───刹那、地鳴りが響く。
「魚雷の音?どうして?!」
「ん、少しは落ち着きなさい」
「おそらく奈落の仕業でしょうね。人に紛れて事態を掻き乱すのは何時だって彼の常套手段。この場に獣の槍と蛮竜を留めるには一番確実性がある」
そう言って立ち上がったしとりお婆様と御角お婆様の二人に視線を移すと静かに印を結ぶ。お互いの片手を重ねて刀印に結び、しとりお婆様と御角お婆様の二人は強烈な威圧を発し、石柱を包み込んだ。
結界。それも私の張る結界なんて児戯に見えるほど凄まじく綿密に編み込まれた霊気の糸に目を見開きつつ、蛮竜を手に取ったその時、ドクンッ…!と蛮竜から鼓動が聴こえてきた。
奈落の気配と白面の者の威圧感が増した。
痴れ者が…よくも我の前に現れたものよ……
我が分身、斗和子に何を吹き込んだ
「くくくっ。動けぬ分際でよく吠える。儂の記憶に在りし日の貴様の不遜な態度を植え付け、アレに息子を襲わせようとしただけだ。───だが、やはり儂の行く手にはお前が立ちはだかるのだな。糸色景の血族」
「奈落、母様に付きまとう
「しとり、貴様は愛を受ける器だ。糸色景の……儂の母になってくれる筈だった者の愛を、貴様と貴様の妹は一身に受け、儂は……!」
要するに「お前の母ちゃん綺麗だからオレもそっちが良かった」的な事を言っているのだろうか?と思いつつ、蒼月君と蒼月君のお母さんを庇うように蛮竜を構え、いつでも脱出出来るように意識を集中させる。
少なくともアレを倒すには狭すぎる。
愚物が…我の前でそれを語るか…!
「そこは同感するわね。私のご先祖様に不埒な事を企んでいた変態はこの手で滅してあげる!」
そう言い終わると同時に素早く伸びてきた触手を蛮竜で薙ぎ払い、私の守りが薄くなった片側の場所に獣の槍を振るう蒼月君が舞う。
どれだけ強くても相手は一人だけ、私達は誰かを見捨てたり切り捨てたりなんてしない。
「お妙さん、オレも加勢する!」
「ハハハ、期待しているわよ!」
狭い洞窟の中で蛮竜を振るうことは自由に出来ないけど。鍛え直された新しい虎翼なら自由に振るえる間合い、蒼月君もいるなら負ける気はしない!
「チッ。面倒な」
「あら、面倒臭い女は嫌いなの?なら、私とは反りが合わないわね!」
「自分で言ってるけど、良いのかなあ…」
私の言葉に少し苦笑する蒼月君に「大丈夫よ。多分、私より流君の方が面倒臭いタイプだから!」と言いながら、虎翼を振るう。