものの、子供の頃から一度も治ったことのない乗り物酔いに溜め息を吐く。
私達を見送った光覇明宗の男はきっと私の弱点の乗り物酔いを報告してお叱りを受けている事だろう。いくら蛮竜が欲しいからといって、体調不良の相手を襲うのは良心的に良くない事だからね。
スチュワーデスからコーヒーを受け取って飲みつつ、ほろ苦い味と香りを楽しむ余裕もなく乗り物酔いの薬を飲んだ瞬間、機体が傾き、暴れ始めた。
「きゃあっ!?」
「おっ、と…!」
いきなり傾いた飛行機の反動に悲鳴を上げる女の子の手を握り、抱き締める蒼月君のナイスな反応にサムズアップを送りつつ、窓の外を睨み付ける。
あれは、初めて見る妖怪だ。
「ありゃあ、衾だな」
「とら、知ってるのか?」
「おう。空に棲む妖怪でよ、儂に比べりゃ雑魚だが人里に降りてごそっと人を喰らう。何度か
とらは、そう言って鋭利な牙を晒して笑う最中、私の隣の席に座っていたスーツ姿の男の人は「キミ、勇ちゃんを頼むぞ!」と蒼月君の肩を叩き、操縦席に向かって駆け出していく。
「……蒼月君、先に行っているわ」
コーヒーを一気に飲み干して、彼の後を追いかけると頭部を喰い千切られたパイロットの遺体と粉々に割れたガラス片を踏み、操縦室に入る。
「オジサン、操縦出来るのよね?」
「私は自衛隊に所属している。大抵の乗り物なら操縦できる、何より飛行機は大得意の乗り物だ」
「へえ、頼りにしているわよ!」
飛行機に乗り込むまで暗かった顔が嘘だったかのように気迫に満ち、操縦席に腰掛けてハンドルを握った彼の顔に飛び込んできた襖……いえ、おそらく「衾」と書く名の妖怪の身体を切り裂き、機体の外に片足と身体を突き出して、仕掛け十文字槍「虎翼」を振り抜く。
しかし、衾の身体を斬った瞬間、その傷口から衾の身体が枝分かれし、攻撃その物を無効化している。いや、効いているけど。身体が大きすぎるからダメージを与えるに至っていないだけだ。
「オジサン、ちょっと失礼するわね」
「なッ、何をしているんだ!パラシュートも命綱も無しに飛び出すヤツがあるか!?」
オジサンの叫び声を聴きつつ、機体に槍を突き刺して吐き気と気持ち悪さを同時に感じながら機体に張り付いている巨大な妖怪「衾」を見据える。
「槍よ、来い!」
「ひぃぎぃいあぁあぁあっ!!蛮竜、また蛮竜が焔が来やがった!ハラワタを斬られた、痛みがッ!あの人間の笑い声が聴こえるぅ!!!」
その呼び声と共に私の手に空港で使いの者に預けていた筈の蛮竜が僅か数秒で飛来した刹那、衾は何か恐ろしいものを見たように悲鳴を上げる。
成る程、蛮竜には