「来るなあぁあぁあああっ!!」
「うぷっ。揺らさないでくれる!?」
口許を押さえながらガタガタと飛行機を揺さぶって恐怖を露にして無数に伸びてきた衾の身体を切り裂き、刀身を回転させて渦を成す。
蛮竜には初心者向けの技の高熱を帯びた斬撃を放つ「熱風」という物の他に雷撃を放つ「竜雷閃」と熱風の威力に遠心力を加えて放つ奥義の「蛮竜閃」が存在し、おそらく衾が恐怖しているのは蛮竜閃だ。
「いっでえぇっ!?」
「とら、危ないわよ!」
「あん?ぎゃあっ!!?」
飛行機の機体を踏み締めて吐きそうになりながらも蛮竜を横薙ぎに振り抜き、とらが衾の股下を通り抜けて機内に戻った瞬間、紫色の妖気を纏った高熱の旋風は刃に変化し、衾の身体を焼き焦がして切り裂き、砕く。
「ああぁあぁあっ!!熱い熱い熱い熱い熱いぃ!!戦骨が、極楽鳥を従えた兇鬼の怪物が何里も追い掛けてくる!長飛丸うぅぅ…!お前が、お前がまた連れてきたのかぁ!!」
「阿呆!誰が戦骨なんざ呼ぶかっ!下手したら儂まで魂喰われるまで追い回されるだろうがっ!!それにコイツは戦骨なんて怪物とは違うぞ、コイツは儂の家来としてメシを運んでくる女だ!」
あんまりな言い草に蛮竜をとらの背中に突きつけると「儂は悪くねえぞ!悪口を言っとるのは衾だ!」と言い訳を叫んだ次の瞬間、衾の首と目を獣の槍が貫いた。
「ひぃいああぁあぁっ!!この痛みは獣の槍いぃいいっ!!なぜ、なぜだ!何故、同時に二振りの
「決まってるでしょう?悪さする妖怪を」
「────退治するためだァ!!」
私の言葉に続くように駆け出してきた蒼月君が衾の手足を斬り、頭を伸ばして巻き付こうとしてきた衾の顔面に蛮竜を縦一文字に斬り裂き、機体から離れたところにミサイルが撃ち込まれた。
「火!火いぃいっ!!まだまだ喰い足りないのに、こんなところでぇ!白面の者も我が消えては……」
最後に何かを呟こうとして衾は消えた。
「二人とも助かったよ、ありがとう」
「けっ。お前は儂の家来だからな。メシを献上するヤツが居なくなったら面倒だからな。それに、うしおのヤツも寂しがるぜ」
「だ、誰が寂しがるかよ!!」
「あら、私は蒼月君が居なくなったら寂しいわよ」
そうクスリと笑って傷を負っている彼の頭を優しく撫でてあげると顔を真っ赤にした蒼月君は機体の先頭に走っていき、操縦席の中に入ってしまった。
さて、この吐き気と気持ち悪さはどうしようかしら。