蛮竜によって少しだけ身体を浮かせるという苦肉の策を実行し、私は乗り物酔いを可能な限り防ぎつつ、橋頭堡「仙嶽」に辿り着いた蒼月君ととらを出迎える。
自衛隊の殆んどの人間は彼らの事を知らず、私の介入が無ければ確実に蒼月君の事を攻撃し、二人に辛い思いをさせていたかも知れない。
「お妙さん!」
「や、昨日ぶりだね。中村のお嬢さんには会えた?」
「うん。類さんが婢妖を消し飛ばしてくれたおかげで話せたよ……だからオレはもう白面の者に負けるわけにはいかないんだ」
「ハハハ、カッコいいぜ、男の子!」
ワシャワシャと真っ直ぐ綺麗な目を私に向ける蒼月君の頭を少し乱暴に撫でて、ぎゅうっと抱き締める。自分のお母さんのほうが心配な筈なのに、こんなときまで皆のために気丈に振る舞っている。
「蒼月、ウンディーネの準備を終えた。いつでも潜水することは出来るが呉々も白面の者を刺激せず、君の母親を守ることに集中するんだ」
「ああ、分かってるさ」
「糸色さん、貴女もご搭乗を頼みます。貴女のお婆様も封印の地に居るという情報もあり、今一度白面の者の封印の地に赴いて欲しいそうです」
「……分かったわ。流君、とら、もしものときは貴方達が頼りだからね」
自衛隊の人の言葉に蛮竜に鞘袋を被せて、吐き気と気持ち悪さを堪えて潜水艦に向かう途中、私と蒼月君を見送るために集まってくれた人達にもお礼を言い、流君ととらに封印が解かれた場合の事を伝える。
「気を付けろよ、妙」
「んッ……そっちもね」
ゆっくりと私にキスをしてくれた流君に言い返しながら潜水艦に潜り込み、顔を真っ赤にしている蒼月君に「なぁに?お姉さんのキスしてるところにドキドキしちゃったの?」と聴いてみると、どうやら本当の様だ。
まあ、そういうこともあるわね。
「あー、そうだった。ボウズ、母ちゃんに会ったら何て言うのか聴かせてくれよ」
「ちょ、悟朗さん?!」
「母ちゃんに会ったら……そうだなあ、みそ汁…うん、母ちゃんのつくったみそ汁が飲んでみてえな……」
そう照れ臭そうに呟いた蒼月君の可愛さに勢い余って彼の頭を力強く抱き締め、ワシャワシャと彼の頭を撫で回しながら「とっても素敵なリクエストだわ!」と言い、ずっと抱き締めていたくなる。
「お、お妙さん、恥ずかしいって!」
「フフ、恥ずかしがらなくても良いのよ?それに今からお母さんに会うなら、もっと強く抱き締めて上げなくちゃいけないんだからさ」
「母ちゃんを…抱き締める…」
「そうよ。ようやく会えるんだから」
絶対に会わせてあげるからね。