自衛隊の作り上げた橋頭堡「仙嶽」に着陸し、ようやく気持ち悪いヘリコプターの移動は終わったかと安堵したものの、いくら大きくても船という事実は変わらず、私は船酔いしながら移動する。
「意外と弱いところもあるんだな」
「…えゔッ、完璧に強い人なんて居ないわよ。まあ、ひょっとしたら乗り物酔いなんてしない糸色が生まれたら、それはもう私を越える最強でしょうね」
そう言ってみると意外とあり得るかも知れない可能性に笑ってしまう。当代無敵の私と、そんな私を追い詰める程に強い流君に子供が生まれたら、それはもう最強という言葉に相応しいでしょうね。
私の考えに気づいていない流君は自衛隊の人の話を聴いていたそのとき、明後日の正午に白面の者の力の源たる石柱に向かって攻撃を仕掛けるという言葉に「待てよ、ソイツは誰に言われた?!」と彼は驚愕の表情を浮かべ、慌ただしく走っていく。
いや、当然の行動だ。
あそこには蒼月君のお母さんが留まり、封印を施し続けているというのに攻撃を仕掛けると聴けば焦るのも当然だろう。
しかし、自衛隊にも妖怪にも総戦力での総攻撃を行うまで、攻撃を止めるように伝達して貰っていた筈だ。まさか、また奈落の仕掛けがある?
「おまえの察した通りだぞ、糸色妙」
「……白童子、キルリアン振動機は?」
「斯様な道具が儂に効くと思うか。儂の片割れは身体を切り裂かれた反動で暫く動けぬ。故に、儂から助言をやりに来た。奈落は白面の者を狙っている」
「本当に中立なのね、あなたって」
「強き者はウソは言わぬ。兄もまたウソを嫌う」
そう言うと彼は炎を纏って駆け抜ける白馬に飛び乗り、また空に飛び立ってしまった。少なくとも彼や白い女の子は私に敵意を向けることはなかった。
奈落の目的は白面の者とは言っていたけど。
一体、奈落は何をしようとしているのかと考え込もうとしたものの、橋頭堡の揺れで気分が悪くなり、蛮竜を地面に置いて壁際にもたれ掛かる様に座り込む。
「(妖怪の特性を記した古書には、奈落の事も載っていたわね。確か、変幻自在に肉体を組み換えて、より強い妖怪の肉体を取り込み、自分を強化する……だっけ)」
そう考えると史上最強とも言える白面の者を取り込めば奈落は誰にも負けることは無くなる。ただ、奈落だけで白面の者を捕まえることも取り込むことも不可能だ。
私か蒼月君が弱らせたところを襲撃し、そのまま取り込もうと考えているなら、白童子の助言は本当に最悪の事態を招かずに済むから助かるわね。